4. 名無しさん@ピンキー 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:sx1+ICsY
エンドロールでぐちゃぐちゃ言い合いながら手つないで歩いてほしいな
絶妙に手元だけ隠れて見えないみたいなカメラワークでw
「手つないでる!!…のか?」って悶々としたい

3の最終話で上田の胸元に寄り掛かる奈緒子がたまらなく可愛い
抱き着いたりしないで頭だけごつんっていうのが素晴らしく奈緒子っぽい
抱きしめたりしないでニヤニヤしてるのも素晴らしく上田っぽい
9. 名無しさん@ピンキー 2013/09/03(火) 13:44:44.24 ID:sz05xIpE
夏休みも終わり、9月。
未来と会わなくなって久しい今も、矢部は店に顔を出していた。
秋葉と二人で捜査に励む。
今までと同じ。でも何か足りない日常。

「いらっしゃ…あ、矢部さん。お客さんがお待ちですよ」
「ワシに客?」

―――あいつか?
矢部は駄菓子を見繕いながら店の奥を覗き込む。
見飽きた貧乳の女がぱっと顔を綻ばせた。

「よう矢部。元気か」
「…なんやお前かぁ」
「何ですか、あからさまにガッカリして」
「別に」

抱えた駄菓子を奈緒子から死守しながら、矢部はそこらに置かれた本のページをめくる。
未来の忘れ物だろうか、上田が胡散臭い笑顔を振り撒いていた。
奈緒子も退屈そうに本を覗き込む。

「…あの小さい店主に聞いたんですけど…」
「ん?」
「あの女の子と仲いいんだって?上田の本なんか読んでる…頭良さそうな」

店主が「未来ちゃんのことですよー」と口を挟む。

「ああ。ワシの優秀な頭脳を尊敬しとる助手みたいなもんや」
「ふーん…」
「聞きたいか、わしの伝説を」
「いい」
「…で、お前何しに来たんや」

本を閉じ、駄菓子に手を伸ばす。
奈緒子は俯いたまま動かない。

「……よし、わかった!嫉妬やな」
「はっ?」
「ワシの捜査に首突っ込めるのは自分だけやと!
うわあアホやなあー、小学生相手に!嫉妬!うわー」
「違う!!勘違いするな!」
「…先生に会うたで。今日」
「え」
「今抱えとる重大な事件についてな、ちょっと調査を依頼したんや」
「…ふうん」

矢部はそわそわする奈緒子を眺めてため息をついた。
上田から電話がかかってくるかもしれない、もう家に来ているかもしれない、という期待が見え隠れしている。

「あーもう帰れ。送ったるから」
「…うん」

何気なく鞄に駄菓子を詰め込もうとする奈緒子の頭を叩く。
――こいつは小学生の数倍手のかかる女や。

「秋葉ー、山田のアパートわかるやろ。行くで」
「あっ立ち聞きバレてましたか…」
10. 名無しさん@ピンキー 2013/09/03(火) 16:39:12.59 ID:sz05xIpE
矢部謙三は、上田と奈緒子を巻き込みながら今回もあっさり事件を解決。
温泉を満喫して東京に帰還した。

「いらっしゃい…あっ矢部さん、いいところに!」
「まーたあいつが来とんのか」

ニヤつく店主を押し退ける。
見慣れた小さな人影。

「あ、矢部くん!」
「…おー、お前か」
「久しぶり。この本、忘れてたから取りに来たの。じゃあね」

呆気ない再会。
駆けていく背中を見送っていると、未来がふと立ち止まって振り返る。

「…矢部くん、貧乳のお姉さんとは仲良くしてる?」
「は?」
「ここで二人でお話してたって。小さい店主さんが言ってたから」

矢部はヘラヘラしている店主を睨むと、未来に近づく。
未来は膨れた顔で矢部を見上げた。

「あ。お前、嫉妬してんのか」
「矢部くん。からかわないで」
「はいはい、ワシの大事なスパイはお前だけやで」
「…ごまかした」
「…あのなあ。あの女は上田先生のもんやぞ。読んだことあるやろ」

未来の手にした本を奪い、上田の連載のページを突き付けた。
貧乳の助手のことが長々と書いてある回。

「えっ。これがあのお姉さん?…アハハハハ!アハハハハハハハ」
「笑いすぎや」
「ねえ。私は矢部くんのものだよね!」
「はぁ?」
「矢部くんが言ったんだよ、私は矢部くんのスパイだって」
「あーはいはい」

矢部は呆れ顔で未来の頭を軽く撫でた。
未来が満足げに笑う。

「じゃあ、またね」
「気ぃつけて帰れよ」
「ありがとう。秋葉くーん、うちまで乗せてってー!」
「ま、またバレてた…」
16. 名無しさん@ピンキー 2013/09/06(金) 22:17:33.46 ID:CWjfN9ki
火に囲まれて、何分経ったのか。
考えなきゃ、考えなきゃ、助かる方法…。
頭がぼんやりしている。
立ちすくんでいると、上田が声を掛けてきた。

「最後に、お互い今までずっと言えなかったことを一言ずつ言い合おう」
「……はい」

お互い死にかけて助かったと思っていたのに、また火に囲まれるなんて。
くらくらする思考の中、上田の真剣な顔だけが鮮明に見える。

「山田。俺は今まで、ずっと君のことを」
「……はい」
「…す、っす…」
「……す?」

目を逸らそうとする上田に聞き返す。
本当は気付いてる。
言いたいことはわかってる。
知っていましたよ、ずっと。

「俺は、君が好きだよ。ずっと、ずっと前から」
「……」

とても小さな声だったけれど、私の目をまっすぐ見てくれた。
死にかけているこんな状況なのに、幸せな気持ちになってしまう。

「……俺は言ったぞ。次はyouの番だ」
「……私も。私も、ずっと前から好きですよ。上田さんが」

上田の体が私をそっと包み込む。
私も手を回してしがみついた。

「こんなとこで死ぬの嫌ですよ、後味悪すぎます」
「ごめん。youを守れなくて」
「…上田さんは、頭使わなくていいですよ。一緒に助かる方法は私が考えますから」

助かったら恥ずかしくなって、何事もなかったようにくだらない言い合いをする関係に戻ってしまうかもしれない。
でも素直になるんだ、もう一度ちゃんと好きって言うから。絶対に。
上田さんと一緒に生きていきたい。

「……熱い…」

頭が回らない。
息が苦しい。
目の前が暗くなってきた―――
17. 名無しさん@ピンキー 2013/09/06(金) 22:19:33.93 ID:CWjfN9ki
「…嫌…!!」

――あれ、息ができる。
見慣れた天井。
心臓がうるさく鳴っている。

「…はぁ…嫌な夢だった」
「どんな夢だ」

聞き慣れた声に視線を巡らす。
勝手にお茶を煎れてくつろいでいる大きな男。

「上田さん…?何勝手に上がり込んでるんですか」
「廊下に君が倒れてたから運んでやったんだよ。おそらく熱中症だな」

そういえば玄関を開けた記憶がない。
枕元に置かれた水やタオル。
頭の痛みに顔をしかめると、額の汗を上田がタオルで拭ってくれた。

「ところでyouはこんな話を知ってるか」

上田は団扇でこちらに風を送りながら、うさん臭い霊能力のことを語り始める。
どうせならお前が独り占めしている扇風機を向けろ。
でもそれが上田。ずっとずっと前から。

「…すき焼きおごってくれるなら、謎解き付き合ってあげます」

微笑みかけたら、上田はちょっと動揺してる。
それでいいんですよ。
余計なこと考えずに、私のこと好きでいてください。
ずっとずっと。
21. 名無しさん@ピンキー 2013/09/12(木) 09:49:10.96 ID:C2MFhIvu
「絶対、絶対当たってました!この変態」
「俺がカミソリを受け渡す角度は完璧だったはずだ、君がどさくさにまぎれて俺の唇を奪ったんだろ」
「そもそもなんで私があんな目に合ったのは上田が見捨てたからだろ!」
「ずいぶんと前のことを今さら…」

