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歩くような速さで

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歩くような速さで ◆b8v2QbKrCM



西側の窓から差す光は、毒々しいまでの赤色であった。
会場を貫通する線路を走る一台の列車。
その三両目を、グラハム・スペクターはひとりで占有していた。
ボックス席に腰を降ろし、向かいの座席に脚を乗せる無作法な座り方も、今は誰にも咎められない。


――がたん、ごとんと列車が揺れる。


グラハムの傍らには、巨大な銀色の棍棒が立てかけられている。
少し前までライダーが持っていた得物で、無理に剣で殴るより良さそうだといったら、あっさりと交換してくれたのだ。
気に食わないがケチではないらしい、とグラハムはライダーへの評価を一部改める。
正確には十手という武器なのだが、異様な巨大さもあってか、日本人である沙都子ですら、これが十手であるとは気付かなかった。
そのため仮の呼称として、グラハムはこれを棍棒と呼ぶことにしていた。
本来の名称や用途が何であれ、ぶん殴ることにしか使わない予定なのだから、むしろ棍棒と呼ぶほうが的確であるに違いない。


――がたん、ごとんと街並みが流れる。


棍棒と反対側の傍らには、クリストファーが持っていた荷物がそのまま置かれている。
あれから色々あって、中身をどう処理するか保留のままになっていた。
グラハムが持っているのは便宜的な処置に過ぎない。
要は単なる荷物持ちである。
車窓の外では夕日の残滓が空を濁らせていた。
まるで消えゆく太陽が最後の抵抗とばかりに空を掻き毟り、夜に血を滲ませたかのように。


――がたん、ごとんと吊革が震える。


時刻は既に十八時を回り、十九時への一方通行を駆け抜けている。
あくまでグラハム・スペクター個人の観点でいうなら、先ほどの放送は大きな影響を及ぼすものではなかった。
確かにレッドの死は衝撃であった。
それは隠せるものではないし、隠すつもりもない。
というか実際に怒りと悲しみを言葉にし尽くして語り尽くした。
彼を殺した犯人を見つけられたなら、問答無用でぶっ壊してやりたいとも思っている。
しかしその情報は、放送の直前にライダーから聞かされたものであり、放送による影響ではない。
クリストファー・シャルドレードの死は目の前で見取ったし、墓も作ってやった。
ツンツン頭がくたばったのは報いに違いない。
他にも聞き覚えのある名前が呼ばれたが、グラハムにとっては殆ど縁の無い連中だった。
だが、たったひとつだけ――
グラハムは針のような斜光から目を離し、車両後部に視線を送った。

「悲しい……悲しい話をしよう……。俺は命の恩人Aの友人を見つけることができた。
 きっと命の恩人Aは喜んでくれるだろう……ツンツン頭を逃してケイイチの死の遠因を作った責任も少しは挽回できただろう……。
 けれど悲しい……命の恩人Aの友人は悲しんでいる……。それは自分のことだけではなく……」



    ◇   ◇   ◇



線路を行く列車。
その先頭車両。
そのまた先頭座席。
世間一般では運転席と呼ばれる場所。
そこは今、奇怪な光景の真っ只中に置かれていた。


計器やパネル、スイッチの類が配置されたコンソール。
――太く強靭な脚の足置きと化している。

運転手が体重を預ける腰掛け。
――常軌を逸した臀部を収めきれず、背もたれの上に座られている。

車内と運転席を仕切る壁。
――どういうわけか、こちらが背もたれとして使われている。


つまるところ、常人を基準に作られた運転席ではライダーが座るには小さすぎたのだ。
普通は座席とコンソールの間に脚を入れる形になるのだが、ライダーの体躯では窮屈極まりない。
どうにか落ち着けないかと試行錯誤した結果、こんな奇妙極まりない体勢になってしまったのである。
それでも運転ができている辺り、騎乗スキルの恩恵は小さくないのだろう。
運転席に着くや否や、自動操縦の解除方法まで理解してしまったほどなのだから。


電車が緩やかなカーブを曲がっていく。
ライダーは運転の片手間、意識を思索に傾けた。


放送が流れる直前、ライダーはグラハムにレッドの死を伝えた。
死亡者の名前が放送で呼ばれてしまう以上、隠していても仕方がないと考えたからだ。
無論、レッドを殺したのがラッドであることは伏せてある。
……が、グラハムの激情を鑑みると、それで正しかったのかと疑問に思ってしまう。
知らなかったとはいえ、自分の身内に殺意を向けていたと気付いたとき、その憤怒はどこへいくのか。
『ラッドの兄貴』へ向いたままなのか。
自身を欺いたライダーへぶつけられるのか。
全ての元凶へと向けられるのか。
結果を想像することすらできない、一種の賭けだ。
だが、ライダーは決めていた。
これが原因でグラハムが敵対するならば、自分が責任を持って相手をしよう、と。


