第2の刺客! TGvsインヴェルズ

馬耶「しかしよくわからない。何ゆえ巫女は改めてnovについて知りたがるのだ?」

馬耶は美琴たち数人を前に不思議そうな顔をしていた。
その手には1冊の本が握られている。
馬耶がnovについて一通り語ったその翌日。
改めて美琴の病室を訪れた彼女が持ってきたものだ。
曰く、馬耶の愛読書の1つだそうである。

美琴「いや、だからあたしは別に過去の記憶がどうとかはねーし」
馬耶「そうではなくてだな。過去世を抜きにしても、巫女がnovについて知らぬのは解せない」
美琴「はぁ? こっちこそ解せねぇよ。なんであたしがnovについて知ってなきゃいけねぇんだ?」
馬耶「なんで、と言われてもな」

いぶかしむ美琴に馬耶が手にした本を差し出した。
本のタイトルは『失われた大陸nov―伝説を読み解くデュエル統一理論』。

アキラ「おい、これ・・・」
美琴「あん? この本がどうかしたか? よくあるトンデモ本だろ?」
馬耶「トンデモではない! この本はnovの消滅に関して考古学的調査を元に画期的な考察を―――」
アキラ「だぁーっ話がすすまねぇ! いいから著者名見ろって!」
美琴「著者名ぃ?」

『失われた大陸nov―伝説を読み解くデュエル統一理論 著者:尼曽根 真人』

美琴「・・・・・・・・・はぁ!? 父さん!?」
馬耶「うむ。珍しい苗字であるからして、巫女の父君だと思っていた」
アキラ「そういや、美琴の親父さん考古学者だったな」
進「だから終末ヶ岡は不思議がっていたのか。娘なら父親の著書くらい知っているはずだと」
美琴「あー、あたし考古学とかあんま興味ねぇからなぁ。読んでねぇや」
馬耶「私はてっきり巫女が過去世を父君に伝えそれを本にしたものだとばかり」

美琴の乾いた笑いが響く。
手がかりは思わぬところにあったのだ。
美琴は慌てて携帯を取り出すと父親の番号をコールした。

美琴「ああ、父さん?」
尼曽根父『やぁ美琴さん。君から連絡をくれるのは珍しいですね』
美琴「ちょっと聞きたいことがあってさ。novについてなんだけど」
尼曽根父『nov? ああ、本、読んでくれたんですね』
美琴「あー、いや本は読んでない。とにかくnovについて知ってることを掻い摘んで説明して」

長電話のあと、父より聞き出した内容を美琴が説明する。
novは伝説こそ少ないものの古代に実際存在し、異次元へと消えたのではないかというのが尼曽根父の考えであった。
ツヴァインシュタイン博士が提唱したデュエル統一理論。
この世界を含めた12の異世界が存在するというその理論を元に、
かつてこの世界に存在したnovは、何らかの要因によって大陸ごとこの世界とは異なる世界・異次元へと移動したという説である。
あまりに荒唐無稽すぎるため、「学会からは総スカンを食らいました」と尼曽根父は嘆いていたそうだ。
そのため、本自体も発行部数が少なくマニアの間では幻の1冊扱いとなっているらしい。

アキラ「つまり、美琴を襲ったやつは異次元へと移動したnovからこの世界へやってきた?」
進「尼曽根の父親とその女の言葉を信じるなら、そういうことになるな」
馬耶「異次元からの侵略者だな! 巫女よ、再び共に戦う時が来たのだ!」
美琴「シャムスの逆さピラミッドの時みてぇにか?」
馬耶「逆さピラミッド? はて。なぜ私はその件に関わっていないのか。解せない・・・」

馬耶の言葉はさらっと無視しつつ美琴・アキラ・進は考察を進めていく。
ファトスシャムスの逆さピラミッド。
以前mayを襲った災厄であり、次元の壁を突き破りmay上空に巨大なピラミッドが出現した事件だ。
紆余曲折の末シャムスが黒山雄一に倒されたことで事件は終結している。
あの時と同じように、異次元にあるnovからナオミはこの世界にやってきたのではないか?
3人はそう考えていた。
普通ならば到底信じられないような話だ。
しかし逆さピラミッド事件然り、サイコデュエリスト然り、邪神結社にライトロード。
mayの街にはデュエルモンスターズにまつわる超常的な現象・存在が少なからず存在する。
彼らにとって異次元からの侵略者などいまさら大きく驚くことではなかった。

