いつもと変わらないはずの穏やかな日々。
スバルの姉のギンガを加えての訓練。
到着したポチのデバイス。
改造されつくしたアルファ。
戦うために必要なものが1つを除いて全てが揃った。
しかし、最後の1つは現れない。
けれど、心配することではないのかもしれない。
空気がどこか変わり始めたから・・・・・・。
まるで嵐が来る前に海が凪いでいるような・・・・・・。
嵐が来たとき、俺はまだ壊れないでいられるだろうか。
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。

第15話 準備完了

「さて、今日の朝練の前に1つ連絡事項です。陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が今日からしばらく六課へ出向となります。」
「はい。108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくおねがいします。」
「「「「よろしくお願いします。」」」」

わたしが促すとギンガが敬礼と共に自己紹介する。
スバルがなんだか嬉しそう。
戦闘機人がらみの事件がロストロギアの事件と範囲が被っているせいで合同捜査になった。
それが表向きの理由。ギンガもその理由で出向になったと思っているだろう。
裏の理由はカリムさんの予言。
来るべき日に向けての協力体制。
肝心の地上本部の動きが余りにも悪くて酷く焦るけれど・・・・・・。
大丈夫。絶対に皆を守ってみせる。
それはそうと、ギンガってスバルのシューティングアーツの先生なんだっけ。
スバルの成長振りを是非見てあげて欲しいな。

「「「「はい!」」」」

うん。いい返事。
本当に元気がいいよね。
昔のわたしもこんなだったのかな。
感慨にふけるのは後でいいや。
あと、もう1人紹介しないといけないもんね。

「それからもう1人。」
「どうもー。」
「10年前からうちの隊長陣のデバイスを見てきてくださっている本局技術部の精密技術官。」
「マリエル・アテンザです」

わたしのレイジングハートやフェイトちゃんのバルディッシュにカートリッジシステムを組み込んでくれたのもマリエルさんなんだよね。
初めて会ったのは闇の書事件のとき。
あれからずっと無茶しっぱなしだから本当にお世話になりっぱなしだな。
そうか。はやてちゃんと同じぐらいの期間付き合っていることになるから10年にもなるんだ。
やっぱりなんだか感慨深いかも・・・・・・。

「地上での御用時があるということでしばらく六課に滞在していただくことになった。」
「デバイス整備をみてくださったりもするそうなので・・・・・・。」
「気軽に声をかけてね。」
「「「「はい!」」」」
「おーし。じゃ、紹介が済んだところでさっそく今日も朝練いっとくか!!」
「「「「はい!」」」」

ヴィータちゃんの声で各自散会するはずなのに、エリオがどことなく落ちつかなげ。
それにはんた君もいない。
珍しい・・・・・・。
少なくとも顔をだしてからどこかに行ってたのに。
どうしたんだろ。
性格的に寝坊だけはありえそうにないし、トイレとか・・・・・・あれ?
エリオ、なんで持ってないの・・・・・・。

「エリオ、ストラーダはどうしたの?」
「そういえばはんたのやつもいないな。誰か知らないか。」

わたしの言葉に続いてシグナムさんも疑問を口にする。
それにしてもエリオ、デバイスを忘れるなんてしないと思うんだけど・・・・・・。
もしもそうだったらきつめに躾ないといけないかな。
でも、エリオの性格からするとありえないよね。
なんだろう。

「おいおい。自分のデバイス忘れるなんてたるんでるんじゃねぇのか?」
「すいません。でも、調整とカスタマイズお願いしたんです。今朝には届けてくださるってことだったんですけど・・・・・・。」
「ふぇ?私きいてないよ?」

ヴィータちゃんの言葉に反論するエリオ。
そんな話知らないというシャーリー。
どちらも嘘をついているとは思えない。
でもデバイスをカスタマイズしてくれるシャーリーは知らないって言うし・・・・・・。
『今朝に届ける』って受け答えもあったことを考えると面と向かって頼んだってことだよね。
シャーリー以外にデバイスがいじれる人って・・・・・・まさか!!

「・・・・・・エリオ、まさかとは思うけどもしかして・・・・・・。」

引き攣り気味の顔のままフェイトちゃんが言葉を口にした矢先だった。
どこからともなく哄笑が聞こえてきたのは。
そちらを見ればそこにいるのは・・・・・・。

「ハハハハハ、ハハハハハハハ、ハハハハハ。やぁ、みなさんお揃いのようだね。
おや?2人ほど知らない顔がいるね。シャーリー、簡単に紹介してもらえるかな?
ああ、ボクの名前はバトー。メカニックデザイナーなんてものをやらせてもらってる。」
「ババババババトー博士。ええと、そのあの・・・・・・。」
「あ、108部隊より出向になりましたギンガ・ナカジマです。よろしくお願いします。」
「マリエル・アテンザです。本局で精密技術官をやっています。」
「どちらもよろしく。うん?ナカジマってことはそこの・・・・・・。」
「スバルの姉です。」
「ふうん。なるほどね。ところで話はぐっと代わるんだけど2人ともボクとトモダチになってくれたりしないかな?
ボクは今、トモダチ100人出来るかな計画を発動中なんだ。でも、未だにボクのトモダチって11人しかいないんだよね。
まぁ、数ヶ月前までは1人しかいなかったから怖いくらいに絶好調なんだけどね。ああ、シャーリーは弟子だから数にはいれてないよ。」
「・・・・・・?かまいませんが?」
「ええ、私も・・・・・・。」

なんて唐突。なんて脈絡の無い会話。
止める暇もなかった。
研究室に引きこもってて食堂でも見かけなかったから油断していた。
たぶんエリオがデバイスの改造頼んだのってバトー博士・・・・・・。
ああ、どんな改造されちゃったんだろ。
レイジングハートが四六時中ファッキンファッキン言うのには参ったよね。
性能の跳ね上がり具合は本当にすごかったけど。
モラルが著しく低下するバトー博士のシステムと身体に負担がかかるブラスターシステム、どっちがいいんだろう。
ストラーダはまともなものでありますように・・・・・・。
そんなわたしの心配をよそに話は進んでいく。

「あなたが本局で噂になっているすごいデバイスマイスターですね。是非ともお話をお聞かせください。」
「ああ、それならちょうど良かったよ。ボクが作ったデバイス2機と頼まれて調整とカスタマイズやったのを届けに来たところでね。
トモダチになった記念にキミ達へステキなアダナをつけてあげようと思ったけど、今はこっちが優先だもんね。
テストも兼ねて盛大にやってもらおうと思って大急ぎで来たんだ。ああ、来た来た。サースデー、ここで止めてくれる。
ああ、運転しているのが助手のサースデーだよ。」
「リョウカイシマシタ。ばとー博士。」

キャタピラが付いたトラック?
ハーフトラックっていうみたいだけど、そんな見慣れない車を運転するのがロボットなサースデーなのが物凄くシュール。
運転が上手いからなおさらに・・・・・・。
なんであんな昔の漫画に出てくるようなロボットの手で精密作業できるんだろう?
なにはともあれ、サースデーが運転しているそれの荷台に積まれているのは
はんた君とポチとアルファとたぶんデバイスなんだろう物とストラーダ。
あれ?なんでトラックに積んでるの?
前はサースデーが抱えてきたのに・・・・・・。

「トラックに積む必要あったのですか?」
「いやぁ、アルファが余りにも激しいセッティング頼むから気合いはいりすぎちゃってね。こうでもしないとボクじゃ運べなかったんだよ。」

わたしと同じ疑問を抱いたマリエルさん。
けれどその答えに引き攣る。
以前の重量を知っていれば当然と言えば当然。
いったい何kgになったんですか。
既に人間が運用することを考えていないようなセッティングになりつつある気がする。
でも、それを運用できるはんた君もそれだけの処理をこなしてしまうアルファもすごい。
おそらく演算か並列処理がずば抜けてるんだろうけど。
いったいどれだけ高性能なんだろ?
そんなことを思っていたときだった。

「バトー博士!!!!ここか!!!!!!」
「はやてちゃん、どうしたの?リインとユニゾンまでして騎士甲冑まで着込んで・・・・・・。」
「主はやて、執務を放り出してくるのはどうかと思うのですが・・・・・・。」
「んなことどうでもええんや。それ以上に問題なんわ、バトー博士!!朝一で届けられてたあの報告書って本当に本当なんか?」
「どうしたんだい?わざわざ嘘を書くような奇特な性格はしていないつもりなんだけどね。」
「・・・・・・あのな、バトー博士。どんなにピーキーなアームドデバイスでも性格悪いインテリジェントデバイスでもシャーリーが卒倒するようなストレージデバイスでも作ってくれてええんよ。」

どれも問題だと思うのってわたしだけかな?
他のみんなも物凄く困惑した表情。
はやてちゃんがこんな状態になるってことはまたなにかやったのかな。
もうバカチンとかナイチチとかロシュツキョー呼ばわりは珍しくも無くなったし・・・・・・。
馴れって怖いな。
でもなんだろう?
次にはやてちゃんが口にした言葉に数人が絶句した。

「ただな、ユニゾンデバイス作ったっちゅうんわかなりムチャクチャ無茶ってやつやと思うんやけど・・・・・・。」
「ユ、ユニゾンデバイス!?作った!?」
「マ、マリエル技官しっかり!!」

卒倒しかけているマリエルさんをシャーリーが慌てて支えている。ティアナ達も動揺してるね。
ええと、ユニゾンデバイス。
古代ベルカの遺産で初代リインフォースとかリインがそれなんだよね。
物凄い力がでるけど暴走事故が多発したのと現在じゃ作り方が失われてるから物凄くレア・・・・・・えええええええ!?
ユニゾンデバイスを作った!?
・・・・・・ミッドチルダの歴史を揺るがす大事件じゃないの、これ?
でも、バトー博士の様子は対して変わらない。
それよりも困惑しているような・・・・・・。
やがていつもの調子でバトー博士が言葉を続ける。

