魔導人形のお茶会

「くっそー、見つからねぇな《プディンセス》」
「人気高そうだしな。もうどこかでデュエル中かもしれん」

休日のmayランドで二人の男女がきょろきょろと辺りを見回していた。
美琴とアキラである。
二人はここmayランドに新しくオープンしたアトラクションを訪れていた。
《マドルチェ・シャトー》を模したお城を舞台にしたミステリーツアー、
可愛らしい内装とマドルチェモンスターに扮した店員が売りの大型喫茶店を主とした
【マドルチェ】がテーマのアトラクションだ。
現在そのオープン記念イベントが開催されているのである。
【マドルチェ】の罠カードである《マドルチェ・ティーブレイク》と同じ名を冠されたこのイベント。
mayランド内にいるマドルチェモンスター(着ぐるみ)とデュエルをし、
勝利すればそのモンスターのイラストが描かれたティーカップが貰えるというもので、
可愛いもの好きを中心に人気を集めていた。
タッグデュエルも可能ということもあってカップルや親子連れの姿も多い。

「べ、別にそこまでしてティーカップが欲しいわけじゃねぇけどよ。せっかくだしな」
「そうだな。せっかく休日に出てきたんだ。まだまだ時間はあるしゆっくり探そうぜ」
「お、おう」

そのイベントを知り二人はmayランドへとやってきたのであるが、
いまだにブツブツと言い訳をする美琴に苦笑しつつも
彼女のために《マドルチェ・プディンセス》の着ぐるみを探すアキラなのであった。

「お、見つけた」
「マジかよ! どこだ!?」

程なくしてアキラが《マドルチェ・プディンセス》(の着ぐるみ)を発見。
近くには《マドルチェ・シューバリエ》の姿もあった。
まだ誰にもデュエルは挑まれていないようで、園内を歩く人々に手を振り返している。

「頼もー!」
「……道場破りだろ、それじゃ」

美琴が愛嬌を振りまく2人の前にデートの邪魔をする悪役のごとく立ちふさがった。
彼女はアキラのツッコミを無視し、意気揚々とデュエルディスクを掲げている。
そんな美琴の様子をみて《プディンセス》と《シューバリエ》は顔を見合わせると、
何かを察したように頷きあい、揃ってデュエルディスクを構えた。
どうやら美琴とアキラを挑戦者のカップルだと認識したようだ。
アキラとしては美琴がデュエルをする間見学するつもりだったのだが、こうなっては仕方ない。
3人に続いてデュエルディスクを取り出すとデッキをセットした。

『このデュエルはTFルールで行われます。LP・フィールド・墓地はパートナー同士で共有し、
 先にLPが0になるか、ドローできなくなったプレイヤーがいるチームは負けとなります』
『デュエルでワタシ達に勝てたらティーカップをあげるわ』

《シューバリエ》と《プディンセス》が
イベントデュエルの説明をすらすらと読み上げる。
それぞれモンスターに合わせたキャラクター付けが徹底されており、中の人などいない!のであった。

「「「「デュエル!!」」」」

mayランドの一角でティーカップを賭けたデュエルがはじまった。
周りのお客たちもイベントデュエルの開始を聞きつけ集まってきている。

マドルチェペア
姫手札:5 騎士手札:5
LP:8000
 場:
墓地:

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:5 美琴手札:5
LP:8000
 場:
墓地:

『先攻はワタシ! ドロー! ワタシは《マドルチェ・マジョレーヌ》を召喚! 
 効果でもう1枚の《マドルチェ・マジョレーヌ》をサーチよ』(ATK1400)

フォークをホウキの代わりにした可愛いらしい魔女っこがフィールドに現れる。

『マジックカード発動、《マドルチェ・チケット》! これでターンエンドよ』

ふふんと着ぐるみの胸をそらすプディンセス。
安定した【マドルチェ】の動きであった。

「俺のターン! ドロー!」
(《マジョレーヌ》のATK自体は大したことはないが、《チケット》が厄介だな…)

相手にダメージを与えることは可能だが、《チケット》の効果でサーチを許してしまう。
加えて相手はマドルチェ同士によるタッグだ。その連携も考慮しなければならない。

「俺は《ジェネティック・ワーウルフ》を召喚、《マジョレーヌ》にアタック!」(ATK2000)

相手のバックは《チケット》1枚。アキラはひとまず攻めに出ることにした。
白い体毛の人狼がアキラのフィールドに現れ、魔女っこへと容赦なくその爪を振るう!

