「よかったぁ……今、どこ?」
『2番目の中継ポートです。
あと10分くらいでそっちに戻れますから。』
「うん、了解。」

あれから、数日が過ぎた。
なのは・フェイト・ユーノ・アルフの四人は、時空管理局本局を訪れていた。
検査の結果、なのはのリンカーコアは完全回復。
さらに、レイジングハートとバルディッシュも修復完了。
これでようやく、元通りに魔法が使えるようになった。
エイミィはほっと一息つくが……その時だった。
ハラオウン家全体に、警報音が鳴り響いた。
リンディ達三人はとっさに対応にでる。

「エイミィさん、何があったんですか!!」
「都市部上空で、捜索指定のうち三人を確認したって。
今、結界で閉じ込めて武装局員が当たってる!!」
『リンディ提督、指示をお願いします!!』
「相手は強敵よ。
交戦は避けて、外部から結界の強化と維持を!!」
『はい!!』
「現地には、執務官とミライさんを向かわせます!!」

リンディの言葉を聞き、ミライとクロノは無言でうなずき合った。
その後、二人はマンションのベランダに出る。
現場はここからかなり近い……エイミィに転送ゲートを開いてもらわなくても、すぐに向かう事が出来る。
クロノはS2Uを取り出し、ミライはメビウスブレスを出現させる。

「S2U!!」
「メビウゥゥゥゥゥスッ!!」

戦闘へと向け、二人がその姿を変えた。
ミライはメビウスへと変身し、クロノはバリアジャケットを身に纏っている。
現場はここからまっすぐ……最大速度でいけば、1分もかからない。
二人は真っ直ぐに、飛んで向かっていった。

「エイミィ、相手は三人って言ってたけど……誰が来ているか分かるか?」
『赤い服の女の子と、使い魔っぽい蒼い狼。
それと……ウルトラマンダイナ。』
「ダイナ……!!」
「分かった……ダイナは、ミライさんに任せます。
残りの二人は、僕と現地の職員とで相手します!!」
「はい!!」
「よし……エイミィ、現場に着いた。
戦闘を開始する!!」

二人が結界内部へと入った
クロノはメビウスと別れ、上空へと飛び上がる。
目標は下方―――武装局員に取り囲まれている三人。
ヴィータ、ザフィーラ、ウルトラマンダイナ。
クロノはすぐに全員へと念話を送り、その場から離れるよう指示を出した。
直後、彼の周囲に魔力が集まり……無数の剣を形成した。
ここで三人もこれに気付くが、既に攻撃の準備は整っていた。
クロノはS2Uを振り下ろし、攻撃を仕掛ける。

「上から……!?」
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト……いけぇっ!!」

無数の剣が、三人へと豪雨の如く降り注いでくる。
とっさにザフィーラが二人の前へと出て、防御障壁を展開する。
並の魔道師ならば、障壁諸共串刺しにして終わらせることが出来る威力の術。
だが、彼等は全員がAAランクは越えているであろう凄腕。
果たして、どれだけの攻撃が通ってくれたか……

「くっ……」
「ザフィーラ、大丈夫か!!」
「気にするな。
この程度でどうとなるほど、柔では……ない!!」

障壁を突破できたのは、たった三発の剣のみ。
その三発は、ザフィーラの腕へと突き刺さっていたのだが……
ザフィーラが腕に力を込めると、剣はすぐに砕け散った。
与えられたダメージは、皆無に等しかったのだ。

「!!
気をつけろ、下から来るぞ!!」
「セヤァァッ!!」
「メビウス……俺がいく!!」

三人の真下から、メビウスが迫ってくる。
とっさにダイナが飛び出し、彼へと向かっていった。
両者の繰り出した拳が、激しくぶつかり合う。
力はやはり、ダイナの方が上。
ならばと、メビウスはもう片方の腕でその手首を掴み、ダイナを地面へ向けて投げ飛ばした。

「うおっとぉ!!」

ダイナは激突寸前で、ギリギリ静止。
すぐにメビウスへと向き直り、光弾を発射した。
メビウスも同様に攻撃を放ってそれを打ち落とす。

「アス……ダイナ、大丈夫か!!」
「ああ、何とか……!?」

その時だった。
近くのビルの屋上から、閃光が走った。
増援―――どちら側のかは、分からないが―――がきた。
時空管理局側か、それともヴォルケンリッター側か。
現れたのは……

「レイジングハート!!」
「バルディッシュ!!」
「セーット……」
「アーップ!!」

現れたのは、こちらの世界へと戻ってきたなのは達だった。
二人は自分のデバイスを起動させ、戦いに介入しようとする。
だが……起動させてみて、二人はある違和感に気付いた。
レイジングハートもバルディッシュも、どこかが違う……破損前と、変わっている。