いつものように勝手に上がり込んだ上田に文句をつけているうちに、いつの間にかカミソリキスの件で言い争いになっていた。
命に係わる事態とはいえもっとやり方があった、最善の方法だった、
唇が触れた、触れない。
どちらも引くことはない。

「じゃあもう一度試しましょうよ!」
「は?」
「あの時と同じくらい顔を近付けて、少しでも唇に触れたら土下座して謝ってください」

奈緒子は座布団を引っ張り、上田の前にぺたんと座る。
じっと見上げる瞳に仕方なく向き直り、上田は息をついた。
数センチ先の瞳にお互いが映る。

「…上田…そんなに見るな」
「…経過を観察し、結果を見届ける義務がある。俺は学者だ」

何十秒経ったろうか。
いつまで続けるのかを設定していなかったことに気付いたが、言い出せないまま膠着状態が続く。

「……」
「…山田、降参しろよ」

奈緒子はいたたまれなくなって目を閉じる。
顔に落ちてきた髪を耳にかけてやると、奈緒子の体が小さく跳ねた。

「…っあ…!」
「ゆ…you?」

ほんの少し、奈緒子の体が上田に傾いた。
額が、鼻が、触れ合う。
吐息が混ざる。
意地でも唇だけは触れないようにと、ゴクリと唾を飲み込む音がどちらからともなく耳に響く。
22. 名無しさん@ピンキー 2013/09/12(木) 09:50:43.52 ID:C2MFhIvu
「……はぁっ…」
「や、山田…」

上田が奈緒子の肩に触れた。
奈緒子は無意識に上田のベストを引き寄せようとし、固い物に触れた感触に目をそっと開く。
そこには、ズボンを突き破らんばかりのこん棒があった。

「…うわあああああああっ!!」

我に反り後ずさる。
上田は必死に座布団で股間を隠した。

「ちっ違うこれは、誤解だよ。有り得ない。youに対してこんなことは」
「触っちゃったじゃないですか!上田!!土下座!!」
「唇は触れなかっただろ!!」
「唇のほうがまだいいですよ!!」
「いいの?」
「は?」

数秒の間。
体中に熱が巡り、顔を背ける。

「…もういいです、この話は」
「そもそもなぜキスの話なんかになったんだ」
「…昨日食べたキスの天ぷらがどうのって上田が言い出すからだ」
「そうだ。美味かったな…鱚に海老、ししとう、茄子、それから旬のキノコ…今晩も行こうと思っているんだ」
「……ついてってあげてもいいですよ?」

少しだけ気まずいような、穏やかな心地よさに包まれる。
このあと一部始終を覗いていたハルとジャーミーに鉢合わせて質問攻めにされ、再び「お前のせいで」と言い争いになることを、二人はまだ知らない。
38. 名無しさん@ピンキー 2013/10/31(木) 13:55:18.92 ID:nziIwzeN
「上田、上田。とりっくおあとりーと」
「…どうぞ」
「…ガム1個って。もっと、ケーキとか。プリンとか。そういうの」
「you」
「パフェとか。ほら、ハロウィンのデザートがたくさん世間に…」
「お菓子はやらない」
「……え」
「どうする」
「…い、いたずらしますよ!」
「……ふふふ」
「ニヤニヤするな!ほーらこの次郎号のカギを異世界に送ってみせましょう」
「やめろ!!こういう時のいたずらっていうのはな」
「変な期待しないでください」
「……」
「……お、お菓子くれたら、いたずらしてあげます」
「you…」
「…早く行きますよ。焼肉」
「焼肉はお菓子じゃない」
39. ハロウィン別バージョン 2013/11/06(水) 09:22:34.45 ID:m4bbgIL8
「やあ、お帰り」
「上田さん!また勝手に…あ、クッキーだ」
「学生に貰ったんだよ。ああ美味い」
「自慢か。ひとつください」
「タダで?」
「…トリックオアトリート!」
「はい、上げた」
「子供か!寄越せ」

奈緒子が触れる前に袋は奪われ、
上田は最後の一枚を見せつけるように口に放り込んだ。
ちゃぶ台のお茶を一気に飲み干し、ニヤニヤしながら立ち上がる。

「ああ美味しかった。じゃあ、また」
「何しに来たんだ。待て上田!」
「何…」

戸を開けようとする上田を引き留める。
奈緒子は上田の首に手を伸ばし、背伸びをすると上田の唇を荒々しく塞いだ。

「…っ!?…んんっ…」

奈緒子は捩込んだ舌を器用に絡め、呼吸をする間も奪う。
次第に力が抜けていく上田の体をそっと突き放した。

「……っ、山田…」
「そんなに気持ち良かった?」

壁にもたれて苦しそうに深呼吸をする上田がずるずると座り込む。
口元を拭いながら上田を見下ろし、奈緒子は笑った。

「大丈夫ですか」
「…you」
「お菓子くれないからですよ」

上田の背後に手を伸ばし、鍵をかける。
ハロウィンはまだ終わらない。
48. 名無しさん@ピンキー 2013/11/24(日) 20:58:30.67 ID:2pvT9tAb
食事を奢るから仕事を手伝えと呼び出され、上田の研究室を訪れて数時間。
奈緒子に充てられた仕事はとっくに終わり、日も暮れていた。

「……上田さん、まだ終わらないんですか」
「ちょっと待ってろ。おとなしく、静かにな」
「もうお茶も飲み飽きちゃいましたよ。それ、新しい本の原稿ですか」
「来週の講義に使うレジュメだ」

息をつき、奈緒子が立ち上がる。
人差し指でキーボードを叩く上田の背後に回り込み、画面を覗き込んだ。

「……な、なんだ」
「上田がちゃんと仕事してるか見てやろうと思って。……あ、誤字」
「どこ?」
「待って、さっきの…ここ」

上田の肩越しに奈緒子が身を乗り出す。
するりと滑る髪の感触。
モニターをそっと指差し、得意げに微笑んだ奈緒子から、上田は目を逸らせない。

「ね」
「君に漢字の間違いを指摘されるとは思わなかった。疲れが溜まってるんだな」

奈緒子はむっとした顔をそのまま上田の顔に寄せる。
髭の伸びた頬にそっと触れる唇。

「疲れ、取れましたか」
「…少しだけ」

外した眼鏡を机に置き、奈緒子を抱き寄せる。
つかの間の休息。


58. 姫初めSS・1/6 2014/01/02(木) 00:29:50.25 ID:RWYX9YW1
劇場版&新作SP公開前記念ひさびさの投下
6レス程お借りします

既に何度か関係のある上田×山田、
しかしお互いはっきり気持ちを口には出していない設定です
※※※※※※※

往々にして、非常識な時間の電話は非常識な奴からの事が多い。
今朝にしたって、まだ正月三が日も明けぬ朝方からその男からの電話はかかって来た。

「おう山田、あけましておめでとう」

もしもしと言うより先に、いろんなところがデカいこの男、上田次郎が切り出した。

「…おめでとうございます」

と、つい年頭の挨拶を返してしまうと、相変わらず慇懃無礼な態度の上田からこんな返事が返ってきた。

「それだけか?ん?『上田様、昨年は大変お世話になりました。今年もどうぞこの貧しい胸の私めをよろしくお願い致します』くらい―――」

まだしばらく続けるような口ぶりに腹が立ち、無言で受話器を置く。まったく、新年早々何故こんな奴の話を聞かなければならないのかと思っていると、再び電話機が鳴り出した。

