菊葉の戦い(前)

夜のmay公園。
そこで今、1つの激戦が終わろうとしていた。

「ぐわああああ!!!」

ライトロード幹部、自称エリートと名乗っている男がふっ飛ばされる。
彼が飛ばされた先には、エリンや犬、湖や菊葉を始めとしたライトロード達が倒れている。
皆かろうじて意識はある。しかし皆、足の骨を折られていて立ち上がることが出来ない。

「エ…リート…!」

ライトロードの誰かが声を絞り出す。だが名を呼ばれた男は反応することはない。
代わりに、エリートをふっとばした「少女」が言葉を発する。

「…へぇ?アレでエリートなのね?」

ツインテールにチャイナ服という出で立ちの、見た目は13歳程度に見える小柄な少女。
しかし少女はその小さな体からは想像できない程の格闘能力を持っている。
だがライトロード達もある程度の訓練は受けているし、サイコデュエリストも何人かいる。
特にエリートはすごく真面目にトレーニングしているので、世界チャンピオンが相手でも善戦はするであろう。

しかしそんなライトロード達は、少女に全く敵わなかった。

「日本はデュエル発祥の地と聞いたから、ワタシ『レイリン』がはるばる中国からやってきたというのに…。
こんな体たらくでは」
「いや…デュエルの力は関係ないでしょう?」

少女レイリンは得意になってライトロード達を挑発するが、それはすぐに終わった。
彼女の背後に菊葉が立っていたからだ。
しかしレイリンはそんな彼女に即座に反応し、拳を一発。
クリーンヒットにはならなかったが菊葉はそれでふっ飛ばされ、レイリンは危機を去った。

「…足の骨を完全に折ったのに」
「ふふ、私の体は少し特別でね、骨折程度じゃなんともないの。
…まぁ少し痛いけどね」

まだ肌寒いというのに、菊葉の頬を汗が流れる。
そして彼女は思考を始めた、どうしてこうなったのかと…。



17時頃。
公園で遊んでいた子供や、談笑していた主婦たちがいなくなった頃を見計らい、ライトロード達がやってきた。

「今日は公園のゴミ拾いだ!」
「最早慈善活動集団じゃないか我が軍は!!」
「というか、ゴミもあんまり落ちてないし」
「わん」
「じゃあ池の水を全部抜くか!?」
「池…綺麗だよ?」
「レインボーフィッシュがいるかもしれない」
「いねーよ!!」

既にライトロードのキーカードはすべて制限解除され、全盛期の力を取り戻したライトロード。
だが、ライトロードの周りが更なる力を手に入れてしまい、環境に食い込むには少々骨が折れる。
そんなライトロードが好きなライトロード達(ややこしい)は今、そんな不満を発散する毎日を送っていた。
それが畑仕事だったりゴミ拾いだったり…。最早何が目的かわからない。

そんな彼らの前に、一人の少女が現れたのは、20時過ぎであった。
少女…レイリンを見つけたのはエリンだ。

「おおう、こんな夜中にどうした美少女よ」
「デュエル相手を探しているの」

儚げな美少女を見て、エリンのボルテージが上がっていく。
こんな少女を見逃してはロリコンの名折れだ。

「デュエル相手?ふふ!良いぞ なら私がしてやろう!」
「私の名前は、レイリン。中国から来た留学生よ、…ふふ、お手柔らかにね!」

正直この時のエリンは、非常に嬉しかっただろう。
だが、事件は1ターン目で起こった。

「……事故った」
「気合が空回りしてんじゃない?」
「くっ!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

「ふふ、なら私のターンね…
私は、ジェットガンドレット・アーマーを…装着!」
「え?」

レイリンはモンスターカードを出したかと思うと、そのカードを装着したのだ!
それだけではまだ終わらない。
「私はアーマード・グラビテーションを発動する
このカードは自分のフィールド上にアーマーモンスターが存在している時のみ発動可能。
自分のデッキからアーマーモンスターを4体まで特殊召喚する。」
「え…ま 待て待て」
「はぁぁぁ!!!」

レイリンの全身にアーマーモンスター達が装着され、たちまち彼女は鎧騎士となる。
そしてその攻撃は。

「くらえ!!ビックバンパーンチ!!」
「ちょ!これは正真正銘の直接こうげ…ぐはぁ!!」

こうしてエリンは両足の骨を折られ、デュエル続行不可能となった。
他のライトロードもだいたいそんな感じでやられた。
まだ子供の湖や動物の犬に対しては手加減していたようだが…それでも2人 じゃなくて一人と一匹は骨折した。
そして菊葉も足を折られた…はずだった。


