(こちらA班、異常無し)
(B班了解。こちらも異常無し)
(C班了解、同じく異常無し…主はやて、この口調は何とかならないのですか?)
(別にええやろ。気分の問題や。気分の)
(気分の…ですか)
(シグナムさん、あんまり気にすると肩凝りますよ?)
 彼女らは今、島田を見張っている…いや、正確には島田を誘拐しようとする犯人を待っている。
事の始まりは、令子が見合いに参加したことからだ。その日から令子はストーカーに悩まされ、挙句の果てに誘拐されるという事態に。
真司はそれを見合い相手による腹いせと判断し、蓮やなのは、北岡達と結託して犯人を捕らえようと行動しているのだ。
そして今、島田を餌に罠を張り、誘拐犯を待ち伏せしているところである。
…ちなみにこのどこかの諜報部隊のような会話については、はやての言うように「気分の問題」という事で納得していただきたい。
(でも意外よね。まさか北岡さんが令子さんのこと…)
(え?シャマル、それほんまなん?)
(…確かにな。まあ、そうでもなければ北岡が協力するとも思えんが)
*1
 この一件で北岡の想い人が発覚したようだ。
ちなみになのは・ヴィータ・リィンのお子様トリオは話の内容を理解できていないらしく、疑問符を5つほど浮かべている。放って置けばまだ増えるだろう。
「なのはちゃん…なのはちゃん!」
「ふぇ?な、何ですか優衣さん…」
 優衣によって現実へと引っ張り戻されるなのは。どうやら聞き入っていたらしい。その証拠に、さっきからの優衣の声にも気付いていなかった。
「島田さんがいないの…多分、島田さんもさらわれたんだと思う…とにかく他の班のみんなに連絡して!」
「はっ、はい!」(こちらA班、異常発生!)

 それからさらに数日後。
「はじめまして。倉井忍です」
「神崎優衣と申します…ほほ」
 再び罠を張る。今回の餌は優衣だ。

 その頃外では、蓮が真司を踏み台にし、塀の上から中の様子を見ていた。
今回はその近くに蓮の車が停めてあり、中ではやてとヴォルケンリッター達が待機している。
「ついに優衣まで引っ張り出すことになったか…
しかしこれであの男が犯人じゃなかったら、凄まじい無駄骨だな」
「安心しろ…信じるものは救われるんだよ…」

第二十話『現れる戦神』後編

 再び中の様子。
「フン、君も遊び半分ですね。君のような女性が、私なんかに興味を持つはずが無い」
 どうやら倉井は、初めから諦め果てているようだ。あぐらをかき、扇子で扇いでいる。
ところが、優衣の返答は倉井が予想だにしなかった事だ。
「いえ…お付き合い、させて下さい」
 驚き、慌てて扇子をたたみ、正座をした。

「どういうつもりだ?優衣の奴、まさか本気で…!」
 見張りを交代したヴィータが危惧する。まさか、まさか…!
「違う。神崎はああやって、奴の身辺を探ろうとしているんだ」
「なるほどな…」
 同じく見張りを交代したシグナムに説明され、ヴィータも納得がいったようだ。
…近所の幼稚園児がじっと見ていた。そしておもむろに走り出す。
「ママー、へんなひとたちがいるー」

 数十分後、倉井の住むマンションの一室。
「ささ、汚い所ですがどうぞどうぞ」
「おじゃましますわ」
 倉井が優衣をリビングへと誘導する。この部屋に女性が入ったのは初めてなので、いくぶん興奮しているようだ。
コーヒーを入れにキッチンへと駆け込む倉井。部屋の中を探ろうと、隙をうかがう優衣。
だが、十秒と経たないうちに倉井が戻ってくる。
「すいません、コーヒーを切らしてました!すぐ買って来るので、待っててくださいね!ね!」
 優衣の手を取ってコーヒーを買いに行く旨を伝え、そして部屋から駆け出していった。
優衣にとっては千載一遇のチャンス。倉井が部屋を出たのを確認し、動きやすいよう着物のすそをたくし上げる。
…行動開始だ。