『く……けど、ワタシは《チケット》の効果で《マドルチェ・ミルフィーヤ》をサーチよ』
「カードを2枚伏せターンエンドだ」

マドルチェペア
姫手札:6 騎士手札:5
LP:7400
 場:《マドルチェ・チケット》×1
墓地:

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:3 美琴手札:5
LP:8000
 場:《ジェネティック・ワーウルフ》×1
   伏せ魔法罠×2
墓地:

『ボクのターン、ドロー! マジックカード《テラ・フォーミング》!
 《マドルチェ・シャトー》をサーチします』
「くっ、まずいな」
「気をつけろよ、アキラ!」
「ああ、わかってるさ…わかっちゃいるが、な」

そのまま《マドルチェ・シャトー》を発動する《シューバリエ》。
周囲の空間がお菓子で囲まれたファンシーなお城へと変化する。
《シャトー》と《チケット》。マドルチェペアの場にコンボパーツが揃ってしまった。

『ボクはボク自身を召喚、《ジェネティック・ワーウルフ》に攻撃します』(ATK1700+500)

着ぐるみの《シューバリエ》自身がフィールドに立ち、
ソリッドビジョンの《ジェネティック・ワーウルフ》を一閃!

「リバースカードオープン! 《幻獣の角》を《ワーウルフ》に装備だ」(ATK2000+800)
『やりますね……ボクは《チケット》の効果で《マジョレーヌ》をサーチします。
 カードを2枚伏せターンエンドです』

《シューバリエ》の可愛らしい剣を受け止め、装着された大きな角で反撃する《ワーウルフ》。
アキラが《幻獣の角》の効果で1ドローし、《シューバリエ》もサーチ効果で手札を増強する。

マドルチェペア
姫手札:6 騎士手札:5
LP:6800
 場:《マドルチェ・シャトー》×1、《マドルチェ・チケット》×1、伏せ魔法罠×2
墓地:

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:4 美琴手札:5
LP:8000
 場:《ジェネティック・ワーウルフ》×1
   《幻獣の角》×1、伏せ魔法罠×1
墓地:

「あたしのターン、ドロー!」

相手は【マドルチェ】デッキ。
まず警戒すべきは圧倒的な除去力を誇る《クイーンマドルチェ・ティアラミス》だ。
しかも相手の場にはすでに《マドルチェ・シャトー》がある。
美琴のデッキには《アマゾネスの里》の効果でアマゾネスモンスターをリクルートするタクティクスがあるが、
フィールド魔法の上書きは《ティアラミス》のコストをわざわざ用意してやるに等しい。
相手の場にマドルチェモンスターがいないとはいえ、迂闊なことはできない。
……と基本的に脳筋気味な美琴があれこれ考えているのは
こっそりと【マドルチェ】デッキを組んでおりその動き方を把握しているからなのであった。

「あたしは《ゴブリンドバーク》を召喚!
 効果で手札の《アマゾネスの剣士》を特殊召喚する!」(DEF0、ATK1500)

相手の残りLPは6800。
美琴の場にはATK2800の《ワーウルフ》がすでにおり、今☆4の戦士族モンスターが2体揃った。

(まだまだ序盤。伏せカードは気になるが、ここは攻めの1手だぜ!)
「あたしは、☆4の《ゴブリンドバーグ》と《アマゾネスの剣士》をオーバーレイ! 
 2体の戦士族モンスターでオーバーレイ・ネットーワークを構築! エクシーズ召喚!!
 現れろ、《機甲忍者ブレード・ハート》!」(ATK2200)

2体の戦士が光となって魔方陣のような穴へと飛び込んでいく。
そしてその穴の中から早足でニンジャが迫ってきた。(あのBGM:デーレーデーレー)

「《ブレード・ハート》の効果発動! なにもなけりゃこのバトルで終わりだ!!」

オーバーレイ・ユニットを1つ消費した《ブレード・ハート》は2回攻撃を可能とする。
《ワーウルフ》とのATK合計は2200×2+2800=7200と
マドルチェペアをオーバーキルできる数字だ。