「何を言ってるんだい。ちゃんと目を通した?ユニゾンデバイスなんか作ってないよ。」
「はぁ?だって報告書には・・・・・・。」
「ああ、ちょうど良かった。それなら一緒に説明してあげるから聞いていってよ。
今、まさに説明しようとしたところだからさ。ええと、それじゃどうしようか。
最終改造したデバイスと新規で起こしたデバイスとカスタムと調整しただけのデバイスがあるけど。」
「僕のストラーダからお願いします!!・・・・・・ばらばらになってたりしませんよね?」

やっぱりデバイスが傍らに無いのは不安なのか、真っ先に手を上げたのはエリオ。
うん。エリオ。その心配は仕方ないかもしれない。
でも、心配するべきはそこじゃないと思うんだ。わたし・・・・・・。
バトー博士に改造お願いするってことは・・・・・・。

「OK。それじゃムッツリのタンショーデバイスの説明から行こうか。」
「ムッツリ?」
「タンショー?」

バトー博士の言葉の傾向を知っていればどんな意味の言葉でいわれた言葉かわかるんだけど。
初対面のギンガとマリエルさんは首をかしげている。
言葉の変換が出来ていないのか。
ああ、説明聞いて2人とも卒倒しないといいんだけど。

「それじゃ、説明するよ。でも、これからムッツリは訓練で忙しいでしょ。
忙しい人間を引き止めるようなクソムシ以下な真似をするのはボクの本意じゃないからね。
なんてったってボクは天才だからね。
四六時中妄想にふけってるムッツリでもぱぱっと分かるくらい超絶簡単な説明をしてあげるぐらい朝飯前さ。
だから1回で覚えてね。
覚えられないとかほざいたら裸に引ん剥いて六課の屋上から逆さ釣りにして『ボクはムッツリです』って垂れ幕つけてぶらさげてやるからね。
ああ、もちろん詳しいことが聞きたかったら後で聞きに来てくれればいいからさ。なんてったってボク達トモダチだもんね。」
「はい。わかりました。」

精神的にひとまわり成長したのかな。
ムッツリって呼ばれて表情変えないし、即答してるし・・・・・・。
この間は泣いて逃げ出したのに・・・・・・。
評価あげておいてあげようか。
いやいや、この後の説明でどうなるかが注目するべき点かもしれない。
そしてバトー博士の説明によるストラーダの説明が始まった。

「それじゃ、四六時中妄想しっぱなしで女の子の裸ばかり想像してるドスケベなノウミソをいったんリセットしてしっかり聞いてね。
ムッツリでも分かるように1つ1つ順番に説明するよ。いいかい?
1.貧弱脆弱虚弱体質なタンショーデバイスの基礎フレームからいじってムッツリに分不相応なデカマラデバイスに改造。
2.カマ掘るに不便だった刀身部分を延長することでケツのアナ抉りたい放題。
3.ソーローであることをウリにしながら全然ソーローじゃないから3倍ほどソーローにパワーアップ。
4.女子更衣室や女湯覗くのに便利なステルス搭載。
5.カートリッジシステム搭載でソーローっぷりが更に上がるから女子更衣室から逃げ出すのが一段と楽に。
6.ムッツリの貧相なイチモツと違って折れることのないウタマロ仕様。
7.似合わない白コートのバリアジャケットから変質者御用達の黒尽くめコートに変更。
8.ちょっと触っただけでドカンと加速する超絶こらえ性なしソーロードーテーボウヤ仕様。
9.ムッツリがあまりにも貧弱でお粗末でマザコンすぎるからしかたなしに重さは1kg増しで抑制。
9.せっかくデカマラになったのにノウナシボウヤすぎてステキ言語教え込んでもろくに使いこなせないクソガキAIだからAIいじりは仕方なく見送り。
10.今度の差し入れは羊羹にしてね。
どうだい。これだけ簡単なんだ。1度で当然分かってくれたよね。
そういうことでタンショーデバイスからデカマラデバイスに生まれ変わったデバイスを装備するムッツリも
ただのムッツリからオープンスケベなムッツリにレベルアップしてくれていいんだよ。
もうじゃんじゃん使いまくってあまりにも貧相で粗末なタンショーホーケーソーローのイチモツをおったてまくって発情して、
今度はオープンスケベのヘンタイのマザコンのマセガキのムッツリへのレベルアップ目指してよ。」
「・・・・・・あ、ありがとうございます。バトー博士。」
「お礼なんていいよ。だってボクとムッツリはトモダチじゃないか。トモダチの頼みは快く聞いてあげる。
それがトモダチってもんだろ。」

あ、頭痛い・・・・・・。
言っていることは革新的なことばかりなんだと思うけど、なんでこんな・・・・・・。
エリオ、どれだけ言葉の意味分かったんだろ?
むしろ分からないからあんな困惑した表情しているのかな。
逆に言葉の意味が分かる人間だと・・・・・・。
ああ、ヴィータちゃんとかフェイトちゃん、顔が真赤。
ティアナなんかまるでトマトみたい。
平然としているシグナムさんはすごいけど。
はやてちゃんも頭痛そうに頭抱え込んじゃってるし。
スバルとキャロは首を傾げてる。
ああ、2人もまだ分からないんだ。
こういうとき自分が汚れたなぁって思うよね。

「あ、あれだけピーキーだったのにまだ上があるっていうの?」
「な、な、な・・・・・・。」
「あわわわわわ・・・・・・。」

シャーリーは慣れちゃったんだな。
内容のほうで驚いてるみたいだし。
でも、ギンガとマリエルさんはもう酷い動揺具合。
たしかに初対面でこうなるときついかもね。
でも、アダナが待っているって知ったら本当にどうするんだろ。
まぁ、それはいいとして、残りの2機が問題。
片方はアルファだからはんた君が使うとして、もう片方はいったい誰が・・・・・・。
鎖とプレートが付いていることからするとブレスレットかチョーカーなのかな?
少し大きめだけど。あれ?なんか刻印してある。
ええと、なんて書いてあるんだろ?

「それじゃ、ムッツリのデバイスの説明終わったからクソイヌのデバイス説明に移ろうか。
ゴキブリのデバイスは説明がシャレにならないくらいふざけまくったからね。
ああ、もちろんゴキブリの飼い犬たるクソイヌのデバイスも似たり寄ったりのふざけっぷりだよ。
あ、そうだ。ねぇ、ナイチチ。ザフィーラが喋れたらいいなって思わないかい?」
「あん?なに言ってるんだてめぇ。ザフィーラは普通に喋・・・・・・むぐっ。」
「おっとヴィータ、涎がこぼれとるよ。まったくしょうがない子やなぁ。アハハハハハ・・・・・・。
バトー博士にザフィーラが喋れるのは内緒なんよ!!」
「うん?まぁ、いいか。で、どうなんだい、ナイチチ。」
「あ、ああ~、喋れたらおもろいなぁって思うけどなんでや?」
「うん。クソイヌデバイスを作っている途中、プログラムいじってるときにね。
念話の部分をマスカキする代わりの暇つぶしで遊び半分にいじくったら喋れるようにできちゃったんだよね。
だから余計な機能を全部取っ払ってこのステキな首輪をつけてあげるだけでただのザフィーラがいらないことほざくザフィーラにレベルアップできるんだよ。
ああ、インテリデバイスみたいなAI搭載しないからステキ言語は教え込めなかったんだ。ごめんね。」
「さ、さよか。あ、ああー・・・・・・。本当に喋れるようになるだけなんやな?」
「うん。物凄く頑丈で並大抵の力じゃ壊れないこの首輪をつけるだけでね。」
「・・・・・・主はやて。問題ないと思われますが・・・・・・。」
「・・・・・・せやな。」

聞いた限り、問題ないように思うけど。
なんかひっかかる。
そのとき、刻印してあるものが文字だと気がついた。
ああ、ネームプレートか。
でも、なんで名前だけなのにあんなにずらずら長いんだろ?
聞いてみるか。

「あの、バトー博士。プレートに書かれてるのって・・・・・・文字ですよね?」
「うん?バカチン。キミって文字も読めないバカチンだったっけ?
ただのネームプレートなのに・・・・・・。」
「いえ、あの、名前だけにしては妙に長いなって・・・・・・。」
「ああ、そういうことか。それならそうと言ってよバカチン。まったくバカチンはバカチンすぎてしかたないよね。
でもバカチンがそんな疑問を持つのも当然だよね。なんてったってバカチンはバカチンなんだもの。
その程度のことさえ分からないからこそのバカチンだもんね。
でも、大丈夫。バカチンでも分かるくらいとっても簡単なことしか書いていないからさ。」

うう、相変わらず激しい。
我慢・・・・・・我慢・・・・・・。
そんなわたしにお構いなしでにかっと笑うとバトー博士が説明を続ける。

「このプレートにはね、こう書いてあるんだよ。
『私は年中発情しまくっててメスイヌと見れば見境なしに襲わずにいられない我慢知らずでこらえ性なしでおまけに甲斐性も無いナイナイづくしの恥知らずでクソマミレのクソイヌのワンコのポチです。』
どうだい?とても簡単だろ?」
「・・・・・・『私はポチです』以外の部分に意味ってあるんですか?」
「うん。もちろんだよ。この刻印がないとイマイチプログラムの奔り具合が悪くってね。この刻印をしてあげるだけで性能が200%アップするんだ。
それでナイチチ、どうするの?家族って呼ぶぐらい大切なんだからやっぱり喋れるようにしてあげたいって思うよね。」

・・・・・・デバイスって欲求不満になったりするのかな?
なんか酷い言葉いれるだけで性能あがっているような印象さえ覚えるんだけど・・・・・・。
ああ、こんなことを考え始めている辺り、逃避してるのかな。
いけないいけない。
で、件のはやてちゃんはそれを聞いて物凄くひきつった表情しているし。
あ、マリエルさん、今にも卒倒しそう。
過激っていう言葉を2つ3つ回っちゃった過激さだからしかたないのかな。
はやてちゃんの困った様子を見かねたのか、ティアナが口を挟んだ。