電車がC-4駅へ差し掛かる。
ホームに誰もいないことを確認し、ライダーは電車をそのまま通過させた。
ただでさえ低速だった電車を、更にゆっくりと走らせていく。


ふと、少し前に流れた放送のことを思い出す。
アーチャーの死は驚きではあったが、それ以上の感想はなかった。
元々『アーチャー』のクラスは『ライダー』のクラスと同様、宝具の強力さで優位を得るクラスである。
純粋な白兵戦能力では『セイバー』や『ランサー』に及ばない。
見たところ、アーチャーはライダーと同様、本来の宝具を失っているようであった。
わざわざランサーの宝具などを使っていたのも、その証左だ。
宝具の消失に加え、受肉によって通常攻撃が有効になっている状態では、不覚を取ってもおかしくはない。
ライダーは髭に覆われた顎に手をやった。
アーチャーがランサーの宝具を持っていたということは、他の宝具もどこかにあるということではないだろうか。
思えばグラハムと交換した剣も、宝具としか思えないほどの魔力を放っていた。
もしかしたら自分の知らない英霊の宝具だったのかもしれない。

――実際、無毀なる湖光は『バーサーカー』のサーヴァント、ランスロットの宝具である。
  しかしバーサーカーは、ライダーの前でこの宝具を使わなかったのだ――

その可能性に思い至り、ライダーはにぃっと笑った。
もしかしたら、あるのかもしれない。

絢爛たる光輝を放った騎士王の聖剣"約束された勝利の剣"が。
"王の軍勢"を一撃で葬り去った"天地乖離す開闢の星"が。

アーチャーが蔵に収めていた財宝をかき集めるのもいいだろう。
以前、かの王に持ちかけて一笑に付された、"王の財宝"で武装した"王の軍勢"という絵空事も実現できる。
バーサーカーとの戦いで用いていた黄金の船も、ライダーのスキルを用いれば扱えるに違いない。
ライダーは、自身の行動指針に、新たな項目をひとつ付け加えた。


左側の窓から差していた光が、少しずつ薄らいでいく。
山の向こうに熔けていく太陽は、まるで溶鉱炉の炉心のようであった。
灼熱する液状の太陽が山肌を焦がし、地平に広がり、町へと染み渡っていく。
しかし、もうじきそれらは冷え固まり、冷たい夜に取って代わられるのだ。


「任せきりにしてしまったが……我らではどうしようもないからなぁ」

硝子越しに後方を見やり、ライダーは呟いた。
無人の先頭車両の中で、吊革だけがせわしなく動いていた。



    ◇   ◇   ◇



がたん、ごとん。
がたん、ごとん。


車輪の音がリズムを刻む。
心臓がゆっくりと打つように、穏やかなリズムを響かせる。


がたん、ごとん。
がたん、ごとん。


車両の床に影が伸びる。
小さな身体の輪郭を、精一杯に伸ばしている。


がたん、ごとん。
がたん、ごとん。


前から数えて四番目の車。
沙都子は夕日に背を向けて、座席の真ん中に腰掛けていた。
靴は土に汚れ、服は砂埃に煤けているが、その瞳はくすんではいない。
悲しそうに目を細め、慈しむように微笑み、沙都子の膝を枕に眠るアルルゥを撫でた。
髪に指を沿わせ、流れに沿って手櫛を滑らせる。
ついでに顔に掛かっていた前髪を払っておく。
アルルゥの目元は、少し赤く腫れている。
沙都子は口をきつく噤んだ。


どうして、よりによって――



あの後、沙都子はアルルゥにクリスの死を告げた。
それがクリスの遺志であり、沙都子もそうすべきだと考えたからだ。

どうして、よりによって、あのタイミングで――


――アルルゥの家族の名が呼ばれてしまうのか――


沙都子はアルルゥに沿わせていない方の手を、ぎゅっと握り締めた。
不幸は重なるというが、同時に襲ってこなくてもいいではないか。
それもこんな小さい子にまで。
アルルゥは家族を次々と失った。
一緒に行動していた男の人も死んでしまった。
友達だったクリスもいない。

