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「触手魔物とシスター 悪魔」(2011/12/05 (月) 10:58:17) の最新版変更点
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*&font(#AF103C){触手魔物とシスター} ◆SFKuV9i.3U様
#divclass(ss){ 水の中を泳ぐ夢を見た。
深く青い…あぁこれは夜の海だ。
背中が冷たく、おなかが温かい。
細かな泡の音が耳のそばを通り過ぎていく…。
マノンはふと目をあけた。
気がつくとそこは船の上ではなく、病院のベッドだった。
「……!?」
がばりとシーツをはぎ取ると、白い部屋が目に映る。
「起きたか」
誰もいない空間から声がする。
「っ!?あなた…!」
一瞬たじろいだが、すぐに思い当たる節が有り、反応を返す。
「だらしのない、あんた仮にもギルドのシスターなんだろう?」
「だ、だ、誰のせいだと思って…!」
一瞬にして昨日の事が思い出される。
あのぬめぬめとした感触と、そのほか考えたくもない諸々のこと。
「あまり大きな声を出すな、変な目で見られるのはあんたなんだぞ」
「ぐ」
ここは病院のようだ、悪魔に厳戒態勢を敷いている今、何もいない空間に向かってわめき散らすなんて。
修行時代に見た教会地下の牢獄を思い出して背筋が寒くなる。
「…あなたが此処まで?」
「そうだ。…しかし流石は教会ギルドのシスター様だ、良く肥えた肉でいらっしゃる」
「な、な、な…!」
「もっとはっきり言ってやろうか?」
起き抜けにずかずか言われる言葉はあまりにも不躾で、失礼極まりなくて。
恥ずかしさと怒りで上手く言葉が出てこない。
口を開けたままのマノンに、未だ姿を見せぬ悪魔は小さく嘲笑を漏らした。
「医者が来るぞ、さっさと此処を引き上げる。あんたにはまだ話さなければならない事が沢山あるんだ」
「何を勝手な…!」
「言うとおりにしろ、命が惜しいならな」
その言葉を残して声は聞こえなくなった。
ややあって不機嫌そうな顔の医者が来て、体調の確認だけをしてさっさと行ってしまった。
問題なし、つまりはいつでも出て行っていい、と。
帰り際、受付の看護士は教会名の彫られたロザリオを見ると、面倒くさそうな声でお大事に、と言った。
「何だかな…」
マノンは朝方の港街を歩きながらため息をついた。
シスター、及び教会ギルドの者は特別制度が敷かれていて、医療機関などがほぼ無料になる。
もちろんそれだけ危険な事をしているのだから当然の手当てと言えば当然なのだが。
…それを快く思っていない人も居るわけで。
「腐る暇があったら人気の居ない所に行け、なるべく水場から離れろ」
また誰もいないのに声がする。
「…何であなたに指図されなきゃならないんですか」
「これは警告だ。成り行きとは言え契約を交わしたんだ、最低限の安全は確保させてもらう」
「私はシスター、あなたは悪魔!それだけでも、もう混乱してるのにこれ以上何なんですか!」
路地裏で良かった、と思わず大声をあげてしまったマノンは思った。
慌てて見回す、誰もいない。
安堵のため息をつくと、首筋にぬめった感触がすべり、何かが巻き付く。
首にひたりと当てられた部分から徐々に具現化されていく。
粘液で覆われた紫色の異形。
ぬめった触手は明るい場所で見ると余計にグロテスクだ。
顔も見たくないとばかりに目を背けるマノンの顎を捕らえ、無理やり視線を合わせる。
「オレは今すぐあんたをくびり殺す事も出来るんだ、そうしない意味を理解して欲しいもんだな」
首に巻きついた触手が頸動脈を軽く圧迫する。
ぎょろついた目に睨まれ、怒気を含んだ低い声に肩をすくめた。
その時だった。
ふいに寒気に襲われ、辺りをあの忌まわしいにおいが包む。
シスターだからこそ感じ得る悪魔の濃霧。
ぬるりと首の触手が解かれる。
