魔法マスター リリカルアジア 見よ! 東方は赤く燃えている!!!!! 後編


「ねえスバル…」
「何、ティア?」
「あんたさ…自分の師匠はカッコイイって言ってなかった?」
「うんっ! 師匠ってカッコイイでしょ?」
「……」

ティアナ・ランスター、相棒の美的感覚を疑う今日この頃。
彼女にとって、東方不敗マスターアジアのチャームポイント“ヒゲ・おさげ・もみあげ”は少々理解し難かった。





機動六課に現われた最強の武闘家、東方不敗マスターアジア。そしてその弟子である現キング・オブ・ハート、スバル・ナカジマ。
これはその二人が巻き起こす熱き拳の物語である。

六課に配属されたスバルにフォワードメンバー達、そしてそんな彼らを厳しくも優しく見守る師父、マスターアジア。

以下略。

だが地上本部襲撃を受けて連れ去られるスバルの姉ギンガ!! そして正体を現すマスター・アジア!!!
彼は六課を裏切り、あろう事か宿敵スカリエッティと手を組んだのだっ!!


「なっ! 師匠! 一体これは…」
「まだ気付かんかスバルよ! ワシは裏切ったのだっ! このくだらん時空管理局をなああ!!!」



驚天動地を見せる超展開!! そして手を組んだ東方不敗とスカリエッティによる聖王のゆりかごの起動!!
地上本部に向かう敵を食い止める為に出動したスバルの前に現われた謎の女“シュバルツ・ギンガ”!!!!

「甘い! 甘いわ、スバル!!!」
「なっ!? あなたは一体?」
「私の名前はシュバルツ・ギンガ!! ネオドイツの女とでも言っておきましょう」

突如として姿を現したマスクを被った自称ネオドイツの女シュバルツ・ギンガ、一体その正体は誰なのか?
驚愕するフォワードメンバー一同。

「一体誰なんだ! シュバルツ・ギンガ」
「まったく分からないわ」
「……」

大袈裟に驚くエリオとキャロ、そしてティアナは突っ込んで良いものかどうか分からず唖然とするしかなかったとか。





そして始まるスバルとシュバルツの戦い。
シュバルツは左手を回転させ必殺技、その名も“ネオドイツドリル”を打ち出す、繰り出される無数のドリルパンチの嵐にその身を切り裂かれるスバル。

「どうした! どうした! どうした! どうしたあああああっ!!!! お前の力はその程度かあああ!?」
「くううっ!!」

音速に達せんとする程のドリルパンチの連撃、その猛攻を展開した防御障壁でなんとか受け流そうとするも防御の全てを読まれ、成す術無く鮮血を散らしていく。
襲い来る左ストレートのドリルパンチ、スバルはその攻撃に反射的にカウンターの右拳を放つ。
だが両者の腕が空中でクロスした瞬間、シュバルツは手首部分を延長してドリルの刃でスバルの顔面を抉った。

「ぐううっ!!」

スバルは呻きながら、咄嗟に距離をとる。
魔力で編んだ額のハチマキのお陰で事なきを得たが、もしハチマキが無ければ確実に絶命していた。
そんなスバルにシュバルツは嘲笑の声で笑う。

「はーはっはっは!!! その程度かスバル! その程度の力では私を倒すどころか、マスターアジア打倒など無理の一言おおおおっ!!!」
「何いいっ!?」
「東方不敗に授けられた明鏡止水の心を忘れた今のお前に勝ち目などないわああああっ!!」

そのシュバルツの言葉に、スバルはかつて師父から教えられた明鏡止水の心を思い出す。

「見えたっ! 見えたぞ、水の一滴っ!!! わだかまりややましさの無い澄んだ心!」
「そう! それこそが明鏡止水!!」
「「それが人に己を超えた力を持たせる事ができる!!!!!」」

スバルとシュバルツ、まるで最初から打ち合わせていたかの如くに言葉を共に紡ぎ出しこれが最後の戦いと構えを取る。

「来いスバルッ!!! お前の力を見せてみろ!!!」
「言われなくとも!!! 見ろ、これが私のおおおおっ!!!!」

吼えると同時に光り輝くスバルの身体、その色は曇りなき黄金の輝き。
そう、これこそが…

「ハイパーモードだああああっ!!!!」

このスバルの雄叫びと同時に天空を走る二つのウイングロード、そしてスバルとシュバルツは脚部のローラーブーツを全速力で走らせる。
瞬時にスバルとシュバルツの影は交錯し、爆音と共にぶつかり合う両者の拳。
火花を散らし空気を震わせるが一瞬で勝敗は決した。

