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小夜×和美.

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
人のうわさに戸は立てられぬ、と昔の人はよく言った。
いつの時代でも人は他人の噂話に眼がないわけで。
ゆえにその手の話題を取り扱う新聞やら雑誌は引っ張りだこになる。
が、しかし。
うわさを広められる側からすれば、そういったことをする連中は厄介このうえないわけで。
自然、そういうことを仕事にする人々は、知らず知らずのうちに誰かの恨みを買ってしまうことも多いのである。
――――たとえ、いわれのない逆恨みであっても。

「――――にししっ、見つけた見つけた・・・ついに抑えたよ~」

「あううっ、朝倉さん、危ないですよぉ~」

「何言ってんの小夜君! 恐喝なんて卑怯な真似してる連中をのさばらせないためにも、ここは意地の見せ所だよ!」

麻帆良学園内の、とある人気のない一角。
その物陰に身を潜める和美と、その横でおろおろしながら浮遊する小夜。
和美の構えたカメラの先には、数人の男子生徒。
しかも、真ん中で他の生徒に囲まれている生徒は涙目になりながら、サイフから取り出した現金を、おそらくは元締めであろう生徒に渡している。
どこから誰がどう見ても、恐喝の現行犯である。
その様子を、和美は次々とカメラに収めていく。
小夜はといえば、相手にバレやしないかとハラハラしながら様子を見守っているだけ、と少々頼りない有様だ。
そして、恐喝をした男子グループと被害にあった生徒が立ち去っていくのを見送り、どっと息をつく小夜。

「はぁぁ~~~~っ・・・・・・怖かった・・・・・・」

「あはは、ごめんね小夜君、大丈夫?」

「は、はい~・・・・・・。 で、でも今度からはこんな危ないことしないでくださいね?!」

「はいはい、りょーかいりょーかい」

「ぜ、絶対聞いてないでしょ朝倉さぁんっ!」

目的を達成した充実感に浸りながらひらひらと手を振る和美と、心臓が止まりそうになった思いからの忠告を聞いてもらえずに涙眼になる小夜。
なんか普通逆のパターンな気がするが、このふたりはこれがデフォルトであるので問題ない。
しかし今回は、おそらくアンケートをとれば圧倒的多数が小夜のほうを支持するであろう状況ではある。
いくらなんでも、恐喝の現場に乗り込んで、あまつさえそれを写真に収めるなどというのは危険極まりない。
万が一バレてしまったらただでは済まされなかったはずだ。
しかも相手は男子、こっちは女子一人(小夜は幽霊なのでカウントされない)。
もし捕まったら何をされるか――――小夜からすればひやひやするどころではなかっただろう。
だが和美はそんな小夜の心配もどこ吹く風といった様子で、自分のスクープを眺めてご満悦の様子だ。

「ふふふ・・・あいつらがやってきた悪行もこれまで! この『麻帆良パパラッチ』朝倉様をなめんなよ!」

そういって高笑いしつつ帰還する朝倉。
やってることはどちらかといえば正しいことなのだが、なんだか悪の秘密結社のダメ幹部のように見えてしまうのはなぜだろう。
しかし、そんな意気揚々とした和美とはうらはらに、小夜の表情は暗い。

確かにこの取材で抑えた証拠を公表すれば、あの生徒達ももうあんな恐喝行為はできないだろう。
だがしかし、恐喝を行うような生徒達がそう簡単に引き下がるだろうか?
逆恨みするくらいならまだいい、もし朝倉さんに直接手を出してきたりしたら――――――――

「・・・・・・くん? 小夜君!」

「うひゃぁっ?! ななな、なんですかっ、朝倉さんっ!?」

「いや、なんかぼーっとしてたからってだけなんだけど・・・大丈夫?」

そういって苦笑いする和美。
小夜が大丈夫です、と答えると、そっか、といってまたにこやかに笑いながら歩み始めた。
その様子からして、和美は小夜の思うような心配はまったく皆無のようだ。
それもそうだろう、彼女は自分が『正しい』と思うことを迷いなくやっているのだから。

