アウナス・ミフイムの大冒険

湯納の大冒険Ⅹ話
アウナス・ミフイムの大冒険

「パワー・ツール・ドラゴンの効果により薔薇の刻印3枚あるからそのうちの1枚をサー
チ……そしてわたしはパワーツールと魔天使ローズ・ソーサラーを素材にエクシーズ召喚
するわ。はい、ビッグアイ召喚。効果発動……死ぬまで味方を殴り続けなさい」
「と、とびまーす!?」
「薔薇の刻印でもう一体奪うわ。頂戴」
「うわっエロっ」
 子供が戯れる声とメロン売り屋の啖呵が入り混じる夕暮れ時の街角。
 突発ストリートデュエルの対戦相手と向き合っているアウナス・ミフイムは、逆三角に
大目玉という不気味極まりないエクシーズモンスターを繰り出して道ゆく人々の目を引い
ていた。
「まずはローズ・バード、次にビッグアイで奪ったメンタルスフィア・デーモン、そして
薔薇の刻印で奪ったレッド・デーモンズ・ドラゴンでダイレクトアタック。……わたしの
勝ちのようね」
「あ~ん、負けました~」
 いやー参っちゃったエヘヘ、という感じで、戦いのあとアウナとデュエルしていた女子
大生が駆け寄ってくる。
 十分前、道を歩いていたアウナは面識のない女子大生に突然勝負を挑まれた。
 相手から気合は感じられても明確な敵意は感じられなかった。
(これもmay流儀か)
 さしあたって急いでいたわけでもないアウナは勝負に応じることにした。以前であれば
デュエルを仕掛けられた時点で殺意が無尽蔵に湧いてきたものだが、アウナの心はすっか
り穏やかになっていた。
「あっ、あたし実はアウナスさんのファンなんです!」
「ファン?」
「憎くて戦いを挑もうとかそういうんじゃなくて! ファンサービスを! ファンサービ
スお願いしたかっただけなんですッ!」
「もう挑んでこないで……次きたらパーミでボコるわよ」
「ワァオ! ファンタスティック! なんて素晴らしいファンサービス!」
「り、理解不能……っ、何なのこの女は……」
 ドン引きしたアウナは逃げるように本屋に入っていった。
 後ろを振り返ると、まだアウナを目で追い続けていた女子大生と視線がかち合い、ぶん
ぶんと手を振られてしまった。
「おかしな人だわ」
 にこりと微笑み、小さく手を振り返してから書店内を進む。
 今回のような形で勝負を挑まれるのは、実は初めてではない。鞭と触手でいじめられた
かっただの、遊戯王顔で「モラル崩壊!」って叫んでいるのを見たかっただの、マジック
コンボを喰らいたかっただの……様々な理由で、これといった悪意のない老若男女からデ
ュエルを仕掛けられる毎日だ。
 生まれ落ちてからつい最近まで自分が過ごした世界の酷薄さは何だったのかと、多少の
虚無感を感じつつ、mayに溶け込もうとしている。
 フォーミュラ・シンクロンを手に入れた今、人との関わりを断絶して再び実家の洞窟に
引き籠るという選択肢も無くはない。だがアウナは他人と交わる道を選んだ。
(でも平和だわ、これがmayの日常なのね……)
 注文していた脳外科系の本を受け取ってさっさと書店を出る。
 遠くの空が赤くなりはじめ、夕闇が近付いている。
「今日はユノーに会えなかった」
 ぽつりとそう呟き、ローブのフードを頭にかぶせて沈む太陽に背を向けた。
 人ごみから離れて高架線路の下をとぼとぼ歩いてゆく。
 うるさいのはあんまり好きじゃない。
 けれど静かな道を選んでいるのにまだ騒ぎ声が聞こえてくる。
 さっさと通り過ぎようと思ったものの、急にアウナは足を止めて振り返った。
(……声に聞き憶えがある)
 電車の通過する音にまぎれて耳に届いた悲鳴にアウナの体が動く。ショートカットのた
めに植物召喚で足場を作って飛び移った、フェンスをアクションゲームよろしくジャンプ
で乗り越え、日頃鍛えているのはこんな事態に備えてのことだと言わんばかりに全力疾走
する。
「ひいいいっ、もうだめ……だ、誰か助けて下さいいいい!」
 家々に夕日を遮られた薄暗い鉄道高架下空間を、一人の少女が走っていた。
「カオル……!? こっちよ! 来て!」
 我須田薫。カードショップmayの常連でありアウナとも親しい温和な少女だ。
 それが今は何があったのか、汗まみれで髪を振り乱し、必死に逃げ惑っていた。
「アウナお姉さん!」
 知ってる人を見つけて薫は多少安堵した顔をする。
 ひとまずアウナは薫を背後に庇い、無我夢中で逃げ回る原因である相手を待った。
「カオル、何に追われているの」
「はぁっ……ふぅっ、うぅっ……へ、変な人……です」
「変質者なの?」
「さっきスーツ姿のおじさんにデュエルを申し込まれて戦ったんですけれど、私が負けた
