デュエル発見伝(後編)

西院・金岡「「決闘(デュエル)!!」」



西院 倖一
LP:8000 手札:5枚
場:
墓地:

金岡 刃
LP:8000 手札:5枚
場:
墓地:



金岡「先行は俺が貰う!俺はPゾーンに《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》をセッテイング!」
西院「メタルフォーゼ……ペンデュラムデッキか!」

金岡のデュエルフィールドの右端に「1」のペンデュラムスケール表示と共にモンスターの姿が浮かび上がる。

金岡「次いでもう一方のPゾーンに《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》をセッテイング……」
西院「この瞬間!手札の《PSYフレームギア・δ》の効果発動!そいつの発動を無効にする!」

魔法カードとしての発動を無効にされた《ビスマギア》はモンスター効果を発動することもなく墓地へと送られる。
さらに《PSYフレームギア・δ》の効果により、《δ》と《PSYフレーム・ドライバー》の2体が西院の場に特殊召喚される。

金岡「PSYフレームだと……!?面倒なカードを使ってくれる……!」

自分の戦略が妨害されたことに舌打ちしながらも、次の一手へと思考を巡らす金岡。
西院と金岡、両者の手の内が明らかなったことで、デュエルは本格的な駆け引きへと移行してゆく。

金岡(PSYフレームはカウンター能力に特化した反面、自発的な攻め手に乏しい……ならば、守りを考える必要はなし。次の攻めへの布石を作る……!)
金岡「再度Pゾーンに《メタルフォーゼ・スティエレン》をセッテイング!
   《スティエレン》のP効果発動、《ゴルドライバー》を破壊し永続罠《メタルフォーゼ・コンビネーション》をセットする!」

メタルフォーゼ共通のP効果によって自軍のカードを犠牲にカードをセットする金岡。
Pモンスターの特性によって破壊された《ゴルドライバー》はEXデッキに移動し、これもまた次なる手の布石となる。

金岡「更にカード1枚をセットし、ターンエンドだ」
西院「このエンドフェイズ、俺の場のPSYフレーム2体も除外される」



西院 倖一
LP:8000 手札:4枚
場:
墓地:
除外:《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレームギア・δ》

金岡 刃
LP:8000 手札:1枚
場:《メタルフォーゼ・スティエレン》(Pゾーン)、《メタルフォーゼ・コンビネーション》(伏せ)、伏せ魔法・罠×1
墓地:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》
EXデッキ:《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》



西院「俺のターン、魔法カード《サイコ・フィール・ゾーン》発動。
   除外されているPSYフレーム2体を墓地に戻し、《PSYフレームロード・Ω》を守備表示で特殊召喚する!」

先程除外されたモンスターを媒体とすることで、フィールドを経由することなくシンクロモンスターの召喚を行なう。
時を駆けるサイキッカー《PSYフレームロード・Ω》が西院の場に出現した。

金岡「早速エースモンスターのご登場か。もっとも、守備表示のモンスターなど脅威ではないがな」
西院「フン、俺は《PSYフレームロード・Ω》の効果を発動。こいつと貴様の手札1枚を次の俺のスタイバイフェイズまで除外する」

金岡の手札の1枚《ハーピィの羽根箒》が浮かび上がり、《PSYフレームロード・Ω》と共に異次元へと消えていく。

西院「フィールド魔法《PSYフレーム・サーキット》発動。更にカード1枚をセットしターンエンド」

西院の場が基盤模様のような発光が走る異空間へと変貌し、そのままターン終了が宣言される。

ハル「折角相手の場にモンスターがおらんっちゅうのに……!あのデッキ、戦い方がまどろっこし過ぎやで!」
キタヤマ「だが、次のターン《PSYフレームロード・Ω》を攻撃表示にすることで、攻撃の起点とすることができる。
     更に特殊召喚されたPSYフレームを素材にシンクロ召喚を行なう《PSYフレーム・サーキット》が存在することで相手も迂闊に動けない。
     西院君にとって理想的な立ち上がりといえるだろう」



西院 倖一
LP:8000 手札:2枚
場:《PSYフレーム・サーキット》、伏せ魔法・罠×1
墓地:《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレームギア・δ》、《サイコ・フィール・ゾーン》
除外:《PSYフレームロード・Ω》

金岡 刃
LP:8000 手札:0枚
場:《メタルフォーゼ・スティエレン》(Pゾーン)、《メタルフォーゼ・コンビネーション》(伏せ)、伏せ魔法・罠×1
墓地:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》
EXデッキ:《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》
除外:《ハーピィの羽根箒》