「ディバインバスタアアアアアァ!!!!!」

スバルの右手にキング・オブ・ハートの紋章が輝き、魔力のオーラが巨大な掌を形作る。
これこそが流派東方不敗が最終奥義。

「石破ああああぁぁ天驚うううううぅぅ拳んんんんん!!!!!!!」
「ぐおおおおおおっ!!!!!」

炸裂する流派東方不敗が最終奥義“石破天驚拳”、その凄まじく強大な魔力波動がシュバルツを飲み込む。
この大技を喰らって無事で済む者などいはしないのだ。
衝撃に吹き飛んだシュバルツに駆け寄るスバル、そこで彼女が見たのはマスクの取れたシュバルツの姿。
それは自身の姉、ギンガ・ナカジマの姿であった!!

「よく…私を倒したわねスバル…」
「なっ!? シュバルツの正体がギン姉だったなんてっ!!!!!」
「し、信じられないっ!」
「考えも付かなかったわ!」
「……」

その事実に驚愕するフォワード一同、その中でティアナは一人“あれ? 気付いてたのって私だけ?”なんて思ったりしたが場の空気の異常な熱さに口を開けなかった。

「スバル、明鏡止水の心を会得したあなたならばこれを使いこなせるわっ! 受け取りなさい、この左リボルバーナックルをっ!!!!」


そしてスバルは両手にリボルバーナックルを携え、胸に明鏡止水の心を秘めて師父、東方不敗マスターアジアの待つ聖王のゆりかごへと向かう。
そこで待ち構えていたのは戦闘機人の武闘家集団“ナンバーズ12天王”!! 始まる死闘!!

以下略。

新生シャッフル同盟(フォワード一同)はナンバーズ12天王を含む数多の敵を打ち倒す。
そして遂にスバルはゆりかご上部にて東方不敗と対峙する!!






「か~かっかっかっか~っ! よくぞここまで来たなスバルよっ! 恐れをなして逃げなかっただけは褒めてやるわいっ!!!」
「何をっ!! マスター! 何故あなたはこんな事を!?」
「ワシが言いたい事がまだ分からんのかっ!? この馬鹿弟子があああっ!!!!」
「ええ分かりませんっ!! 言いたい事があるならハッキリと言ってみてください!!」
「では言ってやろうっ! だからお前はアホなのだあああああっ!!!!」
「何っ!?」

そう叫ぶと同時に宙へと跳び強烈な蹴りを見舞う東方不敗、スバルはその蹴り足に自身もウイングロードを展開して加速させたマッハキャリバーの上段への回し蹴りを叩き込み応戦。
凄まじい爆音と火花が飛び散り、衝撃にゆりかご上部の装甲が深さ数メートルはへこむ。
そして空中で攻撃を交錯させながらも吼える東方不敗。

「お前は本当に管理局の説く正義が正しいとでも思っているのかっ!?」
「なっ!? 一体何を!?」

瞬間、東方不敗の足に莫大な魔力が収束して蹴りの威力を爆発的に増加させる。

「きゃあああっ!」

そのあまりの威力にスバルは吹き飛び、優に十数メートルは吹き飛ばされてゆりかご上部を転がる。

「なっちゃいないっ! 本当になっちゃいないぞスバルウウウッ!!!」
「くっ!」
「良いかスバルよっ! 時空管理局の敷く法や正義など所詮まやかしっ! 何故その事実に気付かんのだっ!?」
「何だってっ!?」
「危険の除去と言い張って現地世界の許可も無く、神聖な古代遺産を穢し尽くし奪い去るっ! 手前勝手な理屈で以って他の世界に“質量兵器の禁止”などと謳っておきながら、自分達は次元航空艦船に強力な魔力兵器を搭載する矛盾っ!!
まるで己がこの世の支配者とでも言うような厚顔無恥な有様よっ!!!! これでもお前は管理局が正義と言うのかスバルウウウウっ!!!!!」
「そ、それは…」
「だからワシはこのゆりかごで管理局を滅ぼすのだっ! 管理局が消滅すれば世界に自ずと調和は戻るっ!! 手始めにまず管理局本局をゆりかごとワシが消し去ってくれるわっ!!! か~かっかっかっかっ! そうだ、それが良い…それが1番だっ!!!」