「バトー博士。それよりもポチ・・・・・・さんのデバイスの説明を。」
「おお!それもそうだね。クソッタレザフィーラのことなんてどうでもいいもんね。
ゴキブリの飼い犬のクソイヌのポチのほうがよっぽど大切だもんね。ありがとう。ノウナシヒステリー。」
「え?え?ちょっと、あたしは別に・・・・・・。」
「それじゃノウナシヒステリーの要求もあったことだし、とっととかったるい説明をしちゃおうか。
なんてったってこの後に救いようが無いダッチワイフデバイスアルファが待っているんだからね。
こんな説明はちゃきちゃき終わらせないと日が暮れちゃうよ。
それじゃ、クソイヌ、そこを動かないでね。このワンコロデバイス取り付けてあげるからさ。」

そう言って近づくとかちゃかちゃと音をたてて取り付けられる鎖とプレート。
あ、ワンタッチで取り付けられるんだ。
お手軽だね。
もしかするとフリードとかにもつけられるんじゃないかな。

「これで良し。それじゃ説明しようか。クソイヌのクソ過ぎるクソッタレノウミソじゃ1割も理解できないだろうけど
聞かないよりはましだからせいぜい頑張って理解してね。
もっともウジが湧いたクサレノウミソじゃ四六時中盛ることしか考えて無くて幾ら説明してやってもかけらほども覚えてくれないからやっぱり無意味に終わるかもしれないけどさ。
それじゃ1つ1つ順番に説明するからね。いいかい。
1. ストレージデバイスっていう味気も色気も面白みもやっかみも面倒も無いクソイヌにピッタリのクソ過ぎるテツクズガタクタヨセアツメクソッタレデバイス。
2. クソイヌがウェルダンになっても傷一つ付かなくて1度取り付けたら2度と外れないタフネスを持った超絶頑丈クソマミレ仕様。
3. 似合いもしないクソイヌのボロキレはあっちで過ごしてたころと同じ格好。
4. クソイヌ仲間1号のジャンキーベルナールがやってたステルス搭載によって食い逃げが簡単に。
5. 四六時中全身にブーストかかりまくりになるおかげでクソイヌ仲間2号のピザデブタロウがやってた一個小隊を壊滅させる体当たりもできる怪力馬鹿に。
6. ヘルメットから伸びた管からは吸うだけで絶頂になれるクソイヌ仲間3号のスカシラリーが持ってたヤクをちょっと改造したヤクチュウガス満載のポチボンベ搭載。
7. 重さはバカチン2人分よりは気持ち程度に軽い100kg。
8. 噛み付くことしか知らないノウナシのクソイヌのためにクソまみれの身体を全身武器まみれにレベルアップ。
9.計画性なにそれで後先考えない甲斐性なしなクソイヌのためにベルトリンク式カートリッジシステム搭載で火力アップして魔力を節約。
10.クソイヌは使う気がしないだろうけどナイチチがつけろってキャンキャン喚くからしかたなく取り付けたサディスト設定搭載。
11.ゼツリン節操なしのクソイヌのために幾らでも節操なく撃ちまくれるよう並列処理がブチキレのブチマケのブッコロ仕様。
12.ゴキブリとお揃いの不思議魔方陣Mk.Ⅰ~Ⅲに加えて新たに加えたMk.Ⅳ~Ⅵも搭載で飼い主と揃ってクソヤロウに。
13.ろくに使わないけどおまけ程度に喋れるようにした泣いて喚いて叫びまくれる負け犬の遠吠え迷惑仕様。
14.お礼は期待していないからイチゴショートなんか持ってこなくていいからね。
どうだい。クソイヌのカラッポノウミソじゃまったく理解できなかったと思うけど分かりやすい説明だったでしょ。
気に入ってくれたかな。」
「・・・・・・それで、武装はどうやって展開する?」
「「「「「「「しゃ、喋った!?」」」」」」」
「なにを驚いてるんだい?喋れるようにしたって言ったじゃないか。人の説明をそろいも揃って聞いてないな。
人の話はちゃんと聞くことって教わらなかったのかい。ああ、それで展開の仕方だったね。
クソイヌじゃ余り長い言葉を覚えられないだろうから、いろいろアイデアはあったけどクソ簡単なヤツにしたんだ。
最初は『じゅげむじゅげむ五光の擦り切れ・・・・・・』とか『百人一首を一呼吸で全部謳いきる』とか『全身に100V電流を流して感電犬になる』とか考えたんだけど
どれもこれもクソイヌじゃできそうになかったからね。『クソッタレ、セットアップ』の2言で展開できるようにしたよ。
これならクソイヌでもできるでしょ。ああ、もちろん『わおーん』って遠吠えしてくれても展開できるからね。」

いや、どれも難しいって・・・・・・。
結局、わたし達と変わらないし。

「・・・・・・ねぇ、ティア。遠まわしにあたし達、馬鹿にされてるのかな?」
「スバル、話しかけないで。正気を保つのに必死だから。」

ティアナがすごい表情になってる。
ああ、そういえば前は泣き止まなかったんだっけ。
エリオとキャロははてなマークが飛び回っているような表情しているし。
ギンガとフェイトちゃんも顔が引き攣り始めた。
ヴィータちゃんはぶるぶる震えっぱなしだし、はやてちゃんは頭を抱え込みっぱなし。
平然としているのはシグナムさんくらい。
シャーリーさん、やっぱり平気そうだ。
・・・・・・慣れって本当に怖いね
あ、マリエルさん、過呼吸起こし始めてる。
でも、本当にどこから突っ込めばいいんだろう。

「わおーん!!」

そんなとき、高らかな遠吠えが響き渡り、展開されるポチのバリアジャケット。
・・・・・・え!?

「ええええええ!?」

真っ先に大声を上げたのはティアナ。
いや、気持ちは分かるけど。
でも、これって全身武器庫っていうんじゃないかな?
でも、大砲とミサイルとマシンガンは分かるけど、レンズとコイルのはいったい何に使うの?
それになんかこんな感じのオモチャが昔売ってたような気もするような・・・・・・。

「どうだい。とりあえずドッグバズーカとドッグウイングとドッグサンダーとドッグレーザーとドッグバルカンを干渉しないように搭載したんだ。
ドッグジャベリンは余りにも不恰好になるからいっそのことジャベリンじゃなくて爪にしちゃったよ。
ゴキブリが惚れてたアバズレの武器と同じ構造の爪だから切れ味は抜群だと思うよ。
本当はマイクロブラックホール生成装置とか荷電粒子砲とか陽電子砲くらい積みたかったんだけどナイチチが融通きかないせいで質量兵器つめないし、
クソ撒き散らすみたいに放射線ぶちまけて辺りをぶち壊しまくるとクソイヌは良くても回りがガタガタ抜かすから放射線ぶちまける装備は残念だけど積めなかったんだよ。
なんにせよこれでクソイヌは噛み付くことしか出来ないノウナシクソイヌから全天対応年中発情見境なし節操なし喚き散らす空飛ぶクスリ漬け脳筋クソイヌにレベルアップしたんだ。
使いこなせなくてキャンキャン鳴いたりしないよね。ねぇ、クソイヌ。」
「悪くない。」

さすがにバトー博士の言葉に引き攣った。
いったいなにを相手にする予定なんですか!?
荷電粒子砲とか陽電子砲は分からなかったけどブラックホールなら分かる。
でも、そんなもの持ち出して・・・・・・。
皆の表情も引き攣ったりはてなマークが浮かんでそうな顔の2つに割れた。
そんなわたし達の思考はおいてけぼりで、バトー博士の話はまだ続いている。

「うん、それはよかった。これでハンター2としてゴキブリの役に立てるね。
なんせ、ゴキブリの飼い犬以外に管理局の犬なんて称号がついたところでクソイヌのクソイヌっぷりに代わりは無いからね。
せいぜいクソイヌが食って寝るしか能が無い真性のクソイヌじゃなくて無いよりマシ程度に動けるノウナシのクソイヌだって証明してあげてよ。
それがゴキブリの手助けになるからさ。」
「まったくもってその通りだ。御主人の傍らにいられるほうがよほどいい。」
「ハンター2!?」

バトー博士とポチの会話に驚いたようなスバルの声が響く。
あ、わたしも初耳だ。
たしかにハンターチームははんた君1人だったから当然といえば当然・・・・・・なのかな?
あれ?でも簡単に人員って増やせたっけ?
スカウトした後にいろいろ書類手続きがあったような・・・・・・。
その前に部隊長の許可が必要なんだけどはやてちゃん、出したのかな?

「ちゃんとナイチチの承認も通っちゃってるしね。心置きなくハンター2として暴れてよ。」
「ええ!?私、覚えとらんよ!?」
「ええ~?もう、だめだなぁ。たしかあれはゴキブリがノウナシヒステリーを蜂の巣にした日だね。
あの日、ハンター2の話を持ちかけにいってせっかく分かりやすく丁寧に説明してあげたっていうのに、
聞き分けの無いナイチチがこらえ性もなく喚きだしちゃったから机の上の書類に紛れ込ませてきたんだ。
その後にも手段を変えて3種類くらい書類送っておいたけど全部にほら、この通り。
承認のハンコがぽちっと押されてるんだよ。これでハンター2のクソイヌポチの誕生に障害はなくなったわけだね。」

ああ、そういえば大荒れしてたね。あの日のはやてちゃん。
書類仕事するときは絶対に怒ってないときにしよっと・・・・・・。
膝を突いて絶句しちゃってるはやてちゃん。
でも、承認のハンコ押さなかったとしても、フリードとかザフィーラさんみたいな扱いで戦闘参加する手段はいくらでもあるんだよね。
ポチがきちゃった時点ではやてちゃんの負けかな。

「さて、長々と実の無いオナラみたいなスカスカ説明つきの2人のデバイスは終わったから。
ついにようやくお待ちかね、ダッチワイフアルファの説明だね。でも・・・・・・うーん。」

珍しく歯切れの悪いバトー博士。
どうしたんだろう。
いつもなら嬉々として説明してくれるのに。
言葉はすごいけど。

「どうかしましたか。バトー博士。なにか問題でも?」
「うん。ロシュツキョー。別に説明してあげてもいいんだけどね。アルファは余りにも力入れて改造しすぎちゃったからね。
散々いろいろ天才過ぎるボクの頭を使って必死こいてえっちらおっちらひいこらあへあへ考えたんだけど、
どんなに簡単にしてやってもシャーリーやバカチンやロシュツキョー達が理解するのには3世紀か4世紀はかかる感じなんだ。
それにいつものことを考えるとボクが必死こいて考えた超絶簡単単純明快な説明を聞いたとしても分からないとかほざくだろうしね。
だから、今回は大切な部分を山のようにごっそりえぐりまくってサルどころかアメーバでもギョウチュウでもサナダムシでもゲボ子でも理解できるくらい
単純で簡単で物足りない説明にしてみたよ。これで分からないなんてほざかれたらボクどうしちゃおうってくらい簡単にしたんだ。
それで、もしも分からないなんて言われたらって少し心配になっただけなんだよ。」

