エクシーズ

今までの出来事を少し整理することに・・・
まずはじめに

カードショップの子供達からデッキを巻き上げる“早乙女 統真”が登場
・・・それを賭けてデュエルすることに
     ↓
そのデュエルに勝利するもデッキは返ってこず・・・
早乙女は今まで奪ってきたデッキを処分すると宣言
     ↓
奴の行動が目に余ったのか、早乙女 統真の使用人“エマ”の独断により
無事皆のデッキを奪還することに成功
     ↓
しかしそのことがバレてしまいエマは統真の怒りを買うことに、
命令でエマは佳美ちゃんを人質に私とデュエルをする
     ↓
デュエルに勝利し無事佳美ちゃんを確保する
落ち着きを取り戻したエマから早乙女の事情を聞くことに
     ↓
話によれば昔ある女性からかなり屈辱的な敗北を与えられたことで
性格が荒れ始めたとの事・・・それから噂である“運命を自分の意のままに出来るカード”を
求め始めるようになる
その途中で何らかの異変が起こり
性格が激変、今に至る
     ↓
後に、待ち伏せていた早乙女ともデュエルを行う羽目となる・・・
     ↓
早乙女に止めを刺そうとした時、いきなり謎の生命体が乱入
     ↓
デュエルで謎の生命体にダメージを与えられない中、“地縛神 Aslla piscu”に宿る精霊“アースラ”が登場
アースラの力により謎の生命体を消し飛ばしデュエルは強制終了
     ↓
アースラの話によれば謎の生命体の正体は“テスタメント”という存在で、“破滅の使者”とも呼ばれている
大昔エジプトに伝わる一説、“人間は精霊の侵略を受けていた”事に大きく関わっている
そいつらは計四体存在し、どうやら対処法は“洗礼を受けたカード”で作り上げたデッキで
勝つしかないっという事    ←今ココ

工事現場の一件から一週間が過ぎ、私は学校の屋上で昼食をとっていた・・・

━エクシーズ━

今日の昼食はカレーパンに卵サンド、そして飲み物はコーヒー牛乳・・・
卵サンドを食べていると

『おいライカ、あいつは何故棒を持って振り回しているんだ?』

屋上からグラウンドを見ていたアースラが不思議そうに私に尋ねてきた

「あれ?・・・あれ野球してんの」
『野球?野球とはなんだ?』
「・・・・・・。」

野球の説明をするのが面倒だ・・・アースラは私以外見えない
恐らく私がアースラが宿っているカード“地縛神 Aslla piscu”を所持しているからだと思われる
そして当然・・・

「ライカー!、ちょっと聞いて聞いて!ビッグニュースよ!!」

ネネにも見えてない

「何騒々しい・・・」
「判明したのよ今度取り入れられる新しい召喚方法!」
「へぇ・・・そう」
「その名も“エクシーズ”召喚よ!“エクシーズ”!!」
「耳元でうるさい・・・」
「まだその“エクシーズモンスター”は“ガチガチガンテツ”と“グレンザウルス”しか判明していないけど結構面白くなりそうよぉ?今後のDM」
「あぁそう・・・私教室戻るから」
「ちょっと待ちなさいってライカ!」

私が教室へ戻る途中、アースラが尋ねてきた

『どうしたライカ、ツレんことして・・・』

アースラの問いに対し私は別のことを聞いた

「そもそも何で私のそばうろちょろとしてんのアンタ・・・」
『何故って決まっているだろ、お前を“破滅の使者”の魔の手から守ってやるためだ・・・ありがたく思え』
「図々しい、・・・そもそもそんなうろちょろする必要ある?あの“地縛神”のカードに収まって大人しくできないの・・・?」
『じっと収まっていろというのか・・・?まるで俺をどこかの野犬みたく言ってくれるな!』
「あーもぅうっさ・・・・ッッ!」

一週間前に話を戻そう
エマを連れ私と統真は病院に向かった・・・その病院は知っての通り佳美ちゃんが運び込まれた病院、
従って当然・・・・

「なんであんたがいんのォッッ!!!!」

ネネもいることになる
統真の姿を目にしたネネは速攻蹴り飛ばし、続けて2~3発ぶん殴る・・・まるで格ゲーのコンボを見ているようだ

「ちょ・・・グハッ!・・・・な、なんだ君はいきなり!!なにするんだ!!」
「“なにするんだ!!”じゃねぇよこのボケなすがぁぁ!!今日という今日は完全にブチギレたわこのくぁwせでdrftgyふじこlp;@:「」・・・・・・」

