霞は襖のほうを見ながら立ち竦んだ。
着替えの最中なら、いっそ甲高い声も出せただろう。
だが、着替えは済んでいる。
問題は、そこになくて。
明らかに丈の合わない体操服、むちむちとした太腿が邪魔をして上がりきらないブルマ。
口が悪い中年などがいれば、コスプレだの言われそうな出で立ちである。
だが独特の色気があって、襖を開けた張本人──須賀京太郎は視線を外せずにいた。

沈黙の時が幾らか続き。

「霞さんッッッッ!!」

割と穏やかな少年だという評価を覆しそうな勢いで、京太郎が霞に詰め寄る。
襖を閉めるのは丁寧なのが、らしいといえばらしいか。

「あの、京太郎くん?これは違うのよ?」

「素晴らしいですっ!巫女装束の霞さんも素敵ですけど!体操服とブルマの霞さんも素敵です!あぁっ、でもお務めもあるから普段は巫女装束なんですよね…」

霞が体操服とブルマを纏ったのは、小蒔が運動するときに気まぐれで着たのを、京太郎が大いに喜んでいたから、なのだが。
若干残念そうな京太郎を抱き寄せて。

(二人きりの時は、体操服だけじゃなくて、水着でも──侍女服でも、生まれたままでも、好きな格好でいてあげるから、ね?)

京太郎の耳朶に、そよ風のような囁き。
真っ赤に染まった頬を見ながら、霞は年下の愛し子を抱き締め続けるのだった。

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最終更新:2020年04月06日 22:44