ら急にその人が変な事を言いはじめて、捕まりそうになって……それで逃げて……追いか
けられて……っ!」
 薫が説明をしている最中だっだが、前方から静かに近寄るものを見つけてアウナは身の
構えを強固にした。
 薫の証言通り、出てきたのは壮年紳士という感じなスーツ姿の男だが、その表情は道化
師ペーテンのような仮面をつけていて釈然としない。
「あなたなのね」
「ウフフ、フフフ、フフフ……」
「この子を傷つけるのは許さない。ここでわたしとデュエルしろ」
「いけない子、いけない子」
「……?」
 どうも話が通じている気配がない。
 立ちはだかるアウナなどまるで見えていない風に、仮面の男は本来の標的へと狙いを定
めた。
「どんどん除去っちゃおうねぇ!」
 ぶわっと殺気が噴き出した。
 駆け出した仮面の男が薫に迫ってゆく。
 流れからして、デュエルの敗者に対し「罰ゲーム!」の名のもと暴行を加えるのが目的
だと考えられる。除去と表現するからには殺害も視野に含んでいるかもしれない。
「させないわ……」
 襲いかかろうとする男の進路を塞ぐ形で割り込み、鋭く踏み込む相手の軸足をスライデ
ィングで叩き潰して体勢を崩させた。
 男が仰向けに倒れられるように身をよじり、受け身をとるかどうかの所を、アウナの袖
から伸びる植物の蔦で無理やり起こす。
 間をおかず背後に回り、男の腹部に腕を回し固定してから腕力で持ち上げ、後ろ反りに
投げ落とした。いわゆるジャーマンスープレックスにより相手を後頭部からコンクリート
に打ち付けたのだ。アウナはこのとき蔦植物を操作して自身の姿勢を変え、素早くニュー
トラル立ち状態を作っている。
 頭部への衝撃でダウンしようとしている逆さまの男をもう一度宙に持ち上げ、遠慮なく
再び頭から叩き落とした。さらには男の二つの脛をそれぞれの手で掴んで、足首を小脇に
挟みホールド。徐々に遠心力を加えながら時計回りに振り回し、加速が溜まった瞬間に空
中高くへ放り投げる。ジャイアントスイングだ。
「終わりよ」
 打ち上げられ放物線を描いて飛ぶ男の体が弾道の頂点に達し、まもなく落下を始めると
いう瞬間を、追いかけて宙に舞ったアウナが狙い、男の首を鷲掴みにし、逆さまの体位を
強制しながら大地まで牽引……思いきり脳天を叩きつけた。
 頭蓋骨がバラバラに砕ける音があたりに轟く。
 デンジャラス・スープレックス・コンボ。
 描写で説明するのも大変な荒技だ。
「固いのね。でももう息も無いでしょう……いなくなりなさい、リアリスト」
 ピクリとも動かない男の腹を渾身の力で蹴り飛ばし、暗がりの彼方へ放りこんだ。
「あの~、アウナお姉さーん?」
 一般的な人間、特に少年少女にとって、残虐ファイトがショッキングでR18指定な光
景であることは学習済みである。対策として、根っこを張って作った防壁が薫を覆ったの
と同時に、葉っぱを茂らせてやんわり視界を塞いでおき、花から出るいい香りで一瞬だけ
気を逸らしてみた。
「いま追い払ったわ」
「あ、ありがとうございますです」
「よくピンチになるわね、カオルは」
 アウナは人懐こい笑みを浮かべる薫の頭を撫でた。
 なぜか撫でたくなるのだ。
 途端、ぞわりと首筋に冷たいものが走る。
 きょとんとする薫をよそにアウナが慌てて振り返り、再び薫を庇おうと神経をとがらせ
てあたりを警戒した。
 高架を支える柱の陰から、ゆっくりと脈絡なくそいつが姿を現す。
「はぁい……どんどん……除去っちゃおうねぇ」
 致命傷を負わせたはずの仮面の男が何事も無かったかのようにそこにいる。
「生きていた……! 違うわね。何らかの術法を用いているに違いない」
 アウナは頭の中をわずかに切り替え、現在の研究テーマである「人体に誘発即時効果を
付与する」というシステムのスイッチを入れた。
 殺ったと思った敵がさらりと立ち直っているのだから、再び物理的に沈めようとしても
また軽々立ち直られてしまう可能性がある。守備で粘るギガンテックファイターに延々と
普通の攻撃を当てるようなものだとすれば、実に無意味。
 攻勢を少し遅らせてでも敵の様子を見て、弱点を調査するべき時だ。
(対魔法パーミ・レベル1、対罠パーミ・レベル1、対象効果パーミ・レベル1、対モン
スター効果パーミ・レベル1、……どれかに反応があるか)
 仮面の男がゆらりと立ちはだかる。明らかに標的以外を無視していた先刻とは違い、ア
ウナを認識しているようであった。
 しかしそれだけで終わらない。
「除去っちゃうよ……」「除去っちゃうよ……」「除去っちゃうよ……」