「相手を直接殴って戦闘不能にするだなんて…ふふっ 恐ろしい子」
「面妖な…お前は一体何者だ!」
「さぁ? 少なくとも、アナタのルール無用の暴力攻撃で自分の国をバカにされたら、多少は怒る人間ではあるわね」

そう言いながら菊葉はデュエルディスクを構える。
それに対しレイリンも構える。デュエルディスクと…明らかに格闘技のポーズを。

「中国のデュエルはどうか知らないけど、少なくともアナタのデュエルは、デュエリスト本人を立てなくして勝利するのが主らしいわね。
けどそれはルール違反よ。
だから私も1つ、ルールを破らせてもらうわ」
「ふん!問題ない どんなルールでも私が勝つ!!」
「なら…私のターン。 あ 勝ったわ
私は裏守備でモンスターを召喚。そのまま太陽の書でサイバーポッドの効果を使うわ」
「ふん!何が勝利よ!禁止カードは面食らったけど…それはむしろ私に有利となるわ!
早速アーマーモンスターが5体並んだわ!
「アナタ、どうしてこのカードが禁止カードか理解してないようね…
私はモンスターを引けなかったっけど…浅すぎた墓穴を使うわ。アナタは…もう5枚カードがあるから、私だけサイバーポッドを蘇生。
続けて天使の施しを発動。
3枚ドローして、処刑人-マキュラと、ADチェンジャーでも墓地に送るわ。
そして太陽の書を発動。」
「え!?ちょっと待って!?」
「…待ちはしないわ、禁止カードてんこ盛りなのが、私の破るルール。
アーマーモンスターは攻撃宣言をしなければデュエリストを攻撃できない…。つまり、攻撃宣言させる前に勝てばいいのよ
もう一度浅すぎた墓穴でサイバーポッドを召喚。
墓地のADチェンジャーを除外してサイバーポッドを攻撃表示にするわ。リバース発動ね。」
「くっ!私のアーマーモンスターは」
「私は …あら、トリオンの蟲惑魔とADチェンジャーを引いちゃったわね。アナタの魔法罠ゾーンにカードはないからトリオンの効果は無効。
けど関係はないわ。無謀な欲張りを発動してカードを2枚ドローしもう一度太陽の書を発動。」
「う…ううう!!オーバー・ブースト・アーマーがあれば!」
「そんな怖いカード、エフェクト・ヴェーラーで無効化ね」


「鬼か、あいつは」

エリンが呟く。最早レイリンに戦意はない。
だがサレンダーはせず、ただ涙目でカードを並べて、捨てていくだけだ…。
そして手札にカードが溜まっていく…。
アーマーモンスターデッキは強力な魔法カードもあるが、今はただ手札に溜まっていくだけだ。
そして…

「手札抹殺を発動するわ」
「う…うわああああああんん!!!!」

レイリンは負けを確信した瞬間、泣いた。

「泣いても許さないわよ。最後までデュエルしてもらうわ!
さぁ!手札のカードを捨て…デッキが切れるまでドローしなさい!」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
「そして、このライトロードデッキを使うのだ!」
「エリートまだ諦めてなかったのか」

果たしてレイリンは、自分のターンになる前に敗北をしてしまった。
なおライトロードデッキの受け取りは拒否した。


デュエル中とはいえ相手を故意に傷つけたということで、レイリンはそのまま警察に連行される事となった。
そしてライトロードのメンバーも皆、救急車で運ばれた。
皆、骨折はしているが「折れ方が良い」という謎のお墨付きをもらい、割とすぐ退院できるようだ。
しかし、菊葉はどうにも気になっていた。

「あのレイリンって子、どうして私達を襲ったのかしら」
「ん?ただ自分の力を示したかっただけじゃないのか?そうじゃなくてもライトロードは悪い組織なのだから…」

病院の一室で語る菊葉に対し、エリンは自らの見解を述べる。
確かにあのレイリンという少女はかなりの跳ねっ返りだ。

「そうかしら?…アーマーモンスターは確かに物語には出ているけど、まだカード化はされていないわ。
それにレイリンのデータを洗ってみたけど、彼女は元々は「天○星」「地○星」と言った梁山泊デッキ使いだったわ。
そして日本に来る直前までそのデッキを使っていたけど…日本に来てからいきなりアーマーモンスター使いになったの」
「どういう事だ」
「……裏があるって事よ」

そういうと菊葉は、病院の窓から飛び降りる。
2階とはいえ高い窓から降りた彼女を、エリンは…特に心配しなかった。

「…全く、怪我がないのはわかるが、心臓に悪い女だ」
「悪いわね、けどちょっと探ってくるわ」

こうして、菊葉の戦いが始まった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2018年04月29日 10:43