…この世界は愛に満ちている。いや、それとも私の世界が愛されていなかっただけなのか。どちらだとしても、こんな不公平が許されていいはずがないだろう。
だから、私は―――

魔術士オーフェンStrikers 第6話


(私は絶望しているのだろうか・・・)
ダミアン・ルーウは考える。
深い洞窟の中、薄気味悪い緑光に照らされながら何度も何度も暇さえあれば問い続ける。だが答えが返って来ようはずもない。その問いに答える何者もここには居ない。
当のダミアンにすらわからないのだから。・・・結局、疑問は疑問のまま彼の胸中に留まり続ける。
だから彼は自問し続ける。そうしていればいつかひょっこり答えに出会えるかもしれない。

(私は、絶望しているのだろうか・・・?)

『絶望』

あの時、自分の大陸では世界を滅ぼす女神の侵入という未曾有の危機により多くの者が絶望していた。聖域と敵対する黒魔術士の群れも、
玄室に引き篭もるドラゴン種族も、ドッペル・イクスを名乗る殺し屋達も、
ひょっとしたら自分のオリジナルであるダミアン・ルーウも・・・大陸でも有数の実力を誇る白魔術士ですらも・・・。

(・・・オリジナル、か)
思考の中に出てきた言葉を反芻し、思わず自嘲する。
(私はダミアン自身が製作したダミアンのコピー・・・もしも彼が滅んでしまった時、彼の情報と力を引継ぎ彼の役目を果たす存在、要するに彼自身が掛けた保険だ)

少なくとも、オリジナルであるダミアン本人は自分にそういう役割を求めていたらしい。

(だが、実際にダミアンが滅び私が目を覚ましてみればそこには私の役割など存在しなかった・・・ダミアン自身の誤算か、それとも彼を滅ぼしたあの小賢しい魔女が自分の存在に気付きこの世界に放逐したのか。
どちらにせよ私は私がするべき事とはなんら関係がない場所に飛ばされていた・・・これは絶望するに値するのではないか?)

白魔術は時の海ですら行き来する力を持つ。少し力の方向性を変えてやれば時空の壁すら破れるだろう。
当然ダミアンのコピーである彼にも同じ事が出来るし、実際彼はその力で元の世界へ帰還を果たそうとした。

…だがやはり誤算があった。別次元の世界の数が彼の予想を遥かに超えていたのだ。
その多さは砂漠の中に埋もれた砂金を手探りで探すような印象を彼に与えた。
加えてダミアンが彼に遺した力は膨大とは言えるが、決して無尽蔵ではない。これだけの数を一つ一つ探っていたらあっという間に枯渇するのは目に見えてる。
成すべきことがあるというのにどうすることも出来ない事に苛立ち途方に暮れている所に――――彼が現れたのだ。

「あっ、居た!チンク姉~、居たっスよ~!」
「シッ!口を慎めウェンディ!・・・ここに居られましたか、ダミアン殿」
その声に思考の海から意識を引き上げる。自分の前方、薄暗い(といっても精神体の自分には関係ないのだが)通路から少女が二人こちらに向かってテクテクと歩いてくる。
「何か用かな?お嬢さん方」
「・・・はい、ダミアン殿に折り入って頼みたい事があるからラボの方へ来てほしいと、博士が」
口を動かさず、声帯すら震わせずに話すダミアンにまだ慣れていないのかチンクと呼ばれていた少女は一瞬の躊躇を挟みながらそれでも毅然と用向きを伝える。
「・・・そうか、ご苦労」
そう酷く簡潔に労いの言葉を残し、彼はスカリエッティの研究室へと転移した。

「ふぅ・・」
「・・・いや~、相変わらず無愛想な人っスね~」
「・・・無礼は控えろ、ウェンディ」
「ほ~~い」
魔方陣も詠唱も使わず文字通り一瞬で消え去った男を見送り、残された二人がため息を吐く。
「でもホント何なんスかね~、あの人。もう結構長い事一緒にいるけど何も食べないし、寝てる所とかも見たことないし、意味もなく浮いてるし・・・幽霊か何かなんスかね?」
「・・・・無礼は控えろと言っただろう」
腕を頭の上で組んで愚痴るウェンディの言葉に一瞬、心中で同意してしまった自分を恥じながらチンクは再び妹を諌めた。





