「そのデッキ…以前なのはを襲ったライダーのものですよね?」
 入院中のフェイトの前に現れたのは、香川研究室教授、香川英行。彼は戦いを止めるために動いているという。
その証明として彼が取り出したのは、仮面ライダータイガのデッキ。
だがフェイトはまだ信用してはいない。何故なら先日なのはを襲ったのは、そのタイガなのだから。
そしてフェイトは、その事を香川へと聞く。それに対して香川が答えた。
「なのは…?ああ、あの白い衣装を纏った彼女のことですか」
 これで決まった。彼はタイガ…もしくは、それに関わる者である。
「いきなり人に襲い掛かるような人を、信用できるとでも思っているんですか?」
 短く、しかしはっきりと拒絶する。だがフェイトは完全に拒絶してはいない。
この戦いを止めるために動いているライダー、それが真司達以外にもいるとは思っていなかった。上手くいけば協力できるかもしれない。
香川はそれが分かっているからこそ、フェイトが理解できるよう説明を行った。
「これは手厳しいですね…理解していただけるかはわかりませんが、こちらにも理由というものがあるのです…聞いていただけますね?」

サバイブのカードがバイザーの装填口へと近付き、吸い込まれるように装填される。
そしてバイザーがその名を告げた。仮面ライダーナイトの新たなる力の名を。
『SURVIVE』
 風が吹き荒れ、塵が舞い、ナイトを包む。その中でナイトは姿を変え、そして風が止んだ。
仮面は金色に縁取られ、グランメイルは蝙蝠の翼を模した青い鎧になった。
その名は仮面ライダー『ナイトサバイブ』。サバイブによる新たな力を得たナイトである。

第二十四話『風、雷、そして力』

 ナイトサバイブがバイザーから長剣『ダークブレード』を抜き放ち、ベルデへと駆ける。
対するベルデはそれを迎撃すべくデバイスを向けるが、それは叶わない。
デバイスからフォトンバレットが飛ぶより速く、ナイトがベルデの目の前まで駆け込んできていたのだ。
「はあっ!」
迎撃体制もとれないまま、ダークブレードの連続攻撃を受けるベルデ。サバイブによる強化からか、先程よりも攻撃が速い。
しかも速いだけではなく、威力もかなり増している。
…さて、ここでライダー達の攻撃力について、少し話をしよう。
通常、ライダーの攻撃力はAPという尺度で表され、1APが0.05トン程である。
そしてダークバイザーの攻撃力は4000AP。かつてのシザースアタックと同程度である。トンに換算すると200トンという常識はずれな破壊力だ。
「く…嘘でしょ?強すぎるわ…」
 だから、それ程の破壊力を連続で受けて耐えられず、膝をつくのもまた当然である。

 一方の海鳴大学病院。香川がフェイト達に説明を行っていた…読者の皆さんはお忘れかもしれないが、はやてもここにいる。
「我々は『魔導師がミラーワールドに出入りできる』とは考えていませんでした。
そもそも、ミラーワールドに出入りできるのはライダーとオルタナティブのみ…それ以外は出ることは出来ず、粒子となって消滅するのみ。
そしてあのなのはさん…でしたか。彼女がミラーワールドにいた…となると、普通なら粒子になって消える。そう考えるはずです。
ならばそのような恐怖を感じるよりはまだ良い。そう考えて、倒しにかかった。そういう事ですよ」
 確かに。彼の言う通りなら、なのはは粒子になって消える。ならばそう考えてもおかしくはない。
…理解はできても、納得できない事というのはあるものだ。香川の告げた理由、それがその典型である。
「…しかし実際にはそうではなかった。どうやったのかは知りませんが、あなた方魔導師でもミラーワールドへの出入りは可能…そうですね?」
「…はい」
 香川の質問に、フェイトが答えた。先程の理由に納得していない表情だったが、それを香川は気にしない。
そこで多少考え、そして続きを話した。
「ならば、ミラーワールドでの戦闘も可能…そこで、一つお願いしたいことがあります」
「お願いしたいこと?それって…何なんです?」
 今度はフェイトに代わりはやてが問う。そして香川が今回来た本題を述べた。
「我々は3週間後、神崎のモンスターの栄養補給を阻止する計画を立てています。あなた方魔導師には、ぜひ協力して頂きたい」

