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夏の夕暮れ、石川県のとある砂浜。 赤く染まった空には、カモメたちがゆっくりと舞っている。 こなた「お父さん、あれはカモメじゃなくて海猫だよ。鳴き声が猫みたいだもん」 冷静な突っ込みをありがとう娘よ。 オレンジ色に染まった海と、空を行き交うカ…海猫たちを眺めながら、俺ことそうじろうとこなたは、 ふらふらと砂浜を歩いていた。 風は砂浜から沖へ優しく吹いていて、時々二人の髪をなびかせた。 歩きながら、そうじろうは20年近く前に、こなたによく似た女性とこの砂浜に来た時のことを思い出していた。 180センチの長身の男と、140数センチの小柄な女性。 端から見るとかなり不釣り合いな、一見すると親子にも見えかねない、印象的なカップルだった。 子供のようにはしゃぐ長身の男を見つめる小柄な女性の笑顔は、心底嬉しそうだった。 夕暮れの砂浜を二人で手を繋ぎながら歩いて、海鳥たちに挨拶をした。 夕日で紅く染まった空の下で口付けを交わした。 帰りの電車の中で、小柄な女性は、遊び疲れて男に寄り添いながら眠った。 夢の中でも彼女は男と一緒だったのか、その顔は優しい微笑みが浮かんでいた。 ゆっくりと歩みを進めるそうじろうの後ろを、こなたがてくてくと付いていく。 つと、その足が止まり、海の方へ向きを変える。 こなたもつられて海へと向き直った。 こなた「どうしたの?」 そうじろう「ここはな、昔かなたと一緒に来た海なんだ」 こなた「デート?」 そうじろう「まあな。で、これはあいつの遺言だ」 そう言って、そうじろうは鞄から小瓶を取出し、瓶の蓋を開けた。中には灰が詰まっていた。 こなた「それは…お母さんの」 そうじろう「あいつが逝く前…もし私が死んでしまったら、       二人で眺めたこの海に、私の灰をまいて、私を海へと返して欲しいって言われて」 こなた「そうなんだ…でも何で今日を選んだの?」 そうじろう「こなたが大きくなって、一緒に行きたかったのがひとつ。        もうひとつは、今日はかなたの誕生日なんだ」 そう言って、そうじろうは瓶を倒し、灰を手の上に積もらせ、海へ向かう風に乗せて振りまいた。 それを無言で見つめるこなた。 そうじろう「ありがとう、かなた…」 そうじろうはそう呟きながら、夕暮れの海へと舞うかなたの灰を、いつまでも見つめていた。

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