第4話「もう一人の、光の巨人なの」


「一体……何が、どうなってるんだよ?
街の人達が急に消えるなんて……はやてちゃん、ごめん。
流石に、何があったのか気になるし……ちょっと今日は帰るの遅くなるかも。」

結界に閉ざされた海鳴市。
そこには……先刻ミライ達を見つめていた黒尽くめの男以外にも、実は一人だけ先客がいたのだ。
しかしその青年には、黒尽くめの男の様な怪しい雰囲気は一切ない。
爽やかで、格好も今風の若者という感じの青年。
彼は、何故こんな事態が起こったのかを知る為、街中を走り回った。
これまでにも、怪事件の類には何度も遭遇してきた。
そしてその都度、解決してきた。
自分には、待ってくれている者がいる……彼等に心配をかけてはならない。
そう思いながら、捜索を続けていた……その矢先だった。
上空から閃光が走り、同時に轟音が響き渡る。
とっさに青年は、空を仰ぐと……そこには、自分がよく知る者達の姿があった。

「えっ……ヴィータちゃん、シグナムさん!?
ちょ……どういうこと……?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『もしもし、はやてちゃん?
シャマルです……』
「ん、どしたん?」
『すみません、いつものオリーブオイルが見つからなくて。
ちょっと、遠くのスーパーまで行って探しにいきますから。』
「ああ、ええよ。
別に無理せんでも。」

その頃であった。
海鳴市の、結界から外れた位置にあるとある民家。
そこで、車椅子に乗った一人の少女――八神はやてが、調理を進めていた。
彼女は家族と思わしき人物――シャマルと、電話で会話をしながら作業をしている。
キッチンに出ている材料等を見る限り、相当の大人数らしい。
はやても含めて、大体5~6人というところだろうか。

『出たついでに、皆を拾って帰りますから。
ただ、アスカさんだけはまだお仕事中かもしれないですけど……
なるべく急いで帰りますね。』
「あ、急がんでええから。
気をつけて帰ってきてな。」
『はい。』

はやては、家族達が皆無事に帰ってくるようにと言い、電話を終える。
今まで、ずっとはやては一人で暮らしていた。
そんな孤独な彼女に温もりを与えてくれたのが、シャマル達だった。
彼女達は色々と訳ありで、つい先日にこの家で暮らすようになったばかりである。
はやてにとっては、彼女達の存在が何よりも嬉しかった。
ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ。
誕生日の夜、自分の元に現れてくれた騎士達。
そして、もう一人。
彼女達と出会ってからしばらくした日に出会えた、あの人……

「あ、いけない。
雨降ってきちゃった……ヴィータちゃん、シグナム。
洗濯物入れるの、手伝ってくれない?」
「おう、任せとけ。」

それは、ある日の夕暮れ時だった。
八神家に住まう騎士達――なのは達の前に現れたヴィータ達は、干していた洗濯物を取り込んでいた。
降水確率がギリギリ降るか降らないかという数値だった為、洗濯物を外に干していたのだが……
不運にも、その賭けには負けてしまった。
急いで洗濯物を家の中に入れ終え、皆が一息つく。
そんな彼女達へと、はやては温かい飲み物を差し出してあげた。

「皆、おつかれさま。」
「ありがとうございます、主はやて。」
「ふぅ……温まるなぁ。
やっぱ、あんまりギャンブルはやるもんじゃねぇな……」
「うむ……まあ、この程度なら大丈夫だ。
家の中に干しておけば、すぐ乾いてくれるだろう。」
「そやね……あれ?」
「はやてちゃん、どうしたの?」
「今……何か、外光らんかった?」

はやては庭を指差しながら、騎士達に問う。
どうやら四人とも、外の様子は見えていなかったらしく、その質問には答えられなかった。
雷でも落ちたのかと思ったが、それにしては何か妙だ。
落雷の音が、全然聞こえてこない。
自分の気のせいだったのだろうか。
そう思いながら、はやてが皆の手伝いを始めようとした……その時だった。

