その巨人は振り向き、なのはに目をやった。
「……っ」
なのはは言葉に詰まったが、すぐに次の言葉を発する。
「事情なら私たちが聞くから……」
『…………』
「……私たちに…話してくれない………?」
『…………』
しかし巨人は黙り込んでしまった。
なのはの言葉を聞いているのかすら疑問に思えるように。
さらに言葉を続けようとするが、
「……聞いているのか!」
クロノの声が先に響く。
「彼女は君に話しかけているのに、君は彼女の言葉を聞いているのか!」
「ク…クロノ君………」
エイミィが宥めるがクロノは続ける。
「いい加減君も……」
さらに続けようとする。
しかしクロノの発言は機械音で遮られた。
「……!?」
その巨人は突如、立て膝を立てるように座り込み、腹部に手を添えた。
そして腹部が開き、中から白い服を着た人間が出て来た。
顔にはフルフェイスのヘルメットをかぶっており、そのまま巨人の手に乗り、手は意志を持ってるかのように地面に近づけ、人間を降ろした。
「……………」
クロノは未だに警戒してるようにデバイスのデュランダルを構えた。
しかしその行為を無視するかのように彼は話しかけて来た。
「…すまない……ネオ・ジオンの艦に捕まったと勘違いしてしまった………」
彼はヘルメットを外しながらも謝罪をしていた。
栗色のくせっ毛の男。
顔立ちはイケメンとは言えないが体つきはいいようだ。
「俺は地球連邦軍所属、ロンド・ベル隊のパイロット、アムロ・レイ大尉だ。」
その男はヘルメットを脇に抱えて敬礼すると淡々と自己紹介をした。
「は…はぁ………」





第01話
 その名は、アムロ





数分後………
「艦長のリンディ・ハラウオン提督です。」
「ロンド・ベル隊のアムロ・レイ大尉です。よろしく。」
二人は握手を交わすと互いの席につく。
目の前には先程の青年が立っている。
「執務官のクロノ・ハラウオンです!」
アムロは目の前にいる青年を見た。
まだ20にも満たない少年のようだ。
「……若いな………」
ついつい言葉が漏れる。
「なっ…何だと!」
「まあまあクロノ落ち着きなさい。」
「ですが提督……」
「若いと呼ばれれば普通喜ぶものですよ。」
「ははは………」
苦笑するしかない自分。
ついつい言葉が出る癖は直したくても直せない………
「はぁ………」
ため息が零れる。
「……所でアムロ大尉……でしたね?体の方は?」
突然リンディ提督は話題を変えた。
先程、ボディチェックと一緒に精密検査をしたんだった。
「あ、はい。怪我の方も異常は………」
「こちらの検査でも人間という結果でしたし。こちらも一安心です。」
しかし、アムロには不可解な点がいくつもある。
宇宙空間以外の空間。
このような少年のいる部隊。
なにより今のリンディ提督の『人間という結果』という発言。
まるで人間以外がいるとでも言うかのようだ。
そこで、
「……リンディ提督………」
「何かしら?」
「ここは………どこなんですか?」


頂いたお茶をすすりながら理解を深める。
「時空管理局……魔導師………俄かには信じがたい話ですね。」
「でも事実なのよ。」
リンディ提督は自分のコップに角砂糖とミルクを注ぎながら答える。
「別に話を信じないわけではありませんよ。あんな空間を見てしまったんですから。」
「確かにそうかもしれないわね……」
そういってお茶を啜る。
「……美味しいんですか?」
「ん?」
ついつい出てしまった言葉。
「ああ、これ?飲んでみる?」
内心興味本意で聞いてしまった。
別にまずいものでも、と視線を目の前にやると、犠牲者を増やすまいと無言で必死に訴えてくるクロノの姿。
さらには自分の直感までもが警告をだす。
「ま…また今度いただきます………」
「あらそう?」