 また一人、さらに一人と、なんと仮面の男が別々の柱の陰からゆったり歩み出てきて増
えてゆく。
「ひいいっ、ふふふふ増えたぁーーーー」
「どのフィルターにもかからない……まさか、この現象の根源はトークンのようなものを
呼び出す召喚術だというの?」
 複数の仮面の男たちが薄笑いを浮かべ、跳びかかる寸前の虎を思わせる構えをとったで
はないか。
 丁度そのとき辺りの電灯が一斉についた。
「ん……? 奴らのあの指――」
「「「除去っちゃおうねぇ!!」」」
 戦隊モノの怪人じみた動きで男たち三人、いや、三体がアウナめがけて迫った。
「透明無形かすかに吐息、罠カード……棘の壁、発動!」
 アウナの合図と同時に地面から無数の蔦が湧き起こって瞬時に天井まで達した。それら
の一つ一つの太さは電柱に匹敵し、さらに出刃包丁かと思うほど鋭いトゲがおびただしく
生え揃っている。
 蔦が天井に届くうまでの生長の速さは一定ではないので、巻き込まれればトゲに切り裂
かれてズタズタになってしまう。
「仮にいくらでも増殖するというのならこれでは倒せない。カオル、今のうちに逃げまし
ょう、よっ……と」
「ひゃわぁっ」
 薫が奇声をあげるのもお構いなし。相手の脚と背中を持ちあげて支える、いわゆるお姫
様だっこで抱え上げた。蔓と蔦をフェンスに沿って這わせては、それを編み上げて足場を
いくつも作り、即席の階段をこしらえた。
「わたしに強く掴まって。あと丸まって」
「はい!」
 華奢な淫乱女子中学生とはいえ三十数キロの重荷には違いないため、さすがに少女一人
を抱えているアウナの動きは鈍くなる。
「しつこいのね、さっきの奴が諦めていない。まだ追いかけてくるわ」
 そんな状態でもかなり素早いもので、野性的なまでの運動力で裏通りの道を走り抜けて
しまうのだった。
「よし、奴がいま置いてきたセファロタスの餌食になったわ……あら?」
 見れば、腕の中の薫がひきつった顔で荒い息を吐いていた。
「負けちゃって……追われて……逃げて……殺されるんじゃないかって怖かったです」
 逃げ切れたと思い安心した今になって、異常な出来事の渦中におかれていた事の恐怖を
自覚したようだ。アウナの言いつけどおりに強く掴まって丸まったまま、目をうるませ震
えている。
「アウナお姉さん……デュエルって、こんなに怖いものだったんですか……!?」
「それは……」
 それは違う! と、はっきり言い切ることができない。
 かつてアウナにとってデュエルとはつらく苦しいものだった。このmayの雰囲気に浸
かってなんとなく、平和な世界におけるデュエルに馴染めた気はしているが、身に染み付
いた過去の記憶はいまだ拭いきれない。
(こんなときにユノーがいてくれたら……)
 デュエルタクティクスも、腕力も、召喚術も、このときばかりは何の役にも立たない。
 友達が不安になっているのに気の利いた言葉の一つも言えない自分が、急に情けなく思
えてきた。湯納ならどうするだろう。湯納ならどう言って薫をいたわるだろう。再三考え
てもなかなか考えが上手くまとまらない。
「……さっきの男がもう現れないという保障はない。奴に対処するまでの間、あなたのこ
とはわたしが守るから……しばらく寝食を共にして頂戴」
 周囲を警戒しつつ、薫をお姫様抱っこから解放して二つの足で立たせた。
 たちこめる暗雲を前に、灰色にもやつく心をひとまず奥へ押しやる。
「行きましょう」
「あっ、はい! その……ありがとうございます、色々と……」
「そう……」
「アウナお姉さん、どこか怪我したんですか? なんか顔色が悪いような」
「別に……問題ないわ。おなかがすいただけよ」
「なるほど!」(大納得)
「……」
 アウナは薫の頭をさっと撫で、手をとって研究所の宿泊場所を目指し歩き出す。
 表面上はいつもと変わらず穏やかなものだ。
 しかしその心中では、友達を慰められなかったやるせなさを燃やし尽くす勢いで、邪悪
な敵への憤怒が煮え滾っていた。
 何も終わったわけではない。
(舐めやがって……絶対に赦さん)


 あくる日のカードショップmayにて。
「もしもし、ああ、サイバーマン。今ヒマかしら?」
 もともとは湯納と連絡を取るためだけに買った携帯電話で、アウナは思いついた相手に
片っ端からコールしまくっていた。
「ヒマか、だと……オレは飢えている……渇いている! アウナスッ! ……何か用?」
 店のドアが開き、外気を纏ってサイドラのかぶり物をした不審者……もとい真サイバー
流の使い手が姿を見せた。