「おっと、相変わらず心臓に悪いなぁ君は。ちゃんと入り口をノックしてから入って来てくれと言っているだろう?」
研究室への転移を完了するとすぐにそんな声が聞こえた。
「マナーがなってないとは自分でも思うが、何分この方が楽なのでね」
声の方へと顔を向け彼の皮肉に簡潔な言葉で切り返す。振り返った先にはイスの背もたれに体を預け、
何がそんなに可笑しいのか口元をイビツに歪めた白衣の男がこちらを向いて座っていた。
一ヶ月と少し前、自分をここへと招き入れた人物。
―――ジェイル・スカリエッティ

「用件とは・・『ソレ』の事かな?」
そう言いながらスカリエッティの後ろにある培養液で満たされた三つのカプセルに視線を移す。
「んん?いやぁ、違う違う。彼らについて君に手伝ってもらう事はもうないさ。山場は越えたからね。稼動まではもう少し時間がかかりそうだが・・・」
「・・・・そうか。結構な事だ」
やはり簡素に返す。
別に皮肉でも何でもない。この天才がそう言うのなら本当にそうなのだろう。ゴーストと機械の体の統合など―――未だに信じられないとは思うが・・・。
「では一体私に何の用なのだ?」
「ああ実はね、ちょっと君にお使いを頼みたいんだよ」
「?」
意味が分からず首を傾げる。
「ククッ・・・ウーノ?」
その反応を面白がるようにケタケタと笑いながら先ほどから一言も喋らずに彼の傍に控えていた女性に声をかける。
彼女は頷き手元のパネルを操ると、何もない虚空に大きな画面が現れる。

「これは・・・」

画面には山岳地帯を疾走する列車の映像が映し出されていた。

□  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■  □  ■

「・・・・・・よう」
「・・・・・ああ・・・・・・・おはようございます」
「おはようございま~~すですオーフェンさん・・・」
朝の機動六課本部、食堂へと続く廊下にてオーフェンは偶然出くわしたはやてとリィンにどんよりした声で挨拶をする。
と、向こうもこれまた右手をふらふらと上げながら呻くように返してくる。

なぜ二人が二人ともこんな半死人のような状態なのかはお互いに相手の顔を見る事ですぐに察する事ができた。
「・・・寝不足ですか?目の下にエライ隈が・・・」
「そういうお前にも出来てるぞ・・・寝てねぇのか?」
あくびを噛み殺しながら尋ねる。

「う~ん、ちょっとだけなら寝られたんやけど、さすがに疲れが溜まっててなぁ・・・。私ら、もう三日間くらい二時間睡眠やで・・・」
「眠いです~・・・」
すぐ傍にあった自販機コーナーの簡易なソファに腰を下ろして目を瞬かせるはやて。昨日は泊り込みだったのか制服自体はピシっとしているが下に着ているYシャツはどこかしわが寄っているし、
さっきまで仮眠でもとっていたのだろう髪の方もやや乱れぎみだ。
「オーフェンさんは?」
ソファの対面の壁に寄りかかっているこちらにはやてが尋ねてくる。
「ん?」
「あんま寝てないんですか?」
「ああ・・・なのはの奴にフォワードの奴らの訓練プログラムを組むから知恵を貸してくれとか頼まれてな・・・。安請け合いってのはするもんじゃねぇ、ってのを痛感さられたよ」