金岡「俺のターン。まずはセット状態の《メタルフォーゼ・コンビネーション》を発動!《スティエレン》のP効果でこれを破壊し、《錬装融合》をセットする!」

金岡は再びP効果を使用し、メタルフォーゼの要となる融合カードをセットする。

金岡「更に破壊された《コンビネーション》の効果発動、デッキから《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》を手札に加える。
   こいつを残りのPゾーンにセッティングし、効果発動。Pゾーンの《スティエレン》を破壊し、《メタルフォーゼ・カウンター》をセット」

西院の手札誘発に怯むことなくなおも金岡はPカードを発動、着々と場を固めてゆく。

金岡「そして空きとなったPゾーンに《メタルフォーゼ・シルバード》をセッティング!これで☆2~7のモンスターが同時に召喚可能となる!
   ペンデュラム召喚!!EXデッキより甦れ!《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》!《メタルフォーゼ・スティエレン》!」

2つのPカードが時空の揺らぎを生み、EXデッキに眠っていた2体のモンスターが金岡の場に出現する。

西院「この瞬間、手札の《PSYフレームギア・α》の効果発動!
   自身と《PSYフレーム・ドライバー》を特殊召喚し、デッキから《PSYフレームギア・β》をサーチする。
   そして、《PSYフレーム・サーキット》の効果を発動し、シンクロ召喚を……」

金岡がモンスターを特殊召喚したことに反応して《PSYフレームギア・α》を発動、シンクロ召喚に繋げようとする西院。
しかし……

金岡「そいつを待っていたぞ!貴様のモンスターが特殊召喚した時、罠発動!《底なし落とし穴》!」
西院「何っ!?」

西院の場の《PSYフレームギア・α》と《PSYフレーム・ドライバー》の姿が底なし沼の中へと消えていく。
やがて、裏守備表示に変更された2枚のカードが沼より浮かび上がった。

金岡「《底なし落とし穴》は相手の場に召喚されたモンスターを永続的に裏守備にする!これでもうちょこまかと逃げ回ることは出来んぞ!」
西院「く……!」

西院は歯噛みする。
自分フィールドにモンスターが存在しないことを効果発動の条件とするPSYフレームにとって、モンスターを場に縛り付ける《底なし落とし穴》はまさに天敵といえる。
加えて《PSYフレーム・ドライバー》と《PSYフレームギア》の守備力が0である点も、ことメタルフォーゼ相手では致命的である……!

金岡「先程セットした《錬装融合》を発動!場の《ゴルドライバー》と《スティエレン》を素材に融合召喚を行なう!
   錬成せよ!すべてをなぎ倒す剛の力!《メタルフォーゼ・オリハルク》!!」

錬金の力によって人機一体となった勇士《オリハルク》が、地を砕き金岡のフィールドに降り立った。

ハル「まずいで!《オリハルク》がおる時、全てのメタルフォーゼが相手に倍の貫通ダメージを与えられるようになる……!
   西院のモンスターどっちかが攻撃されるだけで5600の大ダメージや!」
パラフィリア「それだけで済めばいいけどね。彼はまだ、通常召喚権を残している……!」

今の金岡の手札は0枚。
だが融合召喚によって墓地へ送られた《錬装融合》は墓地からデッキに戻すことで1枚ドローできる効果を持っている。

ガルム「ですが、西院さんのライフを0にするには攻撃力1200以上の下級メタルフォーゼが必要となる。
    今のところこの条件に合致するのは《シルバード》と《ゴルドライバー》の2種のみ、そうそう引けるとは……」
サイバーマン「甘いぞ。ドローとはただの確立論で語れるものではない。
       ドローがデュエルの流れを形作る一方で、デュエルの流れがドローに影響を及ぼすことがあるのも事実!
       そして今!デュエルの流れは確実にあの金岡という男に傾きつつある!」

