「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - わが町のハンバーグ-46f

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だれでも歓迎! 編集
部屋全体を覆う土煙が晴れた時、そこには先ほどまでいなかった…雪歩がいた。

だが、その雰囲気はどこか…彼 虫川友人の知っているそれとは違っていた…
「……雪歩…ちゃんなのか…?」「…友人、さん……後は、私が。大丈夫です、友人さんには、この菌は効かないはずです…」
雰囲気だけではなく、いつもの舌足らずなしゃべり方さえも変わっている。


「クソ…ようやくリミッターが外れたってのに…その代償が…この病か…カハッ」
外傷は全くないが、話すたびに口から血を吐きその場に跪く。
「なぜ…何故お前までも、俺を止めようとする…」

「私はただ…自分のやりたいことがしたいだけです」


「龍爺さんが言ってくれました…外の世界で私のやりたいことを見つけろって。
 店長さんが言ってました…やりたいことはいつの間にか見つかってるって。
 友人さんが言ってました…人間は、自分のために生きているって。
 だったら!私だって自分のやりたいことがしたい!自分の思うままに、やりたいことがしたい!
 だから!だから私は、友人さんを助けます!たとえあなたが正しくても、私を助けに来てくれた友人さんを、今度は私が守ります!」

そういう雪歩の目は、No.0が今までに見たことのないくらいに輝いていて。
その目が、その意思が。何もかもが眩しくて。

「…ケッ、実験体のくせに一丁前に語りやがって…だから人間かぶれは嫌いなんだ…くふっ」
その言葉を最後に、No.0は倒れ、ピクリとも動かなくなった…


「終わったか?…って、やっぱり覚醒してたかQ-No…いや、九野雪歩、だったか」
それと同時に、部屋の入り口のドアが開き、あの黒服が入ってくる。
「!だめです!この部屋は今病原菌がいっぱいです!」
「なぁに、大丈夫さ。こんな事だろうとウルトラスーパーオールマイティワクチン飲んできてるから」
「なんだよその胡散臭い名前h…グッ!?」

な、何だ…?視界が…歪んで…?


どさっ。

「ゆ、友人さん!?」「お、おいどうした!?」
「くぁ…あぐぁ…!」

なんだこれは…

体に力が入らない。それどころか、感覚さえもどんどんと遠ざかっていく。
まるで、自分が自分じゃなくなるような…そんな感覚…


「まさか…!………!!おい!無茶しすぎだ!8つもの都市伝説と多重契約なんて…
 いくら虫系統と相性がいいからって容量の2倍以上詰め込みやがって…今までもってたほうが奇跡だぞ!」
「へへ…なぁに……俺は、いつだって…自分のやりたいように、やってきただけだ…
 たとえそれが…未来の俺を、犠牲にすることだろうと…今が良ければ、ってな…」



「……きみはじつにばかだな」黒服がそう、呟いた。


「その向う見ずな行動が、今おまえを苦しめてるんだ。それをお前がいいと思っていても、それを見て悲しんでる人がいるんだぞ?」
「…友人…さぁん…」歪む視界に、ひどく悲しんだ様子の雪歩がかろうじて見える。

「いくら人間が自分勝手だといっても、他人のために思う心は誰だって持ってるはずだ。お前だって、その多重契約は人のためのはずだ」


契約して間もないころに戦ったとき。
―――――「…ま、これもあいつのため、か…」


初めて要と一緒に戦ったとき。
―――――「なんつーか、お前と一緒に戦いたかった、ていうか…こう、お前と一緒の話をしたかった、ていうか何というか…
 まぁ、俺の意思で契約したんだ。だからお前が謝るこたぁねーんだよ、何にも」


サンダーバードとロボで戦ったとき。
―――――「気にすんな…ちょっと急にGを操ったから疲れただけだ…なぁに、ちょっと虫の知らせが入ったもんだからよ…」


「人のためにやったことで、人を悲しませちまったら何もかもが無駄じゃないか?人のためってのは、人を喜ばせるためじゃないのか?
 お前は雪歩を悲しませるためにこんなところまで来たんじゃないだろ?」


そうだ…俺は……


―――――俺が、助けださなば。

――――――――俺が、守らなば。

――――――――――俺が、そばにいてやらなば。



―――――――――――――俺が、雪歩を救わなば。

「…俺が、いなくなったら……誰が、雪歩のそばにいてやるんだ……俺が、守るんだ…!いつまでも……一緒に…!」

意地と根性で感覚が戻り始めたその時…



「くっつ………ぐぅぁ!!」「ゆ、友人さん!?」

また別の奇妙な感覚に、今度は意識までも手放してしまいそうになる。


何かが、体の中…骨の髄まで浸透してくるような感覚…

今までに味わったことのない……奇妙な。


「っ!?おい!?な…何でだ!?何でまた都市伝説が増えてやがる!?」

都市伝説が…?一体どういう…?
そこまで考えて、俺の意識はいったん暗闇へ向かってフェードアウトした…



「こいつはまずいな…マジで都市伝説に飲み込まれかけてやがる」
元々あれだけの契約量でありながら人間を保てているだけでも奇跡なのに、最後にえらい大物が入りこんじまったらしい。
そのせいか、若干ながらその体にも変化の兆しがみられる。