『トラップ発動! 《鳳翼の爆風》! 《ブレード・ハート》をエクストラデッキに戻します!』
『よくやったわ、《シューバリエ》!』
「ちっ!」

さらに《シューバリエ》はコストとして手札から2枚目の《チケット》を墓地へと送っている。
《ワーウルフ》の攻撃は防げないが、
《ティアラミス》のコストを確保した上で美琴のモンスターを除去するという1手であった。

「あたしはカードを1枚伏せてターンエンド……悪ぃアキラ、急ぎすぎちまった」
「気にすんな。なんとかなるさ」

マドルチェペア
姫手札:6 騎士手札:5
LP:4000
 場:《マドルチェ・シャトー》×1、《マドルチェ・チケット》×1、伏せ魔法罠×1
墓地:《マドルチェ・チケット》×1

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:4 美琴手札:3
LP:8000
 場:《ジェネティック・ワーウルフ》×1
   《幻獣の角》×1、伏せ魔法罠×2
墓地:《ゴブリンドバーグ》×1、《アマゾネスの剣士》×1

『ワタシのターン! ドロー! ふふ、ライフの差は開いちゃったけどここまでよ!
 ワタシは《マジョレーヌ》を召喚して《マドルチェ・バトラスク》をサーチ!』
(ATK1400+500)

《プディンセス》が高飛車な声をあげた。
マドルチェペアの怒涛の反撃がはじまる!

『トラップカード発動! 《マドルチェ・ハッピーフェスタ》!
 手札から《バトラスク》を特殊召喚するわ!』(ATK1500+500)

モノクルを付けた少年執事がフィールドに現れる。

『続けてマジックカード! 《二重召喚》!
 《ミルフィーヤ》を召喚して、その効果でワタシをフィールドに特殊召喚よ!』
(ATK500+500、ATK1000+800+500)

あっという間に《プディンセス》のフィールドにモンスターが出揃う。

『ワタシは☆4の《マジョレーヌ》と《バトラスク》をオーバーレイ!
 2体のマドルチェモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!
 エクシーズ召喚! お願い、お母様!!』(ATK2300+500)

ついに《プディンセス》のフィールドに《ティアラミス》が姿を現す。
対象を取らないデッキへのバウンスという強力無比な効果を持ったマドルチェ達の女王。
《プディンセス》は母である女王の効果を使用し《チケット》と《マジョレーヌ》をデッキに戻すことで、
《ワーウルフ》と美琴の場の伏せカード1枚をデッキへと戻した。

『まだまだいくわよ! 《チケット》の効果で《シューバリエ》をサーチしてそのまま特殊召喚!』
(ATK1700+500)

ポーズを決めてフィールドに並び立つ着ぐるみの《プディンセス》と《シューバリエ》。
《プディンセス》のモンスター達の合計ATKは《シャトー》のパンプアップ効果もあって実に8300!
対するアキラ美琴ペアの場にはモンスターがおらず、伏せカードが1枚のみだ。

「美琴!」
「おう! リバースカード、オープン! 《サンダー・ブレイク》!」

フィールドの《プディンセス》に攻撃を許せば、残ったこの伏せカードも破壊されてしまう。
美琴はアキラが先のターンに伏せていた罠カードをここで発動した。
コストとして手札の《ゼンマイソルジャー》が墓地へ。

「あたしは《ティアラミス》を破壊するぜ! これで《プディンセス》の自己強化もなしだ」
『ぐぬぬ…お母様になんてことをー。ええい、みんなやっちゃいなさーい!』

マドルチェ達の3連撃を受け美琴のLP大きくが削られ、フィールドもがら空きとなってしまった。
ダイレクトアタックの衝撃で吹っ飛びそうになるのをなんとか耐える。

『せっかくお母様をお呼びしたのにもう! ワタシはこれでターンエンドよ』

マドルチェペア
姫手札:3 騎士手札:5
LP:4000
 場:《マドルチェ・プディンセス》×1、《マドルチェ・シューバリエ》×1、《マドルチェ・ミルフィーヤ》×1
   《マドルチェ・シャトー》×1、《マドルチェ・チケット》×1
墓地:《マドルチェ・ティアラミス》×1、《マドルチェ・バトラスク》×1、《二重召喚》×1