 アウナの耳に電話からの声とサイバードラゴン男の肉声がダブルで響く。
 どうやら神出鬼没サイバーマンは丁度ショップmayに入るところだったようだ。
「あの魔女――じゃなかった、アウナの奴は何をする気なんだろうな」
「彼女のやることはいつも読めん」
「あたしもそろそろ慣れねえとなぁ……」
 冶住アキラと黒剛進はいぶかしむ表情でアウナを見た。
 彼らもまたアウナの呼びかけに集まったデュエリストたちである。正確には、尼曽根美
琴がアウナに呼び出され、そのときアキラや黒剛にも声をかけるよう頼まれたことで話が
通り、今ここへ顔を出したという流れによる。面識が薄かったからアウナは彼らの電話番
号を知らなかったのだ。
 美琴はまだ誰も居ない早いうちに光霊術‐「聖」を拝もうとカードショップmayに出
てきていたため、実質上の一番乗りである。
「もしもし、うん、チャンミン。久しぶりね、いま時間ある?」
 ショップmayに集めた面々へ労いの声をかけるヒマもないくらい間断なく電話をかけ
まくっているうちに、早いうちから連絡をしておいたブラック・サイクロプス、エリン、
そしてライカ・ラスポートおよび付き添いの桂木ネネが現れた。
「おおっマイシスター・アウナ、急用だって言うからすっ飛んできたぞ! マジで」
「ありがとう、マイシスター・エリン」
「なあ、アウナよう、何で「マイシスター」なんだ? 前から思ってたんだが」
「姉っぽいからよ。他に理由が必要かしら」
「あ、相ッ変わらずわっかんねーヤツだな!」
「ごめんなさいね。……ああ、もしもし、コトノ。これからカードショップmayに出て
これないかしら? うん、丁度カード買いに来る所なのね、ええ、わかったわ」
「こうやってmayはグラップラーの溜まり場になってしまうんやな」
「ごめんなさいね。……あっ、ドクターフジヤマ?」
「悲劇やな……」
 軽く言葉を交わしただけでエリンとサイクロプスも放っておき、電話をかけ続ける作業
に戻る。
「アウナさん、終末ヶ岡さんにも声をかけておきましたよ。前世が騎士(自称)なだけあ
って、腕っぷしは割と強い方らしいですから」
「あの女は苦手だわ……戦いまくって勝ちまくりたいとか……思想が恐いんだもの。でも
今は戦力になれば構わない」
「攻撃的なフィールを使えそうな王道百歩さんも呼んでみましょうか」
「彼の電話番号を登録しているユノーに驚きよ……」
「3ターンでどっか行っちゃう人ですからね」
 互いの影を踏み合うくらい近い位置で、湯納はアウナにだけ聞こえるくらいの声で通達
の成功を伝えた。アウナの方もあらかた連絡し終えたので、確認を兼ねて二人は無言で頷
き合った。
「なあアウナ、こりゃあ一体何の集まりなんだ?」
「単刀直入に言うわ。増殖する敵を叩き潰すために、みんなの力を貸して欲しいの」
「え、えーっと……!? なに!? 敵!? 増殖!?」
「真面目な話よ。……いま一番困ってるのはわたしなんかじゃなくて、変質者に命を狙わ
れているカオルの方なの」
 デュエルスペースの一角に浮かない顔で座っている薫に目をやった。他の女性常連客た
ちに構われ、ハーブティーを飲んである程度落ち着いてはいても、決してリラックスし切
っている風ではない。
 先ほどまでは美琴も薫ちゃんいたわり隊に加わっており、お茶が出たのを期に辻&セシ
リアにバトンタッチしている。
「うううぅ……除去っちゃうおじさんが……除去っちゃうおじさんが来るよう……」
 薫の顔を見るなり、みな何か大変なことがあったのではと想像をするが、薫が落ち着く
までは何があったのか無理に訊かないよう配慮していた。
 効率が悪いし、新しく誰か来るたび薫に質問するのを繰り返したら余計に本人の疲労が
溜まってしまうからというのもある。
「あと一分三十秒で十二時。実際にその変質者を見た方が話が早い……そろそろ奴が現れ
るわ……!!」
 店内が針のように鋭く冷たいもので覆われるのを誰もが感じた。
 それは心ならずアウナが漏らした怒気と殺気だった。そのあまりの真剣さととげとげし
さに、あたりは息を飲んで静まりかえる。
 ずるり……
 ずり……ずり……ずり……
 何か、それなりに大きなものがゆっくり這い回る音が沈黙を蝕んだ。
 声が響く。
「――除去……を……除去を……しちゃおうね…………どんどん……」
 床に積み上がっているグッズの入った段ボールと、特に仕掛けもなにも無い壁との間か
ら、闇・道化師のサギーを思わせる仮面をかぶったスーツ姿の人間が、蛇のごとくずるり
と這い出した。
「除去っちゃおうねえええ!」
