シグナムとデュークによって突破された結界の中。
そこには、アースラの魔導師達と守護騎士が対峙していた。
いつの間にか結界は強化され、今使った手段では破れない位に頑丈になっている。
「ユーノ君、クロノ君! 手出さないでね! 私、あの子と一対一だから!」
なのはがヴィータを見て言う。
先日一方的にやられた事もあってか、何としても話を聞こうと考えているようだ。
『アルフ、私も……彼女と』
フェイトが念話でアルフに言う。
先日の一戦以来、シグナムとの再戦を望んでいたのだろうか。
「ああ……あたしも野郎に、ちょいと話がある」
アルフがザフィーラを見ながら念話に答える。
先日の戦闘以来の因縁が、再び芽吹いたものと思われる。
「って事は、俺の相手は……あいつか」
甲児はそう言ってデュークを見る。
恐らく相手は自分と同じ……そう考えれば、甲児が相手をするのが一番だろう。
四者四様の思惑と共に、守護騎士達との再戦が幕を開ける。
第六話『機械獣襲来!』
戦場から離れたビルの屋上。そこにユーノとクロノが立っていた。
相手は四人。この場で戦うのも四人。ならば必然的にこの二人が余る事になる。
――――それならそれで好都合だ。
『ユーノ、それならちょうどいい。僕と君で手分けして、闇の書の主を探すんだ』
『闇の書の?』
この状況を好機と見たクロノがユーノに提案する。
対するユーノはこれを理解していないのか、クロノに問い返した。
『連中は持っていない。恐らくもう一人の仲間か、主がどこかにいる』
ユーノに詳しい事を説明する。
今対峙している四人の中に、闇の書を持っている人物はいない。ならばどこかにもう一人居るはず。
そいつを探し出して押さえれば……こちらの勝利だ。
『僕は結界の外を探す。君は中を』
『分かった』
『Master. Please, call me "cartridge load".』
「うん! レイジングハート、カートリッジロード!」
『Load cartridge.』
なのはがレイジングハートの要請に応え、カートリッジロードの指示を出す。
それに合わせ、レイジングハートがカートリッジをロードし、薬莢を排出。
一時的に魔力が増大するのを確認し、レイジングハートを構えた。
『Sir.』
「うん、私もだね。 バルディッシュ、カートリッジロード!」
『Load cartridge.』
フェイトも同じようにカートリッジロードの指示を出す。
それに合わせ、バルディッシュがカートリッジをロードし、薬莢を排出。
一時的に魔力が増大するのを確認し、バルディッシュを構えた。
それを見た甲児が自分だけセットアップしていない事に気付いたのか、ポケットから待機状態のマジンカイザーを取り出して掲げる。
「マジーン、ゴー!」
唱える言葉は、元いた世界でマジンガーを起動させるための言葉。
それを認識したマジンカイザーがバリアジャケットを展開し、甲児の全身にデバイスとして装着された。
先日暴走していた時とは違い、胸の文字が暴走中を表す『魔』から制御されている状態を表す『Z』へと書き換えられている。
「あいつら、デバイスを強化してきたのか」
「それに奴はこの間の黒い魔導師か……気をつけろ、ヴィータ」
「分かってるよ!」
目の前でカートリッジがロードされ、驚くヴィータ。
それを見たザフィーラがヴィータに注意を促し、ヴィータがそれに答える。
デバイスの差は埋まった。甲児は管理局側だった。もはやどちらに転ぶか分からない。
こちら側にも不確定要素はあるが……そう考えてザフィーラがシグナムの方に目をやった。
正確には、シグナムと共に現れた正体不明の人物……デュークの方に。
シグナムが無言でフェイトの方を向き、レヴァンティンを構える。
その目には再び相見えた宿敵への闘志があった。
「デューク、魔法での戦闘は初めてだろう。無理はするな」
デュークに注意を促すシグナム。一瞬前とは異なり、仲間への気遣いが見て取れる。