不穏な空気が漂う中、金岡は《錬装融合》の効果発動を宣言する。

金岡「墓地の《錬装融合》をデッキに戻し、シャッフルの後、カード1枚をドローする……宣言してやろう、この1枚にてお前に引導を渡してやるとな!」

金岡はデッキをシャッフルし、大きく呼吸を行なうと、カードを……引いた!
周りの全ての人々が固唾を飲むなか、金岡のとった次なる行動は……

金岡「引いたぞ!《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》!通常召喚だ!」

無常にも金岡がドローしたのはワンショット・キル条件を満たす攻撃力1900のモンスターであった。
場に集結した2体のメタルフォーゼが西院に止めを刺さんと迫り来る。

金岡「バトルだ!《オリハルク》で裏守備の《PSYフレーム・ドライバー》を攻撃!小僧!カードの発動はあるか!?」
西院「……無い、《PSYフレーム・ドライバー》への攻撃を通す……!」
ガルム「そんな……!西院さん!」

《オリハルク》の両腕から振り下ろされた戦斧が《PSYフレーム・ドライバー》に叩きつけられる。
そして発生した衝撃波が西院を飲み込み、彼のライフは2400に減少する。

金岡「……む?」

しかし、ここで金岡はある異変に気付いた。
《オリハルク》の攻撃がクリーンヒットしたはずの《PSYフレーム・ドライバー》が、表側表示でフィールドに残っている。

西院「手札の《PSYフレーム・マルチスレッダー》の効果を適用した……場のPSYフレームが破壊される時、こいつを墓地に捨てることでその破壊を無効にする……!」
金岡「ほう……だがダメージまで無効にできる訳ではない。これで終わりだ!《ゴルドライバー》で攻撃!」

金岡の攻撃宣言を受けた《ゴルドライバー》が再度《PSYフレーム・ドライバー》に攻撃を仕掛けようと襲い掛かる。

西院「永続罠《PSYフレーム・アクセラレーター》発動!ライフ500をコストに《PSYフレーム・ドライバー》を除外する!」

ここで西院は唯一残されていた伏せカードを発動した。
急加速によって飛び立った《PSYフレーム・ドライバー》が次元の彼方へと消えていく。

滋井「ええい!往生際の悪い奴よ!今更モンスター1体を逃がしたところで、何の意味があるというのだ!金岡先生!さっさと止めを刺して下され!」

だがここで西院はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

西院「意味なら大アリだ、これで仕込みは全て終わった!アンタらに見せてやるぜ、この状況をひっくり返すとっておきのコンボをな!」
滋井「なぬ!?……こ、コンボだと!?」
西院「《アクセラレーター》のもう一つの効果!
   PSYフレームが戦闘以外の手段で場を離れた時、手札のPSYフレーム1体を特殊召喚できる!来い!《PSYフレームギア・β》!」

先程サーチされたチューナーモンスター《PSYフレームギア・β》が姿を現す。

西院「更に墓地の《PSYフレーム・マルチスレッダー》の効果発動!俺の場にPSYフレームギアが特殊召喚された時、こいつを墓地から特殊召喚する!」

もう1体のモンスターが西院の場に出現する。
これでチューナーとそれ以外、シンクロ召喚の素材がフィールドに揃ったことになる。

西院「そしてフィールド魔法《PSYフレーム・サーキット》の効果を発動!
   PSYフレームの特殊召喚をトリガーとして、PSYフレームモンスターのみを素材にシンクロ召喚を行なう!
   俺は☆6《マルチスレッダー》に☆1《PSYフレームギア・β》をチューニング!!」

《PSYフレームギア・β》が光輝くリングへと変換され、《マルチスレッダー》を包み込み、新たなモンスターへ再構成する。

西院「シンクロ召喚!焼き尽くせ《ブラック・ローズ・ドラゴン》!」

西院が呼び出したのはシンクロ召喚時に全体破壊効果を発揮するモンスター《ブラック・ローズ》であった。
ドラゴンの舞い散らせる灼熱の花弁が、自身を含むフィールドの全ての存在を黒炎に包み込んでゆく。

ガルム「上手い!いかにペンデュラムといえど、スケールごと破壊されれば再生できない!」
サイバーマン「まさに肉を切らせて骨を断つ……西院め、最初からこれを狙っていたということか」

黒炎が燃え尽きた後には灰塵と化したフィールドのみが残されていた。

金岡「ぬうう……!やってくれるな小僧……!」
西院「反撃開始だ。今までの分、たっぷり利子を付けて返すぜオッサン」

もはや金岡の場にも手札にもカードは残されていない……止む無しに彼はターン終了を宣言する。



西院 倖一
LP:1900 手札:0枚
場:
墓地:《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレームギア・δ》、《サイコ・フィール・ゾーン》、《PSYフレームギア・β》、《ブラック・ローズ・ドラゴン》、
   《PSYフレームギア・α》、《PSYフレーム・サーキット》、《PSYフレーム・アクセラレーター》
除外:《PSYフレームロード・Ω》、《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレーム・マルチスレッダー》