 そして、その場所から最も近い位置にいたアキラと黒剛が身構えたのを全くと言ってよ
いほど無視したうえで、爆発音かと思うほど激しい音を立てて床を蹴り、鋭くアウナへと
飛びかかった。
 仮面の男を攻撃したことのない人間は攻撃対象にならないようなのだ。
「リアリストは死ねえいっ!」
 突っ込んでくるのを見てかわしながら脇の柱に向かって跳び、三角飛び蹴りの要領で爪
先を相手の後頭部へと素早くヒットさせ、打ち抜いた。
 一撃で男は転倒して滑りながら地に沈む。
『いきなり殺った~~~~!?』
 アウナの突飛な行動は今に始まったことではなくても、いきなり惨劇を見せつけられて
は動揺せずにはいられない。店内にざわめきが走った。
「慌てないで……この「仮面の男」は人間ではなく、どうもドッペルゲンガーの一種らし
いの。存在しているけどそこに実体はないって意味ではトークンみたいな感じかな。今日
の早朝からこうやって何度か襲いかかられて困ってる」
「あれが我々の敵なのですね」
「そうよ。何度こいつらを破壊してもまた出現する。プログラムルーチン的な思考で行動
し、先のデュエルに負けたカオルに罰ゲームを与える目的を達成するまでは、他者からの
デュエルは一切受け付けないらしい。会話が成立しないから尋問は不可能だし、このトー
クンからではコントロールしているのが誰か特定できない」
「へ? でも今アウナちゃんが倒しちゃったんやな」
「問題が一つある」
「問題って?」
「ああ!」
 全然関係ない所から茶々入れがあったがアウナは気にせず話を続ける。
「多いの」
「へっ?」
「戦える人は表に出て。約百七十秒後にわたしに対して次の攻撃が来る。みんなは奴を丸
太かサンドバッグだと思ってブッ壊すつもりで殴りかかればいいわ」
 シュワシュワと音をたて泡となり、さらに霧になって四散してゆく仮面の男を、実験動
物を見る目でじっとり眺めてからカードショップmayを出てゆく。
「あらわれいでよ……キラー・トマト!」
 アウナが召喚術を行使した。
 魂の彼岸に広がる植物族の楽園から召喚されてきたモンスターは、ハロウィンのカボチ
ャに似たファンシーでどこかユーモラスなトマト――などではなく、絶対これ人間殺して
しゃぶって喰ってるだろと言いたくなるグロテスク植物モンスター。巨大トマトに鬼の顔
がある禍々しい『Mystic Tomato』だった。
 十体近い殺人トマトの群れに気圧され、周囲がにわかにざわめき喧騒に悲鳴も混じる。
「走りなさい」
 しかもそれらの殺人トマトが意気込んだ様子で、道路上をバウンドしながら周囲に散ら
ばってゆく。
 トマトたちに殺意はないし最初に命じられたことを忠実にやっているだけではあるけれ
ど、道ゆく人々はそうは思わず、みな慌てて逃げていった。
 穏やかなようで最近はことさら物騒なことも多いmayだ。怪しい勢力の小競り合いが
起きていたり、偽カード作り組織に捜査が入ったりということもあって、住人の不安感と
危機感も高まりつつあるといえる。
「あと二十秒」
 大ざっぱに人払いは済んだ。
 ターゲットにされている薫をそばに控えさせてアウナは周囲に気を巡らせる。
「よくわかんねえけどよう! とりあえずブッ倒せばいいんだな!」
「保存数四万超えの成長を遂げたわりにはmayも物騒になったものだ」
 ただごとではないと感じたサイクロプスや黒剛がアウナの隣に陣取った。
 路地裏で、屋根の上で、電柱の後ろで、ゴミ袋の影で、大きなものが蠢いた。
『除去っちゃうよ』『除去っちゃうよ』『除去っちゃうよ』『除去っちゃうよ』
『除去……』『除去……』『除去……』『除去……』『除去……』『除去……』
『でゅ~~~~~~~~わぁ~~~~~~~~~』
「うええ気持ちわりぃ!」
 葉っぱをめくったらわんさか出てきちゃうゴキブリを連想させる、大量に出現した仮面
の男を目の当たりにして、美琴は無理のない感想を漏らした。
「魔法カード、大寒波発動!」
 エリンの放った大音声とともに曇り空の下を極寒の風が吹き抜けた。パターン化された
力押し戦術でアウナに向かってゆく仮面の男1グループを、威力調整された大寒波の魔法
がきっちりと凍らせた。
 宇宙の法則が変化してデュエルでの使用が不可能となった禁止カードでも、サイコデュ
エリストの能力をもってすれば、ある程度引き出すことができる。
「今だマイシスター・アウナ! やつらをアウナス空間に引きずりこめぇ!」
「ありがとうマイシスター・エリン。でもそんなものはない」
(ふふふ、ロリをぺろぺろしていいのは私だけだ!)
