大人のデュエルバーmay

※キャラの独自解釈があり、オリキャラ製作者の人たちの考えているキャラクター・設定との多少の違いがあるかもしれません。


カードショップmayも閉まり、あたりは街灯と自販機から漏れる光が地面を照らし、月の光が街全体を包み込む深夜一時。
そのカードショップmayに近い、ビルの一階層を借りて営業をしているデュエルバーmay。
大人のデュエル空間、バーの雰囲気を感じさせるそこは広く、内装はシックな作りで、綺麗に掃除がされている。
床にはデュエルフィールドを描いた白のライン、カウンター席と机席が半々あり、その机の上にもデュエルフィールドが描かれている。
カウンター内の壁にはお酒の瓶以外に、ここのバーテンダー樋道蘭のお気に入りであるバイトロンのカードがガラスケースに飾ってある。
カウンターとは逆の、机席側の壁は窪んでおり、そこには貸し出し用のバー専用の黒色デュエルディスクが立て掛けてある。
そのバーの空間には深夜にも関わらずお酒を楽しむ者、デュエルを楽しむ者が数人いる。
その中でカウンター席に座っている、恐らくすでに何杯か引っ掛けてカウンターの机に頭の重さを任せている女性がいた。

「なな子ちゃん、ちゃんと聞いてるの、私の話?」
「・・・聞いてますよぉ・・・もう何十回も」

そのだいぶ酔っている女性の隣には伊田なな子がいる。
少し疲れ気味のようだ。

「藤山先生が今日とっても疲れたのはわかるんですけど、今日給料日であるはずの私の財布が悲鳴を上げてるんですけど・・・」

なな子はそう言うと腰で巻いているつなぎのポケットから財布を出し、中身を見てため息をつき、そのため息から匂う強いアルコール臭でまたため息をつく。
その時バーのドアのベルが鳴り、一人の女性が入ってきた。

「いらっしゃい、貞子さん」

カウンター内で藤山英理が追加で頼んだお酒を作っていた蘭がドアの方へ向き言った。
入ってきたのは黒橋貞子だった。

「こんばんは蘭さん」

手を蘭に小さく振りながら貞子は英理となな子のいるカウンター席に腰掛ける。

「こんばんはなな子ちゃん、藤山先生どうしたの、こんなにグッタリして?」
「聞いてくれる、貞子さん」

なな子が何か返答する前に、英理がグラスに残ったお酒を流し込みそう言った。

「先生、だいぶ酔ってますよ今日、頑張ってね」

と、カウンターから蘭が貞子に耳打ちする。
妙な不安を感じた貞子だったが、子供を寝かしつけてバーにゆっくりしに来たところなので、とりあえず手さげ鞄を机の上に置き、蘭にお酒を一つ注文する。

「で、どうしたの先生、何かあったの今日?」

英理は追加で頼んだお酒を少し口へ運び、頷く。

「実は今日、生徒の親が私に怒りに来たのよ・・・困ったわ」

貞子は英理の話を黙って聞いている。
蘭は「また始まった」という表情で苦笑いしながら、貞子のお酒を作りながら英理の話を聞いている。
なな子は酔いがそこそこ限界なのだろう、英理と同じように机に持たれ掛かりながら無意識で英理の話に頷いている。

「・・・って言ってもよ、私は特に怒られるようなことはしていなくて、授業中にセクハラしてくる男子生徒の頭をちょっとだけ叩いただけ、ちょっとよ」
「ちょっと・・・ね?」

貞子は蘭からお酒を貰うと、本当に?というニュアンスで聞き返す。

「いつもはキツめかもしれないけど、今回は本当にちょっとだけよ」
「藤山先生のちょっとって、本当にちょっとなのか怪しいものがありますけどね~」

なな子は少し笑いながら言う。
英理はなな子の財布をそっとポケットから取り出し、中身を確認すると「まだいけるわね」と言い、追加のお酒を注文した。

「まあ、ちょっと小突いただけで親が来るのは最近じゃ珍しくもないけど、それでどうしてそんなに疲れてるのよ?」

貞子がそう言うと、英理は頷きながら続きを話始めた。

「その父親がその叩いたことに謝れって文句を当然のように言ってきて、私も頑なに謝らなかったのよ、そしたら」
「「デュエルして俺が勝ったら言うこと聞いてもらうぞ!」って言ってきたんですよね・・・なかなかの星8上級モンスターペアレント」
「そうよ、よく聞いてるじゃない、なな子ちゃん」