後にクロノから教えられた事だが、別名『リンディ茶』と呼ばれ、殺人級の甘ったるさとか………


「……つまり俺は、次元遭難者、という訳か………」
「そういうことになるわね。」
あれからさらに話を進め、自分がどのような状況かがわかった。
「…だけど時空管理局は、あなたのもといた世界に送り返すために全力を尽くします。」
「ありがとうございます。可能なかぎり協力を惜しまないつもりです。」
そう、もとの世界に帰ってシャアを今度こそ………
そう内心決意を決めた。
「そう、ありがとう。……じゃ早速だけど貴方の世界について………教えてもらえるかしら?」
「……世界…ですか………?」
「断片的で構わないが、惑星の名前、世界の地域の名称、あと年号を言ってくれれば僕らが探そう。」
クロノも段々と協力的になってきたようだ。
「わかった。」
そういって思い出しながら言葉にする。
「…星の名前は『地球』……大陸はユーラシア、アフリカ、アジア、北と南アメリカだ………」
「「!?」」
大体の事を語った。
しかし彼等は『地球』という単語に反応していたため、彼等は知っていると確信した。
しかし、
「年号はU.C.93年、宇宙世紀0093だ。」
すぐにでも帰れる。
そう思えたのだが、それとは裏腹に意外な答えが帰ってきた。
「宇宙世紀……一体どこの世界だ?」
「……何?」
以外だ。
地球を知っていて宇宙世紀を知らないなんて………
「……確かに地球は知っているわ………」
「じゃあ貴方達も知ってるでしょ!?数日前ラサに5thルナが落ちたことも!?」
「…ラサ…というと……チベットの?」
「そこの地球連邦軍本部が消滅したことぐらいは地球を知っているならわかるはずだ!」
「…………」
そこまでいったが、リンディ提督は思考にふけり、クロノにいたっては疑問に思って頭を傾げるだけである。
さらにクロノは、「…おかしいな……」とつぶやく始末。
「……一体何がおかしいんだ?こっちは5thルナ落下だけでも十分おかしいのに………」
「いや……僕が地球にいたときはそんな事は全くなかったんだが………」
……………
何?地球にいた?
突然の発言に思考が止まる。
「……その前に、5thルナとはなんだ?地球連邦軍なんて聞いたことも………」
「……やっぱり………ね」
その会話にリンディ提督は結論を出した。
「……アムロ大尉がいた地球と私たちがいた地球は、別の次元の地球のようね………」
「……別の次元?」
そう聞き返すとリンディ提督はこう答えた。


「……パラレルワールドよ………」


パラレルワールドとは、
現実世界と似て非なる世界。
平行世界の事である。
「実際話だけは聞いたことはあるが……まさか………」
アムロは驚きの表情で答えた。
確かに合点がいくし、魔法なるものが存在しているのだからあってもおかしくはないだろう。
「原因は私たちの発射した魔導砲アルカンシェルと、貴方側の世界で起きた何か………」
「……おそらくサイコフレームの共振による爆発的なエネルギーだ………」
アクシズの片割れをも地球の引力から押し出したほどの力だ、相当なエネルギーだろう。
「じゃあそれが原因で………」
クロノは驚き悩む。
実はさらに偶然が重なっていた。
そのアルカンシェル発射時とサイコフレームの共振が発生した場所がほぼ同じであった。
つまりアルカンシェルが着弾、闇の書の闇が消滅した場所がアムロのいた場所だったのだ。
「……だけどパラレルワールドなら時空管理局の力で………」
クロノは返すことは出来るんではとリンディ提督にいうが、
「……………」
言葉を返さない。
おそらく、いや確実に、
「……不可能よ………」
予感は的中した。
「いくら管理局でもパラレルワールドは未だに未知の領域……アムロ大尉には悪いのだけど………」
だが俺は、
「既に覚悟の上ですよ。」
と答えた。
だがこの発言と同時にリンディ提督の目が光った気がした。


あれから数十分。
アムロは自分の世界の事を語った。
自分の世界の戦争
MS(モビルスーツ)
ニュータイプ
シャアの人類抹殺計画
そして無謀にもアクシズを押し返そうとしたこと
「……既に帰るところは無くなったから、既に思い出話ですかね?」
実際は語り終わったところである。
自嘲気味に笑うアムロに対してリンディは今だとばかりにアムロを誘った。
「だったら時空管理局に入らない?」
突然の勧誘。
だが既に答えを返していた。
「無理ですよ。第一俺の機体は貴方達管理局の言うところの質量兵器ですよ?」
「いいのいいの!あれは次元振の時の流れ物だってごまかせば!それに貴方には……」
そんな無茶苦茶な話を遮り、さらにいう。
「第二に、ニュータイプとはいっても魔導師ではありませんから戦うことは………」
だがこんどは彼が遮られた。
「実はさっきの精密検査でわかったことなんですけどね………」
「………?」
その言葉は以外だった。



「貴方の体にもリンカー・コアがあったの。しかも推定オーバーSランクの………」



「………はぃ!?」

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最終更新:2008年08月10日 17:05