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:4 美琴手札:2
LP:3300
 場:
墓地:《ゴブリンドバーグ》×1、《アマゾネスの剣士》×1、《ジェネティック・ワーウルフ》×1、《ゼンマイ・ソルジャー》×1
   《幻獣の角》×1、《サンダー・ブレイク》×1

「俺のターン!」

ふたたびアキラのターン。
LPの差は大きくないものの、相手のボードアドは圧倒的だ。
しかし相手に伏せカードはない。
ここでフィールドを整えなければ美琴にターンが回る前に敗北してしまうだろう。

「とりあえずドローしてから考えるか……ドロー!」

ドローカードを見たアキラが笑みを浮かべる。

「《死者蘇生》発動! 墓地の《ゼンマイソルジャー》を特殊召喚だ」(ATK1800)

美琴が前のターンで墓地へと送り込んだモンスターだ。
効果で☆とATKを上げることができる戦士族モンスターである。

「続けて《賢者ケイローン》を攻撃表示で召喚」(ATK1800)
『☆4が2体……』
『ふん、なによ。いまさらランク4のモンスターエクシーズでも出すつもり? もう無駄なんだから!』
「それはどうかな?」

不敵に笑ってみせるアキラ。

「《ケイローン》の効果!
 手札からマジックカードを1枚捨て、相手のマジック・トラップカードを1枚破壊する!
 《マドルチェ・チケット》を破壊だ」
『うっ……』
「まだまだいくぜ!」

アキラの手が一枚のカードに伸びる。
彼の手に残された最後の手札だ。

「マジック発動、《トランスターン》!
 《ケイローン》を墓地へと送り、デッキから《ジャッカルの霊騎士》を特殊召喚するぜ」(ATK1700)

アキラは続いて《ゼンマイソルジャー》の効果を発動、☆を4から5に上げATKを400アップさせる。

「バトルだ! まずは《ゼンマイソルジャー》で《シューバリエ》にアタック!」

ゼンマイ仕掛けの戦士が剣を振るい、着ぐるみの《シューバリエ》と鍔迫り合う!
ATKは2200で互角。
お互いが破壊され、《シューバリエ》はフィールドからデュエリストの立ち位置へとしょんぼりと戻っていく。
《シャトー》の効果でカードはデッキに戻らず《プディンセス》の手札へと戻るが
《チケット》がないためリクルートはない。

「《霊騎士》で《プディンセス》を攻撃だ」
『ち、ちょっと!?』

犬頭の騎士が手にした剣で着ぐるみの《プディンセス》を切り伏せる!
《シューバリエ》に続いて《プディンセス》もデュエリスト立ち位置へと戻ろうとするが……

「《霊騎士》の効果でこっちに来てもらうぜ、お姫さま」
『な、なんですってー!?』
『ひ、姫ー!?』
「よくやった、アキラ!」

優雅に一礼し《プディンセス》を自分のフィールドに招くアキラ。
《霊騎士》の寝取り効果で《プディンセス》は手札に戻る前にアキラのフィールドへと特殊召喚されたのだ。
今はなき《ゴヨウ・ガーディアン》と同じ強力な効果。
守備表示であるため追撃はできないものの、《プディンセス》の奪取には別の狙いがあった。
アキラのフィールドへとすごすごと《プディンセス》が移動したところで……

「メイン2、☆5の姫様と《霊騎士》をオーバーレイ!
 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!
 エクシーズ召喚! 現れろ、《ZW-獣王獅子武装》!」
『やりたい放題じゃないのー!?』
「あー……」
「ま、こんなもんだ。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

自分達のフィールドに現れたのも束の間、
あっという間にオーバーレイ・ユニットになってしまい
デュエリスト立ち位置へと戻った《プディンセス》を残念そうに見ている美琴の姿が微笑ましい。
などと思いつつ、アキラはターン終了を宣言。
あえて《ZW》のサーチを行っていないのは、
おそらくもう自分にターンが回ってくることはないと判断したからであった。

マドルチェペア
姫手札:3 騎士手札:5
LP:3800
 場:《マドルチェ・ミルフィーヤ》×1
   《マドルチェ・シャトー》×1
墓地:《マドルチェ・ティアラミス》×1、《マドルチェ・バトラスク》×1
   《マドルチェ・チケット》×1、《二重召喚》×1