「これって……?」
『二人とも、落ち着いて聞いて!!
レイジングハートもバルディッシュも、新しいシステムを積んでるの!!』
「新しいシステム……?」
『その子たちが望んだの、自分の意思で、自分の想いで!!
呼んであげて、その子達の新しい名前を!!』
「Condition all green, Get set」
「Standby, ready」

なのはとフェイトは、すぐに全てを理解した。
先の戦いで敗れて、最も悔しかったのは彼等だったのだ。
だから、彼等は新たな力を手にした……自分達には無くて、敵にはあるあのシステムを。
その心に答えるべく、二人はその新たな名前を呼ぶ。

「レイジングハート・エクセリオン!!」
「バルディッシュ・アサルト!!」
「Drive ignition」

二人の身に、バリアジャケットが纏われる。
そして、新たなシステムを内包したデバイスが、その手に携わられた。
ヴィータ達は一目見て、デバイスが新たになった事を悟る。
自分達と同じ……カートリッジロードシステムが、彼女達のデバイスには積まれている。

「あいつら……!!」
「待って、私達はあなた達と戦いに来たわけじゃない。
まずは、話を聞かせて!!」
「闇の書の完成を目指してる理由を……!!」

二人は戦う姿勢を見せたヴィータ達へと、説得を試みた。
だが、当然ながらそれに応じようとはしない。
寧ろその逆……徹底抗戦の姿勢を見せている。
やむを得ないか……二人は、デバイスを構えた。
しかし、その瞬間だった……結界が破壊され、何者かが外部から突入してきた。
ヴォルケンリッター烈火の将―――シグナム。

「シグナム!!」
「すまん、遅くなった……大丈夫か?」
「ああ……!!」
「ユーノ君、クロノ君、手は出さないで!!
私、あの子と1対1だから!!」
「アルフ、私も……」
「ああ……あたしも、あいつにちょいと話がある。」

各々が、己の相手と向き合った。
なのははヴィータと、フェイトはシグナムと、アルフはザフィーラと。
メビウスとダイナも、既に決まっている相手と向き直った。
一切の邪魔は許されない……完全な一対一である。

「……ダイナ。
僕達が勝ったら、話を聞かせてもらうぞ……!!」
「望むところだ……やれるもんならやってみろ!!」

二人が同時に飛び出した。
それを合図に、他の者達も一斉に戦闘を開始する。
ダイナは大きく振り被り、メビウスへと拳を叩き込んだ。
防御越しでも、十分な破壊力がある一撃。
やはり、真正面からまともにぶつかり合うのは不利……ならば、パワー以外の面で挑むのみ。
メビウスはいきなり、切り札の一つを切った。
メビウスブレスから出現する、光の剣―――メビュームブレード。

「セヤァァァッ!!」
「なっ!?」

紙一重で、ダイナはメビウスの一撃を避ける。
当たっていれば、恐らくかなりのダメージになっただろう。
まさかあんな武器を持っているなんて、予想外にも程があった。
人知を超えた光線技や超能力こそ確かにあるものの、ダイナにはメビウスの様な武器は無い。
リーチの差が大きすぎる……距離を離し、光線技メインで挑むしかない。
ダイナは手にエネルギーを収束させ、それを丸ノコ状に変えて投げつけた。

「いけぇっ!!」

ダイナが放った光のカッター―――ダイナスラッシュが、メビウスに迫る。
これに対してメビウスは、回避行動を取らず……真っ直ぐに、真正面から向かっていったのだ。
そして、メビュームブレードで受け止め……切り裂いた。

「斬られた……!?」
「ハァッ!!」
「くっ!!」

メビウスはダイナの目前まで迫り、剣を振り下ろす。
ダイナはとっさにバリアを張り、その一撃を受け止めた。
だが……数多くの怪獣を打ち倒してきたメビウス必殺の刃は、いつまでも受けきれる代物ではなかった。
バリアが砕け散り、ブレードの切っ先がダイナの胴体を掠める。

「ジュアァッ!?」
「セヤァッ!!」

更にメビウスは、追撃に移った。
すぐに腕を振り上げ、逆袈裟にダイナに切りかかる。
ダイナは空へと飛び上がり、これを回避した。
メ部ウスの剣は、一撃貰うだけでもかなりの威力がある。
ダイナは直感的に、その恐るべき事実を理解した。
だが……同時に、今のメビウスの欠点にも気付けた。
先程自分が距離を離したとき、彼はどうして光線を使って攻撃をせず、態々接近戦を仕掛けてきたのか。
その理由は一つしかない……使えなかったからだ。
今のメビウスには、剣による近接攻撃しか攻撃手段は無い。
攻撃するには、どうしても近づかざるを得ない……ならば。