最後のほうは完全に怒り任せの発言で何言ってるかわからない・・・それほど怒り狂っているのがよくわかった

「じぃちゃん・・・ちょっとネネ止めてくれない?」
「おぉ!いいぞぉ!!!これネネちゃんやめんかね!!」
「離せコラァァああああ!!!!このクソヤロオおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

じぃちゃんの人並み外れたパワーを前になすすべなくネネはそのまま病院を強制退場

「な・・・なんなんだ今の・・・クッ!痛ッテ・・・・ッッ!!」
「ここ来る前にあんたが前まで何やってたのか話したでしょ・・・」
「いや、ちょっと待ってくれ・・・冗談だろ!?本当に俺が子供からデッキを取り上げたりエマを追い詰めるようなことをしたって言うのか!?」
「私も今あんたをぶん殴ってたネネも当然被害者・・・あのネネの怒りっぷりを見て私の言ったことが嘘ではないってのが十分にわかったでしょ・・・」
「そんなまさか・・・・俺が・・・・ッッ!?」

そういい統真はその場に座り込んだ・・・まるで力が抜けていくかのように

「そんな・・・馬鹿なこと・・・俺が・・・・か・・・・・」
「残念だけど、証人は他にもいるのよ・・・なんなら紹介してあげようか?」
「・・・・・。」

そのまま統真は黙りこんだ・・・
すでに夜、辺りは暗くなってもう誰もいない病院の待合室の椅子に統真を座らせた私は
あの話を切り出してみることにした

「それで話は変わるけど、あんたはどこまで記憶があんの?」
「・・・・・どこまでって・・・」
「いいから答えて・・・とても重要なことだから」
「・・・・・・。」

自分の記憶を懸命に辿っているのか・・・黙り始める統真、
一刻が過ぎた時だろうか、統真は重い口を開けて言った

「・・・首だ」
「は?・・・“首”?」
「そう・・・思いだした、俺はある空き地で“首”を・・・女の・・・いや、あれは“少女の生首”だった・・・・」
「“少女の生首”ですって?」
「そうだ、あれは雨の日だった・・・宙を舞う“少女の生首”を俺は見たんだ・・・気味が悪かった・・・俺はとうとうおかしくなったのだと思ったよ・・・・ただその生首は俺に語りかけてきたんだ」

『お兄さん、お兄さん・・・もしかして何か探しているのかな?何を探しているのかな?それはこの世にあるモノ?それともこの世に存在しないモノ?』

「普通なら少女とはいえ“生首”だ・・・そのうえ宙を浮いているモノと来たもんだ・・・誰だって逃げるさ・・・俺だって逃げだす・・・そう、逃げ出すはずだったんだ・・・
本当は、ただその生首の声の影響かどうかは知らないが・・・頭がボーッとなってきて
ふと気付いたらなんと言い現わせればいいのかわからないような異様な生物がその生首と共に俺を見下ろしていたんだ、俺はその時はさすがに死を覚悟したよ・・・肝が冷えた。
だが次に気付いた時には見知らぬ工事現場の中でエマと一緒に倒れていたんだ…」
「それが今日の・・・今さっきの事?」
「あぁ・・・本当になぜあんなところで横たわっていたのか思い出せないんだ・・・笑っちまうだろ?こんな話信じろってのが無理な話だ・・・それは分かってる・・・」
「・・・・・・・。」
『ライカ・・・』

アースラが私を呼ぶ

「どうしたの?」
『恐らくこの早乙女という男は声にではなく存在による精神の異常を起こしたのであろう・・・』
「なにそれ・・・どういうこと?」
『“テスタメント”は言わば亡霊と化した“生きた”人間・・・つまり肉体がない精神だけの存在だ、
やつらの精神は禍々しく構成されていて、普通の人間が奴らと直に出会えば精神に異常をきたし、負の感情に浸食されてしまうんだ。
そして負一色に染まった精神を奴らは支配し体を乗っ取りはじめる・・・
通常なら浸食された人間は精神を崩壊させてしまうのだが早乙女の場合は初めから精神に何らかの負荷が掛かっていたおかげで奴らの浸食が“軽度”で済んだんだ・・・』
「“軽度”?」
『通常の精神状態が0として奴らの浸食を受け終えた状態・・・負一色に染まった精神が100としよう・・・0から浸食を進めてしまうとその精神の土台がそれに耐え切れず
65から70のところで崩壊し始め一気に100まで浸食されてしまうのが本来の成り行きだ、
しかし早乙女の場合は何らかの負荷で奴らと出会う前から精神が50・・・いや60の所まで負の感情で染まっていた・・・
それが幸いし精神の土台が崩壊することなく奴らの支配を終えた後も何事もなく話ができている・・・本来なら廃人化しているところだぞ?
まぁ初めからある程度負に染まっていた状態だったがため、奴らと出会ってすぐに共鳴を起こし
体を乗っ取られてしまったんだろうが・・・』
「その何らかの負荷というのが・・・・エマが言っていた例の女性とのデュエル・・・・」
『そのデュエルについての詳細はよく知らんが恐らくそれが原因だろう・・・』
「・・・・・・・。」