ドサッ

「え……!?」
「今、何か音が……!!」

音は、聞こえてきたは聞こえてきた。
しかしそれは、決して落雷なのではない。
何かが地面に倒れ落ちたような、そんな感じの音だった。
嫌な予感がしたはやては、すぐにベランダへのガラス戸を開いてみる。
すると……そこでは、予想だにしていなかった事態が待ち構えていた。

「嘘……人が倒れとる!?
シグナム、ザフィーラ!!」
「心得ております!!」

庭ではなんと、一人の男性がうつ伏せで倒れこんでいたのだ。
見た所、20代前半の青年……何処かの制服らしき服装をしている。
完全に気を失ってしまっているようであり、ピクリとも動かない。
すぐにシグナムとザフィーラが庭へと飛び出し、彼を家の中に入れた。
一体、この男が何者なのかは分からない。
だが……このまま放っておくわけにもいかなかった。
すぐにヴィータはバスタオルを持ってきて、青年についた土や泥をふき取る。
その後、シャマルは彼に怪我がないかどうかを見た。
どうやら、外傷は一つも見当たらないようだが……

「う……」
「あ、気がついた?」
「……ここは……?
そうだ、皆は!!
グランスフィアはもう……!!」

青年は勢いよく起き上がり、周囲を見回した。
そして、己を取り巻く環境が一気に変化したことに気づくと、ただ呆然とするしかなかった。
自分は確かに、人類の未来をかけた最終決戦に臨んでいたはずだった。
その最後、暗黒惑星の崩壊によって発生したブラックホールに呑まれ……

「……どうなってるの、これ?」
「えっと……これってもしかして?」
「ええ……私達と同じく、異なる世界から現れたという事でしょう。」
「……異なる世界?」
「うんと、ちょっと混乱してるみたいやね。
とりあえず状況を整理していかんと……名前、聞かせてもらえます?」
「あ、うん。
俺はアスカ、アスカ=シンっていうんだけど……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ウルトラマン……だって!?」
「え……?」

ヴィータは、姿を変えたミライ――メビウスの正体に、驚かされていた。
その様子を見て、メビウスは少しばかり考えた。
この反応……ウルトラマンという単語を始めて聞いた人がするものじゃない。
この驚き様は、もしかすると……

「まさか……君達は、ウルトラマンを知っているの?」
「……管理局の連中に、答える義理はねぇ!!」

メビウスの問いに答えることなく、ヴィータは襲い掛かってきた。
勢いよく、グラーフアイゼンをその脳天めがけて振り下ろす。
しかしメビウスは、バック転してその一撃を回避。
そのまま真っ直ぐに拳を繰り出し、ヴィータの胴体を狙った。
無論、力の加減はしてある……相手は自分よりも幼い女の子。
幾らこんな事件を起こしたとはいえ、優しいメビウスには全力でかかることはできなかった。
だが、ヴィータはただの少女にあらず。
その一撃を障壁で受け止めると、そのまま空へと飛んだ。

(なんで……なんで、ウルトラマンなんてのがここで出てくるんだよ!!
でも、あいつの言ってたダイナやティガってのとは違うみたいだけど……)
「待てっ!!」
「ちっ……空まで飛べるようになってんのか!!」

メビウスが自分を追って空を飛んできた事に対し、ヴィータは舌打ちをし毒づく。
一番の雑魚かと思われていた相手が、実は一番厄介な相手だった。
自分達の判断ミスを呪いつつも、やむをえずヴィータは応戦に移ろうとする。
しかし、この時……彼女はある事に気づいた。
自分が持っていた筈の書物が……闇の書が、ない。

「闇の書がない……!?
そんな、一体どこで……」
『ヴィータちゃん、闇の書は私が回収してあるわ』
『!!
シャマル、来てたのか!!』
『ええ、さっきシグナムと一緒にね。』

念話でヴィータへと話をつなげてきたのは、シャマルだった。
彼女は少しばかり離れたビルの屋上で、ヴィータ達同様に魔道の衣服に身を纏っている。
その片手に携えられているのは、闇の書と彼女達が呼んだ書物。
もう片方の手は、指輪型のデバイス――クラールヴィントを発動させていた。
その様子を見る限り、何かしらの術を使う準備を進めているように見える。
しかしこの時……彼女は、気づいてしまった。
この結界内に入り込んでしまった、イレギュラーの存在に。