だが、デュークとてこちらに飛ばされる前からグレンダイザーを駆る戦士だ。そうそう遅れは取らない。
「いや、大丈夫だ。グレンダイザーは……誰にも負けない」
故に、デュークはシグナムにそう言って、心配は無用であると伝えた。
そして次の瞬間、それぞれが散開し自分の相手へと向かって行った。
なのはとヴィータ。
フェイトとシグナム。
アルフとザフィーラ。
そして、甲児とデューク。
――――さあ、戦闘開始だ。
「ハンドビーム!」
デュークが甲児に向かって飛来し、両手の甲からハンドビームを放つ。
不意を突かれる形となった甲児に当たるが、元の防御力が高いからか大したダメージではない。
「うわっ!? やりやがったな、てめえ! スクランダークロォォォォス!」
怒った甲児が、背中にカイザースクランダーを展開。冗談みたいに巨大な翼で空を飛び、デュークへと向かって行く。
その巨翼に驚くデュークだが、すぐに気を取り直して戦闘を続けた。
「ショルダースライサー!」
「くっ、ダブルハーケン!」
両者同時に両肩から武器を取り出しての白兵戦。
甲児は双剣『ショルダースライサー』を取り出し、デュークは二振りの鎌『ダブルハーケン』を連結させ、打ち合う。
甲児がショルダースライサーを振るえばデュークはダブルハーケンで受け流す。
デュークがダブルハーケンを振るえば甲児はショルダースライサーで受け止める。
この二人の力量は全くの互角。今ならどちらが勝ってもおかしくない。
「おい、あんた! 何で守護騎士達に協力するんだ! あいつらが何やってんのか、知らない訳じゃねえだろ!」
そんな相手が守護騎士に協力している事に憤る甲児。
闇の書の事はクロノから聞いて知っている。完成した時にロクな事にならないのも知っている。
ならば目の前のこの男は何故、こうして守護騎士に協力しているのか。それが疑問だ。
「知っているさ……だが、それでもやらなくてはいけないんだ!」
対するデュークからは、それを知った上での事だと告げる。
仮面の男から聞いた事ではあるが、彼らにとっての大切な家族が苦しんでいるのだ。
だからこそ、闇の書を完成させて救わねばならない。
「そこまでしてやらなきゃならねえ事って、一体何なんだよ!」
「それを教える気は無い! スペースサンダー!」
甲児の問いを撥ね付け、シグナムとの同時攻撃で結界をぶち抜いた一撃を放つ。
今のグレンダイザーにとって最大の威力を持つ攻撃、スペースサンダー。その直撃を食らい、地面へと落下する甲児。
落下のダメージはともかく、スペースサンダーは相当効いたのだろう。少しふらつきながらも立ち上がる。
「くそぉっ! そっちがその気なら、ぶっ飛ばしてから聞き出してやらあ!」
そう言って両腕を上空に構える甲児。
見るとデュークも、両腕を真下に構えている。
おそらく狙いは同じ。ならばどちらが打ち勝つかの力勝負だ。
「ターボスマッシャー――――」
「スクリュークラッシャー――――」
両者の腕が回転する。そして――――
「「パァァンチ!!」」
――――同時に両腕が飛び、空中で激突した。
そして、次元の海に浮かぶ城の中。サーチャーを使ってその激戦を見ている人物がいた。
青い肌をし、顔の大部分が白髪と白い髭で覆われた老人――――
「ほう、あ奴らが闇の書の守護騎士か」
――――地獄島の決戦で死んだ筈のDr.ヘルだ。
さて、何故Dr.ヘルがここにいるのか。それを説明した方がいいだろう。
とある世界に飛ばされたこの男は、手元に残っていた最後の機械獣『ダブラスM2』で次元航行艦を襲撃し、艦内の管理局員を皆殺しにして強奪。
その艦を使って世界を巡り、長年の夢である世界征服の為の力を探していた。
この島もそう。かつての基地であり、最終決戦の場であった地獄島。それがかつての時の庭園のような移動要塞と化している。当然、機械獣も島の格納庫に多数存在している。
あしゅら男爵を地獄島の決戦で喪い、たった一人になっても世界征服を諦めるなど出来はしない。