「もしもし」
「YOU、何故いきなり切るんだ。せっかく正月から恵まれない者に施しをだな」
「くだらない用件なら切るぞ、タコ」
「ま、待て待て!…実はな、ナカジマヤ特製豪華おせちを買ったんだが、さすがに食べきれずに捨てるのも忍びないのでだな、YOUも呼んでやろうかなと思ってな、どうだ?」

言い方がいちいち恩着せがましいのは引っ掛かるものの、
「仕方がないですね、正月と言えども仕事依頼が殺到しているところをキャンセルして行きます」と言い終わるより先、窓の外で聞き慣れたクラクションが鳴った。

「上田さん!?」

窓から外を見ると、次郎号に乗ったままこちらを伺っているのが見える。

「君が断る訳無いだろうからな。わざわざ迎えに来てやったんだよ」
「だ、だからって非常識ですよ!こんな朝早くに」
「フッフッフ、今ならなんと!ウチのマンションのCSチャンネルで、YOUの好きな暴れん坊将軍のスペシャルが一日中見れるぞ」

それが決定的な殺し文句となって、「5分で支度します」と返事をしてしまったのだった。
59. 姫初めSS・2/6 2014/01/02(木) 00:31:32.49 ID:RWYX9YW1
「ふー……満足満足」

実際、エビやイクラ、チャーシューにローストビーフなどなど、ナカジマヤ特製豪華おせちを堪能しつつ、暴れん坊将軍スペシャルも堪能していた。毎日の再放送を楽しみにしているが、年末年始の特別編成でそれもなかったので思いがけず上様のお顔を拝見出来て、ちょっと嬉しい。
が、上田はそんなうきうきした私の隣でお屠蘇をちびちびと呑んでいたが、おせちを食べ終えたのを見計らい、私の髪を一筋そろりと引いて来た。

―――来た。

正直、そんな予感はしてなかった訳ではなかった。
初めて上田とそういう関係になってから、もう何度かあるものの、いつも最初はこのパターンだった。

「紳士たる者、いきなり迫るなんてスマートではないだろう?ムード作りなんだよ」

といつか言い訳していたが、何てことはない、ただの小心者なんだと思う。
髪に触れても私が特に断る素振りも無いとわかると、髪を引いていた指は肩へと移ってきた。
肩のラインをそっとなぞりながら、私の出方を窺う。

「最初からそのつもりで呼んだのか」

上田の方を振り向かず、わざと低い声で言い放つ。

「………まさか」

顔は見えないが、声と肩に触れている指は明らかに動揺している。こんな下心丸出しの奴の策に、まんまと引っ掛かった自分が恨めしい。

「YOUはそのまま、TVを見ていればいいじゃないか」

指だけはまだ私の肩や首筋を辿りながら、よくもぬけぬけと、どの口が言うか、このっ!

「正月から、しかもこんな朝からなんて何考えてるんですか」
「YOU、『姫はじめ』という言葉を知らないか?由緒正しい日本の伝統行事なんだよ」
「何が―――!???」

つつ、と背中に上田の指が下がってきたかと思ったら、服の上から片手であっさりブラのホックが外されて、何とも心もとないような言い様の無い感覚に戸惑う。

畜生!いつの間にかこんな技まで覚えやがって!
と心の中で悪態をつきながら、思わず胸を庇う格好になり隙の出来た首筋に、微かにアルコールの匂いのする上田の唇が降りてきた。

「……っ…」

ピクリと身体が震える。それに気を良くした上田は、時には甘噛みをして私の反応を楽しんでいた。

「YOU…下着は外れてるんだ…ずっと服を着ていることもないんじゃないか?」

――どんな理屈だ!

あくまでも、胸を押さえたままの私にひろみを煮やしたのか、上田は首の付け根部分をきつく吸い上げた。
60. 姫初めSS・3/6 2014/01/02(木) 00:34:23.58 ID:RWYX9YW1
「…にゃっ!」

胸を押さえていた腕をわずかに緩めたのを見計らって、上田の手がセーターの中に滑り込んできた。

「相変わらず色気の無い声だが…」
「…やっ…」
「ん?本気で嫌なら、拒否すればいいじゃないか」

もし本気で拒否したら、この世の終わりのようにうちひしがれて、いじけるクセに。
私が体調的な理由で断る以外でそれが出来ないことを知ってて、こいつは調子に乗っている。

「ここも…豊かではないが、感度は悪く無いよ…なあ?」

さっき滑り込ませた手は胸をすくい上げるように揉みながら、わざと耳元で甘ったるい言い方で囁く。

こういう事は私としか経験してないくせに、まるで全てを知ってるかのような口ぶりだ。
最初の時なんか、最後には嬉しくてむせび泣いてたくせに。
おかげであまりに痛くて、思わずぶん殴ってやろうと思った気も殺がれたというのに。

――ふと、今のところされるがままで重大なことを忘れていた。

「ちょ、ちょっと待って下さい」

上田さんの手をやんわり制すも、少々鼻息の荒くなった上田は鼻の頭を耳の後ろにすり寄せ、止める気配が無い。

「ん?どうした…YOU?」
「あ、あのですね私…昨日からお風呂入ってなかったので、その、シャワーを」
「なに、大した問題じゃない。後で入ればいい」

ふんふんと犬のように鼻をすり寄せ、さっき制したはずの手はがっちり腰に回されていて、身動きが取れない。

「…それとも、一緒に入るか?」
「は、入るか!バカ!」
「YOU、いつだって俺はジェントルなのを知らないのか?」

本当にジェントルなら、このエロオヤジぶりはなんだと内心呆れる。

「ね、上田さん…本当に、シャワーを…」
「ダメだ」
「なんでですか!……あっ、ちょっと…だから、そんなっ」
胸を触っていた手は乳首を摘み、もう片方の腰に回されていた手はするするとスカートをたくし上げ、腿の内側にスリット入って来た。

「YOU、今からシャワー浴びてたら、一番のクライマックスが見られないんじゃないのか?」
「くっ…!」

悔しいが、その通りだ。もしかしたら、そんな時間も考えて手を出して来たのかと思うと、ますます口惜しく感じる。

「この、変態がっ…」
「フン、YOUこそ意地張らずに脱いだらどうだ?…それとも、着たままが好みか?ん?」

最近、こういう時は耳元で囁くことが効果があると知ってか、やたらに甘く低く囁いてきやがる。
61. 姫初めSS・4/6 2014/01/02(木) 00:38:16.03 ID:RWYX9YW1
―――ムカつく。

さっきから密着している腰の辺りに、少しずつ主張している巨根も。

決して認めたくはないが、ほんの少しだけそれを期待している自分自身にも。


そんな複雑な気持ちの私をよそに、上田はゆっくり内腿を撫でていた手を、一番敏感なところへと忍ばせてきた。

「…ふっ…」
「慣れてきたとは言え、良く濡らさないとな…YOUだって、気持ち良くなりたいだろ?」
「そんな、訳…ない…っ」

下着越しに軽く指で撫でられてるだけで、少しずつ追い立てられていく。

もどかしい思いはするものの、それと気付かせるのも、ましてや、言葉にすることも負けた気がして、頑なに上田の方に顔を向けようとはしなかった。

「まあいい。この天才上田次郎、YOUの好きなところは分かってるからな…フハハハ!」

それ「天才」じゃなくて、回をこなしてるうちに覚えただけじゃん!