英理はなな子の方を向いてうんうんと頷く。
なな子はこの話を、自分が来る前に何回か聞いてるのだろうと貞子は察する。

「それで、勝ったのよね?」
「もちろん、私のマシンナーズで完膚無きまで徹底的に倒したわ」

英理は自信満々にそう言ったが、しかし、再びグッタリとする。

「そしたら今度はその子供が「デュエルして先生に言うこと聞かせる」とか言って、またデュエル」
「・・・そういえば藤山先生、授業は?」

なな子のその質問に返答は返さず、英理は話を続ける。

「とりあえずその子も倒したら、次は何故か違う生徒が、あとはうちの学校の生徒じゃないのになのちゃんが来て「デュエルで先生に言うこと聞いてもらう」って」
「それは、また、難儀な一日だったわね・・・結局何戦したの?」

貞子のその質問に英理は机に顔を伏せて、小さく答えた。

「・・・75戦よ」
「75・・・」

非常に重たい声だった、デュエルをそんなにすれば正直誰でも疲れる。
彼女にとって今日は厄日だったのだろうと貞子は思った・・・が

「気持ち悪い・・・うぅぇ、気持ち悪い」

と、横で途中から念仏のように繰り返しているなな子にとっても厄日だったのだろう。
貞子はふと自分が何杯飲んでいるか気になり、カウンター内のお酒を出すのを止めている蘭に聞いてみた。
蘭は手を振り「やめときなさい」という合図をした。

「もう止めときなよ三人とも、明日も仕事があるんだろ」
「いや、まだ語り足りないわよ・・・本当に今日は・・・」

英理がお酒のグラスをカウンター内に差し出す。
蘭はひとつため息をつくと

「先生は何歳だい?」
「17よっ!」

素早く英理が答える。

「はいはい、未成年は帰る時間よ」

と蘭が英理の手からグラスを取り、洗い出す。
どうやら途中から来た貞子も英理の話を聞いてる間にそこそこ飲んでいたらしい。
最初は気にならなかったが、英理たちの後ろの机席でデュエルをしているようだった。

「ガトリング・ドラゴン召喚、ハッハッハッ、これはもう役満貫、確変状態っ、ジャックポットォォォォ!」

どうやら後ろでは福本哲也と神乃木一郎がお酒を片手にデュエルしているようだった。
なな子は完全に寝てしまっている、英理は今日の鬱憤をまだ呟いているようだった。
貞子はとりあえず気づかれないようにそっと席を立ってデュエルを見に行こうとした時だった。

「ちょっと、聞いてるの貞子さん・・・」

ガバッと立ち上がった英理に肩を掴まれ激しく揺さぶられる・・・そこからが貞子の厄日だった。

「話の途中で逃げるなんて許さないわよっ」
「ちょ、とっ・・・待って、そんなに揺すったら気持ちわるぅっ」

貞子は何かこみ上げて来る物を感じた。
それが何かは重々承知している。
ここではマズい、トイレへ駆け込まなければ。
そう判断した貞子は英理の揺さぶりから抜け出し、男性二人がデュエルしている席の横にある奥のトイレへ駆け込もうと走り出した。

「・・・うっ、もう駄目っ気持ち悪すぎるぅ!」

そう呟いたなな子が貞子の目の前を通り過ぎ、隼の騎士のごとく先にトイレへ姿を消す。

「~っっ・・・!」

ここのバーのトイレは一人用しかない、先手を取って中に入ったなな子は自分の込み上げるモノを激流葬が綺麗に流し消してくれるフィールドへ。
そんな状態で貞子が切れるカードは、手札のカードはゼロの状態だった。

もうサレンダーである。

「っ!・・・これはマズいな、サレンダーさせてもらう」

そう言って神乃木は机から自分のカードを手早く撤収させ、自分も机から離れる。

「ハッハッハッ、ガトリング・ドラゴンに恐れをなしたなっ、これが俺の万馬券ってわけだ!」

その高らかに笑い、勝利の美酒に酔いしれる藤本の後ろには・・・貞子が立っていた。


深夜二時、カードショップmayに近い、ビルの一階層を借りて営業をしているデュエルバーmay。
その日、バーの上空をハングライダーで颯爽と飛んでいたモンタージュ仮面は
「ガトリング・ドラゴォンっっっおぉぉぉぉぉ!」
と叫ぶ奇妙な声を聞いた。



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最終更新:2011年03月08日 01:01