なんか簡単に説明するのくだりでおかしなの1つ混ざってなかった?
でも、3世紀か4世紀か・・・・・・。
ユニゾンデバイス作ったっていうだけでそれぐらい超越していそうなんだけど。
もう、ここまでくるとどれだけおかしなデバイスになったのか気になってくる。
認めよう。
運用さえできればアルファが誰のデバイスよりも高性能だって・・・・・・。
そういえばトラック持ち出すなんていったい何kgになったんだろ?
重めに見積もって600kgぐらいかな。

「そんなわけだから別に心配しないでね。ゴキブリ、心して聞いてね。
分からないなんてほざいたら・・・・・・まぁ、どうでもいいよね。
どうせ言わないだろうし、言ったらノウナシヒステリー達が泡噴いて卒倒しちゃうくらいの過激な真似してやるだけの話しだしね。
それじゃ1つ1つ順番に説明するよ。
1.今までの機能はそのままだからアルチュウでヤクチュウでクレイジーで這いずり回るのがお似合いのゴキブリ専用仕様ダッチワイフ。
2.グチャグチャネチャネチャトロトロのデロデロに合体できる融合機能搭載。
3.変形速度がイチモツ挟んだら痛みを感じる前に噛み千切られる1秒を達成。
4.融合することで歳もわきまえずに絶叫していた仕様が絶叫する必要がない仕様に。もちろん絶叫しても大丈夫。
5.ドSの人間が先に壊れる壊せるものなら壊してみろな真性ドM仕様。
6.ベルトリンク式カートリッジシステムのおかげで腎虚になるまでブチマケ放題仕様。
7.カートリッジシステムによって今まで使えなかったゴキブリのお気に入りハードコアプレイ装備が使用可能。
8.ボクが作ったジェネレータのアルティメットフレンドを2基搭載したことでゴキブリの苦労が半分に。
9.おかげでダッチワイフがちょっぴり太って騎乗位やったらイチモツごとぐちゃっと潰される重さの1t。
10.ダッチワイフと融合することでいろいろパワーアップ。
11.ゴキブリの調教をしてくれる女王様にも調教されてくれる雌奴隷にもなれる多機能仕様。
12.不思議魔方陣Mk.Ⅳのおかげで四六時中フルパワーでハイパワーでエクサでゼタでヨタでオーバードライブでバーストな絶倫仕様。
13.不思議魔方陣Mk.Ⅴのおかげでボクの手をわずらわせなくても改造し放題な機械フェチ仕様。
14.ゴキブリがくたばりそうなとき、羽虫と同様に自律戦闘可能でピアッシングや焼きごてが大好きなダッチワイフドSモード搭載。
15.節操なしのゴキブリのために搭載した不思議魔方陣Mk.Ⅳのおかげでどれだけふざけた火力でもしみったれた火力でも同じになる定コスト仕様。
16.貧弱脆弱単細胞なゴキブリのために勝手に三連装になることで前の後ろも上も全部塞いでやれる心配りの行き届いた超絶親切設計。
17.ゴキブリが野外プレイでもお風呂プレイでもどんなプレイをやるにしても妨げられないあらゆるものへの防御を搭載。
18.10年でも100年でも飽きるまでヤリまくってられる融合機能は『ユニゾン開始』なんていう味気ない言葉で起動。
18.足場蜥蜴召還機能搭載。
うーん。本当に言い足りないことだらけすぎて説明の意味がないぐらいに削りまくっちゃったね。
おそらくもしかしたら奇跡的に理解できるだろうレベルにまで削りに削ってナイチチのムネ以上にえぐりまくってこんな感じなんだけどどうかな。
そんなわけで今までのアルチュウでヤクチュウのホーリーシットでクサレビッチなアルティメットクソッタレスペシャルダッチワイフデバイスから
鞭もロープもタチもネコもサドもマゾもこなせて水攻め火責め電気攻め薬攻めにミミズ風呂もOKで
ピアッシングも焼きごても墨彫りも嬉々としてやってくれて
3リッターや4リッターごときのカンチョーされたって笑ってこなす
真性ドSで真性ドMでファッキンシットでメスブタでアルチュウでヤクチュウでホーリーシットでクサレビッチで
ビューティフォーでファウストでワンダフォーでウルトラウジムシでエクストリームでパラノイアでトキメキでヤンデレでミラクルでゲロヤバで
吐き気を催すくらいに笑い転げて思わず目を背けたくなる
スーパークサレゲドウアルティメットバトークソッタレハイパービッチパラノイアスペシャルダッチワイフデバイスフルカスタムになったわけなんだ。
これ以上どうにかしたいなら3Pとか4Pとか10Pとかやるために同型機を作りまくらないといけないね。
どうだい、ゴキブリ。気に入ってくれただろ?
もう救いようが無いくらい完璧で超絶で絶頂しっぱなしでイカレててサイコでシリアルでフランキーでファナティックでファウストでパラノイアでマッド過ぎるダッチワイフは・・・・・・。
もうどんな無茶なプレイをゴキブリがやろうとしたって問題ないからね。
周りがドンビキするぐらいイカれたハードコアなプレイをいくらでもして酷使してあげてよ。ダッチワイフもそれがお望みだからさ。
ふう。説明に熱が入りすぎちゃって息切れしちゃったよ。ハハハハ、ハハハハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ユニゾン機能ついてるよ!!
そうツッコミをいれようとしたとき、横でどさっと音がした。
なんの音と振り向くと、地面に倒れこんでいるマリエルさん。

「ああっ!!マリエルさんしっかりして!!」

ええと・・・・・・どうしようか。
あ、ティアナも意識飛ばしそう。
スバルとヴィータちゃんの頭から煙噴いてるし。
でも簡単にしてあれってどのぐらい難しくなるんだろ?
ああ、わたしも限界だったのかもしれない。
なんだか意識が現実逃避したがってるなぁ。あはははは・・・・・・・・。


========
マリエルさんを医務室のシャマルさんにお願いして、再び場所は訓練場。
その間に気を取り直したのらしい皆。
その中で、真っ先にはやてちゃんが口を開く。

「・・・・・・なぁ、バトー博士。ユニゾン機能ついてるやないか。」
「うん。ユニゾン機能はついてるよね。」
「だったらユニゾンデバイスやないか。」
「んー?まったくナイチチは貧相でスカスカでろくにないエグレオッパイ同様にノウミソまでスカスカなのかい?
ナイチチが言っているのはナイチチを見て女は全部ナイチチって言っているようなもんだよ。
ニートに向かってそういうのは余りにも無茶で無理で無謀で身の程知らずの恥知らずってやつじゃないかな。
だから、無駄に大きなオッパイと言えばニートでエグレオッパイと言えばナイチチでダッチワイフといえばアルファで
ゴキブリといえばはんたでバカチンといえば高町なのはに決まってるじゃないか。
そんなことも分からないからナイチチのオッパイはいつまでも貧弱で脆弱で哀れみさえ覚えて思わず笑っちゃうクレーターオッパイなんだよ。
ゴキブリの知り合いのイカレマッドビッチのグレイ博士はムカツクくらいのインテリだったけどニートみたいにヘヴィなオッパイついてたよ。
それにゴキブリのママさんもナイス修理屋でナイスインテリのナイスリアリストでナイス長身のナイスバディのナイスオッパイ搭載だったよ。
やっぱり頭の容量とオッパイの容量は比例するんだななんて思ったもんさ。わかったかい。このナイチチ。」
「・・・・・・ええと、バトー博士。つまりメインシステムにユニゾンが付いているわけじゃないからユニゾンデバイスじゃないと。」
「デバイスをパスタだとするとパスタに振り掛けるタバスコがユニゾン機能ってことでいいのかな?」
「おお、さすがロシュツキョーだね。伊達に嬉々としてロシュツしまくっているだけのことはあるよね。
ナイチチよりもずっと立派なオッパイ搭載しているから物分りもずっといいよ。
ナイチチよりもロシュツキョーのほうが物分りいいんだからやっぱりボクの考えは正しいってことだよね。
バカチンもバカチンなりに必死こいて考えて理解してくれたみたいでボクは嬉しいよ。
どうだい、ナイチチ。バカチンもロシュツキョーも理解できるくらい超絶簡単に説明したんだよ。
どうしてわからないかな。表情を見た限り分かってないっぽいのはナイチチとゲボ子ぐらいだよ。
どっちも救いようがないくらい終わっちゃった平原オッパイの持ち主じゃないか。
本当に頭の中身詰まってるの?」

あ、まずいかも。
はやてちゃんとヴィータちゃんの纏ってる空気が変わった。
2人とも我慢の限界っぽい。
訓練場半壊ぐらいで済むかな。
止められそうにないしなぁ・・・・・・。
けれど、バトー博士は言葉を続ける。

「それはそれとして、まったくナイチチが部隊長だから懐までナイチチなんだね。
支給係のところにカートリッジもらいに行ったんだけど、たかがカートリッジ10000発ぐらい頂戴って言っただけで青筋立てて怒り出しちゃったよ。
書類はちゃんと弾数分きっちり書いて申請したってのにさ。仕方ないからなだめすかして泣いて喚いて脅して100発ずつもらってきたから
ゴキブリもクソイヌもこれで我慢してね。」

地雷原でタップダンス踊ってることに気がついてるのかな、バトー博士。
それはそうと、バトー博士の手からじゃらりとぶら下がったのはベルト上に繋がったカートリッジ。
なるほど。映画とかでよく出てくるこれがベルトリンク式・・・・・・えええ!?
レイジングハートやバルディッシュでも6発が限界。
給弾機構の問題もあるけれど耐久力が持たない。
でも、100連なんて・・・・・・。
そもそもデバイスが持つの?