 隣のビルの屋上から、真司たちが部屋の中を見ている。
無論この距離からではよく見えるはずも無いが、幸い真司の私物に双眼鏡があったため、そのおかげで中の様子が丸分かりだ。
「貸せ!」
 蓮が真司の双眼鏡をひったくろうとする。
「ずりーぞ、あたしにも見せろよ!」
 さらにはヴィータが双眼鏡をひったくろうとする。
「あ、私も私も」
 シャマルまでもが争奪戦に参加。もはや見張りとどちらがメインか分からない。はやてとシグナムは横からそれを眺めていた。
…ちなみに争奪戦を続ければ続けるほど、真司の首が絞まっていく。顔が青くなってきた。そろそろ落ちる頃だろう…あ、落ちた。
「城戸…?おい城戸!城戸ォォーーーーーッ!!」

 三分ほど後。真司は未だに落ちたままだ。
突如、真司の携帯が鳴る。北岡からの着信である。
落ちていて出られない真司に代わり、シグナムが代わりにでる。
「もしもし…ああ、城戸は今落ちているからな。それで、一体何が…それは本当か!?」
『ああ、倉井忍は犯人じゃない。令子さんが誘拐された日、奴にはアリバイがある』
「ならば一体誰が…」

 その頃、優衣はというと…
「令子さーん!島田さーん!」
 部屋中を荒らしまわりながら、令子と島田を探し回っていた。
普通いないだろうと思われる台所の戸棚や、電子レンジの中まで探していることから、多少の錯乱も入っているだろう。
…と、その時。部屋の呼び鈴が鳴った。あわてて着物のすそを戻し、応対に出る。
「あら…」
 呼び鈴を鳴らしたのは、近所の部屋に住むおばさんだった。倉井の部屋から女性が出てきたことに驚いているようだ。
「すいません、もうちょっと静かにしてもらえますか?」
 近所の人が苦情を言いに来るほどだ。よほどうるさかったのだろう。
…まあ、部屋の扉や本棚を破壊しながら探していたのだから無理も無い。
「すいませ~ん…」
 一応謝る優衣。その時、そのおばさんの首にあるものを見つけた。
そのあるものとは…令子が付けていた物と同じネックレス。優衣は即座に「この女が怪しい」と睨んだ。
だが、それをおくびにも出さず、愛想笑いで流す。
そしてそのおばさんが部屋に戻ったのを見届けると、名を確かめるために表札を見る。
表札には「竹内」と書かれていた。

 ちなみに、倉井がその後どうなったのかは誰も知らない…

「竹内マリ?」
「ああ。今度こそ本物の犯人だ。編集長の話によれば、OREジャーナルに恨みを持ってるらしい」
 翌日の昼、翠屋にて。
今回の件のメンバーを集め、真犯人であるはずの竹内の情報と作戦会議を兼ね、昼食をとっていた。
ちなみに竹内についての情報は、大久保が一晩かけて調べ上げた。そのせいで徹夜になり、現在会社で熟睡中である。
「以前怪しげな会社の女社長だったんだけど、編集長の記事のせいで会社が潰れて…」
「その女が犯人だという根拠はあるのか?」
「ネックレスだよ。優衣ちゃんが昨日のマンションで見つけたんだ。その女が令子さんと同じネックレスしてるのをさ。
まさに作戦通りってやつだな」
「ただの偶然だろう。作戦も何も無いな」
「全くだよ。要するに令子さんは、お宅の編集長のいいかげんな仕事のとばっちりを受けたって訳?」
「編集長の悪口言うな。いいかげんなのはそっちだろ」
「俺のどこがいいかげんなんだよ」
「…よせ、もううんざりだ」
 今まで黙っていた蓮が口を開く。
「これ以上下らない言い争いを続けるなら、俺は降りる」
「降りる?何だよそれ…」
「いちいち突っかかるなって…大体俺達が組んでること自体無理があるんだよ。お前らといると妙に疲れる…」
「…確かに」
 そうこうしている間に完食。作戦はどうやら各自で立てることになったようだ。
…なのは達が多少空気と化しているが、気にしたら負けだ。だから気にしてはいけない。

