正義の巨乳と悪の貧乳

「じゃ、またね~」
「ああ、また会おう! 未来の嫁よ!」
「相変わらず意味不明ね…まあ、そのカード大事にしなさいよ!」

カードショップmayの近所にある大学。
そのキャンパスの中で、エリンは電話を切る。
先程まで電話をしていた相手は、彼女の妹だ。
6つ下なのだが仲は良い。
しかし仲の良い妹だからこそ、ライトロードの事は秘密にしている。
(それにしても……、このカード、可愛いのだが、デッキに入る余地は無いぞ)
秘密にしているからこそ、妹は姉がどんなデッキを使っているかわからない。
だからこそ、彼女は、留学先のアメリカで女性モンスターが出たらとりあえず姉に3枚送っているわけだ。

姉としては自分の趣味を理解してくれる妹の存在は嬉しく、
送られて来るカードもデッキに入らなくともコレクションにはなる為、重宝している。
けどやっぱり、デッキには入れられない。
(まあ… サイドデッキに一枚刺しておこうかな。)
エリンの剣闘獣のサイドデッキは、リチュア・エリアルやウィンダ、セームベルやレプティレスナージャ等。美少女に占領されている。
彼女はサイドに「そのカード」を刺すと同時に、デッキの調整をしようとした

刹那だった。


「見つけましたわよ!! ロリコン女!」
エリンは声の主を見た刹那、自分の胸をぺたぺたした。
理由は簡単。声の主が超巨乳だからだ。
良くみれば顔も可愛いが、まず一番最初に目に付くのがでかいおっぱい。
そんな女に、エリンは喧嘩を売られたのだ。

「わたくしの名はギガンティア・ルプライエ!!
貴方みたいなロリコンは許すわけにはいきませんわ!!」
「…初対面の相手に向かって即ロリコンとは…
貴様みたいな美女には、礼儀を教えてやらんとな!」
そして二人はデュエルディスクと、そしてDゲイザーを構える。
ソリッドビジョンを更に臨場感溢れる映像に変える追加装置だ。

デュエリストが争う場合、それは拳でも、口でもない。
デュエルモンスターズにより、デュエルだ!
「貴方を倒して、女の子達を救いますわ!」
「私の事をどこで聞いたか知らんが…
そう簡単に倒せる事と思うなよ!」

「「デュエル!!」」



ドローした瞬間、エリンは、彼女の喧嘩に即乗った事を後悔した。
(…私はデッキ調整中だったな…)
デュエルディスクが起動している以上、デッキの内容にルール上不備は無い。
しかし今、エリンのデッキには、想定外のカードが紛れ込んでいた。
(まあ、手札コストか壁くらいにはなるだろう!)
彼女の手札には、Tour Guide from the Underworld。
バスガイドの姿をした可愛らしい娘が、我が物顔でいたのだ。
だが、デュエルが始まった以上仕方が無い。
「私はガーディアン・エアトスを召喚!
更にモンスターを1枚伏せて、カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
「わたくしのターン! ドロー! …おーほほほ!!
そちらのフィールドのモンスター2体をリリースし、ラヴァ・ゴーレムを召喚!!」
「何!?」
エリンのフィールドのエアトスと、伏せていたホプロムスが炎と共に消滅し、そして醜態なゴーレムが光臨した。
溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム。ギガンティアの切り札だ。
「おーほほほ!!わたくしの前にモンスターを並べる事を愚かと知りなさい!!」
「ちっ! 奈落の落とし穴を発動!!」
「え!? できるのですの!?」
「そりゃあそっちが特殊召喚したからな! 悪いが一緒に落ちてもらうぞ!」
その切り札はあっけなく消滅した。 しかしエリンもフィールドのモンスターを除去され、お互い痛み分けとなった。
「くう! カードを2枚伏せてターンエンドですわ!」

「私のターン! …っと、これは……
私は久遠の魔術師ミラを召喚、効果を発動し、そちらの伏せカードを盗撮する!!
さぁ、その伏せカードはなんじゃろな!」
「…奈落ですわ! 今度はわたくしが奈落を、そのまま発動!」
「無理!!」
「無理ですの!?」
「無理なのだ!」
ミラの効果はチェーンブロックに乗らないので奈落や激流葬は発動できない。
…と、説明するのも面倒なので、エリンはそのままミラでダイレクトアタックを仕掛ける。
「くう!! 不思議なモンスターですわ!!」
「私は更にカードを1枚伏せる! ターンエンド!」
「ああんもう! 貴方のデッキは一体なんですの!?
どんなデッキか読めないですわ!」
…さっきホプロムスリリースしたじゃないか…とはエリンは突っ込まない。
デュエリストたるもの、墓地を常に確認する事は大切な事である。
「わたくしのターン!ドロー!
ヴォルガニック・クイーンを特殊召喚」
今度はミラが、炎を纏った女性に食われる。 …当たり前だが性的な意味ではない。
「っ! まぁた嫌らしいモンスターを!」
「幼い娘を狙う卑劣な女には言われたくありませんわ!
更に洗脳解除を発動!
わたくしの場に戻ったクイーンで、そのままダイレクトですわー!」
「次元幽閉を発動!」
「ああ!!!」
またしてもお互いのモンスターが除去されてしまった。
両者とも一歩も引かないデュエルとなった。