「え……!?
まさか……」
『どうした、シャマル?』
「誰か……結界の中に、取り残されている人がいる!!」
『何だって!?』

シャマルが建っているビルから見える位置に、一人の青年が立っていたのだ。
遠目でその姿ははっきりとは見えないが、魔力は感じられない……完全な一般人だ。
このままでは、無関係な人間を戦闘に巻き込むことになってしまう。
何とかしなくてはならない……シグナムがとっさに動こうとする。
だが、そこへと何者かが切りかかってきた。
その正体は、ユーノによって救出され、バルディッシュの破損も回復させたフェイトだった。

「おおおおおぉぉっ!!」
「くっ!!」

バルディッシュとレヴァンティンが、火花を散らせながら激しくぶつかり合う。
時間をあまりかける訳にはいかない。
双方が同時に動いた。
フェイトは己の周囲に魔力を収束させ、金色に輝く魔力弾を生み出す。
それに対しシグナムは、紫電一閃を放ったとき同様……レヴァンティンへと、弾丸を放り込む。
直後……その全身が、魔力によるオーラで包まれる。

「レヴァンティン、私の甲冑を!!」
「打ちぬけ……ファイアッ!!」

フェイトの放った魔力弾――フォトンランサーが、真っ直ぐにシグナムへと迫る。
しかしシグナムは、微動だにせず……防御も回避もしないで、フェイトを見つめていた。
そして、フォトンランサーがシグナムを貫こうとした……その瞬間だった。
彼女に命中したフォトンランサーが、次々に弾かれていったのだ。
全くの無傷……この事態に、流石のフェイトも驚きを隠しきれないでいる。

「魔道師にしては悪くないセンスだ。
だが、ベルカの騎士に一対一を挑むには……まだ足りん。
レヴァンティン、叩き切れ!!」
「っ!!」

魔剣から弾丸が排出され、刀身全体が膨大な魔力に覆われる。
二度目の必殺剣――紫電一閃。
フェイトはとっさにバルディッシュでそれを受け止めるが……先ほどと結果は同じだった。
バルディッシュに皹が入り……そしてフェイトは、後方の高層ビルへと激突する。

「フェイトちゃん!!」
『大丈夫ですか、マスター?』
「うん……ありがとう、バルディッシュ。
それより、今の……」
『ええ、あのデバイス……』
「あの弾丸の様なものを使うことで、一時的に魔力を高めているんだ……」

フェイトは、デバイスの性能自体に相手と大きな違いがある事に気づいた。
そしてそれが、圧倒的不利を齎している事も……バルディッシュには悪いが、気づいていた。
状況は、完全なシグナム優位であった。
一方、離れた位置で戦っているアルフとザフィーラも、ザフィーラの優勢。
ベルカの騎士――ヴォルケンリッターが、総合的には押していることになっていた。
そう……優勢2、劣勢1の総合的な結果で。
その劣勢が誰かは、もはや言うまでもなく……

「ハァッ!!」
「ちぃっ!!」
『Panzerhindernis』

とっさに防壁を出現させ、ヴィータはメビウスの蹴りを受け止める。
ここまでの勝負は、完全なメビウスのペースであった。
話に聞いた以上の力を持つ、ウルトラマンの能力。
自分達ベルカの騎士と互角か、もしくはそれ以上かもしれない。
メビウスの重く強烈な蹴りを受け止めながら、ヴィータはそう実感していた。
ここで吹き飛ばされてはいけないと、懸命に踏ん張ろうとする。
しかし……その瞬間だった。
何とメビウスは、急激なスピードで錐揉み回転をし始めたのだ。