 アウナは手首から先をダムドの爪に変えて必殺の突きを見舞い、凍りついた一体を貫通
してばらばらに砕いた。
「うおお……魔女コンボだぁ……!」
「落ち着けアキラ。魂狩られるぞ」
「薫ちゃん、あたしらの後ろにいな!」
「ははいっ! 今すっごいお姫様体質になってますね、私」
 味方勢は超常リアルファイトの光景に多少なり面食らう。それでも血の一滴も出ず破片
が霧散するという正常な人間ではありえない倒れ方を見せられた事で、あらためて異常性
を認識し、ためらいが打ち消されてゆく。
「つァッ! うおおりゃあああ!」
 さすがにレスラーあがりの巨漢サイクロプスは頼りになった。凍ったのも凍ってないの
も手当たり次第に豪快に投げ落とし、デュエリストに転向した今でも毎日鍛錬を欠かさな
いムキムキの剛腕で絞めあげる。
「……動きの鋭さと数はかなりヤバいけど、なんか脆くないか、こいつら」
「防御を全くしてないからだな」
「うわっ、守るどころか折れた腕で殴ってくるぞ!」
 合間を縫って薫に近付こうとする敵にはアウナが助けに入るより早く、薫を囲んで護衛
するアキラ、黒剛、美琴などが素早く連携して蹴散らしてしまう。
「急所を庇う思考は恐らく始めから無いわ。あと術者の流派の問題なのか術式に欠陥があ
るのか理由は不明だけど、数が多くなればなるほど分身の耐久力は下がるらしいの」
「はじめは違ったのか?」
「こいつらの最初の一体はやむなくDSCまで使ってしまうほど固かったわ……でもこれ
で十二時の襲撃は終わり――」
 片手で男の首を掴んで握りしめ、それを地面に叩きつけて破壊しながら、イラついてい
る風に声を発する。
「どんッどん、除去っちゃおうねええええええええっ!」
「除去っちゃうよおおおおおおおおおおおお!」
「んっ……!!」
 技を出した直後にある一瞬の硬直を狙って仮面の男がアウナに群がった。
 二方向からの襲撃では瞬殺が難しくなるな、一発か二発食らうのを覚悟で切り刻んでや
ろうか、そう思って身を固めた時――
「奸賊、死ねえい!」
 一体は打撃音とともに倒れ、残る一体は迅速に反応したアウナの急所突きで叩かれ、泡
になって消えてゆく。
「奸悪逆賊ことごとく誅戮。ふん、寝不足か、ブラックローズ女」
「マヤ……」
 駆けつけた終末ヶ岡馬耶が氷結界の虎将ライホウっぽいポーズでアウナを煽った。遅れ
てきて一体仕留めただけなのにこの威張りようはどうなんだ。
 これ以降に敵の影は見えず、多少ほっとした空気が流れる。
 しかしアウナの表情は以前にも増してこわばった。
「まだ終わったわけじゃねえ、ってんだろ?」
 美琴はイライラするアウナの表情を覗きこみ声をかけにゆく。
「さっき襲ってきた敵の総数は三十五体……午前〇時では総数七体、三時には十二体、六
時に十八体と法則性をもって増殖していたのが、ここへきて崩れた」
「つーことは三時間前はあんた一人で二十五体も連中をやっつけたのかよ!?」
「あれは囲まれて非常に焦ったわ。わたし一人では攻撃を完全に防ぐのが辛くなってきた
から、肉弾戦の得意な人に来れるだけ来てもらおうと思って、ええ、今このように」
「カードゲームのSSとはとても思えねえセリフだな……」
 と、ここで不服そうな顔を全開にしたライカが割り込んだ。
「ちょっとアウナ、じゃあ何であたしは呼ばれたのよ! いきなり呼ばれて不審者相手に
肉弾戦しろとか、そんなのムチャクチャじゃん。あたしは召喚勇者じゃないのよ」
「え……クサリ鎌の遠距離攻撃とキャンセル当身投げでテスタメントを完封したって武勇
伝を聞いていたのに。絵っしーが描いた絵もちゃんとあるわ、ほらこのフォルダの中」
「ああもう何なのそれ! 意味わかんないわよ!」
「落ち着いてライカ! ライカ落ち着いて!」
「ネネ、離してよ!」
 なにやらだいぶグダグダになってきた。
 荒ぶるライカはネネがどうにかなだめてショップ内へ連れていった……。
「しかしこれはどうしたものか」
 携帯電話を片手に湯納がアウナの隣にやってきた。さっきまで警察にとりあってもらお
うと電話をしていたようだ。
「処理の方法は限られる。この世のどこかに居るであろう本体を特定して、ドッペルゲン
ガーの召喚および襲撃をやめさせるか、あるいは殺害するほかないわ」
「物々しい限りです」
「ためしに奴らをひっくり返して持ち物を調べてみてもカードは見つからなかった。仮面