私は思った、もしそうなら
その“例の女性”は「まさか前から早乙女 統真が“テスタメント”と出会う危険を察知していたのではないか?」と
だとしたらその“例の女性”はいったい何者なのだろうか・・・

「・・・早乙女」
「ん?」
「あんた、エマから聞いたんだけど前に“ある女性”とデュエルをして負けたんだって・・・?」
「!?」

統真の顔が険しくなった・・・が、私はそのまま話を続けた

「そいつは一体誰?何者?」
「・・・・・な、なんで今そんな事を聞くんだ・・・・?」
「いえ、仮説としてなんだけど・・・もしかしたらその“女性”は“この件について何か知っているのではないか・・・”と思ってね」
「な、何だって!?」
「まぁあくまでね・・・それで一体どこの誰なの?その“女性”ってのは」
「・・・・俺の通う高校の女子生徒だった奴だ・・・」
「え?あんたの高校の・・・女子生徒!?」
「あぁ・・・今は転校してどこにいるのかはわからないがな・・・・」
「その人と仲のいい友人なら何か知ってるってことね・・・」
「あいつにそんな奴は居ない筈だ・・・容姿はよかったが何かと謎が多い奴でな・・・不気味過ぎで誰も付き合おうとはしなかったんだ無論俺もその一人だ・・・あいつは何て言うか・・・
次元が違う気がしてな」
「そう・・・・次元ねぇ・・・まぁその場で買ったパックを開けて束ねただけのカードであんたの植物族デッキ叩き潰すぐらいだから
よほどまともじゃないんでしょうねそいつ・・・」
「はッ・・・アレには正直参ったよ、まさかあんなふざけたデッキで負かされるとは思わなかったからな・・・さすがに苦汁を飲まされた気分だった」
「その“女性”・・・名前は何て言うの?」

「あいつの名は“須賀 カリン”だ」

「・・・・須賀・・・・カリン・・・ッ!?」

何故か私は統真が言った、“須賀 カリン”の名を聞いて、
心が酷く締め付けられるような苦しさを感じた
これは・・・・淋しさなのだろうか・・・とてもつらい気持ちが込み上げてくる

「なんだ・・・もしかして知っているのか?“須賀”の事・・・」
「・・・・いえ、知らないわ」

そう、知らない・・・知らない筈・・・なのに、どこか遠い昔、その名を聞いた気がする
とてもつらく・・・そして淋しいこの感じはいったい何なのだろうか・・・
思い出そうにもまるで記憶のタンスを開けるとその時の記憶が収まっていないかのように、思い出すことができない

「“カリン”かぁ・・・・」

しかし今その“須賀 カリン”の居場所が分からず会って話を聞くことはできない

「居場所が分からないのなら仕方がないわね・・・」
「それより・・・」
「?」
「まだ信じられないんだが・・・もし君が言ったことが本当の事なら・・・俺は取り返しの付かないことをしてしまったことになるな・・・
自分の意志でやったことではないとしても“俺がしでかした”ことに変わりはない・・・明日から、どの面下げて生きていきゃいいんだろうな・・・
こう見えても俺は人間関係を大切にはしていたんだ・・・それが今となっちゃ修復不能になる始末・・・こりゃどうしたもんかな・・・」

統真は座ったままの状態で俯いた・・・想像でしか考えられないがもし私が逆の立場なら・・・
今まで積み上げてきたものが一瞬でなくなってしまうのは正直へこむと思う
こういうときは「ガンバレ」だとか「またやり直せばいい」というものなのか・・・だけど私は
よくドラマとかで出てくるこの台詞・・・実をいうと“嫌い”だ
確かに自分がしでかしたこととはいえ今精神的に参っている相手にさらにガンバレというのは酷なことだ
だから私はこう言うであろう・・・