――――でも、だから僕は、朝倉さんが心配なんです。

声には出せないけれど、心の中で、小夜は思う。
いつもアワアワ言っているせいで忘れられがちだが、伊達に60年も幽霊としていたわけではない。
本来なら正しいことをしているはずの人間が、間違っている人間に敗れる様子だって、何度も見てきた。
自分にまったく気付いてくれなかった人間達のときでさえ、自分の無力さに心が痛んだ。
ましてや、自分の存在に気付いて、友達になってくれた和美がそんな境遇に立たされたとき、自分は助けられるのだろうか。

小夜の胸に渦巻く不安に気付くことなく、和美はあくまで揚々と、これから書くすっぱ抜き記事の構成を考えていた。



数日後、和美のすっぱ抜き記事はめでたく麻帆スポの一面を飾り、それが動かぬ証拠となって恐喝グループは一網打尽にお縄となった。
和美自身もこの恐喝グループに手を焼いていた教師達や新聞部部長からお褒めの言葉を頂いたのみならず、なんと被害にあっていた生徒達からも感謝されるという栄誉に預かった。
世の中の悪をすっぱ抜く、という夢を持つ和美にとってこれ以上の喜びはなかったろう。
にこにこしながら廊下を歩く和美、その隣で不安げに漂う小夜。

「くぅ~~~っ、やっぱ気分いいね、誰かから感謝されるとさ」

「そ、そうですね・・・」

「・・・? どしたのさ、小夜君。 なんか暗いけど・・・」

「えっ・・・、いえ、そんなことないですよ?」

「そう? ならいいんだけどさ」

怪訝な表情を残しながらも廊下を進む和美。
しかし、『大丈夫』とは答えたものの、小夜の表情は暗いまま。
確かに和美の活躍で恐喝グループは摘発され、和美が恐喝グループから被害を被っていた生徒達から感謝されるのは当然だろう。
だが、恐喝グループの側からすればどうか?
あの、和美が恐喝現場を押さえた日に感じた不安が、雲がわくように小夜の胸の中で広がっていく。

――――大丈夫、大丈夫・・・だって、朝倉さんは正しいことをしたんだから、悪いことがおきるようなことは、何も・・・・・・

自分に言い聞かせるように、心の中でつぶやく小夜。
しかし、その願いはむなしくも踏みにじられることとなる。

「――――随分ご機嫌じゃねえか、卑怯者」

「・・・・・・! 何よ、あんた達」

曲がり角からぬっと現れた、数人の男子生徒。
うち何人かは、紛れもなく、数日前の恐喝現場にいた生徒だった。
どう考えても危険な状況に身構えつつ、抜かりのない眼で相手を睨む和美。
だが、男子生徒達は下卑た笑いを浮かべたまま、互いに目配せをしている。

「だから、何って聞いてんのよ! 用がないならどいてくれる!?」

痺れを切らした和美が、男子生徒達を怒鳴りつけた。
すると、男子生徒達は一斉に笑い声をあげ、もっとも和美の近くにいた生徒がにやつきながら和美に罵声を浴びせ始めた。

「ハァ? 用がないならどけ、だ? 冗談もほどほどにしろよ、この卑怯者!」

「だから、誰が卑怯者なのよ! 恐喝なんかやってたあんた達こそよっぽど卑怯者でしょうが!」

和美から発せられる正論、だがその正論を嘲笑い、男子生徒は罵倒をまくし立てる。

「うるせぇ! てめぇみてえな嫌われ者がコソコソかぎまわるほうがよっぽどうっとうしいんだよ! そのくせちょっとおだてられていい気になりやがって、お前、自分がなんて言われてんのか知らねえんだろ?」

「なっ――――――――!?」

「やっぱ知らねえのか、教えてやるよ――――“ストーカー”、“お節介”、あああと“覗き魔”だったか? 誰もテメェのやったことを喜んだりしてねぇんだよ。 それがたまたま俺らのときだけうまくいったからって喜んでんじゃ――――」

