愛おしい後輩の眠ったベッドは、自身の匂いと後輩の匂いで満ちていて。

(須賀くん……京太郎くん……御主人様……ダーリン……)

昨日に試しに呼んだ呼び方も含めて反芻するたび、美しく整ったサイズの胸が熱くなる。
直接触らせてあげたかったが、まだ時期尚早だ──きっと、自分の抑えが効かなくなる。
キスされた頬を、唇を洗うのも勿体無い。
胸いっぱいに吸った彼の匂いが薄れていくのも寂しい。
夜、一人で寝ることさえ寂しくて、電話もした。
まるで恋する乙女じゃないか、とからかわれもしたが、彼は深夜の長電話を嫌がらずに応対してくれて。

『キスされたところ……洗っちゃったの』

『それじゃあ、またキスしなおしますか?』

『……してほしいわ。唇も、頬も、首も、喉も、胸も、お腹も……全部にキスして?』

『まるで変態みたいになりますよ、俺が』

『私は……変態ね。須賀くんがいないと、寂しくて寂しくて堪らないのよ』

休み時間ごとに。
部活のことで話があると呼び出しては、物陰でキスしてもらって。
昼休みには、部室で抱きしめてもらって。
恋をしたら上手く立ち回ろうと考えていたのに、そんなことも出来ない。
恋が人を狂わせるとは、よく言ったもので。
部活中、バレないように振る舞うことさえ難しいなんて。

「ホント、難しいわ」

素直におねだりするのも勇気がいるなんて。
なけなしの勇気をベットして、敗戦の恐れもある──むしろ敗戦の可能性が強い勝負に挑むことが、こんなに怖いなんて。

「もっと大きく育ってれば……楽に勇気も搾れたのかしらね」

後輩が来るまで、どれだけか。
キスされて、抱きしめられて、甘えたい。
甘美で切ない昂ぶりに焦れながら、久は身体を丸くした。

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最終更新:2020年04月06日 22:56