遂に明かされる東方不敗マスターアジアの真意、その魂の叫びに事の成り行きを見守っていた皆も驚愕に染められていく。
地下基地でフェイトに逮捕されたスカリエッティも東方不敗のその様に唖然とする。

「く、狂ってる…狂ってるぞおおぉぉっ!」

「お前が言うな」

傍にいたフェイトは思わず突っ込んだとか。



そして東方不敗の語りはまだ終わらない。莫大な魔力と闘気を身体から溢れさせながらもさらに吼える東方不敗。

「そうだ…償いだっ! 犯した罪は償わなねばならぬ、この手でなっ!! そう、屁理屈で以って奪われ汚された世界の秩序っ! 偽物の正義でふんぞり返る愚かな管理局から世界を取り戻すのだっ!!!!」

そんな東方不敗の超理論にスバルも遂に吼える、自身の信じる正義と誇りを込めて。

「それは間違っているっ! だからと言って局を抹殺して良い筈がないっ!!!」
「まだ分からんのかっ!? 何が管理局法だっ!? 何が理想的な統治と平和だっ!? 所詮は支配者気取りの暴政ぞっ!!!!!」
「だが無闇な破壊や崩壊よりは遥かに良いっ!!」
「だからお前はアホなのだあああっ!!!! この馬鹿弟子があああああああっ!!!!!!!」

再び宙へと身を翻す両者、そして渾身の力で以って放たれる互いの絶技。

東方不敗が手を円形に回しながら描き現われた文字と共に魔力と闘気で形成された小型の分身が飛び出す。

「十二王方牌大車併っ!!!!!!」

東方不敗の放つ流派東方不敗の奥義、これにスバルは右手のキング・オブ・ハートの紋章に魔力を込めて炎と燃やしながら自身の必殺技で返した。

「私のこの手が真っ赤に燃えるううぅっ! 勝利を掴めと輝き叫ぶうううっ! 爆熱っ! ディバインバスタアアアアアアッ!!!」

閃光と共に宙でぶつかり合う両者の闘気、そのあまりの衝撃にゆりかご全体が軋みを上げて震え上部装甲が脆くも吹き飛んでいく。
極限まで高まった両者の絶技は遂に爆散する、だがスバル・東方不敗の師弟に後退の二文字無し、二人は迷う事無く最速で駆け抜けて直に拳をぶつけ合った。

「うおおおおっ!!!」
「はあああああっ!!!!」

雄叫びと共に重なる両者の拳、そしてリボルバーナックル越しにスバルの拳へと東方不敗の熱き魂の慟哭が伝わっていく。

(これは悲しみ……拳から深い悲しみが伝わってくる…マスターの拳が泣いている……己の拳は、己の表現するものだと教えてくれたのはこの人だっ!!)

同じ領域に立ち始めて東方不敗の深き心の内を知ったスバルにさらに熱き魂が宿る、そして両者の拳は無数に交錯し再び距離をとり、同じ奥義を出す体勢へと移る。

「超級!!!」
「覇王!!!」
「「電影弾んんんんん!!!!!!」」

超高回転から繰り出される独楽の如き体当たりが一閃し、再び宙で交錯して爆音を響かせるもこの程度では決着には至らない。
そして両者は距離を取り手に莫大な魔力と闘気を高めていく。

「マスター! あなたは間違っているっ!!!」
「何っ!?」
「何故なら、あなたが抹殺しようとする管理局もまた広き世界の一部っ! その局を消し去って世界に秩序を取り戻すなど愚の骨頂っ!! そして私は信じている、少なくとも私や六課の皆が抱く正義の心に一片の曇りなど無いとっ!!!!!!!!」
「ふんっ! ならばワシが正しいか、お前が正しいか決着をつけてくれるわああああっ!!!」
「応っ!! キング・オブ・ハートの名に懸けてええええっ!!!!!」

東方不敗とスバル、互いに身体に溢れる魔力と闘気を極限まで高めていく、そしてその心が明鏡止水の境地に達したと同時に輝く金色へと変わりハイパーモードへと成る。
二人の身体から溢れる闘気だけでゆりかご上部の装甲は飴細工の如くヒビ割れていき、氷の如く砕け散る。