「今無理に決めなくてもいいんじゃない・・・?」
「え?」

私の言葉に統真は顔を上げた

「確かにあんたが言うにやってしまったことはもうどうにもならない・・・誰もその時間を巻き戻すことができないんだからね・・・それは生きている者の宿命、
でもだからといって今気落ちしている精神状態で結論を先走ろうとするのも、どうかと思うわ・・・」
「じゃぁ・・・・俺はどうすれば・・・・」

その台詞に私は飽きれてため息をついた

「あんたね・・・今言ったこと分かんなかったの?・・・・今は休め・・・休んでいいのよそして頭の中を一度、ちゃんと整理させて・・・
これから自分がどうするのかを
そこを懸命に
そしてじっくり
考えればいい
まぁそれを考える前にあんたにあることを教えておいてあげる」
「あること・・・って?」
「少なくとも、“私は事情を知っている”・・・
だから、あんたは今全てがなくなっているわけじゃない・・・その点を踏まえた上で、自分が納得のできる答えを探しなさい」
「・・・・」

統真はまた俯き、そして・・・・

「・・・・・・すまない・・・」

謝罪の言葉が出てきた・・・今までの成り行きで本当に当てにはしていなかった言葉であった
本人の意思でやってはいなかったことではあるが目に余る行為が多かったことに対し、今嫌気がさしていないと言えば嘘になる・・・
その言葉が私たちに対しての謝罪なのかどうなのかは定かではない、
しかし、はっきりと聞こえたその言葉で、私は今までの事を大抵は水に流してやろうと思った

病院の出入り口━、

「俺はひとまず、気持ちに整理が付くまでエマの見舞いをするつもりだ・・・」
「そう」

統真には今までの経緯について話はしたがエマの魂が今抜かれていることについてはまだ言ってはいなかった
恐らく話してもまた混乱を招くだけだろうと思ったからだ

「もしなにかあったら連絡をくれ・・・俺でも何らかの助けにはなるはずだからな・・・」
「え?・・・いや、それはありがたいけど今は自分の状況をしっかり考えたら?」
「はは、そのことなら心配するな・・・自分の事だ、自分でどうにかしてみせるよ」
「そう、わかった・・・何かあったら連絡するわ」
「あぁ、じゃあな」

こうして私は統真と別れた
そして一週間が経ちあれから何の進展もないまま日々を過ごしている

自宅━、

私は一人帰宅した
今日もネネからカードショップへ行くのを誘われたのだが今日は乗り気ではなかった
私は自分の部屋に入りネネから借りっぱなしのデッキカタログを机の上で帰宅途中立ち寄ったコンビニで購入したサンドイッチとピザマンを食べながら
ページをパラパラとめくっていた
どうも自分の使っているデッキの安定性に不安を感じたからだ
“フォーチュンレディ”に“アンデット”を組み合わせているデッキなだけに
必須のカードが多くて収集付けられていない状態に陥っていた
あの時はうまく回ったものだと自分でも驚いている

「んー・・・・いっそのこと“フォーチュンレディ”だけで固めてみようかしら?」
『さっきから何をグチグチと言っておる?』

カタログを読んでいる横でアースラがまるで動物園の猿がエサを食っている様子をマジマジと見ている子供のような眼差しで私を見ていた

「私の部屋に出てくるなと何度言えばわかんのあんた・・・」
『仕方なかろう・・・俺は今お前のデッキに入っている“地縛神 Aslla piscu”に宿っている精霊なのだからな・・・お前から離れることはできぬさ』

私はデッキから“地縛神 Aslla piscu”を抜き取り窓の外へ放り投げた

『ちょ!お前何をやってるんだ!!!!』

そう言いながらアースラは窓をすり抜けカードを探しに外へ出ていった

「・・・・やれやれ、これで静かになる」

実は投げるフリしてカードは持っている・・・
何が“離れることができない”だ・・・嘘っぱちが
私はアースラが今も必死にカードを探している中電気を消して就寝した


何時間たっただろうか・・・確認しようにもできない・・・
近くに時計がないから?
いいや違う・・・何故なら、私は今“夢”を見ている最中なのだ
またいつもと同じ白い空間にいる夢を見ている

「またこの夢か・・・」

もう何度目なのだろうか・・・2年前まではそれなりにいろいろな夢を見ていたはずなのに・・・
いつになったらこの夢を見ずに済めるのか・・・?

