朝起きたら、そこは不思議な世界でした。
魚が空を飛び、小鳥が海を泳いでいる、時計だって逆回り、そんな世界です。
草むらの中で、寝惚け眼の私に声がかけられました。
「ほら!遅れちゃうわよ!早く起きて!…ああ!こなたんとのランデブーが!」
巫女服に身を包んだうさぎさんでした。
「え…遅れるって」
「ほら!早く!早く!」
「あっ、あの」
言葉より先に手が動く、まさにそれで、うさぎさんは私の手を掴んで走り出してしまいました。
「ど、どこへ行くんですか!?」
「聖地よ!聖地!」
聖地…わかりません。
今迄晴れていた空に、突然雲がかかってきました。まるで嵐でも来そうな…
ついに空が鳴り出しました。雷です。
「きゃっ!?」
雷は苦手です。足がすくんでしゃがみこんでしまいました。
「ちょっと、大丈夫?」
なかなかやんでくれません。
「す、すいません…」
うさぎさんが手をかけてくれたその時、どこからか声が聞こえてきました。
「ゆたかさんをみwiki空間に引きずり込めー!!」
空です。空に何か得体の知れない顔?が浮かんでいます。
「あ、やばいわ」
うさぎさんが叫びます。でも、どうしようもなくて…
天と地が逆転してる?私の体がぐるぐる回ってる?
「きゃ!?」
どこか別の場所に私はいました。うさぎさんはいません。
「ここ…どこ?」
不安がる私の前に、立て看板がありました。
『保守はじめました。みwiki空間は光と熱の渦巻く楽しい空間です。あなたに安らぎの一時を』
みwiki空間、今流行りのリラクゼーション空間?なのかな?
やっぱりうさぎさんは見当たりません。
とぼとぼ歩いていると、遊園地みたいな物が見付かりました。
魚頭の人や下半身が蛸みたいな人、色々な人が楽しそうに遊んでいます。
「わぁ!」
私も遊びたい、そう思って大好きなメリーゴーランドへ向かいました。
並んで待っていると、馬に乗ったリボンの子と目があってしまいました。
その子の手には、何故かモザイクがかけられていました。
最近事件があったので、多分自粛なんだと思います。あ、危ないよ…。あ、降りて来ました。
「あはははは、あなたも倒しにいくの?」
「倒し…何をですか?」
「あれ?違うの?これでね?えい!てりゃ!って。えへへへへ」
ぎらつくそれを女の子は振り回します。
「あ、危ないですよ~」
「大丈夫だよ♪私の制御はかんぺk…あ…」
魚の頭が空を飛びました。
「えへへへへ…失敗失敗♪」
どこからか刺身!だとか寿司!だとか、そんな声が聞こえてきます。
「まぁ、色々あるよ。色々ね。でもそんなの(ry 大丈夫大丈夫♪」
大丈夫…
「あ…大丈夫じゃないかも…」
女の子は赤くてモザイクのかかったそれを私に手渡すと、一目散に逃げてしまいました。
「あ、あの…」
「逮捕だ!」
え!?
振り向くと、眼鏡をかけた女の人が立っていました。
なめんなよ!と書かれた免許証?を私に見せ、私をじろじろ見ています。
「あなた、やったわね」
やった…
「ち、違います!これはさっき渡されて!」
「こんな小さな子が…お姉さんびっくりだ!でもダメ!捕縛!」
その人の腕に巻かれた鎖が、蛇の様に私を絡めます。
「星雲鎖からは逃げられないわよ!」
捕まってしまいました。これから私、どうなってしまうのでしょうか?
女の人に連れられて、私は高級住宅街らしき所を進みます。
目的地はそこの一角にありました。大きな家…
家の中はとても広くて、どこかで見た事のある部屋に案内されてしまいました。
これは…そうだ、テレビで見た事ある!裁判所だ!
「裁きを申し渡します!小早川ゆたか被告、懲役6ヶ月!」
え!?いきなり!?まだ何も…そもそも私、何もしてないのに…冤罪、冤罪ですよ~!
「…そうはさせない…」
扉がばたんと開くと、女の子が立っていました。あれ?あの子、もしかして…
「…ゆたかは私が…護る…」
女の子はマントを翻し、私の元へやってきました。
「…もう大丈夫だから…ゆたか…」
「ぐはっ!?きたっス!きたっスよー!百合!百合!」
「オウ!ジャパニーズオヤクソクネ!」
傍聴席から声が聞こえます。
「ゆきちゃん…みつけた…みつけたよ」
また扉から人が入って来ました。さっきのリボンの女の子です。
体中を真っ赤にして、さっきより大きなモザイクを持っています。
「…ゆたか…ここにいちゃ…駄目だ…」
あ、目の前が真っ暗になって、周りから叫び声、悲鳴の様なものが聞こえてきます。
マントが壁になって何も見えません。ホラー映画でも始まったのかな?
「…行こう…ゆたか…」
え?わ?その人に抱き抱えられて?視界がはっきりする頃には、家の外にいました。
家の中ならはまだ悲鳴が聞こえてきます。よっぽど怖いんだ…
「…ゆたか…こっち…」
「あ、うん」
手招きされて、向かいの家に入ります。
あれ?あそこにいるの…
道端で、最初に出会ったうさぎさんを見つけました。
抱き枕をかかえてごろごろしているみたい。邪魔しちゃ悪いよね。
「お邪魔します」
女の子の部屋はどこか見覚えあって、なんだか居心地が良くて、急に眠気が…
私は…うとうとして…ベッドに…倒れ込んで………
「…ここは終着駅…そろそろ起きなきゃ…」
……ピピピピ!ピピピピ!
「…きて!…起きて!ゆーちゃん!」
はっ!?
「ゆーちゃん!遅れちゃうよ!?早く起きて!」
私の目の前には、青い髪のきつねさんがいました。
どこからか声が聞こえます。
「ミコ酢空間に引きずり込め~♪」
あれ?あれれれれ???
~ふしぎな旅はまだ続く~
(おわり)
最終更新:2007年10月16日 19:03