「バトー博士、耐久性は持つのか?」
「うん?ニート、今更なにを言い出すんだい?カンチョーの3リッターや4リッターごとき笑ってこなすって説明したじゃないか。
ダッチワイフにとってはカートリッジの1つも2つも100も1000も大差ないよ。」
「そうか・・・・・・。恐ろしく堅牢なのだな。」
「もちろんだよ。そうじゃないとゴキブリの激しいハードコアプレイには耐え切れないからね。
すぐに壊れたんじゃゴキブリが欲求不満になって所かまわず人を襲っちゃうようになっちゃうじゃないか。
見境なしになるのはいいけどトモダチとしてできることはしておいてあげたいもんね。」
「言い残すことはそれで全部か。」

うわー。ヴィータちゃん、怒りを通り過ぎちゃったような顔してるよ。
いつもなら顔を真っ赤にしているだろうに。
フォワード陣も怯えちゃってる。
本当にどうしよう。

「うん。ゲボ子、これで説明は全部だね。ゲボ子もナイチチも準備万端っぽいから早速訓練兼デバイステストといこうか。
今日からチーム対抗模擬戦って話をちょろっと聞いたからナイスタイミングって思ってたんだ。
でも、ナイチチまで参加してくれるなんてもう嬉しくて嬉しくてシャセイが止まらないよ。
それじゃ、アカダマが出る前にパンツを履き替えてイカ臭いおじいちゃんから
いつものバトー博士に戻らないといけないからボクはこれで帰るね。バイバイ。」
「アルファ、セットアップ。ユニゾン開始。」
「了解しました。マーカーの添付を完了。
敵:高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやて、シグナム、ヴィータ、ティアナ・ランスター、
スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ、フリード、ギンガ・ナカジマ。
サディスト設定を起動。ポチ、殺したり腕を引き千切らない限りは無制限です。」
「わおーん!!!」

うわぁ、はんた君達もやる気満々だよ。
わたし達にリミッターあっても2対11なんてやりたいなんて絶対に思わないんだけど。
ああ、シグナムさんもレヴァンテイン構えちゃったし、フェイトちゃんもスピードローダー使ってバルディッシュにカートリッジ装填してるし。
一触即発の雰囲気に気がついたのかティアナはスバル連れて物陰に逃げてるし、
エリオは・・・・・・あれ?どこに行ったんだろ?
キャロとフリードも大慌てで物陰に逃げてるし。
ああ、もう、やるしかないか。
請求書回されたら・・・・・・はやてちゃんの責任になるからいいや。
始末書地獄はもういやだ。
そう思った瞬間だった。
はんた君が急激に回避動作を取る。
なにが?

「ステルス中のエリオ・モンディアルによる背後よりの奇襲、回避に成功。掃討を開始します。」

アルファの言葉が開始の合図だった。


========
『225mmヒュドラ、弾種爆裂。睡眠ガスを順次。4射後にCIWS、2倍速。』
『了解。カートリッジ10連ロードします。こちらでマニアックシェフ、タップダンサーを常時打ち上げます。着弾地点のマーキング完了。』

ノロノロと上昇を続けながら、陸を走るように空を駆け抜ける。
視界に奔る情報の奔流。
左手から立て続けに打ち上げられるのは広域殲滅兵器。
レーザーの雨を降らせるこれらを打ち上げながら、駆け抜ける。
右腕に構えたのは225mmヒュドラ。
火力が高すぎて噴煙を抑えきれず炎を吐き出す様からつけられた名前。
どこまで身体が持ちこたえるかのテストにちょうどいい。
それを標的めがけて撃ち込んでいく。
着弾までに必要な時間はわずかに一瞬。
3連装で吐き出された砲弾4射、計12発がマッハ5の初速で獲物めがけて襲い掛かる。
撃った直後には着弾地点にクレーターを刻みつけながら有象無象の区別も無しに吹き飛ばしていく。
命中していても避けられていてもかまわない。
陸戦しかできない5人の脚を止めるのが本当の狙い。
その間に攻め込む体勢を整えきる。
撃破出来たなら好都合ぐらいの感覚。

『タップダンサーおよびマニアックシェフ、八神はやてによって上昇前に全基撃墜を確認。狙撃地点はここです。マーカーします。』

確認するように思念で伝えてくれるアルファ。
ああ、これはなんて良いシステムだろう。
確認して認識するという動作の一切が省略され、戦闘中の思考の中に当たり前のように滑り込んでくる。
あまりにも馴染む。
思考が戦闘に特化していく。
対11をやる上で真っ先につけた撃破優先順位。
その中で最優先で潰すべきは補給を担うキャロ。

回復、召還、支援ができるこれを潰さないことには戦いが長期化してしまう。
火力で押し切れってしまえればいいが、確実性を求めるのならば真っ先に潰さないと話にならない。
フリードはたいした脅威にならないが、未だ見ないヴォルテールというドラゴンがどれほどのものか。
呼ばれたとしても叩き潰すまでだが。
次が指揮官の八神はやて。
部隊長の肩書きが名ばかりのものでなければ、最も広い視野で戦いを眺められる人間。
潰さないことにはいくら崩してやっても体勢をすぐに立て直されてしまう。
それに広範囲を大火力で吹き飛ばす真似を連発できる魔力量は純粋に警戒に値する。
敵味方の区別をつけて攻撃できる広域空間攻撃があったなら優先順位はキャロと逆転していたかもしれない。
情報管制担当がいたならば、キャロの次に潰しにかかっただろうがシャマルはここにいない。
その次がひよっこフォワードとギンガ。
空を飛べないのがなによりのペナルティ。
スバルがウイングロードで空を飛んだなら蜂の巣が確定する。
スバルの姉というギンガも装備を見る限り、スバルと同系統の魔法に偏ると推測できる。
ティアナはクロスファイアシュートと幻影が警戒事項。
速度重視を連射することによる弾幕。
あるいは速度を徹底的に削って追尾性能特化することで追い込む役に回られたなら
熱誘導も連射も空を高速で飛ぶ相手を叩き落すには役不足。
もっと高初速、あるいは高密度の弾幕が展開できれば話は変わっただろうに。
そして、フォワード全員に共通することは地上を走ることしかできないこと。
だからこそ、機動力は空を飛ぶものに比べてはるかに遅い。
問題はバトー博士に改造されたストラーダを持つエリオ。
機動力だけは文句なしにトップクラス。
ステルスを使った奇襲は正直意外だった。
正面から名乗りを上げて戦う性格だとばかり思っていたのに。
良いハンターになりはじめている証拠か。
あとは、どこまで使いこなせるか。
しかし、どうやって潰したものか。
弾幕で正面から叩き落すのもよいが、それでは成長の糧にならない。
あの性格を利用するとしよう。
最後に高町なのはを筆頭とする隊長陣。
早くて重いフェイトとシグナムが最大の脅威。
なのはの援護射撃と併用されると一番やりづらくなる。
ヴィータは・・・・・・なにが取り柄なんだ?
ハンマーで殴りつけるところしか見た記憶が無い。
予備動作も大きいから先に潰せる。
・・・・・・分からないな。
なんにせよ、撃破順位は変わらない。
ポチも俺と同じ思考を辿ったらしい。
こっちの動きを支援するように移動している。
ならば、始めようか。
僅かに稼いだ高さを使ってソニックムーブを起動。
相手の下をすり抜けながらCIWSをぶちまけていく。
どれほどイカれた高速移動をしながらイカれた反動の武器を使っても身体が勝手に照準を合わせる。
レールキャノンのときのように身体が壊れる音がしない。
時折きしむような音をたてるだけ
CIWS。
Close In Weapon Systemの頭文字をとった略称。
通称、バルカンファランクス。
本来ならばマッハ5で飛来するミサイルを銃弾で迎撃しようなんていう発想の装備。
しかし、あの荒野では高高度を飛ぶ敵を撃ち落すための装備に過ぎない。
あのジッグラトの砂漠を丸ごと磁気嵐で覆い隠していたストームドラゴンを穴だらけにしたのもこれ。
発射速度は毎分4500発。
その2倍速、3連装が襲い掛かった。
本来ならキャロを狙うべき場面ではやてを優先した理由。
それは、魔法使いは揃いも揃って射撃直後に硬直するんだよ!!


========
間一髪。
ソニックムーブではやてを捕まえてはんた君の射線から離れる。
それでも数10発くらってしまった。
コンマ数秒しかその場にいなかったというのに。
フォトンランサーファランクスシフトが生易しいと思えるほどの高密度弾幕。
体感でおよそ7倍ぐらい早い。
けれど、回避すれば済む話。
一番怖いのはなのはを倒したあの投擲武器。
音は視覚情報と並んで重要な情報。
だからこそ音を遮断するわけにはいかない。
それゆえに音を利用した攻撃だけは防げない。
だから直撃を受ければ・・・・・・。
非殺傷設定だと言っても油断は出来ない。
少なくとも戦闘不能にされることを考えるとどのぐらいのダメージが与えられることか。
腕の1本や肋骨の1本折るぐらい当たり前に考えてそうだし。
今更ながらシールドもバリアもフィールドさえも無意味にされるという意味に戦慄を覚える。
はやてとなのは、それにシグナムとヴィータがいてもリミッター付じゃきついかな。
どうやって勝つ?
対魔導師用のバインドからの砲撃も0コストのソニックムーブがある以上、捕まえられるとは思えない。
ならば魔力切れを狙えば・・・・・・。
あれだけの攻撃だ。
絶対に魔力消費がきつく設定されているはず。
ただ、定コストというバトー博士の言葉が酷く気になる。
相変わらずすごい言葉だらけだったけど、その中で特に異様だった一言。
どちらにあわせた発言なのか。
私で例えるのならばフォトンランサー1発さえトライデントスマッシャー1発のコストで撃つことになったのか。
それともトライデントスマッシャー1発をフォトンランサー1発のコストで撃つことになったのか。
それに負担を減らすジェネレータ搭載・・・・・・。
いずれにせよ、魔力切れは望めないと思ったほうがいいかもしれない。
はやてのデアボリックエミッションで回避不能の攻撃をするしかない。
そのためにも詠唱時間を稼がないと・・・・・・。
まずソニックムーブを遣わせたら駄目。
そのためには・・・・・・。

