プロローグ


この広い宇宙で、戦い続ける男がいた。白い装甲に身を包み、全身が傷だらけになりながらも孤軍奮闘する戦士。
そして一人の男に群がる化物の大群。とんでもない数だ。数えるのも嫌になる。簡単に言ってしまうと数百匹以上。

その男-いや、魔神と言うべきか-は一人で化物と戦い続ける。
襲い掛かる敵を、切り払い、薙ぎ倒し、消滅させる。

「流石……しぶといね。」
「だが奴には最早守る者もいない。力尽きるのも時間の問題だろう」
「そうだね。でも……あいつにトドメを刺すのは僕だよ。」

月から一人戦う男を眺めながら話す者達。

男の体はすでにボロボロに傷付き、意識を保っていられるのもやっとだ。だがそれでも男は戦い続ける。
既に彼が守ろうとした人類は滅び、愛する者も、友人も、信頼できる仲間達も失ってしまった。

それでも男は戦い続ける。何故?

それは奴らが許せないから。いや、絶対に奴らだけは許してはいけないからだ。

最早人としての心も忘れ、男は自分から家族を奪い、仲間を奪った『あいつら』への憎悪と、例えようの無い怒りだけでひたすらに戦い続ける。

「うぉぉおおお!!!」
「キシャァアアアア!!」

男の悲しい叫びと化物共の断末魔の声だけが響く。

もう何日戦い続けただろうか?男の体はすでに限界を越え、悲鳴をあげている。


「フフフ……久しぶりだね、兄さん。」
そんな男にトドメを刺すために、赤い装甲を身に纏った戦士が現れる。
「……シンヤ……いや、エビル!!」
「フフフ……嬉しいよ兄さん!まだ僕が分かるんだね!?僕と決着を付けたいんだね!?」

シンヤと呼ばれた男は最初は「ククク」っと笑い、そして堪えきれずに大笑いしだす。それは本当に嬉しそうな笑い声だ。

こうして呪われた兄弟の宿命の対決が始まる。
二人は激しくぶつかり合う。何度もぶつかり合う。お互いの刃を交え、叫びながら。

「シンヤァーーー!!!」
「タカヤ兄さんッ!!!」

そして-

「うぉぉぉぉ!ヴォォルテッカァーーーーー!!!!」
「PSYボルテッカァーーーーー!!!」

二人はそう叫び、お互いの最大技を放つ。放たれた光-PSYボルテッカ-はもう一方の光を包み込み、広がっていく。
そしてPSYボルテッカは男-相羽タカヤ-を飲み込む。
凄まじい衝撃の中、過去の記憶が濁流のようにタカヤに押し寄せてくる……。

「これは……父さん……ゴダート……ケンゴ兄さん……ミユキ……」
家族で楽しく過ごした日々。記憶の中のタカヤは楽しげに笑っていた。そして……
「……シンヤ……。」
世界をボルテッカの光が覆う。
タカヤは自分が最も愛した弟の名を呟き、そしてこの世界から姿を消した。

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最終更新:2007年08月14日 11:39