 翌日、マンションにある竹内の部屋の前。
真司がそこにいた。何故かトランクを持ち、スーツを着て、似合わないメガネをかけて。
部屋の呼び鈴に手を伸ばし、押す。数秒で竹内が出て来る。そして用を聞く竹内に開口一番。
「実は耳寄りなセールスのお話があるんですけど」
 どうやらセールスになりすまし、潜入して調査という策のようだ。

 …同じ頃、蓮がマンションの前にいた。真司と同じような格好で…

「まぁまぁ今日はいい男が二人も。ちょうどヒマだったのよ。今冷たいものでも入れますからね」
 そう言ってキッチンへと向かう竹内。真司はそれに対して軽く会釈すると、椅子に座っている北岡に気付いた。
竹内の様子を見て、もうしばらく戻らないと踏んだ真司は北岡へと近づく。
(あんた、セールスマンになりすまして様子を伺おうって作戦だな?いい作戦じゃない)
(何も言うな)
(俺と同じだよ)
(…恥ずかしくなる)
 会話の間に再び呼び鈴が鳴る。いや、北岡も鳴らしたことを考慮すると…三度というべきだろうか。
竹内がすぐに接客に出る。その後すぐに声がした。
「まぁまぁまぁいい男が三人も…今冷たいものでも入れますからね。ビールがいいかしら?ホホホ―――」
 その声とともに、呼び鈴を鳴らした張本人が現れる…お前もか蓮。

 隣のビルの屋上にて。なのは・はやて・手塚・ヴォルケンリッターが中の様子を見ていた。
ちなみに使っている双眼鏡は真司の私物だ。
「…やれやれ、まさか三人揃って同じ作戦なんてな」
 どうやら手塚とヴィータの番らしく、一つの双眼鏡を二人で使っている。
「手塚さんは行かなくてよかったんですか?」
「ああ、俺は秋山から『ここから中の様子を見ろ』と言われている」
 手塚がなのはの質問に答えたとき、下の階から何者かが現れる。
「…どうやら、考えることは皆同じのようだ」
 下の階から上がってきたのは吾郎だった。

 数分後、三人揃っての商談が始まった。屋上からの監視組も双眼鏡から目を光らせている。
ちなみに吾郎は吾郎で携帯双眼鏡を用意していた。サイズの都合上、二人での使用は難しいだろう。

 まずは潜入組の様子から見てみるとしよう。
「こちらでございます」
「まあ…素敵なカップね」
 蓮が取り出したのは白いティーカップだ。どこかで見覚えがあるような気がしないでもない。
「ええ、イギリス製の一品です。大変お買い得だと思いますが」
 見覚えがあると思った真司が目を光らせ、そして気付いた。
「あ!翠屋の…」
「ミドリヤ?」
 そう、蓮の商品は翠屋で使われているティーカップだった…さらに言うと、無断借用である。
「ええ、ミドリヤというブランドです」

 その頃監視組は。
「あれ?なのはちゃん、あのティーカップ…どこかで見覚えあるような気がするんやけど…」
 真司同様、はやてが何かに気付く。ティーカップに見覚えがあるようだが…
「え?あ、あーっ!あれ翠屋にあったカップだよ!」
 さすがにしょっちゅう見ているだけあって、すぐにその正体に気付いたようだ。
なのはの様子から、あのカップを使うという話は聞いてなかったと予測できる。
「今朝の物音って、ひょっとしてあれを用意する音だったのかな?」
「それより勝手に借りてった方が問題やと思うんやけど…」
 ちなみに、今回の無断借用はその後手塚によって報告され、蓮はしばらく減給になったのだがそれはまた別の話。
それはともかく、今度は真司が何かを取り出したようだ。
「はやてちゃん、あのお鍋…もしかしてはやてちゃん家にあったやつじゃ…」
「今度みんなにアイス奢ってくれる言うたから、真司君に貸したんや。
私はタダでも貸してあげる気やったけど、奢ってもらえるなら奢ってもらったほうがええかと思てな」
 薄給の身でそんな約束していいのか真司よ…