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:0 美琴手札:2
LP:3300
 場:《ZW-獣王獅子武装》×1
   伏せ魔法・罠×1
墓地:《ゴブリンドバーグ》×1、《アマゾネスの剣士》×1、《ジェネティック・ワーウルフ》×1、《賢者ケイローン》×1
   《野生開放》×1、《幻獣の角》×1、《サンダー・ブレイク》×1

『ボクのターン、ドロー!』

そろそろ決着がつきそうなことを察し、見守っている観客達も固唾を呑んで見守っている。

『《マジョレーヌ》を召喚します。効果でもう1枚《マジョレーヌ》をサーチです。
 姫様……ここは勝負に出ます!』
『やっちゃいなさい! ワタシを奪った挙句即エクシーズ素材にしたこと、後悔させてやって!』
『マジックカード発動、《二重召喚》! 2体目の《マジョレーヌ》を召喚します!
 サーチは《マドルチェ・ホーットケーキ》で』

《シューバリエ》のフィールドに再び☆4のマドルチェが2体揃った。
案の定《シューバリエ》はエクシーズ召喚を宣言する!
《ティアラミス》の特殊召喚を許せば《獣王獅子武装》と伏せカードがバウンスされ
ダイレクトアタックでアキラ美琴ペアの敗北なのだが……

『お願いします、女王陛下!』
「悪いな、騎士様」
『え?』
「リバースカード、オープン! 《強制脱出装置》! 女王様にはお帰りいただくぜ!」
『お、お母様ー!?』
『うぅ、なんてことだ。
 ……ボクは《ミルフィーヤ》を守備表示に変更し、カードを2枚伏せてターンエンドです』
「あとは頼んだぜ、美琴」
「おう、まかされた」

マドルチェペア
姫手札:3 騎士手札:3
LP:3800
 場:《マドルチェ・ミルフィーヤ》×1
   《マドルチェ・シャトー》×1、伏せ魔法・罠×2
墓地:《マドルチェ・ティアラミス》×1、《マドルチェ・バトラスク》×1
   《マドルチェ・シャトー》×1、《マドルチェ・チケット》×1、《二重召喚》×2

アキラ・美琴ペア
アキラ手札:0 美琴手札:2
LP:3300
 場:《ZW-獣王獅子武装》×1
墓地:《ゴブリンドバーグ》×1、《アマゾネスの剣士》×1、《ジェネティック・ワーウルフ》×1、《賢者ケイローン》×1
   《野生開放》×1、《幻獣の角》×1、《サンダー・ブレイク》×1、《強制脱出装置》×1

「あたしのターン、ドロー! っしゃー! いい引きだぜ!
 マジックカード《大嵐》! 全部ぶっ飛ばしてやらぁ!!」

絶大なバック除去力を誇る汎用魔法カード。
制限なのも納得の性能で一気にマドルチェペアのフィールドが吹っ飛ぶ!
お菓子の城も消え去り残されたのは守備表示の《ミルフィーヤ》のみだ。

「あたしは《獣王獅子武装》の効果発動! デッキから《ZW-風神雲龍剣》を手札に加える!」

アキラから託された《獣王獅子武装》の効果でさらなる《ZW》を手札に加える美琴。

「《召喚僧サモンプリースト》を召喚! 効果を発動し、デッキから《アマゾネスの聖戦士》を特殊召喚だ」

《シューバリエ》の伏せカードは《奈落の落とし穴》と《神の警告》であった。
もし先ほど《大嵐》をドローできていなければこの先の展開はなかったのだ。
今日の美琴は運がよかった。
あるいはティーカップが欲しいという彼女の強い思いがこの展開を招いたのかもしれない。

「☆4の《サモンプリースト》と《アマゾネスの聖戦士》をオーバーレイ!
 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!
 エクシーズ召喚! 現れろ、《No.39 希望皇ホープ》!!」(ATK2500)

美琴の右フトモモに39の数字が浮かび上がり光を放った!
命従士化より解放された時からの妙な後遺症である。
隣でアキラが苦笑しギャラリーも「ざわ…ざわ…」するが、
この時の彼女はデュエルに夢中でまったく気づいていなかった。