(危険だが……手はある!!)
「なっ!?」
「ジュアァッ!!」

ダイナの体が光に包まれ、全身が赤色に変わる。
これこそが、ダイナが持つ能力―――タイプチェンジの力。
一回の戦闘で一度しか使えないという欠点こそあるものの、その力は大きい。
これまでのダイナは、標準的な能力のフラッシュタイプ。
今の赤いダイナは、強力なパワーを持つ肉弾戦特化タイプ―――ストロングタイプ。
メビウスは、いきなりダイナの姿が変わったことに驚きを隠せなかった。
それもその筈、戦いの最中で姿が変わるウルトラマンなど見たことが無い。
たった一人……自分自身を除いて。

(姿が変わった……僕と同じ……!?)

メビウスはかつての戦いで、新たな力を手にいれた。
仲間との友情の証である赤いファイアーシンボルをその身に纏う、バーニングブレイブの力。
この状態となったメビウスの力は、平常時よりも上。
インペライザーやロベルガーといった強敵さえも、この力の御蔭で打ち破る事が出来た。
恐らく今のダイナは、自分と同じ……パワーアップをしているに違いない。
だが、恐れていては何も出来ない。
メビウスは勢いよく、ダイナにメビュームブレードを振り下ろす……が。

パシッ!!

「え……!?」
「取った……!!」

まさかの、真剣白羽取り。
メビュームブレードは、命中寸前でダイナに受け止められていたのだ。
そしてそのまま、ダイナは全力を込めて腕を振る。
結果……剣は、音を立てて見事にぶち折れた。
ストロングタイプとなったダイナの力に、メビュームブレードはうち負けたのだ。

「ジュァァッ!!」

ダイナが反撃に移る。
エネルギーを左拳に集め、白熱化させる。
そしてそれを、全力でメビウスの胴体に叩きつけた。
ストロングパンチ―――これまでの攻撃の比ではない破壊力を持つ、強烈な拳。
メビウスは大幅に吹っ飛ばされ、後方に立っているビルをぶち抜いた。

「ガハッ……!?」
「ウオオオオオォォォッ!!」

間髪いれず、ダイナが迫る。
ストロングタイプとなったダイナのパワーは、あまりに強大。
立場が逆転した……一撃をもらうだけで、かなりまずい事になる。
すぐに飛び上がってビルから脱出し、ダイナの攻撃を回避する。
だが……それに対し、ダイナは恐るべき反応を取ってきた。

「セヤッ!?」
「ジュアァァァァァッ!!」


―――ウルトラマンが、街を壊してどうすんだよ!!

―――全然……何も守れてねぇじゃねぇかよ!!

メビウスの脳裏を、かつての仲間からぶつけられた言葉が過ぎった。
彼は、地球での最初の戦いの際……敵の攻撃を防ぐ為、ビルを盾にするという行動を取ってしまった。
人間達を守るというのに、人間達の大切なものを壊しては意味が無い。
メビウスにとっては苦い思い出であり、そして戦う意味というものを学んだ、大切な戦いでもあった。
だからそれ以来、敵と戦う際にはなるべく周囲に被害を出さないようにしてきたのだが……
ダイナが取った行動は、それに大きく反するものであった。
あろう事か、その圧倒的パワーで……ビルを持ち上げたのだ。
無論、ダイナとて人々を守るために戦ってきたのだから、これぐらいの事は分かっている。
それにも関わらず、こんな掟破りの暴挙を取った理由……それは、ここが閉鎖結界の中だからである。
ここならば、建造物を破壊しても何ら問題ないからだった。

「まずい、この大きさ相手じゃ……!!」

相手がでかすぎる……回避が間に合わない。
ビルはメビウスごと地面に激突し、粉塵を上げた。
これならば、かなりのダメージがあるに違いない。
恐らくは、倒しきれた筈……そう思っていた、その矢先だった。
ビルをぶち破り、凄まじいスピードで何かが接近してきた。
それは、火の玉―――全身に炎を纏った、メビウスだった。

「ハァァァァァッ!!」
「なっ!?」

メビウスピンキック。
メビウスは地面に激突する寸前に、ビルへと全力で蹴りを叩き込んでいた。
そしてそのまま、高速回転し……メビウスピンキック状態でビルをぶち抜いてきたのだ。
炎を纏った強烈な蹴りが、ダイナの胴体に叩き込まれる。
今度は打って変わって、ダイナが吹っ飛ばされる番であった。

(っ……ビルをぶち抜いた!?
まさか、あんな強引にくるなんて……!!)
(危なかった……あと少し遅かったら、潰されてた!!
あんなとんでもない攻撃をしてくるなんて……)
*1