を外そうとしても消えてしまう。無いものは無いのだから、カードが持ち主に対象を取る
現象から本体を探知することはできない……。今回はわたしも困っているのよ」
「もしかしたら、警察の対サイコデュエリスト部署のブラックリストにでも、本体の男の
ことが載っているかもしれません。男に前科があるならそこからも判明します」
「警察……例の法則であんまり役に立たないって聞いたわ。協力してくれるのかしら」
「させます。して貰います」
「頼もしいわね」
「こんな時くらい動いてもらえなかったらたまりません。しかし探すにしても何か手掛か
りがなければ、かなり時間がかかるかと」
「カオルが奴とデュエルしたとき素顔を見ているそうだから、その証言から絞り込んで探
せないかしら。わたしは、あの多数のドッペルゲンガーは自身の似姿を丸まるコピーした
ものである可能性が高いと感じた。要するにカオルが見た顔面はイコール素顔……手掛か
りになりえると思うわ」
「わかりました。では薫さんを護衛しながら警察に掛け合うことから始めましょう」
「あっ……あともう一つ」
 アウナは自分の右手の中指を湯納に見せて、ちょんと爪の真ん中を指さした。
「このあたりに二つ、小さな穴をあけた跡があるのを見つけたわ。この目で見た限りでは
全てのドッペルゲンガーに全く同じものがあった。これもコピー元である本体の情報にな
りえないかしら」
「二点の小さな穴ですか……ふむ、もしかしたら何らかの医療行為によって出来た治療痕
かも知れません。たとえば指の先端部が打撲や骨折で鬱血した時は、爪に小さな錐で穴を
あけて瀉血することがありますから」
「すごい痛そうね」
「仮に鬱血の治療痕だとすればこれは大きな手掛かりになりますよ」
「ええ」
 周囲の協力者たちもその案には賛成なようで、これで当面の方針は決まったといえる。
 ほっとするにはまだまだ早いが、アウナのイライラも多少収まってきた。
「おぉ~い! あんたたち!」
 犯人を捕まえてやる! と常連客たちが意気込んだところで、通りのアーケードを駆け
てくる人がいる。
「ヒドウ? どうしたの慌てて」
 ショップmayの姐御ポジション、樋道蘭だ。今は肩にかかる黒髪ストレートヘアのウ
ィッグを着けている。
 いまだ交差点に居座って精一杯の笑顔を振りまく海外版キラー・トマトは「どうせアウ
ナあたりのペットだろ」と華麗にスルーしたようだ。
「あたしにもサッパリなんだがねぇ……店の準備をしようとしたら、変なヤツが何かブツ
ブツ言いながら意味もなく店の中をグルグル歩き回っててね。あたしが出ていけってさん
ざん怒鳴っても聞きゃあしない! ……で、なんか不安になったから腕っぷしの強いヤツ
を頼りにしちゃおうかなー、なんて思ったりしてさ」
「ふーん、どんな奴なの? 浮浪者?」
「小奇麗なスーツ姿で、あと顔にサギーみたいな変な仮面をつけていたよ。ジョキョ、ジ
ョキョって、なんか小声で繰り返してて気持ち悪いんだ」
「なん……だと……」

「キャアアアアアアッ!」

 金切り声と一緒に、ガシャァンと皿やグラスの割れる音が少し遠くから響いた。
 異変は一つだけにとどまらない。
 本屋はガラスが割れていくつかの本が外へ投げ出され、写真屋に至っては中から人が放
りだされて地に転がされている。コンビニと蕎麦屋から客が逃げ出すのも見える。
「まさかこれ、全部が奴の無差別攻撃だというの……?」
 悲鳴。悲鳴。悲鳴。
 偶然とは思えないタイミングで叫び声と破壊音が重なり、にわかに人々が逃げ惑う。
 mayが荒らされてゆく瞬間だ。
「ユノー……あなたはカオルとみんなを連れて、行って。わたしは警察署に行きたくなさ
そうな顔をしてる数名と一緒にドッペルゲンガーを始末して回るわ」
「息つく暇もありませんね……わかりました。何か分かったらすぐに連絡します」

 ……

「ぬるい! 軽い! 甘い! 脆い! 亀なの、あなたは?」
 薫たちと別れてから二時間ほどが経過した。
 アウナは何十体目かの仮面の男を地面にたたき付けてひねり潰し、時には救助活動の真
似ごとをしつつmayを駆け回っていた。
 それまでの現象も十分に意味不明なものだったが、仮面の男が薫の所在とは関係ない場
所に現れはじめたことでますます混乱させられる。
「切り開いたわ。もう逃げられるわよ、タツヒ」
「ひゃ~、恩に着るぅ~」