進「だが、やつがどこから来たか仮説を立てたところであまり意味はないぞ」
アキラ「ああ。結局やつが今どこにいるのかがわからなけりゃなぁ」
美琴「ぐぬぬ・・・」
進「尼曽根を襲ったように、同じような事件を起こしているかもしれん。そうなればニュースになりもするだろう」
アキラ「セキュリティが動くかもしれねぇしな。今のところ、なにかあるまでは打つ手なしだなぁ」
馬耶「あいにく私も異次元のものをサーチできる能力にはまだ覚醒していないな。口惜しい」

彼らは気づいていなかった。
尼曽根父の立てたnov異次元消失説。
それはmayに伝わるとある異次元空間の伝承と酷似していることに。
カクリバン空間・オスカー城―――

砂嵐を写すモニターの実った木。群生する花も茎も葉もすべて黒い向日葵。
風もないのに回り続ける風車と、人気のないゴーストタウン。
聳え立つ西洋風の城。
そこは異次元と呼ぶに相応しい奇妙な空間だった。

オーカス「無粋だな」

しかし今。
城の主・オーカスは自身の愛するカクリバン空間の風景に余計なものが混ざっているのに憤っていた。
城のバルコニーから見えるカクリバンの大地。
そこに大きなひび割れが走っていた。
ただ地面が裂けているわけではない。空間そのものが裂けているのだ。
数日前に出現したその裂け目は日に日に大きくなっている。
そしてその裂け目の奥。
異次元嵐が吹き荒れるその先に、島のようなものが浮かんでいるのが見える。

オーカス「カクリバンの修復がうまくいかなかったか?いや。あの島・・・我がカクリバンのものではない」

もともとカクリバン空間は異次元へと消えた土地が集まってできた場所である。(※決戦!カクリバン参照
裂け目の奥に見える島もその1つ、というわけではなさそうだ。

オーカス「カクリバンにここまで影響を及ぼすほどのものがあの島にはある・・・父上の文献にあたってみるか」
アメリカ・I2社―――

尼曽根母「例の件ですが、間違いありません。ここ数日、世界各地で発生したカード強奪事件。
     その被害者はいずれもナンバーズのカードを奪われています」

一人の女性が報告書を読み上げている。
彼女は『尼曽根 美百合』。I2社に勤める美琴の母親である。
報告の相手はI2社の会長であった。

尼曽根母「被害者は皆、奪われたナンバーズは市販のものやカードショップで購入したものだと証言、
     奪われる理由に心当たりは全くないそうです」
会長「時として、デュエルモンスターズのカードには不思議な力が宿ることがありマース。
   カードの精霊、シグナーやサイコデュエリスト、闇のカードなどデース。
   おそらく、奪われたナンバーズは持ち主が気づいていなくとも特別な力を宿していたのでしょう」
尼曽根母「それらを集めて回っている者が居る・・・さしずめナンバーズハンターといったところでしょうか」
会長「その最初の被害者が貴方のドーターだというのは皮肉なものデース」
尼曽根母「あのバカ娘・・・エジプトの次はクラッシュとは。今度会ったらこっぴどく説教せねば―――すみません。失礼しました」
会長「構いまセーン。心配でしょう。ナンバーズハンター・・・何事もなければいいのですが。胸騒ぎがするのデース」
ふたたびmayの街―――

アキラ・馬耶と別れた進はチームXGの基地を目指していた。
異次元絡みの情報が何かしら舞い込んでいるかもしれないと考えたのだ。
基地のカモフラージュ先である事務所はもう目と鼻の先、という所までさしかかった時。
ガシャァァァァンッ!!
突如として進の背後でガラスの割れるような音が響いた。

進「っ!?」

慌てて振り返った進の視線の先で、ガラスが砕けたように空間が裂けていた。
そしてその裂け目の前に立つ一人の男。

???「黒剛進様、ですね?」
進「誰だ、あんた」

突如として現れた謎の人物に警戒する進。
オールバックの黒髪にメガネ、執事服を身に纏ったその男は、

???「わたくしの名前はオルバと申します。novより参りました」

恭しく一礼しそう名乗った。



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最終更新:2015年06月05日 05:25