 再び視点を潜入組に移そう。
「で、あなたは何をお持ちですか?」
 鍋を取り出し、セールストークを終えた真司が北岡に聞く。
すると北岡は内ポケットから財布を取り出し、名刺を渡す。
「弁護士の北岡秀一です。何かお困りの際は、うちにご相談を」
「…はい」
 竹内もまんざらではないような表情で名刺を受け取る。
(おい、なんて奴だ。今回の事件で商売しようってのか!)
(違うって)
(何が違うんだよ!このおばさんを弁護して儲けようってんだろ)
(だから違うって!)
(いいかげんにしろ!)
 真司と北岡の言い争いを蓮がたしなめる。そして再び前に目線を向けると…竹内がいない。
一度冷静になろうというつもりか、指でメガネを押し上げる。そして…
「いないぞ!」

 視点を監視組へ。
「動いた!奴はおそらく下だ!」
 現在監視の順番が回っていたシグナムが叫ぶ。それを合図に全員が一階目指して駆け出した。
エレベーターに乗り、一階へと急ぐ。幸いこのエレベーターは普通のものよりも早い…というかフリーフォール並みの速さだ。
あっというまに一階に到着。
だが、何人かのメンバーは乗り物酔いで動けないため、今動けるはやてとシグナム、手塚が先行した。
「うう…エレベーターなんかで乗り物酔いになるなんて…」

 竹内がエレベーターを使い、一階へと逃げる。
エレベーターを降り、外へと向かおうとしたが…すでにはやて達三人により待ち伏せされていた。
それを見て後ずさる竹内。ちょうどその時、真司ら三人が追いつく。
「終わりやな。令子さんたちをどこにやったか、話してもらうで」
 竹内へと詰め寄る六人。鏡のほうへと後ずさる竹内…それがまずかった。
 キィィィン…
 例の金属音が響く。発信源は…竹内のすぐ後ろの鏡だ。
鏡にサメ型モンスター『アビスハンマー』が写り、そして竹内を引きずり込んだ。
「なっ!?全く、何故こんな時に…!」
 突然の出来事に驚き、ぼやくシグナム。
「今はんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
 真司の一言が合図となり、その場にいた全員が変身、もしくはデバイスを起動させる。
そしてすぐさまミラーワールドへと飛び込んだ。

 最初に飛び込んだ龍騎が、左の拳を叩き込む。
続いてナイト・シグナムの両者による斬撃、さらにははやて・ゾルダの同時砲撃。
これだけやられて無事だとは思えないが…
「手応えが無い…かわされたというのか?」
 シグナムの斬撃には手応えが無い。その事でシグナムは思案する。
だが、これが大きな隙となり、アビスハンマーにつけ入る隙を与えてしまった。
持ち前の高速移動を利用し、シグナムの背後へと回る。そして、胸部の大砲から砲撃を放とうとした。
だが、それが放たれることは無かった。ライアのエビルウィップが直撃し、アビスハンマーを弾く。