金岡 刃
LP:8000 手札:0枚
場:
墓地:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》、《メタルフォーゼ・コンビネーション》、《底なし落とし穴》、《メタルフォーゼ・オリハルク》、
   《メタルフォーゼ・カウンター》
EXデッキ:《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》×2、《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》、《メタルフォーゼ・スティエレン》、《メタルフォーゼ・シルバード》
除外:《ハーピィの羽根箒》



西院「俺のターン、ドロー」

先の《ブラック・ローズ》の召喚によって西院も手札を使い切っている。
が、彼には除外によって難を逃れたモンスター2体がある。

西院「スタンバイフェイズ、除外していた《PSYフレームロード・Ω》、《PSYフレーム・ドライバー》が俺の場に帰還する。
   そして、2体のモンスターでダイレクトアタックだ!」

上級モンスター2体の攻撃によって、金岡のライフは残り2700まで削られる。

金岡「ぐっ!ま……まだだ!」
西院「俺はこれでターンエンド。さぁ、アンタのターンだ」



西院 倖一
LP:1900 手札:1枚
場:《PSYフレームロード・Ω》、《PSYフレーム・ドライバー》
墓地:《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレームギア・δ》、《サイコ・フィール・ゾーン》、《PSYフレームギア・β》、《ブラック・ローズ・ドラゴン》、
   《PSYフレームギア・α》、《PSYフレーム・サーキット》、《PSYフレーム・アクセラレーター》
除外:《PSYフレーム・マルチスレッダー》

金岡 刃
LP:2700 手札:1枚
場:
墓地:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》、《メタルフォーゼ・コンビネーション》、《底なし落とし穴》、《メタルフォーゼ・オリハルク》、
   《メタルフォーゼ・カウンター》
EXデッキ:《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》×2、《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》、《メタルフォーゼ・スティエレン》、《メタルフォーゼ・シルバード》



金岡「俺のターン。カードドロー……!」
西院「スタンバイフェイズに《PSYフレームロード・Ω》の効果発動、除外されている《マルチスレッダー》を墓地に戻す」

再びコンボに繋げるための布石を置く西院。
キタヤマはこの様子を見て安堵のため息をついた。

キタヤマ「ふぅ、一時はどうなるかと思ったが、西院君が上級モンスター2体を従えているのに対して相手は手札2枚のみ。これはもう勝負ありましたかな?」

しかしサイバーマンは険しい表情を崩さない。

サイバーマン「いや、先程のドローと言い、デュエル流れを呼び込む奴の強運は相当のものだ。であるならば、このターン何も仕掛けてこないとは思えん!」

そして、メインフェイズを宣言するなり金岡は動いた。

金岡「手札より!《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》をPゾーンにセッティング!」
西院「……!」

土壇場のドローフェイズにて金岡が引き当てたペンデュラムモンスター。
ここから示される展開を、西院をはじめとした勘の良い決闘者は気づいた。

金岡「そして俺は墓地の《メタルフォーゼ・カウンター》を除外し、EXデッキの《シルバード》を手札に加える。さぁ……分かっているな小僧!」

金岡の問いかけに西院は無言で睨む。

金岡「このタイミングでお前は《PSYフレームロード・Ω》の効果を発動し、俺の手札1枚を除外することができる。
   俺の手札2枚のうち、1枚は前のターンに《Ω》と共に帰還した《ハーピィの羽根箒》……この状況では役にたたぬカードだ。
   しかし、今手札に加えた《シルバード》、こいつが俺の手札に残れば……!」
パラフィリア「ペンデュラム召喚が成立し、EXデッキのモンスター4体が特殊召喚される……
       そうなれば《PSYフレーム・ドライバー》1体しかモンスターのいない西院に勝ち目はない……!」