そこまで言った瞬間、どこからともなく飛来した椅子が、猛スピードで男子生徒の顔面に直撃した。

「え・・・・・・?」

何が起こったのか理解できず、呆気に取られる和美。
同じように立ち尽くしていた他の男子生徒達を、さらに異常が襲う。

「なっ・・・・・・う、うわっ、なんだコレ!?」

突如、男子生徒達の真横に位置する窓ガラスが何の前触れもなく砕け散り、その破片が地に落ちることなく男子生徒達に襲い掛かる。
さらに、最初に男子生徒を襲った椅子のみならず、さらに多くの椅子が宙に浮き、今にも男子生徒達を襲おうというそぶりを見せた。

「ひっ・・・・・・に、逃げろぉぉぉ!!」

そう叫んだ一人が走り出すが早いか、われ先に逃げ出す男子生徒達。
ひとり取り残された和美は、ただ呆然と立ち尽くしていた。

「な、何だったの・・・・・・アレ」

和美がポツリとつぶやいた、そのとき。

「――――大丈夫ですか? 朝倉さん」

「あ――――小夜、くん・・・・・・?」

今まで消えていた気配が戻ったことに気付き、振り返った和美が見たもの。
それは、薄青く輝く燐光を身にまとい、普段の様子からは想像もできないような、凛とした表情で厳然と存在する小夜の姿だった。
そして、小夜が静かに息を吐くと、宙を待っていたガラス片や椅子が、静かに地に下りた。

「すいません、ちょっと手ごろな椅子を見つけるのに手間取っちゃいました――――怪我とかしてないですか?」

そういって、和美に微笑みかける小夜。
その笑顔を見た瞬間、和美の顔が一気にゆがみ、和美は大声で泣き出した。

「うぅっ・・・ふぐっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あ、朝倉さん、泣かないで・・・どこか痛いんですか?!」

慌てて和美をなだめる小夜、しかし和美の泣き声はやまない。

「わっ、私、間違ったことっ、してるつもり、ないの、にっ・・・私っ、嫌われ者だって、ストーカーだ、って、あぐっ、うああぁぁぁぁ・・・・・・・っ!」

そこまでしか言うことができずに、泣きじゃくる和美。
もう誰も信じない、誰も信じられない――――そんな気持ちさえ浮かんできた和美を、突然、温かい光が取り囲んだ。
まるでその光が和美の涙を吸い取っていくかのように、傷ついた和美の心が癒されていく。

「え・・・・・・こ、これって――――――――?」

思わず涙に濡れた顔をあげ、周囲を見渡す和美。
すると――――

「・・・大丈夫ですよ、朝倉さん」

「さ、小夜、君・・・・・・?」

和美の目の前にいるのは、穏やかに微笑む小夜。
涙の跡が残る和美の顔の高さまで降り、和美の眼をまっすぐに見つめる。

「もしさっきみたいに、間違ったことで朝倉さんを傷つける奴がいたら――――僕が、貴方を守ります。 もし世界中の人が敵になったとしても、僕は貴方のそばにいます。 だから――――だから、泣かないでください、朝倉さんは、一人じゃありません」

そう言って、もう一度、静かに微笑む小夜。
その笑顔に満たされたのか、涙の残る顔で微笑み、和美はぽつりとつぶやいた。

「ありがとう・・・あったかいよ、小夜君――――」

その澄んだ笑みに、微笑を返しながら、小夜は思う。

――――僕は、もう死んでしまっているから、貴方を幸せにはできません。
だけど、僕は貴方を傷つける人から、必ず貴方を守ります。
どんなことがあっても、誰が貴方を裏切っても、僕はずっと貴方のそばにいます。
だから――――――――だから、泣かないで。
僕の、誰よりも大切で、誰よりも愛しい、僕の――――僕の、大好きな人。

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