「んーっ静かでいい所だねー、空気もおいしいし。ねっ、ティア」

「観光で来てるんじゃないのよ、バカスバル」

ここまで私達を乗せてきたバスを見送りつつ、隣ではしゃぐ相棒に釘を刺す。
―――第97管理外世界日本国M県S市杜王町
スバルの言う通り、いい町だと思う。騒がしくなく、しかし活気が無いということもない。人々は暖かく、そして平穏に暮らしている。
だからこそ、信じられなかった。この町に凶悪な違法魔導師が潜んでいるかもしれない、などということは。
なぜ私、ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマがここにいるのか。話は一週間ほど遡る。
ジェイル・スカリエッティが引き起こした大事件、通称JS事件。
その事後処理も一段落付いたか、と思われた頃に唐突に私達は部隊長室に呼び出された。
何事かと思いつつ中に入ってみれば、そこには隊長陣三人がそろい踏みしていた。
忙しいこの三人が、特に忙しい筈のこの時期に集まっているのだ。ただ事ではないのだろう。自然と身が引き締まる。
スバルもそれを理解しているのか、いつものどこか抜けた雰囲気はなりを潜めていた。

「そんなに硬くならんでええよ。ちょっとお願いしたいことがあるだけやから」

私達の緊張を見て取ったらしい八神部隊長は、朗らかな笑みを浮かべて言った。

「お願い……ですか?」

「そや。お願いや。嫌やったら引き受けてくれんでもええ。とりあえず聞いてくれるか?」

八神部隊長の目配せを受けて、なのはさんが引き継ぐ。

「第97管理外世界……私やはやてちゃんの出身世界なんだけど、二人にはそこに向かってほしいの」

「えっと……どういうことですか?」

スバルが困惑気味に尋ねた。私も正直戸惑っている。

「うん……ちょっと困ったことになっててね……」

“ちょっと”と言うなのはさんの表情には陰りがあった。

「その世界のある町はね、昔から失踪者が多いんだ。
それだけなら管理局も動かないんだけど、ここ数年で失踪者の数が一気に増えたの。異常と言ってもいいくらいにね。
現地の人たちも必死で捜索したんだけど、手掛かり一つ見つからなかった
ここで、管理局はある可能性に気付いたの。
……もしかしたら、魔法を使う何者かがやっているのかもしれない……」

それは可能性の話だ。だけど、もしも、そうだとしたら……

「その時はまだ可能性でしかなかったし、管理局が直接動く必要はないんじゃないかって声も多かった。
でも、もし違法魔導師が何かを行っていたんだとしたら管理局はそれを何年も見逃していたことになる。
そんな失態を認める訳にはいかないって人達が強行に調査隊を派遣したの。
だけどね……」

スバルが固唾を飲んだのが分かった。私も手に嫌な汗が滲んでいた……

「帰ってこなかったの。一人も。通信も繋がらない。
……たぶん、殺されたんだと思う。潜んでいた何者かに。
これにはさすがに管理局も焦って、本格的に調査団を送るって事になったんだけど……」

珍しくなのはさんが言い淀む。

「JS事件で今はどこも人手が……ね。それに加えて相手は調査隊を誰にも知られることなく始末する様な実力者。
どこの部隊もやりたがらなくてね……。巡り巡って機動六課に、ってこと。
この捜査にはフェイトちゃんが行くのがもう決まってる。
二人にはその補佐役についてほしいんだ」

なのはさんの話が終わり、今まで黙っていたフェイト隊長が口を開く。

「本当は私一人でやるつもりだったんだけど……ティアナは執務官志望なんだよね?
危険は伴うけどこの捜査はいい経験になると思うんだ。
名目上は補佐役だけど実際にはほとんど別行動になるからね。最初から一人で、っていうのも難しいだろうからスバルと二人でならどうかと思って。
もちろん無理にとは言わない。ティアナにはティアナのやり方があるだろうしね。これは夢に向かうための一つの選択肢だと思ってくれればいい。
……どうかな?」

―――私はそれを受け入れた。
打算が無かったと言えば嘘になる。でも、私の中には確かな怒りがあった。罪のない人々を苦しめる犯人への、怒りが。
この出来事は私のちっぽけな、これから出会うこととなる人々の揺るぎない正義と絶対に砕けない勇気、光り輝く黄金の意志に比べれば本当にちっぽけな心に、火を灯したのだ。

だから、私は今、ここ――杜王町――に居るのだ。



魔法少女リリカルなのはStrikers×ジョジョの奇妙な冒険part4
ストライカーは諦めない
―――始まります


「それで、これからどうするの?」

……ワクワクという擬音はきっと今のスバルのためにあるんだろうな、と思わされるような目をしていた。
初めて訪れた場所だ。色々と見て回りたいのだろう。相変わらず子供っぽい相棒に思わず苦笑する。

「捜査に協力してくれてる団体が人を送ってくれるそうよ。とりあえずその人を待ちましょ」

「待つ必要はねーぜ。もう来てるからな」

ベンチに腰掛けて新聞を読んでいた男が立ち上がり、静かにそう告げた。
大きな男だった。身長だけではない、何か人間としての大きさを感じさせた。
一見すれば恐そう、ともとれそうだがその眼の奥に湛えた静かな知性がそうさせなかった。

「スピードワゴン財団の空条承太郎だ。アンタ達は時空管理局の者だな?」

TO BE CONTINUED...

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最終更新:2008年02月15日 23:43