『ライカ?・・・おい!』

私は呼ぶ声に気づき視線を声のした方へ向けた、そこにはアースラが浮きながらこっちを見ていた・・・
というか睨んでいる

『なんてことをしてくれたんだお前は・・・まさか俺をだましていたとはな!』
「・・・・・?・・・・何の事?」
『とぼけているのかお前は!!俺の宿ったカードを外に放り投げるフリをして俺を弄んだな!!?』
「・・・・・・あー・・・・」

夢を見ているせいかアースラが何を言っているのか最初辺りは全く理解できなかったが
徐々にそうしたことをやったのを思い出してきた

「そういえば寝る前にそんなことやったわねー・・・というかあんた夢にも出入りできんの?正直夢にまで出てくるなんて迷惑なんだけど・・・」
『お前は・・・・ッッ!!・・・まぁいい、本当ならばこのまま起き上がるまで説教をしてやろうと思ったが・・・今はそれどころではないからな!』
「?」
『・・・“テスタメント”だ、奴らの一人・・・別のタイプが攻めてきた』
「な・・・なんですって!?」

私は夢から覚めてその“テスタメント”と交戦しようとした・・・が、

『まて!落ち着けライカ!』

アースラがそれを止める

「何よ!今私の所にきてんでしょ!?そいつが!」
『いいや、今はまだお前の前には表れていない・・・そしてやつが現れたのは現実ではなくこの“夢”の中だ』
「・・・・・・・・は?」

私はアースラの話を聞いて愕然とした・・・“夢”?
“夢の中”にテスタメントが出てきたの?・・・・何を馬鹿げたことを言いだすのかと思ったが
アースラは私の様子を見て悟ったのか説明を始めた

『ライカ、前に話をしたと思うが“テスタメント”は肉体が存在しない“精神”だけの存在だ・・・つまり、奴らは現実世界だけじゃなく、
“夢の中”にも潜入し攻め込んでくる・・・』
「・・・・・・・・え?」
『ハッキリ言うとだ・・・奴らに現実と夢、両方から狙われていることになるんだ・・・今お前の状況はな』
「・・・・嘘でしょ」

現実と夢から狙われるって・・・それじゃ私に心休まる日がないってことじゃない・・・

『現実同様に奴らは他の者の夢の中に入り込み支配による精神汚染を始める・・・だが、安心しろ、
俺がいる限り夢の中での侵入はさせん・・・隠蔽して奴らからお前の夢を察知させ難くしている』
「・・・・・はぁ、何よ・・・そうならそうと先に言いなさいよ・・・」

私はアースラの話を聞いて胸を撫で下ろした

「でもそれならなんで私の夢の中に現れたのよ・・・?それなら起きた後でもよくない?」
『・・・・・。』

アースラは左手で人差し指と中指を立て、前に出しこう言った

『理由は“2つ”ある・・・まず一つ、万が一奴がお前の夢に気づいた時、すぐに交戦できるよう精神を整える時間を設ける為
・・・そして2つめ、奴が出てきたのは“他人の夢の中”・・・・今やつは、』

“桂木 ネネの夢の中”にいる』

「な・・・なんですって!?」

私は驚愕した
今ネネの夢の中で“テスタメント”は精神の汚染を始めているのだ

『ここから俺の力でネネの夢に行くことも可能だ・・・それとは別にネネの支配後奴をこのままやり過ごすこともできる・・・どうする?』
「行くに決まってんでしょ、変なこと聞かないで頂戴」

私はアースラの問いに即答する、
親友の危機だ、放っておくことはできない

『ふっ・・・お前ならそういうと思った、だから今お前の夢に現れたのだ・・・行くぞ!今ならまだ間に合う!!掴まれ!!!』

私はアースラが差し伸べた手に掴まった
私とアースラの体を光が覆いものすごい勢いで飛び上がった、
不思議なことに飛び上がるときの勢いや衝撃は体に感じることはなかった・・・恐らく覆っている光の影響なのだろうか
飛んでいる途中周りが薄暗くなり、まるで宇宙の中勢いよく飛んでいるスペースシャトルの窓の外を見ているかのように
星々が通り過ぎていくような風景に変わった
この白く光っているものは別の人の“夢”なのだろう・・・その時一瞬そう思った

『着くぞ!』

飛んでいる先が別の白く光るモノと違い、そこだけ青白く光り輝いていた、これがネネの夢なのだろう
私とアースラは青白い光の中に入った
その先は青い炎が燃え盛る風景が広がっていた