と心の中で突っ込んでるうちに、今度は下着の横から直に指が触れる。

「…!」
「おう、熱いな…」

何やらくすぐるような仕草で指を動かしていたが、じれたように
「おいYOU、ちょっと腰上げるんだ」
「え…」

数センチだけソファから腰を浮かせた途端、上田は私の華麗なマジックにも劣らぬ早業で下着を下ろす。

「!?」

軽く混乱する私をよそに、上田の武骨な長い指が侵入してきた。

「んぁ…っ」
「いい反応だ…」

上田は満足げに呟いて、もう一本指を増やす。

「君は、ひねくれ者だからな…ここを、こうされるのがいいんだろう?」

私の中で上田さんの指がぐるりと回されて、ある一点を指の腹で撫でられると、魚のようにびくりと跳ねた。

「…ぃ…あっ…!は…ぅんっ…」

テレビからの音声と、お互いの吐息や衣擦れの音の他に、時折何やら粘着質な音が混じってくる。それが、自分から発せられてるものだと気付いた瞬間、羞恥で顔から火が出そうになる。

「…今、締まったな」
「な、にがっ…」
「ふっ、カマトトぶりやがって。ここ、俺の指が入ってるところ…だ」
62. 姫初めSS・5/6 2014/01/02(木) 00:39:23.37 ID:RWYX9YW1
言うなり、わざと音を立てるように指を大きく動かす。

「や…だ、これぇっ…」

上田は抗議の声を封じるように、耳を舐める。

「ひっ…」
「なあ…YOU、そろそろ…いいか…?」

聞かれる前からずっと腰に当たってはいたが、わざと惚けてみる。

「な、何が…?」
「いい加減、素直になれよ…この、じゃじゃ馬娘が!」
「―――――!!」

胸を触っていた手で乳首を、中を触っていた手の空いていた指で突起を、それぞれ強めに摘まれて、そのあまりに強烈な刺激に頭の中が真っ白になって―――イってしまった。


ソファにもたれて、まだ息が整わない私を尻目に、上田はいそいそとズボンのファスナーを下ろす。

「…入れるぞ」

ソファに腰掛けたまま、下着ごと半分だけズボンを下ろした間抜けな体勢で、くったりしている私を後ろから抱えるとスカートをたくし上げ、ソファにいた姿勢のまま、ゆっくりと挿入してきた。


「…ぁ、あ…ぅんんっ…!」
「ぅ…おい…っ…YOU…もっと、力抜け…保たないっ…だろ…」

じわじわと私の中を侵す、上田さんの熱さからはもう抗えない。
とても楽しみにしていたはずの「暴れん坊将軍スペシャル」のテレビ画面を虚ろに見つめ、全く内容の入って来ない音声を聴く。
ああ…上様の立ち回りだ…と
穿たれながらぼんやりと考えていると、上田がこんなことを言いだした。
「え、液晶、テレビにっ、なったのが、少々、惜しいな…」
「?…な、ぜ…?」
「ブラウン管、だと、君のっ、姿が映るじゃ、ないかっ」

快楽に溺れかけ、朦朧とした頭が、映るはずのない私と上田さんとの行為を大画面テレビに映す。
古典的マンガ表現のごとく、頭から湯気が出そうなくらい恥ずかしくてテレビから顔を背けると、上田さんの唇が触れた。

「YOU…そんなに、締めるな…っ」
「し、締めて、なんかぁっ…」
「……まただ」

そう呟いて、再び唇が触れる。今度は、唇に。
触れるだけのキスからだんだん深く、そして唇の隙間から舌をねじ入れ、口の中までも侵す。

「んっ…うぅ、ふ…」

―――何かが、身体の内側からせり上がって来る。

上田さんも限界が近づいてるらしく、喘ぐ速度が速くなり、どちらのものか分からない汗が混じり合う。

「はあっ…はあっ、………奈緒子…っ、奈緒子…!」

こんな時だから、いつも気付いていないと思ってるだろうが、そんなに何度も熱く名前を呼ばないで欲しい。
63. 姫初めSS・6/6 2014/01/02(木) 00:42:20.47 ID:RWYX9YW1
そんなに求められてるのかと、勘違いしそうになってしまうじゃないか―――

「…くぅ…も、う、出す…ぞ…っ!」

内側からせり上がるものが一気に身体を貫いて、頭のてっぺんまで来た時―――

「…あ、ぁああ――――!!」

私の中の上田さんから一際熱いものを放たれ、お互いほぼ同じくして果てた。





「………上田さん」
「ん…?」
「そろそろ…離して欲しいんですけど」
少し息が整った頃、上田さんは私を抱きかかえたまま、私の肩に顔をうずめていた。

「まだいいじゃないか」
「というか…結局、TV途中から見られなかったし」
「………」
「いいから早く抜け!このタコ!」

上田は半ば渋々私をかかえた手を緩めたので、私はゆっくりと腰を浮かせ、抜こうと試みた。


「んぅっ…」

胎内から熱い楔が引き抜かれる感覚に、ぶるりと小さく震える。
半分程引き抜いた時、上田が私のセーターを下着ごと捲り上げ、視界を奪った。

「うにゃーっ!何すんだ!おい、上田!」
「悪いな、YOU」

自分のセーターと格闘し、身を捩らせる。

「ちょっ…!また、中、ピクンって…」
「おおぅ…そんなに動かすんじゃない」

上田は私の視界を奪った服を全て剥ぎ取ると、しっかりと腰をつかんでぐるりと反転させ、向かい合わせの状態にさせる。

「冗談、です…よね…?」
「どうせなら、このままあと2、3回挑戦しようじゃないか」
「ば、バカっ…!せめて、付けてしないと…!」
「大丈夫だ。YOUのバイオリズムは熟知して、妊娠し難い日を選んでるし…それでも万が一の場合は、責任は取らせてもらうと、YOUのお母さんに確認済みだ」

きっぱりと言いきった上田に、思わず意識が遠のきかける。どちらにしても、なんてことを…

「…あとで、腹いっぱい寿司食わせてやる」
「……トクウエ以外認めませんよ」
「任せろ。俺は生まれてからずっと、約束は破ったことはない」

もう突っ込むのも疲れて、上田さんの首に腕を回したのだった―――


※※※※※※※

以上です。
また劇場版や新作SPでスレが盛り上がってくれることを祈って。
121. 名無しさん@ピンキー 2014/01/22(水) 09:33:44.24 ID:wjww2B0a
映画のラスト見て滾ったにも拘らずエロなしごめん。
上田×山田




得意満面に手品を披露する自称霊能力者の女を見詰め、上田は涙腺が緩むのを自覚した。
一年間ずっと、片時も忘れることは無かった。
言いたいことはたくさんあるのに何も言葉が出てこない。
十五年前やって見せたのと全く同じ手品を披露し終えた彼女は、至極優雅に微笑んで――上田にそっと手を差し出した。
「……」
必死に我慢していた涙が上田の目の端からぽろっと零れる。
それを見た奈緒子が少し怪訝な顔をするが、上田はそれに気付く余裕がなかった。
恐る恐る手を伸ばし、差し出された華奢な手のひらにそっと己の手を重ねる。
触れたら消えてしまうかも知れない。
これは俺の願望が創りだした幻かもしれない。
そんな懸念が頭の片隅に浮かんだが、上田の手は奈緒子の手をすり抜けたりはしなかった。
触れることの出来る、質量を持った実体が確かにそこにあった。