金岡の発言の続きをパラフィリアが解説する。
この局面の重大さに気づき、観客たちもざわざわと騒ぎだした。

金岡「確立は共に五分と五分!俺とお前のどちらに幸運の女神が微笑むか……!最後の勝負だ小僧!!」

金岡は手札のカード1枚ずつを両手に取り、西院へと突き出し叫ぶ。


ガルム「そんな!ここに来て50%の確立で勝敗が決まるというんですか!?」
サイバーマン「そうだ、必ずしも理詰めだけで勝利できるとは限らない。それがデュエルというものだ」
ハル「なぁ、アンタさっきデュエルの流れがどうこう言っとったけど、なら今はどっちに流れが来とる感じなんや?」
サイバーマン「五分……と言いたいが、ここに至り、平然と大博打を仕掛けてくるあの度胸……このような修羅場をいくつもくぐり抜けてきたのだろう。
       その点では単純なツキは金岡の方が上を行っていると言っていいだろう」
ガルム「そ、それじゃあ……!」
サイバーマン「だが、この状況で西院に残された唯一の武器……奴がそれに気付けるかどうかがこの勝負のカギとなる……!」

じっと睨み合う西院と金岡の両名。
ぶつかり合う両者の気迫に緊迫した空気が流れる。
しかし、やがて彼は、西院はわずかに笑みを浮かべて言った。

西院「なるほど、相当運に自信があるんだな。だがアンタ、一つ重要なことを見落としているぜ」
金岡「何……?」
西院「この勝負の決定権を握ってるのは幸運の女神なんかじゃない……俺のモンスターだってことをな!行け!《PSYフレームロード・Ω》!!」

一つの躊躇もなく、西院は彼のモンスターに効果発動を宣言した。
西院の命を受け飛び立った《PSYフレームロード・Ω》は、金岡の片手に握られたカードを奪い取る。
ゆっくりと浮かび上がり公開されるそのカードは……

《メタルフォーゼ・シルバード》であった。

金岡「……!!み、見事なり……!」

これで勝負は決した……がくりとうなだれる金岡。

サイバーマン「フッ、分かっていたようだな。圧倒的な強運に対抗しうる決闘者の最後の武器……それはカードとの『絆』!
       決闘者がカードを信頼し、カードがそれに応える……言うは易いが、土壇場でそれをやってのける奴は少ない。まずは合格といったところか」

満足気な笑みを浮かべたサイバーマンはこれ以上のデュエルは見る価値なしと、ばさりとロングコートを靡かせ去っていく。

サイバーマン「貴様らは最強の決闘者たる存在であることを常に必要とされている!その事を忘れるな!」

最後の一手を封じられた金岡はそのままターンエンドを宣言。
次のターン、帰還した《PSYフレームロード・Ω》の一撃によってデュエルは決着した。



西院 倖一
LP:1900 手札:2枚
場:《PSYフレームロード・Ω》、《PSYフレーム・ドライバー》
墓地:《PSYフレーム・ドライバー》、《PSYフレームギア・δ》、《サイコ・フィール・ゾーン》、《PSYフレームギア・β》、《ブラック・ローズ・ドラゴン》、
   《PSYフレームギア・α》、《PSYフレーム・サーキット》、《PSYフレーム・アクセラレーター》、《PSYフレーム・マルチスレッダー》

金岡 刃
LP:0 手札:2枚
場:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》(Pゾーン)
墓地:《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》、《メタルフォーゼ・コンビネーション》、《底なし落とし穴》、《メタルフォーゼ・オリハルク》、
EXデッキ:《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》×2、《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》、《メタルフォーゼ・スティエレン》
除外:《メタルフォーゼ・カウンター》



天名「やった!やったアルよ!」
ハル「全く!ヒヤヒヤさせよるであいつ!」

ぴょんぴょんと飛び上がり喜びを表現する天名たち。
この戦いを観戦していた観客からもホープレイ軒が守られたことに安堵の声が上がる。

滋井「そ……そんな、バ、バ、バカなぁーーー!!」

滋井は用心棒・金岡の敗北に愕然とする。
そして人々の歓声が賑わうなか、西院が彼に歩み寄る。

西院「約束だ、ホープレイ軒は返してもらうぞ!」
滋井「うぐぐ……わ、分かった、店は返そう……!」

苦虫を噛み潰したような顔で返答する滋井。
だが、不意に彼は笑みをこぼしたかと思うと、指パッチンで合図をした。
すると今まで待機していた胴着姿の男達が角材を手にホープレイ軒へと殺到する。

滋井「しかぁし!そのまま返すなんて約束はしとらんもんねーーーっ!お前たち、やってしまえ!!」
ハル「な……!?ひ、卑怯やで!」
滋井「卑怯も何もこれがワシのやり方じゃ!
   ワシに逆らった見せしめに!この店を完膚なきまで叩き潰してしまえーっ!!」