「あの、黒服さん!友人さんを助ける方法はないんですか!?」雪歩が泣きそうな顔で尋ねてくる。
「…ないわけではないが…」「じゃ、じゃあそれを早く!」


「これを使うと…この少年は、人間じゃいられなくなる…」


「え…」雪歩の希望に喜びかけた顔が、固まる。

「いや、こういうとちょっとアレだな。正確にはこの少年をこのまま都市伝説に存在を変えるんだ」
「存在…を、都市伝説に…?」

「今の少年の状況を簡潔に言うと、都市伝説の存在がこの少年の存在を飲み込もうとしてるんだ。んでもって、俺の方法ってのはつまり…
 都市伝説に飲み込まれる前に、人間としての存在を都市伝説に強制的に変換することで、人間としての姿を保ったまま都市伝説にさせるってことだ」

「??……???」「いや、理解しようとしなくていいから。てか俺もこの原理だけは理解できてないし」
そう言って、ポケットから液体の入った試験管をとりだす。

「今は理屈なんてどうでもいい。重要なのは、人間から黒服という都市伝説に存在が変わるってところだ。俺もうわさでしか聞いたことがないんだが…
 昔、人間から黒服になっちまった奴が、失意のあまり自我を失って崩壊しかけたなんていう話があってな。正直なところ少年にm「させません」
黒服の言葉を、突然雪歩が遮った。

「友人さんがどんなになったとしても、私が、私が友人さんを止めます!私がずっとそばにいます!
 友人さんがどんなになっても、私は、友人さんの全てを受け入れます!」



その眼は、とても澄んでいて。決して揺らぐことのない信念を固めた眼で。



「だから、だから…!早く、友人さんを助けてください!」
「…わかった」
黒服は小さくうなずくと、持っていた試験管の栓を取り、液体をくい、と友人に飲ませる。

その直後。

「…ぐっ…ぐあぁぁぁぁ!がぁっ…か…はっ!」「ゆ、友人さん!」
人間という存在の最後の誇示なのだろうか、先ほどまで意識のなかった友人がいきなり叫び始める。
「大丈夫だ!存在がこの薬に拒否反応を起こしてるだけだ!すぐに順応できるはずだ!」「うぐ…ぐぅぁ…!あがぁ…!…あぁ…ぅ」

痛みにもだえ苦しむような叫びが徐々に収まり始める。

だが…


「なが…あぐぅ……!!ああぁぁああああああぁあっぁぁあ!!!」


再び放った叫びが、先ほどの叫びよりもいっそう大きく部屋内に響く。

「お、おい少年!?ちぃっ…こんな副作用、聞いたことねぇぞ…」「げぁ…ぬぅぉぁぁぁああぁああ!!」


さっきまでの感覚とは違う…。

存在は、自分の存在は確かに感じる。自分の感覚も、自分の意識も…


そして、先ほどまでとは違う「自分」を。


だったら何だ?この感覚は…。「失う」感覚ではない…


じゃあ何だ?この「変わって」行くような感覚は…?


「変わって」?

俺は俺だ。虫川 友人。虫好きな高校生だ。

意識はいつも通りだ。いつも通りの俺だ。


じゃあ何が「変わった」?

俺の体に意識を集中させてみる。頭、首、胴、手…


そこまで行って、右腕に何か違和感を感じることに気付いた。

今感じられる右腕は、自分の今までのそれとは何か感覚が違っている。

何故だか、少し重い。それとやけに外からの刺激に敏感になってる気がする。


……

「…落ち着いたか」「友人さん…友人さん…!」

かけられる雪歩ちゃんの声に、急に現実へと引き戻される。

「…ん」
目を開けると目の前に今にも泣きそうな雪歩ちゃんの顔があった。
「友人さん…!良かった…本当に」
その顔は、俺が目を覚ましたのに気付くと俺の胸に顔をうずめて泣き出してしまった。
「わ、私ぃ…!友人さんが…グスッ、このまま起きなかったら、どうしようかって…エグゥ」

「…その、ごめんな…心配掛けて」
そう言って動かそうとした右手に、再び違和感。
そういえばなんか変な感じだな、と思いながらその違和感の正体を探るために右腕を見てみる。


「……ん?」

それは、人間の腕と呼べるかどうか定かではない代物であった。

かろうじて指は5本付いているものの、まるで改造生物かのように緑色の甲殻のようなもので腕が覆われていた。
んでもって何か刺々しい。そして重い。いつもの1.5倍くらいあるんじゃないだろうか。

「…あの、黒服さん」「……あぁ…何だ、その…ようこそ、『都市伝説』そのものの世界へ」



「……はぁ!?」
                …続く



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