幽霊でもいい、もう一度会いたいと思っていた女が、生きて自分の目の前にいる。

――もう我慢など出来なかった。
上田の手の中にすっぽり収まる小さな手、それをしっかりと握りしめ、立ち上がる。
「山田……山田ッ!」
奈緒子の驚いた顔を間近に見ながら、そのまま抱きしめようと肩に腕を回し……机にそれを阻まれる。
派手な音を立てて激突した机を邪魔そうに迂回した上田は、山田の正面に立つとその顔を改めて眺めた。
長い黒髪。色の白い肌。どこか硬質な印象の顔立ち。
「あ、あの……お金……、賞金……」
がめつい性格も変わっていない。一年ぶりの再会だというのに。
――まったく、この女は。
あまりにも普段通りの奈緒子に、知らず上田の唇は綻ぶ。
「賭けはYOUの勝ちだ。
  寿司でも餃子でも、すき焼きでもなんでも好きな物を食わせてやる」
言いながら、そっと奈緒子の頬に触れる。
「え、あ、いや、そのっ、すっすっ寿司っ寿司寿司餃子!?」
長身を屈め、顔を近付ける上田に奈緒子が慌てる。
意味不明に寿司と餃子を連呼しながら逃げようとする奈緒子を捕まえ、強く抱きしめる。
「山田」
名前を呼ぶと腕の中の奈緒子が大人しくなった。
「……おかえり」
奈緒子の耳元で上田が囁く。万感の思いを込めて。
抱きしめられた奈緒子はもぞもぞと身じろぎし、上目遣いに上田を見やる。
そして小さな声で「……ただい、ま?」と応えた。

      ***

一方その時、研究室の扉の外で。

「……なんや、そのまま一気にいかんかい!」
扉の隙間に張り付いて覗きをしながら矢部が悪態をつく。
その背後で石原が秋葉を羽交い締めにしている。
「兄ィ、わしも見たいよ〜」
「山田奈緒子萌へ〜……げふっ。
  あの初代もう乱入しようとしないので手を緩めて下さ……ぐほっ、がくっ」
擬音付きで気絶する秋葉。その手には『実は記憶喪失でした!ドッキリ大成功!』の看板が握られてたとかなんとか。
123. 約束 1/2 2014/01/23(木) 15:36:55.46 ID:JBFRM2ee
便乗して映画ネタ
本スレとか見てたら上田モノローグだけでエロなし。

〜〜〜〜〜〜〜

あの一連の事件から、3か月が過ぎた。

あの後、自分がどうやって帰国してきたのか、その記憶が曖昧ではっきりしない。

多忙な日々の中、大変気が重かったが、里見さんへの報告を済ませ、気付いたらあのアパートの前にいた。


―――もしかしたら、すれ違いに帰って来ているかも知れないと、我ながら非科学的な事を思いながら。

だがしかし、当然部屋の主はいつ行っても戻ってくる気配はなかった。



胸の貧しい、いやしくも根性がねじ曲がった食い意地の張った欲深い女が、俺の前から姿を消した。

たったそれだけの事だ。

むしろ体よく厄介者払いが出来たと、この先社会的義務として付き合わなくても良くなったことを、両手を上げて万歳三唱し、赤飯を炊き、尾頭付き鯛を焼いて祝うほど喜ぶべき事なのだ。


なのに何故、



―――何故、こんなにも。



多忙な日々の合間、時々あのアパートを訪れては一人、茶をすする。
たまたま、渡航前に山田がいつものように家賃滞納していた為、それならと寛大かつ偉大な俺は前もって、大家さんに家賃を1年分まとめて払っていた。単純な厚意だ。

ただ、支払いがうっかり帰国後になってしまったのは、大家さんに対して大変すまないとは思ったが。
124. 約束 2/2 2014/01/23(木) 15:38:40.46 ID:JBFRM2ee
自分の部屋とは違う場所に身を置くのは、より明晰に脳細胞を活性化させる為、そう、必要性からなのだ。


部屋のインテリアをそのままに残しているのも、以前と変わらぬ環境が一番いいという事以外、特別何もない。
強いて挙げるならば、里見さんの母心に対する気遣いだ。

決して、未練などという感傷によるものからではない。


だが、世界はこの天才上田次郎を放っておいてはくれない。
日々問題は山積しているのだ。
それに対して多忙な中でもベストを尽くさなくてはいけないのだ!

ベストメガネドレッサー賞に科学と人類大賞やノーべル物理学賞etc…全ての賞と名のつくものも、俺の受賞を今や遅しと待っているのだから。


それに、俺は義理堅い男だ。



もしも………もしも、
一年後、彼女が本当にあの約束通り。



その時は…


その時こそ、俺は君に―――

<end>
以上です。
128. 名無しさん@ピンキー 2014/01/24(金) 19:37:28.55 ID:VApXqkDp
矢部視点  
映画ネタバレ注意  



爆音が収まったのを確認して外に出てみると、村人たちが神妙な顔で集まっていた。
静かに何かを告げ、ゆっくり立ち去っていく。

「…なんて言うてたんや?あいつら」

加賀美は目を伏せたまま、小さく呟いた。

「…『ボノイズンミは我々を守って死んだ』と」

死んだのは目の前で確認したというのに、今さら何を言いだすのか。
…いや。待て、――「今」の、ボノイズンミは

「…や…矢部さん…」

呆然としている秋葉を連れ、あの洞窟に向かった。
あの女が死ぬとは思えない。
けろっとした顔で帰ってきて、上田先生とじゃれ合っているに決まっている。

「…先生…」

洞窟の奥、上田先生は静かに岩をかき分け、土を掘り起こしていた。
血の滲んだ指先。
顔を伝う水滴は、汗か、それとも涙だったのか。
声を掛けることができなかった。
130. 名無しさん@ピンキー 2014/01/24(金) 19:42:09.15 ID:VApXqkDp
帰国後。
事件の報告や後処理で慌ただしい日々を過ごし、数週間ぶりに駄菓子屋に立ち寄った。

「……!!矢部くん。お帰りなさい」

警視総監の娘が、強ばった笑顔で俺を迎える。
総監や秋葉から何か聞いたのかもしれない。

「…土産、遅なったけど」
「…嬉しい。ありがとう…」

お喋りなこいつにしては珍しい沈黙が流れる。
何をするでもなくぼんやりと駄菓子を眺めていると、ガサガサと袋を破る音がした。

「矢部くん見て!どう?似合う?」

小さい体に似合わない、アンバランスなマスク。
思わず吹き出した。
――久しぶりに笑った。

「…矢部くん!」

小さな体が、ぎゅっとしがみついてくる。
マスクを外してやると、ぼろぼろと涙をこぼしていた。

「な、何や?どうした」
「…無理して笑わなくていいんだよ」
「…お前が笑かしたんやろ。子供が気ぃ遣うな、アホ」

頭を撫でてやりながら、ふと、棚の陰に落ちている一枚の紙に気付く。
床に屈んで覗き込むと、薄汚れたトランプだった。
以前あいつが来た時に落としていったのだろうか。

――山田。

山田。

「……山田。…山田…!」
「…矢部くん」

立ち上がれなくなった体を、小さな手がそっと撫でている。
あれから一度も口にできなかった名前を、ただひたすら呼び続けた。


145. 名無しさん@ピンキー 2014/01/26(日) 08:42:48.55 ID:w1HlKke1
秋葉視点
映画バレ注意  



温泉からの帰り道。
未来ちゃんが「パパに電話したら、記憶喪失の女の人の名前がわかったって」と慌てた様子で報告しに来た。

「…山田奈緒子さん、だって」

矢部さんは「よくある名前や」と言いながらも搭乗手続きを済ませ、
僕ももちろん、信じてはいけないと思いながら矢部さんについていった。

「…山田、奈緒子さん…?」
「…はい?」

矢部さんが「お前が見てこい」と頑なに言うので、仕方なく部屋を覗き込んでみた。
奇跡だ、と思った。
一目惚れした、大好きな人が再び目の前に。

涙が止まらなくて、
言葉にならなくて。

「…もう大丈夫ですよ。僕らは奈緒子さんの知り合いです」

戸惑った顔で頷く奈緒子さんは、まるで別人だった。
何も覚えていないのかと心配したけれど、話をするうちに、15年分の記憶を無くしていることがわかった。

「まあ確かに、昔のあいつは陰気やったな。アホやったけど」

その時は気がつかなかったけれど、
『今』の奈緒子さんにとって、矢部さんや上田先生より先に知り合ったのは僕なんだ。

「秋葉さん」

顔を見せると、奈緒子さんが僕の名前を呼び、少しだけほっとしたように笑う。
それだけで幸せだ。
矢部さんと相談して、奈緒子さんが見つかったことは上田先生にはまだ知らせていない。
でもきっとすぐに、二人は出会う。
その時奈緒子さんが笑っていてくれたら、僕は幸せだ。

