千年王女再び!カクリバンに昇る太陽!

オーカスの力により、カクリバン空間に飲み込まれてゆくmay町。
その瘴気によって力を発揮できないデュエリスト達に、オーカス率いる六性群の軍勢が襲いかかる。
オーカスとのデュエルの中、ライフ僅かで倒れる美琴。
そこに現れたのは、死んだ筈のファトスシャムスだった!

「お主がわらわの後釜か…なかなかの男前よのう」

カクリバン空間の瘴気にあてられ、美琴の中にあったファトスシャムスの魂が思念体として復活したのだ。
大切な友達を守るため、ファトスシャムスはオーカスにデュエルを挑む!

「仮初の体は長くは持たん。オーカスとやら、ライフポイントを受け継いだわらわが相手になろう」
「死にぞこないめが…カクリバン空間の塵にしてくれる!」

次回、カードショップmayと愉快な常連達
『千年王女再び!カクリバンに昇る太陽』!!


*



「…他愛もない」

くずおれる少女の喉元に、無慈悲に突きつけられる切っ先。

「くっ…」

突きつけられた剣の主…白黒甲冑の騎士を操るは、真紅の装束を纏った青年。
邪神結社幹部である彼の能力により、カクリバン空間と融合を始めたmay町。
カクリバンの浸食を食い止めるべく、町のデュエリスト達は襲い来る猛威に立ち向かう。
刺客の手を潜り抜け、尼曽根はついに元凶であるオーカスの下へと辿り着いた。…だが。

「尼曽根美琴。もう少し骨のある女だと思ったがな」

オーカスのデュエル戦術を前に、為すすべもなく膝を着く美琴。
圧倒的な実力の前に、展開した切り札も次々と蹴散らされた。
何とかこのターンはもちこたえたものの、ライフポイントはたったの100、手札はたったの二枚。

「貴様のターンだ。…それとも、サレンダーするか?」
「…誰がッ」

息も絶え絶えながら、美琴はオーカスをキッと睨み付ける。
道中の六性群とのデュエルの連続で疲れ切った体に、闇のデュエル下における3000ものライフダメージ。
彼女は肉体・精神とも、既に限界状態にあった。

(クソッ…なんで…!)

オーカスの圧倒的実力によるプレッシャーが、彼女の精神を蝕む。
デュエルディスクに伸ばした手の震えを前に、美琴は自分に言い聞かせる。

(ビビってんじゃねえ、尼曽根美琴!あたしがここで踏ん張らなきゃ町が…皆が…)

手のひらで両頬を叩いて無理矢理気合いを入れると、美琴は震える手でデッキに手をかける。

「あたしの…ターン…」

疲労とプレッシャーで視界が霞み、ドローしようとする手が空を切る。

「くそっ、あたしの・・・ターン・・・」

『待つのじゃ、美琴』

…呼び止める声と、肩に置かれた手の感触。異国の香水のオリエンタルな芳香が鼻を付く。
振り返った美琴は、疲弊しきった顔をほころばせる。

「全く、無茶な性分は相変わらずじゃのう」
「シャムス!」

元邪神結社幹部、ファトスシャムス。
かつて逆さピラミッドによるmay町侵略計画を企てるも、美琴と友情を築いて改心。
死んだ後は霊体となって美琴の体を間借りしていた・・・筈だった。

「下がっておれ。ここは妾に任せるがよい」
「でも、何で…」
「カクリバン空間に漂う瘴気が、霊体である貴様の粒子と反応し仮初めの肉体を作り上げた…といった所か」

冷静に考察するオーカス。

「町をこんなにしたのはお前か。妾も昔似たような事をしたが、なんとも風情に欠けるのう。あの薄汚い雲は何じゃ?お天道様が見えんではないか」
「俺の名はオーカス・ファイゲンバウム。貴様の話は父上から聞いたことがある」
「ほう、光栄じゃのう。噂に聞いた『知られざる最高幹部』の忘れ形見が、妾の後釜という訳か」

オーカスの長身を上から下までじろじろ眺めると、にやりと笑うファトスシャムス。

「よくよく見れば、なかなかの美男子よのう。…どうかの、妾の召使いにならんか?」
「シャムス・・・」

緊迫した場に似合わぬ軽口に美琴がよろめく。

「生憎だが、俺は子供に興味はない」
「冗談の通じん奴じゃのう。…美琴、デュエルディスクを貸せ」

返事を待たずに美琴からディスクを剥ぎ取ると、その腕に装着し新たにデッキをセットする。
久しぶりの生身の感触に、ファトスシャムスはワキワキと両手を動かす。

「お主もこれ以上か弱い女の子をいたぶるのは本意ではあるまい。ここから先は妾が相手じゃ」
「・・・この町の侵攻は結社の命によるもの。そのデュエルを受ける事で、俺に何のメリットがある?」
「ノリの悪い奴よのう。それを言われると返しようがないわい」

むくれるファトスシャムスに、オーカスは言葉を続ける。

「・・・だが、俺も貴様の実力には多少の興味があった。そのデュエル、受けてやろう」
「ありがたい。話が分かる男よ、ますます好みじゃ」
「ただし、一つ条件がある。・・・今すぐ4枚のドローをしてもらおう」
「…ドロー・・・だと?」

ファトスシャムスがピクリと眉を動かす。

「そんな貧相な手札では貴様の力を見るまでもなく終わってしまうからな。ライフポイントも4000まで戻させて貰おう」
「敵の施しは受けん…と言いたい所じゃが、正直願ってもない申し出じゃ。些かプライドは傷つけられたが、呑まん理由もないのう」

言われるがままに、4枚のドローを行うファトスシャムス。

「後悔するでないぞ?」
「シャムス・・・気をつけろ・・・!」
「案ずるな美琴。そこで英気を養っておれ」
「・・・そうとも」

美琴を気遣うファトスシャムスの言葉に、オーカスが同調する。

「親友の二度目の死に様・・・そこでゆっくりと見ているが良い」

「「デュエル!!」」

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最終更新:2015年05月10日 03:06