「まさか!?」
「ハアァァァァァァァァッ……!!」

即座に、メビウスが何をしようとしているのかをヴィータは理解する。
しかし……分かったときには、すでに遅かった。
強烈な回転によって摩擦熱が生じ、メビウスの脚部から炎が出現する。
そして……障壁は破壊され、グラーフアイゼン越しにヴィータへと蹴りが炸裂する。
かつてメビウスが、光線技の一切通用しない強敵と合間見えたときに編み出した必殺の一撃。
後には、無双鉄神すらも打ち砕くほどの攻撃となった蹴り――メビウスピンキック。
ヴィータの障壁とて、決して柔な代物ではないのだが……相手が悪かった。
このままでは、先ほど吹っ飛ばされたフェイト同様に自分もビルに叩きつけられるだろう。
急いで、ヴィータは体勢を立て直そうとする。
だが……ここで思いもよらぬ攻撃が、彼女に襲い掛かってきた。
メビウスに集中しすぎていた為に、その存在を忘れていた伏兵――ユーノ。
彼の放ったチェーンバインドが、ヴィータを束縛したのだ。
攻撃力こそこの中では最低ではあるものの、サポート役としては最強のユーノが放つバインド。
先程アルフが使ったものよりも、性能は恐らく上。

「くそっ……これじゃ、さっきと同じじゃねぇかよ……!!」
「ありがとう、ユーノ君。」
「いえ、ミライさんが注意を引き付けてくれていたお陰です。
……それじゃあ、君達の事を教えてもらえないかな?
今は、さっきと違ってもう助けに入る人もいないみたいだしね。」
「誰が言うか……!!」

ヴィータは力ずくで、拘束から逃れようとする。
鎖が皮膚に食い込み、血が滲み出始める。
それを見て、メビウスとユーノは驚き、さすがに拘束を緩めるべきではないかと感じた。
しかし……逃げられては元も子もないので、それはできない。
何とかして結界を破壊さえできれば、強制転移させてアースラへと連行できるのだが……ユーノにそれは不可能だった。
この結界は、ユーノが扱える術では破壊しきれない代物だったのだ。
フェイトもこの手の術に関しては、やや不得手である。
そうなると、アルフかミライかに頼るしかないが……

『アルフ、ミライさん、何とか結界は破れない?』
『あたしもさっきからやってるんだけど、この結界滅茶苦茶硬いんだよ!!』
『僕はわからない……メビュームシュートなら、もしかしたらいけるかもしれないけど……』
『皆、私がやるよ!!』
『なのは!?』

意外な事に、この問いに答えたのはなのはだった。
確かに彼女の魔法には、結界破壊の効果を持つものが一つだけある。
しかし……手負いである彼女に、その術は危険ではないだろうか。
いや、それ以前にレイジングハートの損傷が深刻すぎる。
あの術――スターライト・ブレイカーを、果たして打てるのだろうか。
例え打てたとしても、ほぼ確実にレイジングハートは崩壊するだろう。
だが……それにもかかわらず、全員が口から出かけた「やめろ」の一言を引っ込めた。
なのはもレイジングハートも、覚悟を決めた上でこの決断を下したのだ。
邪魔をする権利は、自分達にはない。
それに、これがベストな手段であることには違いない。

『分かった……出来るだけ、急いで。
この子をすぐに転送させないと、怪我が……!!』
『うん!!』

ユーノはヴィータに回復術を徐々に施し、彼女が倒れないようにする。
しかしそれでも、出血した分の血は戻らない……貧血・失血で倒れるのも時間の問題だろう。
それはヴィータ自身にも、十分分かっていた。
だが……彼女の意思は、極めて固かった。
間違ったって、言ってやるものか。
例えどんな目に合おうが、自分は仲間を守り抜く。
大切な主を救う為にも、味方を裏切るような真似は絶対にしない。
ヴォルケンリッターの全ては……仲間と、そして主の為にある。

「この程度で……やられてたまるかってんだっ!!」
「どうして……どうして、君はそこまで……!!」

メビウスは、ヴィータから何か強い信念の様なものを感じ取った。
これまで戦ってきた、邪悪な侵略者達とは逆……正義すら感じさせられる。
そう……これは、自分の仲間や兄弟達と同じ。
大切なものを守りたいという意思ではないか。
それを悟った時、メビウスは何が何でもヴィータ達を説得しなければと考えた。
彼女達の行動は確かに悪ではあるが、その悪を行うに値する理由があるに違いない。
メビウスは、ヴィータに問いかけようとする。
しかし……その時だった。