「ネネ!」

着いたと同時に私はネネを呼ぶ・・・がどこにも見当たらない
そこにいたのは大男・・・なのだろうか、遠くから見ていて分かったのは
大柄な体系で両腕が異様に長い巨漢が一人宙を浮いていた
こいつが別の“テスタメント”なのだとすぐに悟った

『ぬ?なんですかあなた方は・・・この夢に別の存在が現れるなんてこれは奇妙ですね・・・』
『ふん、わざわざ夢を渡ってきたんだよ!お前を叩き潰すためにな!!』
「・・・・ッ!」
『おや、なるほどそうでしたか・・・ならばあなた方は、私の“敵”ということですね・・・?これはこれは丁重にお相手差し上げなくてはなりませんね・・・ふっふっふっふっ!』

その“テスタメント”は見た目とは違い丁寧な言葉使いをしていた
そして前の奴よりよく喋る

『さぁて、一対一でやりますか?二対一ですか?二対一の変則ルールであればあなた方にお任せしますよ』
「こいつ、かなりの自信家ね・・・ッ!」
『敵の使用するデッキがよくわからん・・・気を引き締めていけライカ!』
『ほぅ、一人で私に挑みますか・・・わかりました、それでは通常のルールでお相手してさしあげましょう!』

そういい巨漢の“テスタメント”は指を鳴らした
その瞬間私と巨漢の“テスタメント”の腕にデュエルディスクがいつの間にかセットされていた

「なるほど、ここは“夢の中”・・・なんでもありってことね」
『ライカ、奴と闘う為のデッキを頭の中で思い描け・・・そうすればデュエルディスクにデッキが現れるはずだ・・・!』
「わ、わかった・・・!」

私はアースラの言う通り目を閉じデッキを頭の中で思い描いた・・・すると空だったデュエルディスクのデッキ入れにデッキが現れた
中身を確認してみるとそのデッキは確かに私が今使っているデッキそのものだった

『現実世界と違うのはこの夢の中でのデュエルは“洗礼力”の事は考えなくていい!俺の宿したカードだけでなく別のカードでも奴に攻撃を与えられる』
「・・・・・!?」
『気にせず奴をぶちのめせ!!』
「Ok・・・わかった!でもその前に一つ確認しておきたいことがあるわ・・・そこの“テスタメント”!」
『ぬ?なんですか?』
「あんた・・・この夢の主っての?そいつを・・・ネネをどこへやったの!?」

私の問いに巨漢の“テスタメント”が不気味な笑みを浮かべた

『ほぉ、この夢の主はネネという方でしたか・・・さぁ、私がどうしたと思いますかな?・・・ふっふっふっふっふっふ!!
この私に勝てたら教えて差し上げますよ!!』
「・・・・ッ!!」

『デュエル!』

私と巨漢の“テスタメント”のデュエルが始まった

『先行は私がいただきましょう!ドロー!!』

“テスタメント”がカードを一枚引く

『私は“ゴブリンドバーグ”を召喚!』

“ゴブリンドバーグ”星4/地属性/戦士族
攻1400/守 0
このカードが召喚に成功した時に発動できる。
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
この効果を発動した場合、このカードは守備表示になる。

『私は“ゴブリンドバーグ”の効果を発動!手札から、“ガガガマジシャン”を特殊召喚!!』

“ガガガマジシャン”星4/闇属性/魔法使い族
攻1500/守1000
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に
1から8までの任意のレベルを宣言して発動できる。
エンドフェイズ時まで、このカードのレベルは宣言したレベルになる。
「ガガガマジシャン」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
このカードはシンクロ素材にできない。

「何あれ・・・あんなモンスター見たことない・・・!?」
『ふっふっふっふ・・・・さぁ!行きますよぉ!!私は“ゴブリンドバーグ”と“ガガガマジシャン”で“オーバーレイネットワーク”を構築!!!』
「はぁ!?オーバーレイ!?」
『エクシーズ召喚!!さぁ!現れなさい!!“No.39 希望皇ホープ”!!!』

そういい、“テスタメント”のフィールドに“No.39 希望皇ホープ”と名乗るモンスターが現れた

「な、“エクシーズ召喚”何なのこの召喚方法!!?」
『なんてことだ・・・・攻撃力2500・・・初手から上級モンスターを召喚してくるとは・・・ッッ!』

巨漢の“テスタメント”とのデュエルはまだ始まったばかりだ━

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最終更新:2016年09月22日 04:23