「ふう……ぶっ倒しても、ぶっ倒しても」
 時間とともに街には数を増やした仮面の男があふれかえるので、思わず破壊がトリガー
で増殖しているのではないかと思ってしまったほどだ。
 しかし自身に付与しているパーミ効果のフィルターには何の反応もないので、やはり仮
面の男の本体がドッペルゲンガーを増やし続けているのだと考えるほかない。召喚術師の
常識すら超えた異常な能力だ。
「ぜんぜん人手が足りないわ……自分を増殖させる方法、今度わたしも研究してみようか
しら、なんてね」
 湯納と薫のすぐそばに張り付いて守ることができないのが不安ではないと言えば嘘にな
る。だが警察署に行ったサイクロプス、美琴、アキラ、黒剛らの力を信用してもいる。
 警察署にはあんまり行きたくないエリンやサイバーマン、救助の途中で出くわしたモン
タージュ仮面やドゥカヴニー、果ては人情に多少篤いらしい双葉皐月組のデュエル極道な
どを駆り出したところで、その程度の人数では広いmayに対応しきれないのは当然のこ
とであった。
「クスクス……クスクス……」
「うn?」
 迷妄する思考をはらって振り向くと、逆光の中に二人の少女が立っているのが見える。
「人手が足りない……ククク……私たちを忘れてもらってちゃあ……」
「困るというものよ(ドドドドドドドド)」
 魂を狩る死霊から借りた大鎌(霊体なので常人には見えない)をぶんぶん振り回して戦
力アピールする得意げな顔の辻と、ジョジョ顔でなにやら威圧感を醸してジョジョ立ちす
るセシリアのコンビは妙に強そうだったが、
「ツジ、危ないからそれ仕舞って。セシリアは神父と協力して住人の避難をお願い」
 とりあえず一蹴した。
「っ……!」
 アウナの携帯に着信が入った。湯納からである。
 ちなみに待ち受けはギガプラントの写真だ。以前に数時間だけ湯納の顔写真を待ち受け
ににしていたこともあったが、何となくむずむずするからその写真はお蔵入りして観賞用
となっている。
「アウナさん」
「ユノー! 無事なの?」
「仮面の男の徘徊と襲撃は警察署内にも及んだため混乱はありますが、付き添ってくれた
人たちがよく守ってくれているので問題ありません。それよりも……」
「事件解決の手掛かりが見つかったのね」
「結論から言います。この騒動の原因とみられる人物『仮面の男の本体』は、その本名を
忌部清十郎《いんべ・せいじゅうろう》といい、現在は偽カード作りに加担した罪により
JUN特別刑務所に収監されている、凡庸なサイコデュエリストです」
「よく洗い出せたものね」
「証言をもとにした似顔絵だけではかなり時間がかかったでしょうが、治療痕の存在はか
なり有力な情報でした。あれは警察に逮捕拘留されている間に受けた治療だったようで、
そのカルテもしっかり残っています」
「本体がわからないのを良い事にあんな身も蓋も無い超常犯罪をやらかす人間だから、探
しきれないんじゃないかと内心思っていたわ。しかしブラックリストに載っている、を飛
び越えてすでに服役中というのは意外ね」
「こちらでは今この件を事件として扱ってもらい、忌部清十郎に迫る準備をしているので
すが、やはり正規の手段では時間がかかりすぎる」
「ええ、論外ね。死人が出るわ。こうなればわたしが自ら乗り込んで本体の男を止めるし
かない」
「……そう言うと思いました、あなたなら」
「ユノーでもきっとそうするのでしょう」
「それはまあ……他にやる人いないからしょうがないなぁ、ってなりますし」
「ふふ」
 警察があんまり簡単に手足のように動くので、ひょっとして湯納は警察の弱みでも握っ
ているんじゃないか? と思いつつも、時間がないのでスルーしておいた。
「無責任なようですが、お願いします。どうかmayを救って下さい。JUN刑務所の方
へはそれらしく通達してもらいます」
「なんとかするわ」
 電話を切り、肺の中の空気を入れ替える。
 その途端に限りない憤怒と憎悪で心が満たされていった。
「わたしに戦いを挑むのね……!」
 湯納正斗やカードショップmayの仲間たちが住む、この居心地のいい世界を無くした
くない……暗い感情の中に隠れるその思いがアウナの足を動かした。

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最終更新:2012年03月03日 18:24