 そして視点はミラーワールドへと戻る。
ナイトサバイブがベルデへと近付く。手にはダークブレード。今なら喉にでも突き刺せば一撃で終わるだろう。
そしてナイトサバイブが立ち止まり、ダークブレードを突き刺そうと構え、思い切り突き出…せなかった。
ナイトサバイブは確かに強い。だが、蓮は人を殺せない。今回のように、後一歩のところで踏みとどまってしまうのだ。
無論、人を殺せないというのは褒められるべき事。だが、この場合は隙を作る要因となる。
その隙を狙い、ベルデがフォトンバレットとバイオワインダーの同時攻撃を放ち、ナイトサバイブに隙を作る。
『CLEARVENT』
 それでできた一瞬の隙を使い、クリアーベントを発動。姿が見えなければ攻撃も不可能だと考えたのだ。
「ちぃっ、消えたか」
 姿が消えたことで、悪態をつくナイトサバイブ。だがどのような行動を取るかは読める。
ダークブレードの破壊力をその身で何度も味わったのだ。ならばもう食らいたくないと考え、離れる。ナイトサバイブはそう読んだ。
一方のベルデは、ナイトの予想通り急いでダークブレードの間合いから離れ、デバイスをナイトへと向ける。
飛び出すフォトンバレット。シュートベントを使おうとしたナイトサバイブに片端から命中し、彼をよろめかせた。
その隙を利用し、飛行魔法で空へと向かうベルデ。上空からフォトンバレットの乱射でもしようというつもりか…いや、違う。
「ハァ…ハァ…ここで…2人消させてもらうわ…!」
 プレシアがいる箇所のすぐ手前に、紫色の雷が現れる。ベルデの…いや、プレシアの最大魔法『サンダーレイジO.D.J』を放つつもりだ。
この攻撃は負担と消耗が大きく、今の彼女では元の体調と戦闘の消耗で満身創痍。放った側もただでは済まないだろう。
「…なるほどな、そこか」
 透明化している状態でこれを使おうとしたのは失敗だった。雷の位置で大体の居場所が分かってしまったのだ。
ナイトサバイブがダークブレードをバイザーに戻し、剣の柄にあたる部位を開く。戦闘用のカードは大体ここに装填するのだ。
そしてカードを一枚取り出し、装填した。
『BLASTVENT』
 ブラストベントのカードにより、現れるのはダークウイング…いや、鏡が割れるような音とともに、その姿が変わった。
その姿はまるでナイトサバイブのバイザーやグランメイルのように、青く鋭角的な姿だ。
その名は『疾風の翼ダークレイダー』。ナイト同様、疾風のサバイブで力を得たダークウイングである。
ダークレイダーの翼が変形し、タイヤのような車輪が現れる。そして車輪が高速回転を始め、竜巻『ダークトルネード』を放った。
ダークトルネードは狙い過たず(もっとも、攻撃範囲が広いので大体の位置が分かっていれば当たるのだが)、ベルデを捉えて吹き飛ばす。
そして風の吹く方向は…池である。そのまま風に飛ばされ、ベルデを池に叩き込み、ミラーワールドから叩き出した。

「手塚、これはお前に返す」
 ミラーワールドから現実世界へと戻った蓮が、手塚にサバイブのカードを渡す。
あの場は仕方なかったとはいえ、蓮が使っていたサバイブのカードは本来手塚のものである。ならば返すのが筋というものだろう。
やろうと思えば手塚を倒し、サバイブのカードを自分のものにするという事も出来たのだろうが、蓮はそう思わない。北岡あたりなら間違いなく「甘ちゃん」とでも評しただろう。
だが、手塚は首を横に振り、返されたサバイブのカードを蓮に渡した。
「いや、これはお前が持っておくといいだろう」
 蓮はそう言われるとは思わなかったらしく、驚いた表情をしている。
手塚は元々力を望まず、間違った使い方をしないであろう誰かに渡すつもりだった。そしてそれが目の前にいる。だから蓮に渡した。
それが信じられないのか、蓮が手塚に聞き返し、そして手塚が答えた。
「…いいのか?」
「ああ。お前なら間違った使い方はしないだろうからな」

 そして一方、戦いに敗れたプレシアは…
「一体何なのよ…あんなカードがあるなんて、聞いてないわ…」
 案の定、予想外の隠し玉であるサバイブに面食らっている。
そしてそんな彼女の前に、あの男が現れた。プレシアも話しかけられる前に気付き、話しかける。
「神崎…どういう事?」
 何のことかを言っていないが、プレシアはそれで分かると思っている。
そして神崎も、思い当たる節は一つしかない。手塚に渡したサバイブのことだ。
「サバイブの事か?あれはある程度人数が減ってから、数人のライダーに与えているカードだ」
「だったら!他のサバイブをよこしなさい!」
 神埼が言い終えると同時に、プレシアが叫ぶように要求する。
何しろその身をもってサバイブの力を知ったのだ。欲しいと思うのが普通だろう。
だが、神崎は首を横に振り、その要求を撥ね付けた。
「…それはできない。あれは貴重なものだからな、全員に配るわけにはいかない」
 そう言って、神崎はいつものように消えた。
「…そう、そういう事」
 残されたプレシアが何を考えたのか、それは本人以外誰も分からないだろう。
「サバイブが欲しければ、それを持っているライダーを殺して奪え…そういう事ね」

「では、私はこれで」
 一方、海鳴大学病院。話を終えた香川が、フェイトの病室を出ようとしている所のようだ。
「ああ、それと…そこにある紙には私の連絡先が書かれています。計画に参加する気になったのなら、そこに連絡してくだされば助かります」
 そう言って、今度こそ香川は病室から去った。
後に残ったフェイトとはやては、香川の話について考えていた。そしてはやてがフェイトに聞き、フェイトが答える。
「…どう思う?」
「多分、あの人が言ってた『戦いを止めるために動いている』っていうのは本当だと思う。でも…」
「でも?」
 フェイトには何か気にかかる点があるようだ。だがそれも確証がない。
「…ううん、何でもない」
 それについて聞いてきたはやてに対し、フェイトははぐらかすようにそう答える。
とにかく香川の計画に参加し、その上で見極めよう。フェイトはそう、考えていた…

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最終更新:2007年09月01日 22:04