「BLAME!」あと語り

  今回取り上げた「BLAME!」という作品は、大変に複雑な設定を持っていて、
 なおかつその設定を意図的な情報開示の制限によってよりわかりづらく描写している。
 画面も全体的に暗く、内容的にも衰退してゆく人類を救うために
 果てしない孤独な戦いを続ける男(しかも彼は人間じゃない!)の物語という暗めな内容になっている。

  正直に言ってあまり親しみやすい作品ではないのだ。
 わたし個人としては今までのマンガ語りで取り上げた作品の中でも1,2を争うほど好きな作品であるのだが、
 万人受けする作品とは言いがたい。

  自分は好きだと思っても、安易に他人に勧める事の出来ない趣味というのはどの分野でもあるものだ。
 そして、そんな趣味を持っている人間というのは、それを共有する仲間を強く欲するものだ。
 今回の「BLAME!」という作品はまさにそれだったと言えよう。

 そして、今回のマンガ語りにはそんな「BLAME!」が好きな人々が集まったのだ。

  Twitterタイムラインが大変に盛り上がっていた。
 Togetterにまとめ記事がアップされているので、是非観ていただきたい。

  Twitterマンガ語りがUstream配信へと方向展開をしてから、TwitterのTLが寂しくなってしまった事を、
 私もスタッフもずっと気にしていた。
 主催者である私の考察と、
 Twitterで興味を持ってくれた沢山の人々の考察が合わさる事で新しい発見や化学変化が生まれるという事が、
 Twitterマンガ語りの魅力のひとつであり、私自信の大きな楽しみのひとつだったので、
 どうにかしてTLを盛り上げたいと思いながら1年間、毎月のマンガ語りをやってきたのだ。

  今回のマンガ語りでは、多くの人が作品についての考察や、私のしゃべりに対する反応を返してくれたので、
 本当に楽しかった。
 イベント終了後には参加者の方々から沢山の喜びのメッセージを頂けて本当に嬉しかった。

 参加者の皆さん、本当にありがとう。


  さて、今回私は作品の魅力を「画面(見た目)」「設定」「キャラクター」と3つの要素に分けて語り、
 その後で、この作品から私が感じた「思想的な魅力」を語る形で締めくくった。
 くわしくはYouTube(低画質)とUstream(高画質)にアーカイブがアップされているので是非観ていただきたい。

 しかしながら、それぞれの要素において語り尽くせなかったポイントが本当にたくさんあったのである。

  まずは、画面的な魅力の行ではバトルシーンの魅力にあまり触れられなかった。
 個人的には、東亜重工のメインAIを攻撃しようとサナカンの放った「重力子放射線」と、
それを阻止しようとキリイが放った「重力子放射線」が交差するシーンがお気に入りで、
 ものすごい距離離れた所にいる2人の位置関係を図解で描写するという描き方にとてもテンションが上がった。
 その他にも「タイマン」を重視した戦闘描写や、圧倒的な能力差の戦闘シーン、
 キリイの本当は結構弱い(やられるシーンが多い)所などなど…
 話したい事は山のようにあったのだが、時間の関係でやむなく削らざるを得なかった。

  設定的な魅力に関しても、
 「統治局」「セーフガード」「珪素生物」「東亜重工」「生電社」と魅力的な勢力が数多く登場したのだが、
 それぞれの持っている性質と関係性を説明する所までが精一杯だった。
 「統治局」にはネットスフィアと基底現実の両方を統治するため、
 自分たちに与えられた権限と制限の隙を縫って本来の目的を達成しようとする事が出来るほどの高い知能が備わっていた事。
 「セーフガード」は犯罪者を確実に排除するためにシンプルだが強いプログラムが施されていて、
 それは実はキリイの絶望的な状況にも決して折れない「強い心」の元になっているのでは?という考察。
 「珪素生物」は実は今作の中では一番感情豊かな「生き物」として描かれている事。
 「東亜重工」という接続企業の正体について、参加者の意見をもっと聞きたかった事。
 いろいろと触れられなかった事があった…

  登場するキャラクターの魅力に対しても、
 それぞれのキャラクターが本当に魅力的に描かれていたのにも関わらず、あまり深く触れる事が出来なかった。
 シボについてもっと語って欲しかったという参加者のツイートを読んで胸を痛めたものだ。

  今回のマンガ語りはまとめるのに本当に苦労した。
 限りなく語りたい事が溢れてくる、そんな作品だった。

  セリフの少ない画面の中に、無限の情報がつまっていて、作者の意図が随所に散りばめられている。
 情報の開示を制限する事によって、読者は与えられた情報を駆使して作品の裏の裏まで理解しようと思考を巡らせる。
 そんな作品との対話が今作の最大の魅力であり、
 「深読みしよう」というモチベーションが上がる様なトリガーが沢山用意されている、本当に魅力的な作品だと感じた。

  語り尽くせなかったトピックはまたどこかで披露する事があるかもしれない。
 今回のマンガ語りで「BLAME!」という作品に出会えたお陰で、
 私はすっかり弐瓶勉のファンになった。

  また弐瓶勉作品を取り上げる事があるだろう。
 具体的には「シドニアの騎士」が完結するタイミングで取り上げたいとスタッフと相談している。

  また弐瓶勉作品の魅力について熱く語り合いたい。
 乞うご期待。

                                                            2013/7/5 by utarou

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最終更新:2013年07月06日 02:23