戦いは進んだ。
その過程で、ギガンティアはライフを削られつつも、邪神ドレッド・ルートの召喚に成功する。伏せカードは1枚
一方のエリンのフィールドには、モンスターはローズ・トークン2体のみだ。
しかし手札は豊富だ。
(さて… まずは)
エリンは先程引いたサイクロンで、ギガンティアのブラック・ガーデンを破壊する。
「うう~!わたくしの8分の1大作戦が!」
ギガンティアが頭を抱える。
しかし、ドレッド・ルートがいる事で、エリンはどれだけ強力なモンスターを召喚しようとも、攻撃力が半分となってしまう。
手札にはウィルスメールがある…が、剣闘獣がいない。
いるのは、Tour Guide from the Underworld だけだ。
手が無いわけではない。 Tour Guide from the Underworldの効果でTour Guide from the Underworldを呼び、
ウィルスメールでダイレクトアタックをすれば、実はギガンティアのライフが100まで落ちる。
だが、エリンのライフは残り1300。Tour Guide from the Underworld1体のダイレクトアタックはどうしようもない。
(…ここは、賭けだな)
エリンは先程思いついた作戦を早速実行する。
Tour Guide from the Underworldを召喚し、効果でTour Guide from the Underworldを、守備表示で召喚。
そのまま、ウィルスメールの効果により一人目のTour Guide from the Underworldでダイレクトアタックをする。
「くっ!
し、しかし二体目はそうはいきませんわ!!」
エンドフェイズ、1体目のTour Guide from the Underworldが破壊される。
しかし、ギガンティアはモンスターを引けず、ドレッド・ルートでTour Guide from the Underworldを破壊するだけで、トドメには至らなかった。
「むう~ ターンエンドですわ!」
「私のターン、ドロー!!」
エリンはドローした瞬間、己の運も捨てたものじゃないと思った。
何故ならこのターン凌げば、彼女の勝ちはほぼ確実だからだ。
私は死者蘇生を発動する! よみがえるモンスターは、Tour Guide from the Underworldだ!」
「ああ!!」
まだギガンティアのフィールドには伏せカードがある。
「…最初に伏せた奈落、まだ発動してなかったな!」
「くっ!」
そう、奈落の落とし穴がある。
だからこそ、エリンは攻撃力の低いTour Guide from the Underworldを蘇生したのだ。
「バトル! ウィルスメールの効果で、Tour Guide from the Underworldのダイレクトアタック!」
スーツ姿の女の子の一撃。
その一撃で、巨大モンスターを操るギガンティアのLPはあっけなく0となった。

「くうう~!! ロリコン女め!」
「…その前にボタン修理した方が良さ気じゃないか?」
「そ、そうですわ!
全くボロい服ですわね! デュエルするだけでボタンが飛ぶだなんて」
エリンはツッコまなかった、ツッコんだらセクハラになるからだ。
なので話題を逸らす。
「……ロリコンロリコンって、確かに私はロリコンだ。
だが、許可を得ない娘を無理矢理襲ったりはしない!」
……と、とりあえず嘘をついた。
だが、ギガンティアは聞かなかった。
「この前文ちゃんが、無理矢理小学生を襲っていると言ってましたわ!
それにカードショップmayでも要注意人物として挙げられてますの!」
「……ああ、そう」
恐らく文の方は英雄か、憧れの人物的な感じで紹介しているのだろうが、
残念ながら彼女は一般の人間の感覚とはズレまくっている為、彼女の英雄は人々の悪となる。
しかし、これはある意味ではチャンスである。
今までのように小学校に忍び込んだりしなくとも、デュエリストが集まってくる。
勿論可愛い女の子も多いだろう。
ギガンティアも年齢がもう少し低ければ…と悔やみたくなる程の美少女だし。
そうでなくとも、色んな人間とデュエルすれば、己の腕を磨くチャンスとなる。
(それに負ければ、いつもの大寒波作戦で相手を氷漬けにすれば良いだけだしな!)

「くぅ~、しかし悔しいですわ!!」
「ふ、またいつでも掛かってくるがいい!!」
「くぅ~ …まぁいいですわ!!
今日は退いてあげますが、次はこうはいきませんわよ!!!」
そしてギガンティアは、でかい胸を激しく揺らしながら、去っていく。

(でかいおっぱいだな…)
ギガンティアが見えなくなったところで、エリンは自分の胸を触った。
無かった。
「……次はあれを凍らせて持ち帰って、胸の成分でも調べようか……」
デュエルには勝ったし、アクシデントとはいえ妹のカードを大活躍させることも出来た。
しかしエリンは、何故か勝利した気分になれなかったのであった。




お終い。

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最終更新:2011年04月25日 05:01