「どうすんだ?あのおばさんがやられちまって、令子さん達がどこにいるのかもう分かんないぞ!おい蓮!」
 令子や島田の居場所を知っているはずの竹内が喰われた。それはつまり、令子達の居場所が分からないということだ。
不味い。非常に不味い状況だ。だが、それを無視して蓮が向かっていく。
やむを得ず真司も向かおうとするが…別のモンスターの気配を感じ取り、立ち止まる。
そして周囲を見渡すと…蝉型モンスター『ソノラプーマ』がいた。ご丁寧にセミが木に止まるかのようにビルの壁に張り付いている上、さらにセミのような鳴き声を出しているからセミ型だと分かりやすい。
「あれは…」
 真司はソノラプーマを見て、思い出す。島田の見合いの日、北岡の車にいたモンスターを。
「そうか、あれがもし島田さんたちを狙ってるなら…!」
 モンスターは狙った獲物は逃さない。島田が狙いなら、つけて行けば令子達の監禁場所も分かるという狙いだ。
ここ最近の真司は妙に冴えているような気がする。バカと天才は紙一重という言葉もあながち間違いではないのかもしれない。
思考時間は一秒、それを終えるとすぐにソノラプーマを追う。
それに気付いたはやても真司を追い、そして真司の考えを聞いて納得したようだ。

 その頃アビスハンマーと戦っているナイト・シグナム・ライアはというと。
「速いな…それなら!」
『NASTYVENT』
 ソニックブレイカーを放ち、アビスハンマーの動きを封じる。
その隙に追撃を仕掛けようとはしたが…思いのほか動けるようになるのが早かった。
125km/hの高機動で、ライアへと迫る。そして、大砲を放とうとして、一瞬だけ動きが止まった。
…それは確かに一瞬。だが、シグナムにはそれで十分。
ガイをミラーワールドから叩き出した時同様、シュランゲフォルムで縛り上げ、上空へと放り投げる。
「今だ!秋山、手塚、やれ!」
 シグナムの声に呼応し、両名が一枚のカードを装填した。
『『FINALVENT』』
 空へと舞い上がるアビスハンマー。それに対し、飛翔斬とハイドベノンを同時に叩き込む。
それらは見事に決まり、アビスハンマーが粉微塵に爆ぜた。

 そしてソノラプーマを追っていった龍騎は現在、ミラーワールドの外にいた。
その理由は単純明快。ソノラプーマがミラーワールドから外に出ていたからである。
そしてソノラプーマを奥まで押し込み、その衝撃でブルーシートがはがれる。
ブルーシートの向こうには、眠っている令子と島田がいた。睡眠薬か、それともソノラプーマの鳴き声に含まれる催眠超音波のせいかは不明だが。
「ビンゴ!」
 二人の無事に安堵する龍騎。その隙にソノラプーマの一撃を貰う。
多少吹き飛ばされるが、大したダメージは無い。そのまま格闘戦となった。
ソノラプーマの攻撃を何発か受けながらも、龍騎がそれを押さえ込む。
「はやてちゃん、行くぞ!」
 偶然かそれとも狙い通りか、龍騎の近くには先ほど戻ってきたときの鏡。その近くにははやてとゾルダが攻撃準備を整えていた。
そして声の後、ソノラプーマをミラーワールドに放り込む。

 そして再びミラーワールド。
ソノラプーマが先ほどの鏡から飛び込んでくる。それを見たゾルダは、あらかじめ用意しておいたギガランチャーを構える。
そして立ち上がった瞬間を見計らい、撃った。
ギガランチャーの弾が直撃し、思い切り吹き飛ばされるソノラプーマ。そして…
「咎人達に滅びの光を!星よ集え!全てを撃ち抜く光となれ!貫け!閃光!スターライトブレイカー!!」
 上空から巨大な魔力光。中距離集束砲『スターライトブレイカー』が、ソノラプーマめがけて飛ぶ。
その光は一瞬にしてソノラプーマを消し飛ばし、ついでに地上にも少なからずダメージを与えた。明らかにオーバーキルである。
…まあ、現在地はミラーワールドなので誰にも影響は無いはずだが。
「これは…強力すぎやな。当分使わないようにせな…」

