リア充は死ねばいいんやな 3

「リリカ・・・いたのか・・・」

少女はアキオの口に人差し指を当てる。

「名前を呼ぶのはやめなさい。ここでは知らない者もいるの」
「そっちから勝手に現れて、結構な言い草だな」
「あら?私は犬の様子を見に来ただけよ。主人の務めじゃない?」
「そんな事言いに来たのか。帰ってくれ」

不機嫌そうにリリカの手を引っ張り店の外へ連れ出す。

「強引ね。嫌いじゃないわよ。それにさっきのデュエルもなかなかだったわ」
「そりゃどうも」
「褒めているんだからもっと喜びなさい。ああそうね、頑張ったご褒美をあげるわ」
「なんだよ」

アキオが振り返るとリリカは右手を開いた。だがその手の中には何も入っていない。

「?何も無いぞ?」
「お手は?」
「へっ?」
「物を貰う時は一つ従うのが犬よ。分かったらお手は?」
「分からない。いらない。だからもう帰ってくれ」
「従いなさい。命令よ」
「・・・」

くだらない事を言いつけやがって。アキオの感情は10歳の少女に対して嫌悪を見せる
だが従うしかない。嫌がらせにも堪えるだけの目標があった。

「いい子ね。はい」
「なんだこれ?クッキー?」
「今すぐ食べなさい」
「あ、ああ」(でもこれ何か手作りっぽいぞ・・・)

中身の見えた小袋のリボンを解き、その中の1枚を取って口に入れた。

「どう?」
「噛み応えが無くて見た目よりもドロッとしてる。味はかなり濃いけどいける」
「そう。じゃあ残りは返しなさい」

そう言うとリリカは小袋を奪い、口にした。

「食べれるわね」
「で、なにそれ?」
「文って子から貰ったのよ。でもあの子のって腐ってたりするの」
「要は毒味かよ・・・嫌な思いしたくないなら捨てればいいじゃねえか」
「でもクッキーは食べたいわ」

この辺りは10歳の女の子たる所なのだろう。
欲望に忠実でそこに行動基準があるが内容が幼稚だ。
ある意味リリカらしいとも言えるが。
どちらにしてもアキオにとってはどうでも良かった。

「んじゃ、済んだろ。帰ってくれ」
「待って。もう一枚あげるわ」
「なんでだよ?」
「さっきのはデュエルのご褒美。今度は味見のご褒美よ」

もう一枚を手渡し、続け様にリリカは言う。

「貴方は買っているの。だから勝手な事や目立つ事は控えなさい」
「ああ、分かったよ」
「いい子ね。時が来れば貴方も私と同じにしてあげる。また会いましょう、月欠け」

会話を終え、リリカは去っていった。

「・・・そういう風に呼ぶなって自分で言っておいて何だよ」

同じ・・・秘密結社の幹部を指すのだろうか?
あるいは欲望のままに動く人間と言う意味か?
どちらにせよ力も権力も無い以上、今は考えても意味は無かった。

「アキオ君」
「うわっ、木田さん?!いつの間に?」
「ん?今さっきだよ」

後ろに立っている事にまったく気が付かなかった。
リリカに、考え事に夢中になっていたのだろうか。
気配すら感じ取れない程真剣に。

「あっ、そういえば店長は?」
「大丈夫大丈夫。店長、精神的には弱いけど体は普通だからね。で、戻ったらアキオ君はサボってるしねえ」

はははと笑った木田につられ、笑顔を見せる。
木田の空気は独特だ。
和みと落ち着きを感じる、安心できる良い大人。まさにこれだろう。
木田はポンとアキオの肩に手を置く。

「色々あるだろうけど溜め込まない方がいい。何でも相談に乗るからね」
「は、はあ」
「ところでチューナーは入れないのかい?」
「えっと、岩石チュ-ナー出たら本気出すッス。あと期待出来ないけど簡易融合から出る岩石融合モンスターも欲しいですよ」

少し聞かれていたのかもしれない。
アキオの頭によぎったが、それ以降意味深な言葉も無かった為、何も言わずに仕事を始めた。
木田は店長の様子を気にしながらぶらぶらと店の中を歩いていた。
その際デュエルは一切せず、やる事は店員との雑談や傍観であった。
店内の空気が好きなのだろう。その目には常に店内の誰かを捉えていた。

(mayは一癖も二癖も持ってる人が集まってるのかねえ)

一人になった時、上を見上げながら木田は静かに呟いた。
おぼろげながら感じていたのだ。店に居る者の空気の変化に。そこから起こり得る嵐の流れを。


終わり








※こんなのも考えましたが※

  • リリカとアキオの会話

「強引ね。嫌いじゃないわよ。それにさっきのデュエルもなかなかだったわ」
「そりゃどうも」
「褒めているんだからもっと喜びなさい。ああそう、貴方に聞きたい事があったのよ」
「なんだよ」


「これなんだけど、震えさせる事が出来るのは分かったわ。問題は何に使う・・・」
「おい!何持ち出してんだ!捨てろ!今すぐ捨てろっ!!」
「何よ怒鳴り散らして。知ってるんでしょ?教えて頂戴」
「無理。絶対無理。後捨てないなら没収ですボッシューします」

そう言うとアキオは勢い良く引っ張り、それを奪った。

「あっ、返しなさいよ」

しまったという表情から強引に取り戻そうとするが上手くかわされる。
不機嫌そうに振舞うリリカだがアキオは無視をした。

「そもそもこんなの何で持ってんだよ?」
「エリンって女から貰ったのよ。何か聞いてもこれは玩具よ、遊び方を考えてごらんって言ってきたわ」
「その女相当変態だな!子供にこんなの渡すとか相当頭沸いてるな!」
「知ってるわ。でも玩具なのに使い方が分からないなんてしゃくよ」
(そいつ頭良いな。子供に興味を持たせる最高の言い方してる。でもやっぱこれは頭おかしいか変態だわ。褒めれたもんじゃない)
「わざわざ他人に聞くなんて嫌なの。犬なら答えなさい」
「はいはい。でも教えれません。10年経ったら教えなくても分かるようになりますよ」
「・・・使えないわね」
(勝手に犬呼ばわりして便利に使おうと思うなっての!)

アキオはその日、奪った道具を誰にもばれない様ポケットの奥へと忍ばせた。
家に持ち帰った後は処分の方法に散々迷ったという。


終わり

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最終更新:2011年10月02日 04:42