「一度はあんたを助けたんだ、信用しろ…」
ガタガタと耳障りな音と共に排水溝の蓋から何かが這い出ようとして、
一瞬のうちに真っ二つに避けた。
「―で、これが二度目だ」
最初の一体が地面に水音を立てて倒れたのが合図かのように、ずるりと排水溝から這い出て来る黒い異形。
狭い路地は四、五体の異形で逃げ場を塞がれる。
肌は魚の鱗のようなぬめりと光沢を持ち、口には僅かな隙間を残し牙が生え、その隙間から絶えず漏れるのは女の悲鳴のような声。
「…!」
「経験の浅いシスター様には刺激が強いか?」
小馬鹿にしたような笑いを僅かに残し、紫の悪魔は触手をしならせた。
ぐじゅり、と異形の一体の首が飛び、続けざまにもう一体の腰から上が弾け飛んだ。
四方八方に飛び散る肉片や体液を避けながらマノンは聖衣を弄った。
そうこうしているうちに異形は数を減らし、最後の一体が間合いを探るように後退りをしている。
指先に金属が触れる、魔物の肉を射抜く銀の銃だ。
すぐさま取り出して弾を込める。
見ると悪魔の後ろに排水溝から這い出たもう一体が爪を振りかざしていた。
「!」
とっさに銃を構える、が…マノンは躊躇した。
本当に、あの悪魔を信用してもいいのだろうか、と。
「ぐっ…!?」
異形の鋭い爪が悪魔の背に突き刺さり、胸まで貫通する。
が、さほど動揺するでもなく頭に触手を巻きつけ捻りつぶす。
飛び散る体液を顔に受けながら、最後の一体の首を確実に跳ねた。
悪魔はぐるりと見回し、襲ってきた異形が全員絶命しているのを確認すると、
自身の触手に着いた体液をふるい落とした。
汗ばみ、強張った手からゆっくり銃を離す。
「おい」
「!」
いつからから人間と自然は分かたれた、自然は離れた物に興味を示さない。
そこにあるのは「理にかなった略奪」のみだ。
しかし、人間に何らかの感情を抱く者が現れた。
それが憎しみなら彼らは「悪魔」になる。
元はすべて等しく、所謂「精霊」と呼ばれる存在なのだ。
「美しいもののみを精霊と呼ぶようだがそんな事はない。現にオレも分類すれば精霊に入るんだぞ」
「…その見た目で?」
一通り話を聞いて、マノンは一番最初の疑問を口にした。
「私が契約に使ってしまったものって何なんですか?」
「喉の血だ」
「…喉?」
海に向かって吐いたときに切れた喉、あの時に血が混ざったんだ。
しかし、すごく、嫌だ。
「何だその嫌そうな顔は」
「いや、だって…」
「…ああ嘔吐物の事か、人間はいやに気にするがこっちからしてみれば単なる有機…」
「あああもう!わざわざ言わなくて結構です!」
「おい、あんた」
「…マノンです。あなたは?」
「聞いてどうする」
「“人間”と話すなら、最低限の情報は揃えて下さい、器用じゃないんです」
「……………なら、グリューと呼べ。昔、そう呼ばれた事があった」
彼にしては珍しく長い間があって、それからぽつりとそう言った。
「あんた生娘だろう」
「きっ…!」
いきなりの遠慮ない物言いに思わず頬が熱くなる。
「生娘の血にはそれぞれ意味がある、それこそ喉の血は海の悪魔にとって最高の生贄だ」
「喉…海の…セイレーン?」
「人間はそう呼ぶのか」
船乗りを海に誘い、腑を喰らう海原の伝説的な魔物。
伝承や噂が一人歩きしている物かと思えば本当に居たらしい。
「あんたの血が海に投げ入れられた時、そいつは真っ先に向かったが、オレが先にあんたと契約したんだ」
「何でそんなこと」
「分かり易く反旗を翻すためにな、オレは静かに眠りたいんだ」
「私を使って煽ったんですか、つまり私を囮に…」
「察しがいいな。…どうだ、逃げるか?囮に使う代わりにあんたの業績を上げてやろうって話だ、悪くないだろ?」
…馬鹿にしているのか、本気なのか。
「…いいですよ、私に何が出来ますか」
「何だ急に」
「あなたの態度は鼻につきますが、何もしないのはもっと嫌です。私だって一端のシスターなんですから」
それと、さっきほんの少し躊躇した事が後ろめたい。
「…なら、口を開けろ、歯を立てるな、喚くな」