 片をつけ、一度ミラーワールドへと戻る龍騎。こちらの方が近道だからである。
ミラーワールドへと戻り、皆と合流。ちょうどその時、乗り物酔いでダウンしていたメンバーが合流したようだ。
「遅かったな。お前達が参っている間に片はついた」
 それを聞き、驚くヴィータ。
「え!?…で、でもまだ令子達は見つかってないんだろ?だったら今から探せば…」
「ああ、令子さん達ならもう見つけた。そこの鏡から入ったとこにいたよ」
 さらに驚く。モンスターは片付き、令子達も見つかった。それはつまり…
「もしかして、あたし達…役に立たなかったってのか?」
「ま、そういうことだね。ご愁傷様」
 ゾルダの一言がトドメとなり、ヴィータが大いにへこむ。
「あ、あはは…まあ、楽できたって考えればまだ…」
 なのはがフォローを入れるが、ヴィータがいない。どうやら精神的だけでなく、物理的にも沈みきっているようだ。
「じゃ、令子さん達連れてさっさと帰ろうか…ん?」
 帰ろうとしたとき、突如すぐ近くから金色の光が。そちらへと振り向くと…
「何…あれ…!」
 謎の金色のライダーが、光の中にいた。
「あいつ…オーディン!?」
 龍騎以外には、全く見覚えが無い。だが、名前は真司から聞いていた。
そう、すなわちこいつが13人目の仮面ライダー『オーディン』なのだ。

「戦いを続けろ…生き残った者は私と戦い、力を得られるだろう。13人目であるこの私と…」
 ゆっくりと、しかし誰にも文句は言わせないというような雰囲気でオーディンが言う。
「ああ、戦ってやるよ…但し、てめえとだ!」
「な!?ヴィータ、待て!」
 いつの間に戻ってきたのか、ヴィータがグラーフアイゼンを構え、オーディンへと向かっていく。
「あいつが仕掛け人なんだろ?だったらあいつをぶっ潰せば戦いは終わる!」
 もちろん、そんな保証はどこにも無い。だが、ヴィータはそう信じ、オーディンへと殴りかかる。
刹那、金色の羽が舞う。それと同時にオーディンの姿が消えた。
「え?うあっ!」
 オーディンの持つ特殊能力、それは金色の羽とともに瞬間移動する能力だ。
その能力を使い、ヴィータの背後に回る。そして一撃を見舞う。
それが合図になったかのように波状攻撃が始まる。
アクセルシューター、ミストルティン、ウイングランサー、シュランゲバイゼン、ギガキャノン。
それぞれが避ける隙も与えずに仕掛けるが、瞬間移動でかわされ、それぞれが一撃ずつ殴られた。
「まだ私と戦うときではない。お前達は今のまま戦いあえばいい。
魔導師という不確定要素があるようだが、まあいい。修正すべき箇所の修正は終わった」
 そう言い、最後に龍騎に一撃を見舞おうとするオーディン。
だが、龍騎はオーディンが現れるより前に一枚のカードを装填した。
そしてオーディンが龍騎を殴ろうとしたとき、逆に龍騎がオーディンを殴った。
先ほど使ったカード、ストライクベントのドラグクローを使って。オーディンは全くこたえていないようだが。
「ほう、何故私が現れる場所がわかった?記憶が消えなかったのか?」
「さあね…お前を一発殴りたかった!」
「殴ったうちには入らないがな…」
 その一言とともに、龍騎を殴る。オーディンのパンチ力は相当のものらしく、食らった全員が結構な距離を飛ばされた。
「一体…何のためにこうやってやり直させたんだ!」
「知る必要は無い。お前達の戦いは、何も変わらない。ただライダー同士で殺しあうのみだ」
「いや…変わったよ」
「何?」
「重さが…消えていったライダーの重さが2倍になった!これ以上は増やさない!」
 その言葉とともに、龍騎が立ち上がる。
「人を守るためにライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!」
「城戸…」
 龍騎の言ったことを聞いていたのか否か、オーディンはすぐに去っていった。
「私と戦うのは最後の一人だ。続けろ。戦いをやめるな」

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最終更新:2007年09月02日 19:55

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