造滋井会の塾生が店のガラスを割ろうと角材を振り上げる。
だが次の瞬間、その獲物は振り下ろされることなく持ち主の意識と共に宙を舞っていた。
こうして最も店の近くにいた数人の塾生が次々と倒れる。

滋井「な、何が起こったんじゃ!?」

造滋井会の全員が目をやった視線の先、そこにはカンフーの構えをとった天名が立っていた。

天名「決闘者としてデュエルの結果だから大人しく従ってあげてたけど……実力行使でくるならこっちも手加減しないアルよ!そうアルね店長!」
店長「ああ構わねぇぜ天名!こいつら全員とっちめちまいな!」

店長の許可を得た天名が造滋井会へと躍り掛かる。

滋井「ええい!小娘一人に何をやっておるか!やれ!やってしまえー!」

数を頼りに天名を打ち倒そうとする造滋井会であったが。
さながらカンフー映画から抜け出してきたような彼女の鮮やかな戦いぶりに一人、また一人と倒されていき……
数分もたった頃には滋井一人を残して塾生は全滅していた。

天名「さぁて、残るはあんた一人だけアルね……!」
滋井「ひ、ひぃぃ!先生!金岡先生!何をやっとるか!さっさとワシを助けんかーい!!」

必死に金岡に助けを求める滋井。
しかし、金岡は冷ややかな目で遠巻きにその様子を見ている。

金岡「俺はあくまで決闘者として雇われている身、リアルファイトは専門外だ。自分の身は自分で守ってみせろ」
滋井「そ、そんなぁ~!ま、待てお嬢さん!もうこの店に手出しはしないと約束する!だからもう許して……」

滋井の懇願も空しく、天名の鉄拳が彼に炸裂する。
滋井の悲鳴がこだまする中、金岡は西院に向かって言い放つ。

金岡「小僧……いや、西院とか言ったな。今日のところは貴様に勝負を預けておこう。
   互いに決闘者としての高みを目指すのであれば、また合いまみえる日が来るだろう……その時こそ今日の借りを返させてもらうぞ!」
西院「ああ、いつでも返り討ちにしてやるぜ金岡のオッサン」

西院の返事に後ろ手を振ると、金岡は夕日の中へと去っていった。


店長「いやあ、あんた達はウチを救ってくれた恩人だ!心ばかりの礼だが……ウチのラーメンを食っていってくれよ!」

造滋井会との騒動が一段落し、いつもの盛況を取り戻したホープレイ軒。
その一画のテーブルに座るのはキタヤマ塾の面々である。
彼らの面前には店自慢の海老だし海鮮ラーメンが湯気を立てて置かれている。

キタヤマ「ハハハ、実際に戦ったのは西院君だけで、我々は特に何もしてませんがね」
ハル「固いことは言いっこなしや。それよりも西院、どうなんやお目当てのラーメンの味は?」

今回の一件で以外にもラーメンに興味があることが明らかになった西院。
念願の海老だし海鮮ラーメンをすすった彼の反応に皆の注目が集まるが……

西院「うむ……普通に美味い」

それだけだった。

ハル「何なんその普通って!あんだけ食いたがってたんだからもっと気の利いたコメントがあるやろ!」
パラフィリア「まぁまぁ、ボキャブラリーとか繊細な感情表現能力の全てをデュエルにつぎ込んだ男だぜ。
       心配せずとも、僕たちが代わりにこのラーメンの美味しさをレポートしてやるって」
キタヤマ「うむ、研究者としてこの私がこのラーメンに隠せれし秘密を余すことなく表現してみせよう」

そう言ってラーメンをすする二人。

パラフィリア「うーんこれは……スープがすっきりとしていてそれでいてコクがあり……えー、そうだね、とても美味しい」
キタヤマ「うむ、これはまるで……まるで、味覚のバーゲンセールといったところか」
天名「あー分かった分かった。美味しかったんならそれでいいアルよ」

この様子にガルムは苦笑を浮かべる。

ガルム「はぁ、気づけば結局この人たちのペース。フツーの女の子でいるのって難しいですね……」
ハル「せやなぁ……でも、こうやってこいつらとバカ騒ぎしてるのも、これはこれで楽しいけどな!」
ガルム「フフッ、そうですね」


かくして、ホープレイ軒の危機を救った西院たち。
しかし最強の決闘者を目指す彼らの戦いはまだまだ続く……!

〈劇終〉

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最終更新:2017年03月09日 08:46