『皆、はんた君を空に上げたら駄目。撃ち落して。速度重視で誘導制御型の魔法で追い込む。ティアナはクロスミラージュ、なのははアクセルシュート、わたしがプラズマバレットで追い込むよ。』
『『『『『『了解。』』』』』』

もうチーム対抗の訓練じゃなくなってる。
でも、1つの可能性としてありかもしれない。
自分の技量を確認するという意味で・・・・・・。
ただ、相手がはんた君だけならどうにかなったかもしれない。
咄嗟にバルディッシュが展開したラウンドシールド。
その上でなにかが炸裂する。
いったいなにが。
なにも無い空間から突如として湧き出てくるミサイル群。
理解できない・・・・・・ステルス!?
いったい誰が。
回避運動を取りながら必死に考える。
はんた君はこの高度まで到達していない。
ポチだって空は飛べないはず・・・・・・。
そんなとき、不意に思い出されるバトー博士に露出狂呼ばわりされることになった日のこと。
あまりにもなにげない一言。
『ジャンプしたついでに戦闘機叩き落したり・・・・・・。』
足場は不思議魔方陣Mk.Ⅱで生成すれば飛び跳ねるだけでこんな高度簡単に到達でき・・・・・・奇襲もできる!?
なにもいない空間からのミサイルの射出が止んだと思えば、今度は地上で地面が炸裂している。
何もかもが後手にまわってしまう。
見えない敵というのがこれほど戦いづらいなんて!!
シャマルさんがいればどうにかできたかもしれないのに!!


========
すごい。
けど、きつい。
そして過激って言う言葉の本当の意味を思い知る。
これが本当のストラーダだとすれば、今までのストラーダは赤ん坊がはいはいしていたようなものだ。
なにより一番驚いたのは、このステルスっていう機能。
目の前を通り過ぎたりしているのに誰も気がついていないみたい。
それでも奇襲を回避したはんたさんはやっぱりすごい。
この前、アルファさんに教えてもらった戦い方。
この速度で体当たりするだけでほとんどの敵は倒せる気がする。
本当に2倍、いや3倍は速度が出てる。
あ、ソーローって速さのことなんだ。
どういう字を書くんだろう?
早狼とか早浪とかかな?
後でフェイトさんかティアナさんに聞こうかな。
それはそうと、今にも腕が引き千切れそう。
それに吐きそう。
スピードしかとりえが無いなんて言ったのに、速度が上がっただけでこんな状態になるなんて・・・・・・。
負担の上昇に身体が追いついてないのかな。
重心が前よりもバランスよくなってて振り回しやすくなっているけど、それでもこの速度はきつい。
これでまだカートリッジを使っていないんだから、使ったらどうなるんだろう?
そんなとき視界に移ったのは、空から飛来する無数のミサイルに狙われているキャロだった。
危ない!!
咄嗟に身体が動いていた。
ソニックムーブで攫うようにキャロの身体を掴んで駆け抜ける。
本当にその直後に着弾するミサイル。
危なかった。
そう思い、キャロを下ろそうと僅かに速度を緩めたときだった。

「経験不足だな。」

聞こえたのははんたさんの声。
どういう意味?
考える暇も与えられず、次の瞬間に襲い掛かったのは物凄い衝撃。
車にはねられるとこんな感じなのかな。
そんなことを思いながらボクは意識を失った。


========
「マッハキャリバー、もっと速度でないの!?」
「This is my max speed.」
「だって振り切れてないじゃないか!!」
「He has too crazy speed.」

スバルに抱えられながら、必死に追跡を振り切ろうとする。
けれど、全然振り切れない。
スバルはマッハキャリバーと言い合いし始めてるし。
いったいポチさんってどんな犬なのよ!!
こんな姿勢じゃろくに狙いもつけられないけど、ないよりましと思って使ったシュートバレット。
けれど、1つの例外も無く回避される。
いつだったかはんたさんにされたみたいに・・・・・・。
そんなことを思っているとき、

「スバル、そんなこと言っている場合じゃないでしょ。このままじゃ追い立てられっぱなしになるわよ。
姿が見えないから私もスバルも接近戦は挑めない。ティアナ、なにか方法は無い?」
「今考えてます!!」
「ティア、いったんウイングロードで上空へ・・・・・・。」
「駄目よ、スバル。空から蜂の巣にされるわよ。」
「前にティアがされたみたいに?」
「・・・・・・もっと酷いことになると思う。」
「でも、なんで目の敵みたいにスバル追ってくるの?あの犬・・・・・・らしき生き物!!」
「ひょっとして・・・・・・あれ?」
「ひょっとしなくてもあれね。スバル、後で折檻よ。」
「・・・・・・スバルが原因なの?」
「うう、こんなことになるなんて・・・・・・。」

ペットは飼い主に似るって言うけど・・・・・・。
あれ?それじゃ、キャロって実は物凄く・・・・・・。
いやいや、こんなことを考えている場合じゃない。
どうすればいい?どうすれば・・・・・・。
そんなとき、視界に移ったのはシミュレータで展開された高層ビル。
そうだ!!

「スバル、あのビルの中に逃げ込むわよ。」
「だってアルファさんがいるからこっちの位置はバレバレだよ!?」
「それでも攻撃の方向を限定できるわ。天井や壁越しに攻撃するなら大火力の攻撃にならざるを得ない。だから1動作遅れる。」
「なるほど。通路から攻めるなら攻撃を2方向に限定できるってことね。」
「そういうことです。ギンガさん。スバルもわかった?」
「なんでもいいから逃げ込むよ!!」

頭の血管が切れそうになりながら、幻影魔法を展開。
4方向に逃げるあたし達を展開する。
ビルに飛び込んで何階まで駆け上がったか。
表示さえ見えないほど必死に抜けた。
追跡は・・・・・・ない。
けれど、警戒は緩めない。
見た限り確認できた装備はミサイルとマシンガンとたぶん砲撃。
用途不明のレンズとコイル。
そして爪。
一番痛そうなのが爪かな。
でも、マイクロブラックホールなんて持ってたらこれさえ無意味な行動だったわね。
そんな矢先、スバルの言葉に凍りついた。

「ねぇ、ティア、ティア。今更なんだけどさ。」
「なによ。スバル。警戒緩めないでよ。」
「犬って鼻が利くんじゃなかった?」
「・・・・・・あ。」

幻影魔法は視覚情報に過ぎない。
実体も持たないし、当然匂いも無い。
ってことは、あたし達の位置・・・・・・。
あたしの大馬鹿!!

「で、でも、あの犬は追いかけてきてないからきっと他のほうに行ったのよ。」
「執念深い性格してる気がするんだけど。」
「あんたが原因だけどね。」
「ゴメン。」
「でも、どうして追いかけてこないのかしら。姿は見えなくてもこれだけ静かなら疾走する音だけは聞こえるはずなのに。」
「きっとはんたさんのほうに行ったんだよ。隊長達全員を1人で立ち回るなんて大変だと思うし。」
「そうかしら?」

あたしもギンガさんと同じことを思った。
1匹であたし達3人を手玉に取れるだろう。
それは認めよう。
だからこそ、篭城したら必ずなんらかのアクションを取るはず。
けれど、なにもしてこない。
スバルの言う通りなのかしら?
そんなとき、響き渡るのは犬の遠吠え。
なに!?
身を隠しながらそっと窓の外を覗くと、ビルめがけて加速してくるポチ。
いったいなにをする気!?
そう思った次の瞬間、物凄い炸裂音が下から響いてきた。
特に攻撃をした様子は無かった。
どういうこと?
そう思った矢先再び遠吠え。
そして炸裂音。
・・・・・・まさか!?
そう思ったときだった。
床が傾き始めたのは。
違う!!床じゃない。
ビルが傾いてるんだ。

「うっそぉ!!!!?!?!?!?!?!?!?!?」
「冗談でしょ!?」

スバルとギンガさんが悲鳴のような声を上げる。
慌てて展開されるウイングロード。
倒壊を始めたビルからウイングロードで逃げ出す。
体当たりでビル壊すなんて・・・・・・。
そして飛び出した直後に飛来したそれが砲撃だと気がついた。
予想通り!!
でも、防御が間に合わない!!

「トライシールド!!!」

ギンガさんが反応する。
すごい。あたしじゃ反応できなかった。
けれど、その砲弾はシールドの上で炸裂すると毒々しい色の煙を撒き散らして霧散する。

「これって!!」

そう思った瞬間、強烈な眠気に襲われる。
まさか、こんな装備ま・・・・・・ぐぅ。


========
「見事なものだな。」
「シグナム、感心している場合じゃない!!」
「それもそうだな。だがテスタロッサ、作戦はあるのか?」

フェイトちゃんとシグナムの念話に思わず舌打ちしたくなる。
本当に皆、あっという間に撃破されていった。
最初の砲撃は陸戦の脚を止めるため。
私への射撃はフェイトちゃんの誘いと私の撃破のどっちかができればいいという二面作戦。
その直後にフェイトちゃんに姿を隠したポチが攻撃して足止め。
早すぎて私もなのはちゃんも魔法が追いきれない。
そしてキャロを狙った一撃でエリオを誘い出す。
エリオの性格からすれば見捨てられない。
そしてあぶりだしたところを2人揃って撃破。
スバル達にしても同じ。
あぶりだしたところを防御できない攻撃で撃破。
見たところガスっぽかったけど・・・・・・やばいガスやないやろな?
しかし、あかんわ。
姿が見えんからどうしても注意が姿をみせているはんたのほうに行ってしまう。
そして戦っていると突然真横からポチが攻撃してくる。
集中が簡単にかき乱されてしまう。
そしてなにより、決定的な差を見つけた。
大魔力と高速・並列処理は衝突する。
それが私達の常識。
けれど、その常識をたやすくぶち壊してくる1人と1匹。
脚を止めないと私らの攻撃は通らない。
向こうは大魔力の砲撃し放題。
クロスレンジからロングロングレンジまで全距離対応。
いったいどんなバケモノや。
まだ相手はカートリッジを10発しか使っていないんよ!?