仕事が片付いてから試行錯誤を重ね、何度も何度も組みなおしてやっと彼女が満足いくものが組めた頃には午前の4時を回っていた。ここら辺、変な所で責任感が強い自分が嫌にならないでもない。
「なのはちゃん頑張り屋さんやからなぁ~、大変やったでしょう?」
「全くな・・。次、頼まれる事があったら俺の全身全霊を賭けて断ろうと心に固く誓ったくらいだ」
「あはは、は、ふわぁ~~・・・ぁあ」
会話の途中、緊張が解けたのかはやてが大きな欠伸をする。と、もはや限界とばかりにソファの上にグデ~、と寝っ転がってしまった。
「おい?」
「ん~~・・・やっぱ超眠ぅ・・。アカン、私ちょっとだけここで寝てくわぁ・・・」
「えっ、ちょ、はやてちゃん!?」
慌てるリィンを他所にはやては既に完全安眠モードに入ってしまっていた。
「ダ、ダメですよ、はやてちゃん!まだお仕事全部終わってないんですよ!?今日はお昼に聖王教会の方にも行く予定だし、こんな所で寝てる場合じゃ・・・」
「じゃあ何でこんな所うろついてたんだお前ら・・・」
「朝ゴハン食べ終わったらまた頑張ろうって事になってたんですぅ!」
「う~ん、分かっとるってぇ・・・あと・・・20時間くらい立ったら・・・起こしてぇな・・・」
「えええ、どこがちょっとなんですかぁ!?」
さりげなく仕事放棄宣言をしながら急速にまどろみの中に落ちていくはやてを何とか起こそうとリィンが彼女の髪を引っ張ったり、頬を抓ったり、
加速をつけてきりもみキックを見舞ったりもしたが、まるで起きる気配がない。限界を超えた睡魔というのは痛覚すらも凌駕する。

「はぁ、・・・はぁ、・・・こ、こうなったら・・・最後の手段です・・・オーフェンさん!」
「えっ、俺?」
一歩引いた位置で静観(いや、むしろ観戦)していたオーフェンに息を切らしながらリィンが話しを振る。
「はい!オーフェンさん、はやてちゃんにキスしちゃって下さい!」
「・・・・・・・」
場の空気が凍る。
オーフェンはたっぷり30秒間程その言葉を頭の中で反芻し、目眩を覚えて(眠気のせいだと信じたい)指で目頭を抑えたポーズのまま聞いた。

「・・・何で?」

「この間はやてちゃんが言って・・・あっ、違った。・・・はやてちゃんは言っていた・・・
『眠りについた女の子を起こす一番の方法は王子様のキスなんやでぇ』って」

(室内のはずだが)背景に太陽を背負いながら目を瞑り天を指差したポーズで心なしか満ち足りた表情のリィンが言う。
「何だ、それ・・・・」
「最近のマイブームなんですぅ」
「ブームって・・・」
若干引き気味のオーフェンを気にせず表情と口調をサッと戻して続けるリィン。
「さ、というわけでどうぞです!」
「・・・何が?」
「熱い口付けを」
「できるかっ!」
宙を浮いている彼女の頭を平手で叩きながら叫ぶ。
「迷信を鵜呑みにしてどーする!?ただの痴漢だろうが!」
すると彼女は頭を抑えながら目に涙まで浮かべて抗議の眼差しを向けてきた。疲労も手伝ってか、かなり切羽詰っているようだ。

「うぅ~、だって・・・だって、ほんとに困るんですぅ・・・お願いします、オ~フェンさぁ~ん」
「う・・・・・ったく、しょうがねぇなぁ・・・・」
はぁ、と嘆息しながら、仰向けで口を半開きにして寝ているはやての方へ歩いていく。すると泣き出す一歩手前の表情を一変させてリィンが嬉しそうにこちらにやってくる。
「さ、さすがオーフェンさんです!話が分かるですぅ!」
「ああ。・・・まぁ、するのは俺じゃないけどな」
「えっ?」
オーフェンは可愛らしく小首を傾げるリィンをムンズと掴む。
「あれ?ちょ、えっ?」
そして戸惑いの声を上げるリィンに一切構わず彼女をはやての顔の方へと寄せていく。

「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待って下さい!ストーーーっプですぅ!!オーフェンさん何考えてるんですかぁ!!」
事ここに至ってようやく彼の行動の意味を悟ったリィンが暴れだす。
「いや、だから俺がしたら問題あるだろう色々と」
「で、ででも、はやてちゃんの話では男の人のキスじゃないとダメだって・・・」
「大丈夫だろ、多分」
「し、しかもリィンに至っては人間ですらないわけですし効果は期待できないと・・・」
「平気だって、きっと」
「何でテキトーな対応するんですかぁー!だ、大体リィンとはやてちゃんじゃサイズ的にどう考えても無理だと思モガァ!」
オーフェンは反論を全く受け付けずリィンをはやての口元に押し付けた。