再び具現化されつつあるグリューの触手を目で追う。
先程のように首に巻きついた触手の感触に思わず目を瞑る。
「丁度良い、そのまま瞑っていろ」
目にひやりとした感触、完全に視界が塞がれた。
唇にぬめった触手が触れたかと思うと、歯列をなぞり口の奥、更には喉の奥まで侵入してきた。
「ん、むっ…!」
喉にちくりとした痛みを感じる、その痛みを押し付けるように触手がぐにぐにと蠢いた。
喉の、血。
先程の言葉が思い当たるが、いきなり喉は、流石に。
「はぐ、うぇ…んっ!?」
裾から別の触手が数本入り込み、腹部をなぞって乳房に巻きついた。
残った触手も同じく腹部を通り過ぎて膣へと伸ばされた。
そしてそのままぬるぬるとぬめった触手で満遍なく刺激され、思わず仰け反る形になる。
「んく、んーっ!んっ、ぅあ…!」
制止させようと伸ばした片手が本体らしき物に触れたので少し強めに叩いてみる。
意図を汲み取ってくれたのか、ぴたりと触手が動きを止め、喉からずるりと触手が取り払われた。
「何だいきなり」
「けほっ…こ、こ、こっちの台詞れす!いきらりらにするんれすか!」
粘液でゆるゆるになった喉でまくし立てたものだからむせ込んだ上にきちんと発音が出来ていない。
「性的快感の際に良質な魔力は滲み出る、聞いたことは無いのか」
「…じゃっかん」
「なら問題はないな、早いところ傷を治したい」
「まっ…!はぷっ!」
開きかけた口にまた触手がねじ込まれ、巻き付いたままの触手が蠢き始めた。
視界が塞がれている分、一つ一つの動きが無駄によく分かる。
胸は先の方までこね回され、背中から足先まで触手の粘液にまみれてない所はない。
膣肉の入り口をずるずると触手が動くたびに太腿をどちらのものともつかない、透明な粘液が伝っていく。
その感触すら情景としてありありと脳裏に浮かぶ、この熱を持った体が恨めしい。
否応なしに与えられる刺激に下腹部が疼くが、船の上の事がふと頭をよぎる。
「むーっ!んっ!」
これ以上は無理、と突っぱねようとした瞬間。
「ふえっ…?」
いきなりすべての触手が撤退する。
快感から解放され、呆然と座り込むマノンを一瞥し、グリューは自らの傷を確かめた。
「まあ、こんなものか」
「…あの」
「何だ」
マノンは何かを言おうと口を開いたが疲れも手伝い、急に脱力感に襲われてやめてしまった。
「どうかしたか」
「…服がべっとべとなんですが」
「ああ、この奥に水場があるみたいだな。あそこなら大丈夫だろう」
「なんでですか?」
「街道沿いの水場なんかは人間の手垢が付きまくってるからな。危ないのは中途半端に人間が介入してる場所だ」
そういえば確かにあの海域は漁業区域だったことを思い出す。
線引きがよくわからないが…いや、今は何も考えたくない。
力がほとんど抜けてる足腰を何とか起こし、引きずるようにして歩き出す。
「運ぶか?」
「遠慮します」
申し出を突っぱねて、途中途中樹を支えにしながら水場に向かう。
「…どのくらい時間をかけるつもりだ、さっさと行くぞ」
「わっ」
痺れを切らしたのか、面倒くさそうに後を付いてきていたグリューはマノンの体を抱え上げ、足早に小川へ向かった。
「泳げるか?」
「え、えぇまあ…ってちょっ、わあっ」
頷くや否やぱっと抱えていた手を離され、小川に投げ込まれる。
春のまだ冷たい水に体を震わせ、抗議しようと顔を上げると、そこにグリューはもういなかった。
「何かあったら呼べ、オレはひと眠りする」
そう声だけが聞こえてきて、あとは何を言っても返事がかえっては来なかった。
憤りに水面をたたくが、聞こえるのは小鳥の鳴き声だけだった。
体中にまとわりついた粘液が、緩やかな小川の流れにゆっくりと流されていくのを火照った体が感じ取る。
後悔やら自責やら何やらをため息に込め、マノンは脱力したように水に体を沈めた。}
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