まして、次元世界の存在を知った今となっては世界征服など小さな事。この老人の夢は世界制服から更にランクアップし、全次元世界征服となってしまった。
そして先日、「第97管理外世界の日本にロストロギア『闇の書』がある」という情報を得て、地獄島から地球の様子を見ているのである。
これ程名の知られた危険で強力なロストロギアだ。手に入れられれば大きな戦力になるだろう。
「……むぅ!? あれはマジンカイザー! 兜甲児もこの世界に来ておったと言うのか!」
闇の書をどうやって手に入れるか考えていたDr.ヘルは、結界内の宿敵の姿を見つけ叫んだ。
甲児はDr.ヘルの侵略を幾度となく阻止し、今やDr.ヘルにとっての最大の敵である。
その最大の敵の姿を見つけて驚いたが、次にいぶかしみ、そして呵呵大笑。
「フフフハハハハハハハハ!! 勝てる、今の兜甲児ならば倒せるぞ!!」
そう、かつてDr.ヘルを苦しめたマジンカイザーは巨大ロボ。機械獣と戦う鉄の城であった。
だが、今のマジンカイザーは甲児の身に纏われたデバイス……つまり、人間程度のサイズしかないのだ。
それに対し、機械獣は一切変わっていない。今なら甲児を打ち倒せるだろう。
「ゆけい、ダブラスM2よ! 兜甲児を打ち倒し、闇の書を手に入れるのだ!」
そう考え、機械獣ダブラスM2を海鳴市へと送り込んだ。
「捜索指定ロストロギアの所持・使用の疑いで、あなたを逮捕します。
抵抗しなければ、弁護の機会があなたにはある」
結界の外。クロノがシャマルにS2Uを突きつけている。
結界を破る為にページを使おうとしていた所だったのだが、そこをクロノに見つかってしまった。
仲間の守護騎士は結界の中。この状況を打破する手段は無い。まさに絶体絶命――――
「同意するなら、武装の解除を「そうはいかんな!」ッ!?」
――――のはずだった。
声の方を見ると、クロノに向かって青い腕が飛来して来る。
おそらく甲児のターボスマッシャーパンチと同様のもの。なら当たれば相当のダメージになるだろう。
それを防ぐため、腕の方にラウンドシールドを展開して受け止める。
「仲間か……!」
やはり、と言うか……シールドを展開していてもこの衝撃。直撃していれば相当のダメージになっていただろう。
この攻撃はシャマルにも予想外の出来事だったのか、驚いた顔をしている。
しかし、この腕をどこかで見たような……
「グレートタイフーン!」
「うわぁぁぁぁっ!」
そう考えている間に、更なる攻撃がクロノを襲う。
竜巻がクロノを襲い、隣のビルまで吹き飛ばし、フェンスに叩き付けた。
吹き飛ばされたクロノが顔を上げる。その瞬間、その顔が驚愕に彩られた。
「剣……鉄也……!?」
今の攻撃を放ったのは、かつてフェイトと共闘して甲児を止めた、剣鉄也その人だったのだから。
もっとも今はデバイスを起動しているため、グレートマジンガーの姿ではあったが。
「あなたは?」
「あの結界を破る、下がっていろ……マジンパワー!」
突然現れた鉄也に驚き、シャマルが問いかける。が、鉄也は答えずにマジンパワーを発動させた。
マジンパワー……それは、マジンガーに搭載されている一種のオーバーブースト機能。
一時的に驚異的な力を発揮するこの機能はデバイスになっても健在で、この状態ならば今張られている結界も十分破れる。
マジンパワーを起動させた鉄也は、そのまま結界の真上まで飛び、マジンガーブレードを構える。
そして構えたマジンガーブレードにサンダーブレークの雷を込め――――
「サンダーブレード!」
――――思い切り結界目掛けて投げつけた。
サンダーブレークを纏わせた剣。更にマジンパワーによる強化。結界を破るには十分すぎる。
結界にヒビが入り、そのヒビがどんどん拡大。そして砕けた。
……そして次の瞬間、戦場となっていた場所に巨大な転移魔法陣が出現。
そこから現れたのは……二つの首を持った機械の獣。機械獣ダブラスM2だった。
最終更新:2009年07月14日 11:25