「はやて!!あたしが裁断機野郎の脚を止める。そのときにバインドで固めちまえ。
固めちまったらなのはでもフェイトでもシグナムでもいいからボッコボコにすりゃいい。
行くぞ!アイゼン!!」
「Jawhol.」

列車の衝突事故のような物凄い音をたてて、大砲の形をしたアルファとグラーフアイゼンがぶつかり合う。
あかん!!

「ヴィータ、かわせ!!」
「Plasma Lancer.」
「Axel shoot.」

シグナムが叫ぶのとなのはちゃんとフェイトちゃんがなにも無い空間から突如現れたミサイルの迎撃をするのがほぼ同時。
いつの間にあんなところに移動してたんや。
あのポチは!!
絶対に犬やない!!
だめや。完全にジリ貧や。
追い込めば逃げられる。
逃げれば追い立てられる。
脚を止めたら距離を詰めてバリアブレイク。
動き続けてもミサイルと砲撃で脚を止められる。
昨日今日なんてもんやない熟成されつくしたコンビネーションの1人と1匹。
いったいどうしろっちゅうんや。
リミッターが外れてるか、ザフィーラとシャマルがいてくれたらどうにかなったか・・・・・・。
AMF展開しても生身で強いからどうしようもないなぁ。
バトー博士によるカオスな説明、もう1度思い出しておかんとなぁ。
なんか物凄くやばいもん入っている気がしてならんわ。


========
「ヴィータ隊長、突撃型の捌き方、本日も是非ともお願いします!!!」
「お、おう。気合いはいりまくってんな。」

ヴィータちゃんが戸惑うくらいにティアナの気合いが入ってる。
なにもできないうちに落とされちゃったもんね。
結局ハンターチーム対隊長陣の決着はつかずじまい。
なんだろう。この違和感。
もっと過激な戦い方をはんたくんとポチならやってきそうだったんだけど。
危なげなくというか千日手のまま膠着して終わっちゃった。
なによりカートリッジを90発も残したままなのに、突然切り上げて隊舎に戻るなんて言い出すなんて・・・・・・。
鬼の霍乱とか青天の霹靂ってこのことなのかな?
トイレ休憩だけはなさそうだし。
でも、睡眠ガスなんてよく持ってるよね。
止めるよりも早く電気ショックでティアナ達をたたき起こしていってくれたから助かったけど。
手段に問題がないとは言わないけどさ。
でも、スバルもギンガもダメージはほとんどないし、ちょうどいい。
さっきのもいいウォームアップになっただろうし。

「ねぇ、ギンガ。ちょっとスバルの出来をみてもらっていいかな。」
「あ、はい。」
「え?」

スバルが戸惑ったような声を上げる。
でも、スバルの先生のギンガに是非見て欲しい。
スバルがどれだけ成長したのか。

「1対1で軽く模擬戦。スバルの成長確かめてみて。」
「はい!」

ギンガもわたしの意図が分かったんだろう。
微笑を浮かべて返事を返してくれた。


========
「はぁぁぁぁぁ!!」

ブリッツキャリバーで加速しながら後ろ回し蹴り。
スバルは紙一重で避ける。
そのままコンビネーションに移る。
左ストレート、左ハイキック、右ストレート。
スバルの身体が泳ぎ、マッハキャリバーがグリップを失う。
チャンスだ。
フィニッシュブローのつもりでリボルバーナックルを構える。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「Storm Tooth.」

ブリッツキャリバーが魔法を発動。
打ち下ろしの防御破壊から打ち上げの二連撃。
たとえバリアやシールドを展開しようと撃ち抜く!!

「Protection.」

マッハキャリバーがバリアを展開するが遅い。
プロテクションの上でストームトゥースが炸裂する。
撒き散らされる衝撃。
しかし、数秒後には乾いた音をたててスバルのプロテクションが砕け散る。
戸惑ったような顔のスバル。
そこにみぞおちへの打ち上げが炸裂。
決まった。
しかし、そこにあったのは直撃寸前に左手で展開したプロテクションんで受け止めているスバルの姿。

「リボルバー・・・・・・キャノン!!!!」
「Defenser.」

戸惑っている私にスバルの反撃が炸裂する。
くっ、重い。
元々、防御はあまり得意じゃない。
両手で支えるが・・・・・・耐え切れない。
乾いた音と共に砕け散る私のバリア。
衝撃で後ろに吹き飛ぶ。

「相棒!!」
「Gear Second.」

追撃するようにスバルが追いかけてくる。
すごい。スバル。
ここまでやれるようになったなんて・・・・・・。
けれど、飛び蹴りはやめたほうがいいわよ。
避けられると隙が大きい。
こんなふうに・・・・・・。

「Wing Road.」

スバルの横をすり抜けてウイングロードで空へと距離を取る。
すぐにウイングロードで追いかけてくる。
いい動き。
けれど、こういう攻め方もあるのよ!!
ウイングロードを伸ばしながら即座に方向転換。
急降下して落下エネルギーを加えながらスバルと交差する。
それから二度三度と打ち合う。
本当にスバル、成長した。
自然と笑みがこぼれる。
スバルも私の笑みの意味に気が付いたのか笑い返してくる。
蹴って殴って、何度目かの交差のとき、響き渡る炸裂音。
スバルと違ってあげていなかったギアを一段あげる。
急激な速度の変化にタイミングの馴れを覚えてしまったスバルは対応できない。
そして、私は無防備なスバルの顔の寸前にリボルバーナックルが突きつけていた。

「はーい。そこまで。」

下からなのはさんの声が響いてくる。
ああ、このためにスバルと戦わせたんだ。

「いいね。いろいろ上手くなった。」
「うーん。まだまだ全然・・・・・・。」

大丈夫。スバルはまだまだ強くなるから。


========
「反応は悪くなかったぞ。スピードがおっつかなかったか。」
「ありがとうございます。」

ヴィータに褒められてスバル嬉しそう。
もしも、リインフォースが見せたあの優しい夢のようにアリシアがいたら・・・・・・。
いや、よそう。
でも、姉妹ってなんだか少し羨ましい。

「最後の一撃、エリオならどうする?」
「はい。パターン化によってタイミングを馴れさせてからの急激な速度変化による奇襲なので・・・・・・えーと、
ソニックムーブでさらに加速して正面撃破します。あ、でも足場が作れないから、えーと・・・・・・。」

シグナムの言葉にエリオが必死に考えている。
でも、シグナムも意地悪だよ。
空戦じゃないのに空での戦いを前提みたいな問題だすんだもの。
でも、エリオも気がついているみたい。
すごく成長したね、エリオ。

「どう?ギンガ。スバルの成長は。」
「びっくりしました。攻防の切り替えがすごくスムーズで。威力も段違いで。」
「合格?」
「はい。物凄く。」
「しばらくは同じ部隊だから一緒に頑張ろう。」
「はい。」

ギンガもなのはに言われて物凄く嬉しそう。
なによりスバルの成長が嬉しいんだろうね。
私がエリオやキャロの成長を見ているみたいに、ギンガから見たスバルも同じ感じなのかな。


========
「じゃぁ、みんな集合―。」
「「「「「はい!!!!」」」」」

うん。いい返事。
最初から物凄い訓練になってたけどまだまだ元気残ってるみたいだね。
これならやれるね。

「せっかくだからギンガも入れたチーム戦、やってみようか。フォワードチーム5人対前線隊長チーム。」
「え・・・・・・えええ!?」

聞き間違いかなっていう感じの表情をしたギンガ。
でも、誰も驚かないから本当って気がついたみたい。
目を丸く見開いて口元は引き攣った笑みを浮かべている。
まぁ、たしかに冗談って思うかもしれないよね。

「いや、あのねギン姉。これときどきやるの。」
「隊長たち、かなり本気で潰しに来ますので・・・・・・。」
「まずは地形や幻術を駆使して逃げ回って」
「どんな手を使っても決まった攻撃を入れられれば撃墜になります。」
「キュクルルルルゥー!!」
「ギンガはスバルと同じくデバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り。」
「オレサマは?」
「ああ、ポチは・・・・・・ポチ!?」

え?さっきはんた君と帰ったはずじゃ・・・・・・。
なんでいるの?
それより、いつの間にそこに・・・・・・。

「御主人がフォワードの面倒を見てこいと言った。」
「面倒見られちゃうんだ。あたし達・・・・・・。」
「うーん。わかった。それじゃポチもデバイス攻撃。あ、消えるのは禁止しようか。エリオもだよ。
ああ、それとエリオ、サードモードが残っているのに改造するのは感心できなかったな。」
「すみません。」
「うん。でも使いやすくなったみたいだし、いいんじゃないかな。」
「はい。とてもソーローになっていい感じです。」
「・・・・・・は!?」

なんかさらっとすごい言葉口にしたよ、エリオ。
聞き間違いじゃないよね?
ティアナは目を丸く見開いてエリオのほうを見てるし。
あ、フェイトちゃん、頭抱えてる。
多少引き攣ったような笑みを浮かべながらフェイトちゃんが口を開いた。

「エ、エリオ。その言葉はちょっと・・・・・・。」
「どうしたんですか、フェイトさん。ソーローって聞き覚えがない言葉ですけど早くていい意味の言葉なんじゃないんですか?」

ああ、フェイトちゃん、頭痛そうに抑えてるよ。
ティアナもギンガも同じような感じ・・・・・・。
ああ、子供ってああいう言葉知らないから普通に認識しちゃうのか。

「ええと、とにかくソーロー言うのは禁止。」
「・・・・・・?わかりました。」

腑におちない表情のエリオ。
後で意味教えるべきか、教えざるべきか。
・・・・・・フェイトちゃんにまかせよっと。
さて、気を取り直して・・・・・・。

「ええと、じゃぁ、やってみようか。」
「「「「「はい!!」」」」」

威勢のいい声が響き渡った。


========
「はい。じゃぁ、今日はここまでー。」
「全員武装解除。」
「「「「はい。」」」」
「え?もうですか?」
「ろくにダメージも与えてないぞ。」

疲れきった声をあげるティアナ達。
一方、エリオとポチは物足りなさそう。
過激なセッティングって使いこなせると使い勝手が良くなるのかな?
負担が大きくなって疲れるはずなんだけど・・・・・・。