おしまい
149. 月光1 2014/01/26(日) 14:26:49.41 ID:YPcCKbAa
月光が頭から離れないので書いた
反省はしていない
タイトル入れるのでバレが駄目な方は避けて下さい



「さよなら」

彼女の声を最後に聴いてから、随分時間が経った。
彼女は家族でも恋人でもなかったから、傍に居ない時間の方が、圧倒的に長い。
それは、彼の輝かしい人生の片隅に、何時の間にか紛れ込んでいた異物。
けれど、埋めようとすればする程、その空白に、潰されそうになる。

大学からの帰途、ひとり愛車を走らせる。
助手席に座る彼女の横顔を思い出す。
いつも変わり映えのしない、野暮ったい髪型と服装で、とても楽しそうとは言えない顔で。
振り払う様に頭を振り、カーラジオのスイッチに手を伸ばした。
先日受けた、『第31回人類と科学大賞・候補者に訊く』というインタビューが間も無く放送される筈だ。
スイッチを入れると、まだ番組は始まっていないらしい。
ピアノの旋律が流れ始めた。
何という歌手の歌だったか。懐かしい歌だと思った。
150. 月光2 2014/01/26(日) 14:31:54.27 ID:YPcCKbAa
───目的の村へ向う途中、彼の話に飽きたのか、彼女は無言でカーラジオのスイッチを入れた。
ピアノの旋律が流れ始める。
「あ。この歌」
「好きなのか」
「いや。聴いたことあるなって」
「時代劇しか観ないyouは知らなくても無理は無い。これは今流行りのドラマの」
「お前、ドラマとか観てるのか。意外だな」
「学生はこういう物が好きだからな。彼らとコミュニケーションを取るのも仕事の裡だ」
「へー」
「3歳でピアノを弾き熟しモーツァルトの再来と呼ばれた俺としては、こういうった音楽は……ってyou、何してる」
「何か食べ物ないか。腹減った」
「我慢しろ。鞄を漁るな!財布を出すな!カードを抜くな!」
彼女の頭を小突いた。
どうにも間の抜けた空気の車内に、場違いに切ない歌声が流れる───

彼女と出会った頃に流行った歌だ、と思い出す。
昔と呼べる程の歳月を伴った思い出。
けれど、彼女の記憶に伴うのは、生々しい喪失感。
痛みは、彼女を運命から攫えなかった、あの時の侭だ。
静かにピアノの旋律が流れる。
切なく、それでも強い歌声が結ぶ。

『こんな場所で どうやって 生きろというの』

いつか痛みさえ喪えば、その答が出るのだろうか。
審判の日が来る。

<了>
151. 名無しさん@ピンキー 2014/01/26(日) 19:40:09.89 ID:w1HlKke1
ほのぼの秋葉×奈緒子さんを書いてみた
映画より前のお話
季節は春です


春だ。
春はいいなあ。陽射しも気持ちいい。
捜査をサボっている矢部さんを探しがてら川辺をふらふら散歩していると、可憐な女性の姿が目に入った。
地面に這いつくばっている、あの美しい黒髪と清楚なロングスカートは!

「奈緒子さあああん!」
「うおっ、秋葉」
「はい秋葉原人です!捜し物ですか?手伝いますよ!」
「…これ」

手に握られていたのは、つくし。
そっか…つくし取ってたのかあ…。可憐だなあ。
可愛い。奈緒子さん可愛い!

「春らしいですねぇ」

タンポポとかも似合うんじゃないかなあー、と周囲を見渡していると、
奈緒子さんは誇らしげにビニール袋を抱えて見せてくれた。
つくし、大量すぎやしませんか、奈緒子さん。

「すごいだろ。佃煮にするんだ」
「食用!?」
「手間はかかるけどウマイから」
「へえ。僕、食べたことないんですよ」
「食べてみるか?」
「え!生で!?」

奈緒子さんの無茶ぶりになら応えてみせる…!!
つくしを口に含もうとしたところで、奈緒子さんが鞄からタッパーを取り出した。

「夕方まで粘ろうと思って弁当作ってきたから」

つくしの佃煮、卵焼き、おにぎり。
シンプルなお弁当。

「い、いいんですか」
「一口だけですよ」
「もちろん!もちろんです!いただきます」

奈緒子さんと二人きり。
奈緒子さんの手作りお弁当。
奈緒子さんの箸。
ああ、こんなに幸せでいいんだろうか。
152. 名無しさん@ピンキー 2014/01/26(日) 19:42:13.77 ID:w1HlKke1
「んん!美味しい!美味しいです、すごく。
奈緒子さん料理がお上手なんですねぇ」
「…卵焼きも食べていいぞ」

あれ。奈緒子さん、照れてますか?
可愛い!萌え…!

「はあ…幸せ。ごちそうさまでした」
「……秋葉っていい人なんだな」

えっ。
奈緒子さん、それは。
そのお言葉の真意は。

「上田みたいに文句ばっかり言いながらバクバク食べる奴とは違う」

ですよねー!
上田先生が基準ですよねー!

「あんなにあったら3日はもつと思ってたのに、昨日で全部なくなって。
『家賃を払ってほしければ、次は卵とじと天ぷらも作れ』って言うし」

そうか、上田先生は奈緒子さんの手作り料理を日常的に食べているのか。
そしてリクエストまで…!
上田先生め…!!

「こんなに料理上手で優しい奈緒子さんに酷いことを…。
じゃあ、僕が昨日の分もたくさん取ってあげます。
奈緒子さんがおなかいっぱい食べられるように!」

せめて、僕にしかできないことをしよう。
上田先生や矢部さんにはきっとできない、「素直に褒める」「すすんで協力する」。
ほら、奈緒子さんは嬉しそうに笑ってくれる。

「お前、やっぱりいいやつだ」

萌えー!