「《ホープ》に《雲龍剣》を装備! さて、バトルだ!
 まずは《獣王獅子武装》で《ミルフィーヤ》を攻撃!」

怯える子猫が赤い獅子に噛み砕かれデッキへと戻っていく。
これでマドルチェペアのフィールドにはモンスターが存在せず伏せカードもない。

「これで終わりだぜ! 《ホープ》でダイレクトアタック! ホープ剣・トルネード・ブリンガー!!」

赤龍が変形した刀を振るい《ホープ》がゆく!(ATK2500+1300)
轟剣一閃!!
マドルチェペアのLPはぴったり0になり、アキラ美琴ペアの勝利がコールされた。

「っしゃー!! 勝ったぁ!」
「おう、やったな美琴!」

その場の勢いでハイタッチを交わすアキラと美琴。
そんな二人にギャラリーから盛大な拍手が送られる。

『おめでとうございまーす。それでは勝利の記念にこちらをどうぞ』
『もー、仕方ないわね。持っていきなさい』

《シューバリエ》と《プディンセス》が特製ティーカップを二人へ差し出した。
デュエル中どこに仕舞っていたのかは謎である。

「お、おう」
「って、これ、《プディンセス》と《シューバリエ》じゃなくて《マドルチェ・ワルツ》柄か?」

シングルデュエルとは別に、タッグデュエル用に用意されたものなのだろう。
受け取ったティーカップには《プディンセス》に振り回される《シューバリエ》のイラストが描かれている。
おそらくはカップル向けだと思われるお揃いの特製ティーカップであった。

「どうする、美琴? 交換してもらうか?」
もともと美琴は《プディンセス》のティーカップを欲しがっていたためアキラはそう提案したが……

「…………えへへ」

嬉しさのあまり顔がにやけて仕方ない美琴の姿がそこにあった。
どうやらこの絵柄でも問題なさそうだ。
ギャラリーからは若いカップルをからかう声援なんかも聞こえてくるが、
それすらも美琴の耳には入っていないようであった。
後々思い出して悶絶するんだろうなぁとアキラは苦笑する。

「しっかし、ペアカップか……これ、やっぱり俺も使わなきゃいけねぇんだろうなぁ」

さすがに美琴に2つとも押し付けるわけにもいかない。
それに二人で勝ち取った記念の品なのだ。
家族になにか言われるだろうが仕方ないよな、とまんざらでもない感じで自分を納得させるアキラなのであった。



おしまい


























目的を果たした二人はそのまま夜までmayランドを漫喫した。
今はナイトパレードを見ているところだ。
《魔導人形の夜》と題されたそのナイトパレードも【マドルチェ】アトラクションの一環であるが、
着ぐるみのマドルチェモンスター達が電飾の施されたフロートと共に園内を1周する、
という要は某ネズミの国のアレと似たようなものである。
パレードにはしゃぐ姿を他の客に見られたくないであろう美琴のことを考慮して、
二人は園内でも極力人の少ない場所に陣取っていた。
ふと。
ティーカップの入った包みを大事そうに抱えパレードに見入っていた美琴が、
隣でパレードを見ているアキラの方へと視線を移した。

「な、なぁアキラ」
「ん? どうした?」

きょろきょろと辺りを見回し美琴がアキラに声をかける。
その表情はナイトパレードの光に隠れて見えない。

「ち、ちょっと目ぇつぶれ」
「っ――」

美琴が告げた言葉にアキラが息を呑んだ。
目を瞑りつつ咄嗟に脳裏に浮かんだのはクリスマスのこと。
あの時も、美琴にそう言われ目を瞑ったところ、不意打ちでほっぺにチューをされたのだ。
一瞬唇が頬に触れるだけのものであったが、確かな柔らかさと熱を得た感覚がよみがえり、
内心テンションが上がるアキラであったが……

美琴が息をのむ音が聞こえる。

「……いつもあたしのワガママを聞いてくれてありがとな」
「気にするなよ。お互いさま、だろ」

そっとためらいがちに美琴の手がアキラの頬に触れる。

「あたしは――」

ナイトパレードのまばゆい光の中。
二人の影が重なり、
それを見ていたマドルチェ達がさりげなく視線を逸らした。



おしまいのおしまい

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最終更新:2013年05月22日 19:41