しかしはやての口が少し開いていたのが悪かったのか、暴れるリィンを押さえつけるために少し力を入れすぎたためか―――恐らく両方の相乗効果だろう。
リィンははやての口腔内に上半身を丸々突っ込まれてしまった。
はやての唇から小さな両足が生えてブンブンとバタ足を繰り返している。

「・・・・何ともグロテスクな光景だな・・・」
「っっっ、何でやねん!」
オーフェンが素直な感想を口にするのと同時、さっきまで何をしても起きなかったはやてが口からリィンを吐き出しながらガバッと身を起こした。

「ゲッホ・・・ゲホ、全く・・乙女の口に何突っ込んでくれてんねん!」
「お前さんの相棒だが」

はやて汁でベタベタになりながら床に這いつくばっているリィンを指差しながらキッパリとした口調でオーフェンが言う。

「しかし迷信も意外とバカにできんな。まさか本当に目を覚ますとは・・・」
「喉奥を拳でどつかれたら誰だって起きるに決まってるやん!」
「あ~、はいはい悪かったよ。」
地団駄を踏みながら言ってくる彼女に投げやり気味に言いながら足を食堂へと向ける。そろそろ朝食を採らなければ本気で朝の訓練に遅れてしまう。

「まったくもうっ!・・・リィン、ゴメンな?・・・立てる?」
何を言っても無駄だと悟ったのか(半分は自分のせいでもあるため)はやてそれ以上何も言わずに、未だに倒れ付したままのリィンへと声をかける。

「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・」
リィンの口から苦悶の声が上がる。
瞬間―――
「うわああああああああああああああん、バッキャローですぅーーーーーーー!!」
大絶叫を上げつつ、涙を流しながら(と言ってもどれが涙かわかったものではなかったが)リィンがあさっての方向に飛び去ってしまった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
それを呆然と見送りながら、二人はどうしたものかと顔を見合わせ―――

「・・・・・あ~、まぁ腹が減ったら帰ってくるだろ」
「いや、でも・・・・そやね」
オーフェンはキッパリと、はやては一瞬躊躇したがやはり割と薄情な呟きを残して食堂へと消えていってしまった。

……ここでちゃんとリィンを追いかけて誠心誠意謝罪し、パフェの一つでも奢っていてやれば後々の面倒事を回避出来ていたであろうという事をここに記しておく。





「は~い、じゃあ午前のトレーニング終了だね、みんなお疲れ様!」
「「「「ありがとうございましたぁっ」」」」
荒廃した市街地に設定された訓練場、なのはの言葉にフォワードの面々が安堵の表情を見せる。その顔には「今日もキツかった・・・」という思いが在り在りと浮かんで見えた。
それを知ってか知らずか微苦笑を漏らしながらなのはが横で控えていたオーフェンへと向き直る。
「じゃ、オーフェンさん。お願いします」
それだけ言うとなのはは一歩退いて彼の『講義』を待つ姿勢に入った。彼女も昨日はあまり寝ていないはずなのだがそんな素振りはまるで見せない。
(大したもんだよ、本当に・・・。)
そう胸中で思いながらフォーワードの四人に向き直る。
「・・・そんじゃあ、いつも通りまず今日の問題点から上げていくぞ」
「「「「はいっ!」」」」
咳払いをしつつ始める。
オーフェンが機動六課・フォワードの戦術面教育係りに就いてから五日目。この訓練終わりの『戦術講義』は半ば習慣に成りつつあった。オーフェンが担当するのは主にスターズの二人の戦術指導、
スバルとエリオには近接戦闘を想定しての組み手などだった。
キャロだけはオーフェンの専門外のポジションなので教えられる事が今のところ何も無い。

「――――で、だ。スバル?」
講義が一段落した所で、突然オーフェンの言葉の矛先が個人に向けられた。半眼でスバルを睨む。
「うっ・・・」
スバルが汗を一筋垂らして硬直するが、構わず続ける。
「ティアナの援護が届かない地点では相手に真っ直ぐ突っ込んでいく癖出すなってこないだ言っといたよな、俺?」
「うぅ・・・は、はい・・・」
「じゃあさっきのは何だ?」