ごめんなさい、ねーねー、圭一さん――

沙都子は心の中で、今は亡き仲間達に頭を下げる。
ライダーという人から圭一の死を聞かされたとき、沙都子は泣き崩れてしまいそうになった。
直後の放送で詩音の死亡が伝えられたのは、まさに追い討ちであった。
涙を流して泣き喚きたい……全部投げ出してしまいたい……そんな気持ちにすらなった。
それを踏み止まったのは、自分の隣で泣きじゃくるアルルゥがいたからだ。
アルルゥは家族をみんな失った。
友達も失った。
自分が傍から離れれば、本当に独りぼっちになってしまう。
だから、沙都子は必死に涙を堪えた。
笑顔まで作ってアルルゥを慰めようとした。
ライダーやグラハムではなく、自分にしかできないことだったから。

そうして、二人の死を悼むことを後回しにしたのだ――

アルルゥの髪に水滴が落ちる。
沙都子は慌ててそれを拭ったが、水滴は次から次に落ちてくる。

「ダメですわ……わたくしはアルルゥのねーねーなんですから……泣いたりしちゃ……」

それでも涙は流れ続ける。
声を上げてはいけない。
そう強く思うほど、喉の奥から嗚咽が競り上がってくる。


たとえ傍にいないように見えても――その人は、いつでもわたくしたちの傍にいますわ

悲しむ事も大事ですけど、いつまでもここで止まっているわけにはいきませんの

だから、アルルゥさんがお姉さんのように強くなるのを手伝いますわ


エルルゥの墓前でアルルゥに掛けた言葉が蘇る。
ここで自分が悲しみに打ちひしがれてしまっては、あの言葉が嘘になってしまう。
だから、泣いてはいけないのだ。絶対に。
残酷に思えるかもしれないが、沙都子はそれを受け入れている。
彼女自身が背負うと決めた責任なのだから。
それなのに、涙は頬を伝い、沙都子の膝を濡らしていく。

「おとーさん……おねーちゃん……。いっちゃイヤ……ねーねー……」

アルルゥの小さな手が、沙都子のズボンの裾を掴む。
沙都子は乱暴に涙を拭うと、覆いかぶさるように、アルルゥを抱きしめた。
自分はここにいる――
どこにも行ったりしない――
精一杯の体温で、その思いを伝えたかった。


窓の外には、黄昏と夜の間に見える、蒼い空。
宝石のような薄明を背景に、歩くような速さで景色は流れていく。
せめて、流した涙が乾くまでは。





【C-5 電車内部 /一日目 夜】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3、深い悲しみ
[装備]:レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL、
[道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、
     翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、
     雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン
     カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:絶対にアルルゥを守り抜く。
2:ライダーとグラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。
3:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。

※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。
※名簿は確認したようです。
※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました)
※レヴィに対して良い印象を持っていません。
 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑い、それが蒼星石のものではないかと考えています。
※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。


【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]睡眠、深い悲しみ、ダメージ(小)
[装備]無し
[道具]支給品×2<アルルゥ、仗助>、 不明支給品(0~1)<仗助> 、ひらりマント、トウカの刀@うたわれるもの
[思考・状況]
1:もう誰とも別れたくない

※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。
※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。


【チーム名:○同盟ライダー組】
1:主催者の打倒。
2:E-2駅からG-7駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
  ハクオロも一応信用。 真紅は情報不足で保留。



【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小)および火傷(小) 腕に○印
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、
[道具]:基本支給品一式×3 、無毀なる湖光@Fate/Zero
     イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース、
     探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
     ヤマハV-MAX@Fate/zero
[思考・状況]  
 1:アーチャーより先にバトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子とアルルゥを守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
  本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
※アルルゥの存在を知りました。
※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。



【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:疲労(中) ダメージ(中) 青いツナギ姿(いくらか傷) 腕に○印  
[装備]: 包帯 小型レンチ スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:支給品一式、(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服
    海楼石の網@ONEPIECE、クリストファー・シャルドレードのデイパック
[思考・状況]
1:当面は他のメンバーとの合流を目指す。
2:北条沙都子とアルルゥは守り抜く。
3:ウソップやレッドを殺した者を壊す。
4:イスカンダルに敵意。
5:殺し合い自体壊す
6:ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
7:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。
※クリストファー・シャルドレードのデイパックは、便宜的にグラハムが預かっています。
中身……大きめの首輪<ドラえもん>、基本支給品一式<エルルゥ>、マスケット銃用の弾丸50発
    アミウダケ@ワンピース 、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL
    庭師の如雨露@ローゼンメイデン、グロック17@BLACK LAGOON(残弾0/17、予備弾薬15)
 悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に





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