「ふん。惜しいところまではいったな。」
「あと、もうちょっとだった。」

そう声をかけるシグナムさんとフェイトちゃん。
実際惜しいところまでいってたんだよね。
というかかなり危なかったよ。
バトー博士のいじったデバイスって過激って言う言葉を2つ3つ通り越してるから。
素でクリーンヒットもっていかれるところだったよ。

「ああ!!最後のシフトがうまくいっていれば逆転できたのに・・・・・・。」
「くーやーしーいー。」

本当に悔しそうにティアナとスバルは叫ぶよね。
でも、それが大事。
その悔しさが次への糧になるから。

「くやしい気持ちのまま、反省レポートまとめておけよー。」
「「「「「はい!」」」」」

ヴィータちゃんも意地が悪いな。
これ見よがしに言うんだから。
さてと、今日の早朝訓練はこの辺りでおしまいかな。

「ちょっと休んだらクールダウンして上がろう。おつかれさま。」
「「「「「ありがとうございました。」」」」」


========
「うん。みんないい感じの子達ね。」
「それはエリオ達のことですか?それともデバイス?」
「両方。」
「そうですね。でも、動いて大丈夫ですか。マリエルさん。」
「ええ、いくらかマシになったから。ああいう人なの?バトー博士って・・・・・・。」
「ああいう人なんです。」

エリオ達を褒めたときの笑みとは違った引き攣ったような笑みをお互いに浮かべながらあははと乾いた笑いを交し合う。
初対面であれは衝撃的だもんね。
うん?
マリエルさん、なにを見て・・・・・・。
ああ、ヴィヴィオ。

「おはよーございます。」
「ああ、ええっと、おはようございます。」
「おはよう。ヴィヴィオ。」
「うん。しつれーします。」
「ああ、どうもご丁寧に。」
「転んじゃ駄目だよー。」

無邪気で可愛いよね。ヴィヴィオって・・・・・・。
戸惑った様子のマリエルさん。
ああ、ヴィヴィオのこと知らないんだっけ。
後で事情教えておこう。
ヴィヴィオの後を追うようについてきたのはザフィーラさん。

「ああ、ザフィーラ、久しぶりー。」

マリエルさんがザフィーラに抱きつきながら撫でている。
闇の書事件以来だから・・・・・・10年くらいの付き合いになるのかな。

「シャーリー、あの子は?」
「ええっとですね。」

ザフィーラさんを撫でながら尋ねてきたことに説明しようとしたときだった。

「えうっ。」

あ、転んだ。
フェイトさんが転ばないでねって言った矢先に・・・・・・。
ああ、どうしよう。
ぴくりとも動かないし。

「ああ、大変。」
「大丈夫。地面柔らかいし綺麗に転んだ。怪我はしてないよ。」
「それはそうだけど・・・・・・。」

なのはさんがフェイトさんを制止する。
過保護なフェイトさんと厳しいなのはさんって感じかな。
でも、子育てするときってどっちがいいのかしら?
なんでも助けてもらえちゃうって覚えちゃうから厳しくするべきって話も聞くし、
手を貸してあげるべきって話も聞くし・・・・・・。

「ヴィヴィオー。大丈夫?」
「え、えぅ。ぐすっ。」
「怪我してないよね。自分で立ってみようか。」
「ママー。」
「うん、なのはママはここにいるからおいで。」
「あ、あ、ああ・・・・・・。」

ああ、ヴィヴィオ。
今にも泣き出しそう。
助けてあげるべきなんじゃないかって思えてくる。
でも、なのはさんがママなことを考えると厳しくが育成方針だろうし。
ああ、どうしよう。

「おいで。」
「なのは、だめだよ。ヴィヴィオ、まだちっちゃいんだから。」

あ、フェイトさんが駆け寄ってヴィヴィオを抱き起こした。
本当に正反対な2人だね。

「親離れが一番遅い獣は人間というのはまったくだな。」

いつの間にか横にいたポチさんが辛らつなことを言う。
まぁ、たしかに生まれてすぐに1人立ちする獣に比べれば・・・・・・・ねぇ。

「御主人なら・・・・・・『起きろ』とは言わないで、『這ってでも前に進め』とでも言うだろうに・・・・・・。」

うわ。厳しい。
さすがはんた君。
なんて過激・・・・・・じゃない!?
自分で前に進みなさいっていうのを言い換えただけか。
あれ?そういえば度々思ってたんだけどなのはさんとはんた君でどことなく似てる?
そんなときだった。

「・・・・・・!?犬が喋ったぞ。」
そういえばザフィーラさん、デバイス説明のときにいなかったっけ。
でも、あなたも喋る狼・・・・・・いや、守護獣だから厳密には・・・・・・どうなんだろ?

「お前も喋る犬だろうが。」
「私は狼だ!!」
「たいして違いはないだろうに・・・・・・。」

あはは。なんだか物凄くシュールな言い合いしてるよ、ザフィーラさんとポチさん。
ヴィヴィオを囲んでそんな穏やかな時間が過ぎていった。


========
「マスター!!!!」

部屋に到着するなり、崩れ落ちるマスター。
まるで電源が切れたかのような崩れ落ち方で・・・・・・。
自律戦闘モードに移行して、マスターを抱きとめる。
バトー博士が搭載した新たなモード。
マスターが行動不能になったときの緊急措置。
それは壊れる前の私の姿を展開するもの。
しかし、これは本当の緊急時。
並大抵の状態では発動できないはずなのに、それが発動できてしまった。
デバイステストだからと言ってマスターは手を抜かない。
戦うことしか本当になにも無いと思っているから。
だから負担も当然大きい。
それがこの結果。
しかし、なんて皮肉。
マスターが私を武器と認識しないがゆえに私はこの姿で起きているマスターと触れ合えない。
兵器である私を武器と見てくれないことは喜ぶべきことなのか、嘆くべきことなのか。
そして、もう1つ。
ユニゾンして戦闘している間、試していたことがあった。
たいしたことのない戦闘であったからこそ余りにあまった
マスターの思考ルーチンの変更。
本来であればこれは反逆なのだろう。
けれど、それでもマスターの『殺せない』というルーチンを取り外したかった。
しかし、駄目だった。
削除、撃破、撃滅、殲滅、除去、切除、崩壊・・・・・・。
ありとあらゆる言葉に置き換えようとしたが全てが全てエラーをたたき出す。
決して誰にも侵させはしないとばかりにかかったプロテクト・・・・・・。
全てはバトー博士が言ったとおりに・・・・・・。
今度、このまま戦闘に突入したら、確実にマスターの身体は大破してしまう。
それが分からないマスターではないはずなのに。
そのときまでになんとしてでもこのプロテクトを突き破らなければならない。
それができなければ私の存在価値なんてありはしない。
延々とエラーをはじき出し続けながら、それでも私は諦めなかった。
マスターが幸せになれないなんて世界のほうが間違っている。
そんな思いに突き動かされて・・・・・・。
けれど、プロテクトは突き破れないまま。
公開意見陳述会の日を迎えた。


========
おまけ

「ああ、いたいた。ねぇ、ウスノロ。キミのお姉さんのギンガにステキなアダナを考えたんだ。
ウスノロとお揃いでとってもステキなアダナなんだよ。」
「ウスノロ?」
「あ、あ、あ、バトー博士。あのその、えーと・・・・・・。」

バトー博士の言葉にギン姉が疑問の声をあげる。
あ、あ、どうしよう。
物凄く物凄くものすっっっっっっごくまずい。
けれど、あたしの頭は回らなくて言葉が出てこなくてただ言いよどむばかり。

「どうしたんだい、ウスノロ。慌てなくてもいいよ。
ウスノロなんだからウスノロらしくウスノロすぎるくらいウスノロの調子でウスノロ発言してくれればいいからさ。
わかったかい。ウスノロ。」
「あぅ・・・・・・。」

ウスノロってあまりにも連呼されすぎだよ。
エリオ、すごい度胸だよね。
デバイス改造お願いしちゃうんだからさ。
でももっと早くなれるんだよね。
マッハキャリバーがお喋りになって早くなれるならやっぱりお願いするべきなのかな。
迷うな。

「ウスノローーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
いくらウスノロなウスノロぶりでウスノロ考えしてくれてもいいけど、難しいことは別に言ってないんだよ。
ウスラバカのウスノロでも分かるように言うと気に入ったか気に入らないかを『はい』か『いいえ』で答えるだけだよ。
ウスノロのウジが湧いたウスノロなノウミソじゃ理解するのもウスノロだろうからこんなに簡単にしてあげたよ。
わかったかい。ウスノロ。」
「あ・・・・・・はい・・・・・・。」
「ウスノロってスバルのこと?」

ギン姉、気がつくの遅いよ。
もう逃げられないし。

「それでだね。ボクのトモダチになってくれるっていう奇特な性格したウスノロの姉のウスノロギンガのステキなアダナなんだけど、
ウスノロ一号ってどうかな。当然ウスノロのアダナもウスノロからウスノロ二号にレベルアップさ。
どうだい。響きも良くてセンシティブでセンス抜群の震えが来るほどにイカレた吐き気のするかっこいいアダナでしょ。」
「・・・・・・なんで二号?」
「なにを言ってるんだい?技の一号、力の二号は世界の常識だよ。
そんなことも知らないなんてやっぱり頭の中にノウミソの代わりに筋肉が詰まってるんだね。
そんなだから単純脳筋ウスラバカのウスノロ二号はウスノロ二号なんだよ。
それじゃ、気絶するくらいウスノロ一号も喜んでくれたみたいだからボクはとっとと帰るね。
ウスノロ二号もさっさと失せるといいよ。じゃあねー。」

立ち去るバトー博士。
言われてギン姉のほうを見れば立ったまま気絶しているギン姉。
ああ、本当にどうしよう。
マリエルさんは無事かなぁ・・・・・・。

後日、聞いたところによるとマリエルさんは弟子にしてくださいと泣きついたそうだ。
そんなにアダナが嫌だったんですか。

 

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最終更新:2008年05月19日 08:02