「ヴィータちゃん!!」
「え……!?」

ヴィータの賢明な思いが、天に届いたのだろうか――最もその返答は、天とは正反対からではあったが。
地上から、ヴィータを呼ぶ誰かの声が聞こえてきたのだ。
それに思わず、皆が動きを止めてしまう。
ヴォルケンリッターの表情が、一気に変わる……無理もない。
その声の主――結界内に取り残された男は、自分達がよく知る者。
大切な家族の一人――アスカ=シンだったからだ。

「今、助けるから……!!」

アスカはポケットから、手の平サイズの何かを取り出した。
人面が掘られた、石とも煉瓦とも取れぬ謎の材質で作られたオブジェ。
光の力を得たアスカが、その力を解放する為に使う道具――リーフラッシャー。
アスカはそれを高く掲げ、起動させた。
オブジェから突起が飛び出し、そしてその先端から眩い光が溢れた。
それを見た瞬間、誰もが既視感に見舞われる。
当然である……この光景は、先程ミライがメビウスへと変身した際と、全く同じなのだから。
そして、この後の展開も予想できていた。
特に……ヴォルケンリッターの四人には。


――俺のいた世界には、ウルトラマンっていう凄いヒーローがいたんだ


――凶暴な怪獣や邪悪な侵略者から、人々を守る為に戦ってくれて……


――俺が知ってるウルトラマンは二人いるんだけど、どっちも凄かったよ。


――まあ俺的には、ティガもいいはいいんだけど、やっぱもう一人の方だよな。


――うん、もう一人のウルトラマンで、名前は……


「ウルトラマン……ダイナ!?」
「そんな……アスカ、まさかお前が……!!」
「デヤァァァッ!!」

メビウスと似た姿を持つ、光の戦士。
アスカが得た、邪悪を打ち倒す為の力――ウルトラマンの力。
それによってアスカは、その姿を変えた。
光の戦士――ウルトラマンダイナに。
ダイナは凄まじいスピードで飛び上がり、そのまま手刀を繰り出した。
チェーンバインドが切断され、ヴィータの拘束が解かれる。

「……アスカ、お前……」
「……黙っててごめん。
ウルトラマンだってこと、中々言い出せなくて……」
「……構わん、隠し事ならお互い様だ。
しかしこうなった以上、全てを話し……全てを聞いてもらわねばならないな。」
「そうだな……助けてもらったんだし、あたし達の事も話さなきゃ不公平だ。
ただアスカ、はやてにだけは……」
「分かってる……兎に角今は、この場を切り抜けよう。
俺の相手は……もう、決まっているしな。」

ダイナは、その視線をメビウスへと向けた。
二人とも……特にメビウスの方は、自分が今置かれている状況に混乱させられていた。
自分の目の前に立っているのは、紛れも無く同じ存在であるウルトラマン。
異世界で、まさかウルトラマンと遭遇しようなんて、夢にも思っていなかった。
その実力は未知……どれだけの力があるか分からない。
ダイナが構えを取り、戦闘態勢に入る。
それに対するメビウスはというと、とっさに構えこそとったものの、自ら進んで戦おうとは思っていない。
何故、自分達が戦わなければならないのか……それを、まず聞き出そうとした。

「貴方は一体……?」
「ウルトラマン……ウルトラマンダイナだ!!」
「ダイナ……どうして、こんな真似を?」
「俺も、事情は分かってないんだ。
けど……そんな事は、はっきり言ってどうでもいい。」
「え……?」
「守りたい人を守るために戦う、ただそれだけだ!!」

まっすぐに、ダイナが拳を突き出してくる。
メビウスは体を捻ってそれを回避し、そのままの勢いで回し蹴りを繰り出した。
しかし、ダイナはそれをとっさにガードする。
そして無防備となったメビウスの胴体へと、蹴りを叩き込んだ。
格闘戦においては……ダイナの方に、どうやら分があるらしい。

「ぐぅっ!?」
「勝負だ、メビウス!!」
「ダイナ……やるしか、ないのか……!!」

ウルトラマンメビウスとウルトラマンダイナ。
本来ならば、決して合間見えることの無かった、似て非なる存在である二人のウルトラマン。
奇しくも、大切な人を守りたいという同じ願いから変身を遂げた二人。
今……その決戦の幕が、開かれようとしていた。

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最終更新:2007年10月07日 09:58