夏といえば海。
海はmayにもしっかりとある。ついでに山もあるが今回は割愛する。
普段は夏なんか相手にもならない熱さを持つデュエリストたちも、デュエルを忘れてしまえば普通の人間。
夏は暑い。だから涼しい海で水着になって寛ぎたい。
「夏ね」
菊葉が言う。旗から見れば女子小学生にしか見えない彼女は、スクール水着姿で椅子に座っている。
「夏だな」
そんな魅力的な姿をしている幼馴染に、エリートはそう返して後は無視する。
あの「海かプールに行きたい」アピールに付き合っている暇はない。
「海に行きたいわね」
水着姿の菊葉は今度は言葉で訴えてきた。
「夏といえば海よ」
「海!確かにそれはいいな!菊葉レベルの可愛いロリがたくさん水着姿でいる!しかも開放的だからきっと良いこと出来るぞ!」
ロリコンのエリンが乗っかった。
実際に女児に手出しもできないくせにとエリートは心の中で毒づいたが、しかしうるさいのが二人増えた。
だが考えてみよう、今のライトロードは暇だ。
余りにも暇なもんだから湖なんかは長期休暇の届けを出している。恐らく家で同人誌でも書いているんだろう。
「夏休みになるから、ライトロードの新規加入者を募集したいのだが…」
「今、ライトロードの新規加入者を募集したらだいたいシャドール使いが釣れるわね」
菊葉の言葉にエリートは言葉を詰まらせる。
秘密結社ライトロード。その目的は全盛期のライトロードの力を取り戻すことだ。
だが、正直な話その目的はほぼ達成されている。ただそれは闇の力を取り込んだ異質なものではあるが。
しかし裁きの龍を始めとした圧倒的なパワーと墓地アドバンテージは一時期に比べ有名となり、恐れられている。
ライトロードデッキ自体はなんだかんだで好調だが、それとは裏腹に組織ライトロード自体はかなり弱体化している。
事務所の殆どを売り払い、畑仕事でなんとか倒産は防いでいる状況だ。育てている組織員の殆ども逃げるように去っていった。
もしこの状態で新しい組織員を連れてきても、効果は薄いだろう。
デュエルできると思ったら土を耕す羽目になり、そのままフェードアウトが目に見えている。
というわけで、ライトロードは活動自体がかなり厳しい。そしてエリンや犬はなんとなしに事務所にきているだけの状態だ。
「…海、行くか?」
頭が硬いエリートも、今回ばかりは折れた。
「ロリを探すぞ!犬!!!」「ワン!!」
海についた瞬間、ビギニとパレオの上にパーカーを羽織ったエリンが即座に消えた。
「相変わらず元気ね、下半身が」
速攻でふたりきりになってしまった菊葉とエリートだが、既に二人の愛は終わっている。
ここから進展することはないだろう。
それに、このmay海岸には妙に知り合いが多い。
「げっ!!ライロのエリートやろう!お前海でもその格好かよ!」
「意外と涼しいぞ!お前もライロに入らないか?」
尼曽根美琴。アマゾネス…とか可愛いカードを使う不良娘だ。
彼女は結構露出の高い水着を着ており、同時に発育もよろしいため、色々と目の毒だ。
少なくとも隣にいる菊葉よりかは女としての魅力は有るだろう。
「ライロなんかに入るわけねーだろ!クソがっ!お前もデートしてんならおとなしくしていろ!」
「いや俺は保護者みたいなもんだ…で、だ 「も」ってなんだ?「おまえも」って」
「な!!べべべべ別にアキラがどうとか言ってねーじゃねぇかよ!!」
(可愛い…)
エリートと菊葉は、なんか勝手に自滅した純情娘を見てほっこりした。
「流石月蓮様!海でもそんな格好をしていて平然としていられるなんて!」
ライトロードが浜辺にいる。その情報を受けて邪神結社のメンツもそこに来ていた。
「うむ」
メリアに褒められた月蓮は満更でもない様子でそう返事を返す。
本来ならここから、「どのみち世界は滅ぶ、さすれば、海では水着…という常識すら形骸化するであろう」とかそんな感じの台詞が続くところだろう。
「私も月蓮様のような強い人間になりたいです」
そういう弱いメリアはセパレートの水着を着ている。
絶望し死にかけていた彼女であったが、最近は多少なりとも生きる気力が戻ってきたらしく、オシャレすることを思い出したらしい。
「うむ」
月蓮はそんな彼女に対して可愛いとは思うがそれまでだ。襲おう、とか、愛している。とは思わない。
世界は滅ぶ。そんな滅ぶ世界に何かを生み出しても意味は無い。
…だがそれ以前に。
「月蓮様、世界が滅ぶ前に、勿体無いですから色々楽しみましょう。かき氷とかどうですか?」
「頼む」
月蓮は今、死ぬほど暑くてまともな思考がそろそろ不可能になっていた。
ちなみに他の邪神結社の皆様はインドア派だったり元芸能人だったり、水着娘を見ると即拉致るダメ女だったりするので海には着ていなかった。
「ニンニン」
風間琴乃と夏という季節はとても似合う。
彼女は色々間違った知識の末、露出の高い服装を好んだからだ。
今の彼女は紐ビギニ姿をしていた。一応隠すところは隠しているが、紐が切れれば即恥ずかしい場所が顕になる状態である。
ちなみに彼女は自称忍者だが全然忍べていない。
「琴乃…お主、また忍者言葉が出てるぞい」
それに対し、彼女の祖母風間菊乃が苦言を呈する。
祖母と言いつつ見た目には琴乃の妹にしか見えない。
「あ! ご、ごめんなさいお祖母様」
「まぁこんな場所におったら気分が高まるもの仕方あるまい、ワシも若い頃はのぉ」
「あ、その話し興味があるでござ…です!」
菊乃は孫娘が興味を示したことが嬉しくて色々話そうとする。
だが、それはすぐにやめた。
「…まずはここを離れるぞい」
「え?なんででござるか?」
「盗撮者がいる」
「ちっ!なんでバレたんだ!」
スクール水着姿で茂みに隠れているありかが舌打ちをする。
彼女は探偵カメラで風間の二人を盗撮していたが、気付かれてしまった。
「あの二人は絶対にアヤシイ!そう!まるで忍者のように!」
珍しくダ・メー探偵の推理はあたっていた。その証拠に少し眼を離した隙に、二人の忍者は丸太になっていた。もはや本物はいないだろう。
「そしてぇ!!」
ありかは今自分の姿を再確認する。
水着に樹の枝が引っかかり、動けない状態だ。
「探偵とは、ピンチと背中合わせの存在である!!」
結局彼女は夕方まで身動きできなかった。
巨大な闇が蠢くmay。
デュエルという楽しいゲームが、闇のゲームとなり老若男女に襲いかかるこの街だが
しかし彼女たちは弱くはない。
故に夏は海で楽しむ。闇を打ち払うために…。
最終更新:2014年07月16日 09:40