「行くぞっ!!!!」
「応っ!!!!!」

そして互いに同じ構えを取り、同じ技を吼える。
そう、これこそが全管理世界最強最大の武の境地にして最強究極奥義と謳われた無敵の大技…

「流派っ!!!」
「東方不敗があああっ!!!」
「最終ううううっ!!!!!」
「奥義いいいいいいいっ!!!」
「石っ!!!」
「破っ!!!」

「「天驚拳んんんんんんんんんっ!!!!!!!!!!!!」」

咆哮と共に打ち出された流派東方不敗最終奥義“石破天驚拳”、そのあまりの破壊力に天は裂け、大地が割れ、大気が焼ける程の衝撃が生み出される。
ゆりかご上部の装甲などチーズのように溶け出し、もはや古代の船は崩壊寸前の様を呈する。

宙でぶつかり合う東方不敗とスバルの石破天驚拳、最初は拮抗していた両者の闘気だが徐々にスバルが押し負けていく。

「くうっ!」
「ぐはははっ! そこまでかっ!? 貴様の力などそこまでのものに過ぎんのかあああっ!? それでもキング・オブ・ハートかああっ!!!!!!」
「このおおおっ!」

東方不敗の闘気の圧力に膝を突きそうになるスバル、そこに東方不敗の叱咤が飛ぶ!

「足を踏ん張りっ! 腰を入れんかっ!! そんな事では悪党のこのワシ一人倒せんぞっ!!! この馬鹿弟子があああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」

しかし、あまりの強い闘気の圧力に遂に膝を突くスバル。

「何をしておるっ! 自ら膝を突くなどっ、勝負を捨てた者のする事ぞおおおおっ!!!!! 立てっ! 立って見せええええいいいいいいっ!!!!!!!!!!!!!」
「うるさいっ! 今日こそ私はあなたを超えてみせるっ!!!!!」

スバル、渾身の力を振り絞り両手のリボルバーナックルへと持てる全ての魔力を注ぎ込んでいく。
それこそがスバルの持つ石破天驚拳、最強のバリエーション!!!

「石破天驚うううううっ!!! ディバインンンッ!!! バスタアアアアアッ!!!!!!!」

そして魂の咆哮と共に放たれた魔力の巨大な掌が東方不敗の石破天驚拳を打ち破り、その巨大な拳で東方不敗を握り締めた!!!!!

「ヒイイイイイトエンンンンドオオオオオッ!!!!!!!!!!」

スバルの誇る最強最高の超絶技が炸裂するその刹那、東方不敗は今まで見せた事の無い程に涼やかな笑みを見せた。

「よし…今こそ、お前は本物のキング・オブ・ハート…」
「なっ!?」

スバルの放った究極の魔力と闘気が爆裂する瞬間、スバルの脳裏に今まで師父マスターアジアと過ごした修行の日々が走馬灯の如く駆け巡る。

「師匠ううううううっ!!!!」

そしてスバルの涙と共に奥義は決まり、その場を眩い閃光と爆炎で包み込んだ。




全ての戦いが終わった聖王のゆりかご上部、最終奥義石破天驚拳のぶつかり合いに直径100メートルは下らない巨大なクレーターが出来上がっていた。
そしてその中心地で全ての力を使い果たし、倒れ伏した東方不敗をスバルが抱きかかえ、共に沈み行く夕日の赤を見ていた。

「美しいな…」
「はい、とても美しゅうございます」
「では……流派」
「「東方不敗は…」」
「王者の風よっ!!」
「全…新…」
「系列っ!!」
「「天破侠乱っ!!!!」」

東方不敗とスバル、淀む事無く互いに流派東方不敗の詩を読み上げていく。
これが交わされる最後の言葉と知るが故に、吐き出される言の葉の一つ一つに熱き魂を込めながら。

「「見よっ!! 東方は赤く燃えているっ!!!!!!!!!」」

そう言い終わった瞬間、東方不敗の腕が力を失い地に落ちる。


「師匠?…師匠?……師匠っ!! 師いいいい匠うううううううっ!!!!!!!」

暁に美しく照らされた中、スバルが溢れる涙と共に慟哭を天に響かせる。

嗚呼、どこまでも広きこの世に英雄・英傑と呼ばれる者数あれど、かの人を超えるものがいようか? いやいまいっ!!

真の英傑にして最高の武闘家、東方不敗マスターアジア、全てを授けた最愛の愛弟子の腕に抱かれその魂を天へと還した。

東方不敗マスターアジア、暁に死す。


リリカルアジア 大完結!!!!!




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最終更新:2008年10月13日 21:08