腕を組んだ姿勢で威圧するように言う。
「さっきの」というのはスターズ二人のコンビネーション強化の訓練で少々スバルが無茶をやらかしたのだ。

「いや~、その・・・射程内に偶々ガジェットが現れたもので、つい・・・その、反射的に・・・」
「・・・・・・」
額から猛烈に冷や汗の様な物を掻きながらしどろもどろに言い訳するスバルにため息を吐きつつオーフェンが口を開く。

「ここ数日お前の動き見てて分かったんだけどな。お前、いちいち動きが正直すぎるんだよ。相手との最短距離を一直線に駆け抜けるなんて真似はここぞという時以外は・・・」
「で、でも!」
オーフェンの説明を遮るようにスバルが声を上げる。
「あ・・・あの、でも私、今までずっとそうやってきて、他の戦い方なんて思いつかないし、それに、あの・・・あれが私の、えっと・・・持ち味だし・・」
「ああ、そこは否定しねぇよ」
「・・・へっ」
ややいっぱいいっぱいになりながら必死に捲くし立てていた彼女の動きが停止する。

「いや、だからお前の持ち味云々に関しては特に異論はねぇよ。機動力と至近距離での一撃の威力は実際大したもんだと思うしな。
俺が言いたいのはその持ち味を活かす状況を考えろって事だ。もし、ティアナの援護がない状態でお前のあの全力パンチが空ぶった時、お前次に来る敵の攻撃からどうやって身を守るつもりなんだ?」
「あ・・・」
「・・・ま、そういう事だ」
呆然とした呟きを発するスバルの頭をポン、ポン、と叩いてやりながら横のティアナへと視線を向ける。

「で、だ。ティアナはコイツの手綱をもう少し上手く扱えるようになれ。お前の指揮があって初めてこいつが活きるんだからな」
「ハイッ!」
無駄に元気に返事をしてくる。どうもシグナムとの一戦以来ティアナのオーフェンへの評価はかなりのレベルにまで達しているらしい。
それに苦笑しながらもう一度目の前の少女に向き直る。
「スバルもだ。次もっかい同じ事しやがったら俺の熱衝撃波の狙い撃ちから10分間逃げ回り続ける事になるからな」
「は、はい。すいませんでした!」
ゾッとした表情をしながらも素直に頷いてくるスバルに満足すると、なのはに視線でもう言うことは無い、と告げる。と、彼女はそれに頷き占めの言葉を口にしようとし―――
「ちょっと待ったぁーーーーーーーっですぅ!!」
突然の乱入者に阻まれた。

耳に馴染んだその声に皆が振り返る。そこには―――予想通りと言うべきか、リィン・フォースⅡが仁王立ちの姿勢で立っていた。ただその姿はいつもの妖精サイズではなくエリオ達と同じくらい、つまり標準の子供サイズだった。
服装はいつも通り管理局の制服姿だったが、どこから持ってきたのか何やらサングラスなどかけている。
その傍らにはヴィータがあんまり乗り気じゃなさそうに佇んでいる。
「・・・なぁリィン、いいじゃねぇかよ。はやてのヨダレまみれにされたくらいでさ~」
やはり気が進まない口調でヴィータが肩を竦ませる。
「よくないです!乙女として耐え難い屈辱です!―――オーフェンさん!」
だがリィンは全く取り合わず、ポカーンとした表情を見せているオーフェンに向けてビシィ、と指を突きつけた。

「決闘です!!」

―――――ヒュウウウウウ―――――
両者の間で寒い風が吹く。

「―――――――――――」
「・・・え、え~と、なのはさん。実は私のローラーブーツそろそろ限界っぽいんですけど・・・」
「あ、私のアンカーガンも最近ちょっと弾詰まりが酷くて・・・」
「う~ん、そうだねぇ・・・二人ともそろそろ専用のデバイスに切り替えても―――」

後ろの方でそんな声がする。オーフェンはそのやり取りに「関わりたくないから、放っておこう・・・」という明確な意思を感じたとかなんとか。



一方その頃――――

「べ、ベストを・・・・尽くせ・・・・・」
隊長室、リィンのサポートを欠いた状態で書類を片付けているはやてが死にそうになっていた。

―――――騎士・カリムとの会合まであと二時間と少し。


魔術士オーフェンStrkers 第6話 終


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最終更新:2008年05月24日 03:52