おしまい
166. 名無しさん@ピンキー 2014/02/04(火) 10:53:16.57 ID:EprMDuVQ
矢部山?上山?エロではないです。(たぶん)超ss


山田は綺麗になった。示し合わせているわけではないのに定期的に山田はワシの前に現れる。
色気というものは皆無だが、なぜか人を惹きつけるものがある。(仕事以外で)

そんな山田といつからか体の関係を持つようになった。きっかけは本当に些細な言い合いからだった。
だが抱いても抱いても心が手に入った気がしない。それがまたワシを煽った。
いつまでも少女のような山田が欲しくて仕方がなかった。

それはきっとあのセンセも同じやったんやろう。







続きは要望があれば書きます。初ssなもんですからいろいろと間違ってたり読みにくいと思いますがご了承ください。
168. 名無しさん@ピンキー 2014/02/04(火) 12:33:48.11 ID:EprMDuVQ
続きの要望が出たので書きます。  trickのcpでは一番矢部山が好き。もっとエロパロ増えろー。





「これ以上私の助手にちょっかいを出すのはやめてもらえませんか。」

センセの目はいつもより鋭く殺気のようなものさえ伝わってくる。
センセは、高学歴、高身長、高収入と3kとやらをそろえているのにも関わらず一回りも年下の山田に骨抜きにされている。
こんな愚かなことはないが、相手が山田なら仕方がないと思う。
アイツはそれくらい魅力的な女になった。

「わかってるとは思いますが、山田は私のモノですよ。」
「一回りも年下の女によくそこまで夢中になれますねぇ。センセぐらいものすごいお方ならもっとそれ相応な女のほうがお似合いになると思いますけど。世間的にも。」
自分でも痛いとこついたなと思ったがセンセは顔色一つ変えなかった。
ワシの方が山田には合っとる。
なのに、いつまで山田を手放そうとしないセンセに正直イラついていた。



ちょっと休憩。※このお話に山田は出ません。
169. 名無しさん@ピンキー 2014/02/04(火) 12:50:18.04 ID:EprMDuVQ
「何を言われようが構いませんよ。山田は渡しませんから。」
「でしたら縛りつけておいたらええやないですか。そしたらこんな風にワシにも忠告せんでええし。」

「子供ができたんですよ。」
「・・・は・・・?」

一瞬何を言われたのか理解できなかった。
ようやく理解した時にはセンセは勝ち誇った顔で笑っていた。

「わかりましたか。これでもう山田と矢部さんの関係は終わりなんですよ。」

そういうことで、とセンセはワシの肩を叩いて歩きだした。
子供ができたら流石にワシも引き下がると思ったのだろうか。山田とその子の幸せを思って身を引くと。
そんなわけないのに。

「・・どっちの子でしょうねぇ。」

センセの歩みはピタリと止まった。
ゆっくりと振り返るセンセの目からはさっきよりも数倍強い殺気が出ていた。


「ワシもいっぱい出してしもうたし。でも山田が望んだことなんで仕方がないですよねぇ。」
「・・・・・矢部さん・・・・。」
「どっちの子かは生まれてからのお楽しみですねぇ。」

ぐっと眉間にシワを寄せたセンセの肩を、今度はワシが叩いてその場を後にした。
山田の腹にガキがいる。
どちらの子かはわからないがガキができたのだ。

センセはやっぱり甘い。
ガキができたから身を引くなんて、ワシはそんなええ人やない。

「さぁーて、これからどうしましょか・・・。」

ハッピーエンドになんてさせやしない。
182. 名無しさん@ピンキー 2014/02/05(水) 02:51:33.81 ID:J+g9iOD5
雪降ってるの見て思いついたお話  
矢部×奈緒子
映画より後の設定でもいいんだけどたぶん前かな


最近は偶然出先で会うことが多かったが、久しぶりに先生の大学に来ている。
研究室の扉を開くと、案の定こいつの姿があった。

「あ。矢部だ」
「おう。先生は」
「まだ講義中ですよ。それより矢部さん、こっち!見てください」
「何やねん」

急かされて窓際に向かう。

…あ。雪や。いつの間に。

山田はうっとりとした顔で窓の外を眺めている。
少しだけ女らしく見える横顔と、窓の外を交互に見つめた。
こいつは時々、子供のように見える。
こうしてはしゃいだり笑ったりしている時は、
なんちゅうか、意外と……可愛い―――

「ほら、こんなところに焼き芋屋が来てる!珍しい!」
「…お前なあ!」

脱力して山田の額を叩いた。
俺の財布を狙っているのか、目がキラキラ輝いている。

「お前、まさかワシに買いに行けっちゅうんか」
「寒いから走ってこい。今日はバイトの給料が入ったから、矢部にも一本おごってやる」
「…なんやて?」

山田は自慢げに千円札を差し出す。
丹念に透かしを調べた。本物のようだ。

こいつの食欲はよく知っている。
金がないことも、人に優しくするなんてないということもよく知っている。
調子が狂う。
こいつは、時々ようわからん。

「これで貸しひとつ。今度なんでも言うこと聞け」
「ああ?ワシがお前に今まで何百も貸しとるっちゅうんじゃボケ!ほら行くで」
「待て!コートを着させろ」
「うるさいわ、走れ!」
「芋ー!」

無邪気なのか、強欲なのか、素直なのか、あまのじゃくなのか。
やっぱりこいつはおかしい奴で、やっぱり可愛いのかもしれん。

おしまい
184. 名無しさん@ピンキー 2014/02/05(水) 19:25:54.94 ID:J+g9iOD5
雪シリーズ  
上田×奈緒子  

雪が降った。
次郎号を大学に置いたまま、山田のアパートに向かう。
お手製の土産を作りながら。

「上田…何しにきた」
「ほーら、雪だるまだよ」

手のひらサイズの小さな雪だるまを、山田は訝しげに眺めていた。
そして俺の器用さを褒めたたえようともせず、たらふく飯をおごらせた。
感謝の言葉もない。山田はそういう奴だ。
玄関先に置いておいた雪だるまはいつの間にか見当たらなかった。
まさか食べてしまったのだろうか…。

あれから1週間。
心優しい俺は、また山田の家を訪れた。
前日、食べるものを寄越せと大学に乗り込んできたからだ。
恵んでやった食糧は残っているのかと、冷蔵庫を確認する。

「……you、これは」
「わあっ!勝手にあけるな!!」

狭い冷凍庫の中、小皿に乗せられている小さな雪だるま。
この艶やかな丸い雪玉、細かく細工された顔。
間違いなく俺が作った物だ。

「……か、かき氷にしてみようと思って。
入れっぱなしにして忘れてただけです」
「それは違うな。昨日youに恵んでやった冷凍餃子が雪だるまの奥に入っている。
つまりyouは一度雪だるまを外に出し、餃子を入れ、もう一度大事に雪だるまを」
「帰れ馬鹿上田!捨てる、捨てますこんなの」

山田は俺が掲げた雪だるまを奪い、俺を睨みつける。
ふ、涙目じゃないかyou。
恥じらうというのはいいことだ。

「捨てろ捨てろ。そして…ほら、これを飾るといい」
185. 名無しさん@ピンキー 2014/02/05(水) 19:26:54.65 ID:J+g9iOD5
小さな袋を山田に差し出す。
山田は袋の匂いをかぎ、座布団に座ると、袋を乱暴に破いた。

「…スノードーム?」
「好きだろう、こういう細々した飾りとか。雑貨とか」
「好きですよ。好きですけど。なんなんですか、このろくでもないデザイン」

特注品だ。
次郎号と俺の精巧なフィギュアに雪が舞う、芸術的なスノードーム。

「よくできてるだろ」
「よくできてるからろくでもないデザインだと言ったんです」

そう言いながらも、振り回しては雪が舞うのを眺めている。
気に入ったか。素直じゃないやつめ。

「はっはっは。どういたしまして」
「…私、まだありがとうって言ってませんけど」
「…『まだ』?」
「っ!!……ありがとう、ございます」

山田は悔しそうに唇を噛む。

机の隅の雪だるまは、まだ溶けていない。
山田の部屋は寒いからな。
俺は心優しい人間だ。
山田がスノードームに夢中になっている間に、もう一度冷凍庫にしまってやるとしよう。