二人のウルトラマンは、相手の強さに息を呑んだ。
これまで、多くの怪獣や宇宙人等と戦ってきたが……その中でも間違いなく、最上級レベルだろう。
ここまでの状況は、両者共にほぼ互角。
どちらが倒されてもおかしくない……そんな状況であった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ベルカのシステムを積み込んだか……これで、五分五分か。」

結界の外。
黒尽くめの男は、眼前で繰り広げられている戦闘を目視していた。
戦力的にはヴォルケンリッターの圧倒的有利かと思われていたのが、そうもいかなくなった。
なのはとフェイトがカートリッジシステムを用いた為に、戦力差が一気に埋まってしまった。
このままでは、どちらが倒れるかは分からない。
ヴォルケンリッター達は、どうにかして結界を破壊出来ないかと考えている。
だが、一対一という状態に追い込まれたが為に、それは出来なかった。
最後の一人……同じく結界の外にいるシャマルでは、これだけの強度を持つ結界は、破壊できないだろう。
そうなると、彼女は奥の手―――闇の書を使用しての魔術を使わざるをえなくなる。

「まずいな、このままではページを……!?」

男がシャマルの方へと視線を向けた、その瞬間だった。
シャマルの背後に、S2Uを構えたクロノが現れた。
彼はその矛先をシャマルに突きつけている……シャマルが押さえられてしまった。
状況的にも実力的にも、彼女がこの状況から脱出する事は不可能である。
ここで彼女を捕まえられるのはまずい。
すぐさま黒尽くめの男は、介入しようとしたが……その瞬間だった。

ドゴォッ!!

「かはっ……!?」
「えっ……!?」

突然、クロノが隣のビルまで吹っ飛ばされた。
予期せぬ乱入者―――仮面の男の蹴りを、まともに受けたてしまったのだ。
黒尽くめの男は、それを見て笑う。
まさか、彼がこんな形でやってきてくれようとは。
これならば、話は別……やり様は幾らでもある。
一方仮面の男はというと、シャマルの持つ闇の書へとその視線を向けていた。

「あなたは……?」
「使え……闇の書の力を使って、結界を破壊しろ。」
「え、でもあれは……!!」
「使用して減ったページは、また増やせばいい。
仲間がやられてからでは遅い……!!」

仮面の男は、シャマルに闇の書を使用するよう言った。
完成前の闇の書を使う上での欠点。
それは、使用するごとにページを失うという点であった。
だが、今は状況が状況……その代償を覚悟の上で、術を使う以外に道は無い。
シャマルは男の言葉を受け、覚悟を決めた。
闇の書を発動させようとする……が。

「いや……ページを減らす必要は無い……!!」

それよりも早く、黒尽くめの男が動いた。
折角埋まったページを、こんな所で消費させるなんて馬鹿げている。
そんなことより、もっといい手がある……男は結界上空へと、手をかざした。
するとその直後……誰もが予想しえなかった、信じられない事態が起こった。

「行くがいい……ベロクロンよ!!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ガッシャアァァァァァン!!!

「えっ!?」

突然上空から聞こえてきた破砕音に、誰もが動きを止めた。
例えるならば、窓ガラスを叩き割った様な音。
窓ガラス自体は、戦いの影響で周辺の建物のが何枚も砕け散っている。
だが……それが割れたのとは、決定的に違う要素があった。
音の大きさが、全員に聞こえるほどであったという点である。
皆が上空を眺める。
すると……信じられない光景が、そこにはあった。

「空が……!!」
「割れた……!?」

文字通りに、空が割れていたのだ。
割れた空の先からは、赤い異空間がその姿を覗かせている。
空間転移術とか、そんな類の術ではない。
これは……そんなレベルを超えている。

「何だよ、これ……?」
「……まさか、そんな……!!」
「メビウス……?」

ダイナは、メビウスの様子がおかしい事に気付いた。
異常事態を目にしたとはいえ、この驚き方は普通じゃない。
まさか、この現象の正体を知っているのではないだろうか。
すぐにダイナは、事態について問い質そうとするが……次の瞬間だった。
空の割れ目から、咆哮を轟かせ……巨大な生物が出現した。
全身に、まるで珊瑚の様な赤い突起物を生やした怪獣。
暗黒の悪魔が生み出した、超獣と呼ばれる生物の一匹―――ミサイル超獣ベロクロン。
メビウスはその姿を見て、言葉を失った。
嫌な予感が的中してしまった……あの悪魔がこの世界に来ている可能性は、勿論考えていた。
だが、それにしたって……復活するのが早すぎる。

「ヤプール……!!」

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最終更新:2007年10月29日 12:36

*1 やっぱり……強い……!!