おしまい
192. ややこしい事 1/3 2014/02/08(土) 11:59:46.26 ID:+/+o/2Sn
まーた、ややこしい事件に巻き込まれそうやなぁ。
そう感じると、自然と大学へ、上田の元へと足が向かう。山田も居るやろか、そんなことも脳裏にかすめる。
「何期待しとんねん」
会っても喧嘩ばかり、だいたいあいつのせいで、何度危ない目にあったことか。それでも、奈緒子のことがやけにちらつくのは何故だろう。
「嫌よ嫌よも好きのうち、ってか?」
あー、阿呆らし。1人悪態をつきながら、上田の個人部屋のドアに手をかける。
「センセーェ、ご機嫌うるわしゅっ、って何しとんねん山田」
「へっ?!やややや、矢部さんっ?!」
ドアを開けると、そこには今まさに思っていた女性がいた。
「まーっ、どこにでも現れよってコイツは」
毛布を身体に巻きつけ、やけに慌てふためいている。
「や、矢部、いいか、これ以上こっちへ来たら、来たら死ぬぞ」
「なに阿呆なこと言うとんねん」
「き、来ちゃだめ!何にもいないわ!なんにもいないったら!」
毛布に隠れるようにもぞもぞしている。頭隠して尻隠せず、悲しいことに生足が毛布からはみ出ている。
「ったく、何隠しとんねん。お前に隠すもんなんかあるかーい」
ずかずかと踏みより、怯えた奈緒子の毛布を奪い取ろうとした時、何かが側に落ちているのを矢部は拾い上げた。
「なんやこ...うわぁっ」
「あっ、」
拾い上げるとほぼ同時にそれが何か気づき、床に投げた。
「なんでこんな所にこんなモンが落ちてああぁお前らまさかここで」
「うー、上田のやつ。だから処理はきちんとしろとあれほど......!」
落ちていたのは、使用済みのスキンだった。
「うえー、触ってもた、触ってもた!えんがちょきった!と......あっ、ということはまさか山田お前、その毛布の下」
「そ、そうですよ。だから早く出て行ってください。あ、でも一応下着だけはつけていますよ」
どうやら隠していたのは、奈緒子自身であったようだ。
「大学でなんちゅーことをしとんのや」
「しょうがないじゃないですか!だって上田さんがトクウエおごってやるっていうから仕方なくここまで来て」
「なんや呆れた、寿司につられたんかいな!」
「そ、そんなんじゃないですけど......食べ終わったら、その、なんか、そういう雰囲気になって」
「どんな雰囲気じゃーい!」
「どんなって、そんなのどうでもいいじゃないですか。着替えちゃいますから、出て行ってください」
食って、ヤって、講義ってどないな身体しとんねん。その時、矢部の中で鎌首がもたげた。
「あー、上田センセはどこにおるんや?」
「上田先生なら授業で当分帰ってきませんよ。その後補講もあるらしくて。それが解ったならもういいでしょう、早く出て行ってください」
目の前には、あられもないであろう姿の山田が居る。そして、上田もまだ当面戻ってこないという。天使と悪魔がささやく。
「えぇい、辛抱ならん」
悪魔の圧勝劇である。
193. ややこしい事 2/3 2014/02/08(土) 12:00:39.69 ID:+/+o/2Sn
毛布は剥ぎ取られ、悲鳴を出されないようにか、口で口を塞がれた。
「んっ?!」
突然の出来事に驚き、目を見開く奈緒子。必死に抵抗するものの、力強く押さえつけられそう簡単には抗うことはできなかった。徐々に舌が侵入してくる。
「ん~っ、んっ~!!!」
息が苦しい。必死の抵抗も虚しく、こじ開けられ、舌を舌で絡めとられた。噛みついてやろうと試みるものの、何故か矢部だと思うと出来ない。それでも、感じている自分が少し嫌だった。
「はぁ、はぁっ......なんてことをするんですか、矢部さん」
息も絶え絶え、今度は首筋を舐ってくる。
「ええやないか、もう」
よくはない。一体どうなっているのだ。
「なんや、下着ってシャツとパンツだけやないか」
面倒くさくなって、ブラジャーは後でいいやと思い、シャツとパンツだけを着用した自分がとても恨めしい。薄いシャツ越しに、乳首をつねられた。
「にゃっ......」
「感じる時もそんな言葉なんかいな」
ニヤニヤと意地が悪く見つめてくる。コリコリと指でなじったり、あま噛みをしたりと、だんだんと奈緒子の余裕は奪われていく。他の所は触れない、触れてくれない。頭の奥がじーんとしてきた。
「苦しそうやな、それとも、気持ちええんか?」
「はぁっ、ふにゅぅ、そんなわけ、あるか」
あれ? 違う、ちがうの。
「そんな顔で言うても、説得力ないで」
あぁ、じれったい。
「直接触ったら、もっと気持ちええかもなぁ」
布越しじゃなくて、もっと。
「こんな姿を上田センセが見たら、どんな反応をするやろ」
もっと、もっと、もっと、
「もっと、気持ちよくさせてください......」
わたしは
194. ややこしい事 3/3の1 2014/02/08(土) 12:04:23.92 ID:+/+o/2Sn
あいつが堕ちた。
奈緒子は矢部の手をとり、自分のシャツの下へと拱いた。
「仰せのとおりに」
シャツをめくりあげ、思いきりくらいついた。
「あぁぁっ」
奈緒子の吐息がもれる。いつの間にこんな艶かしい女になったんや。舐り、いじり、あま噛みし、奈緒子の反応を楽しむ。
「だめです、だめ、おかしくなる」
「こっちでこんなんなるなんてなぁ、下なんて、どうなっとんのやろ」
パンツの上から触っただけで、ぐちょぐちょなのがわかる。パンツをずりおろして、ぬらぬらと光る秘部をひと撫でする。
「こんなにして、センセーでもワシでも誰でもええんか?」
奈緒子は違うと必死に首を横にふる。こんな美しい表情を、センセはいつも見てんのかいな。妬けるわー。
「なァ、そろそろこっちも我慢の限界やねんけど」
キスをすると、奈緒子は小さくうなずいた。
手を引き、上田の机まで連れていく。 いつも上田が使っている椅子に矢部が座り、その上に奈緒子を座らせる。
「いつもセンセはゴムつけとったんか?」
コクリと頷く。じゃ、ワシはつけへんで。矢部は奈緒子の中に熱り勃ったものを入れ、ゆっくりと動きはじめた。
なにがどうなろうと知ったこっちゃない。奈緒子はもうワシのもんや。
「ナマは始めてかいな」
「はじ、めて、ですっ」
もう、元には戻れない。
「んんっ、あっ、あっ、はぁあっ」
ずちゅ、ずちゅ、という水音と喘ぎ声が響く。柔らかな粘膜が、矢部のものを締め付ける。お互い、一心不乱に快感を求め合う。
ずっとこうしてやりたかった。山田が上田と懇ろなのはうすうす気が付いてはいたが、自分が出るような幕ではないとも悟っていた。
それでも、いつも顔をあわせる度に小憎らしいだけでなく、一生この女を愛してしまうのかもしれないと怖かった。自分はもっと、適当に、楽に、生きていただけのはずなのに。
「中に、出させてもらうわ」
2人は、絶頂に達した。一瞬の快楽に見えた奈緒子の姿は、蠱惑的だった。
195. ややこしい事 3/3の2 2014/02/08(土) 12:06:04.97 ID:+/+o/2Sn
矢部はベルトとズボンをなおし、奈緒子は洋服に着替えた。金属的な音と、衣擦れの音のみの世界だった。
「私も、好きだったのかもしれませんね、矢部さんのことも」
「何言うとんねん、ただちょっと溜まっとっただけや。第一、矢部さんのことも、ってなんやねんな」
再び静寂が広がる。奈緒子は着替え終わり、ドアへと向かう。
「今度は、矢部さんも全部脱いでくださいね」
それじゃあ、また。と、矢部を残して奈緒子は出て行った。
おい、と投げかけたが、閉じられたドアが虚しく返すだけであった。


終わり
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最終更新:2014年03月05日 22:36