システム解析と制御理論

線形ダイナミカルシステムの表現

スタティックシステム:出力が現在の入力のみで決まる。
ダイナミカルシステム:出力が現在と過去の入力で決まる。
  →時間の関数(状態変数)の微分方程式(状態方程式)による表現(状態を扱うところが現代的)
  ←古典的制御理論とは,システムをブラックボックス化して,系の入出力関係のみ(つまり周波数応答)を見る方法。
Ex. RLC回路
入力:電源電圧e(t)
出力:出力電圧v(t)・電流i(t)
Ex. マス-バネ-ダンパ系
入力:外力f(t)
出力:変位x(t)
RLC回路やMKD系はLTIシステム(Linear Time Invariant; 線形時不変系)の例でもある。
Def. 線形ダイナミカルシステムの状態方程式
入力:u(t)
出力:y(t)
定数係数多項式:p(x),q(x)
p \left( \frac{d}{dt} \right)u(t) = q \left( \frac{d}{dt} \right)y(t)
Prop. 重ね合わせ
線形システムは重ね合わせが利く。
p \left( \frac{d}{dt} \right)u_1(t) = q \left( \frac{d}{dt} \right)y_1(t)
p \left( \frac{d}{dt} \right)u_2(t) = q \left( \frac{d}{dt} \right)y_2(t)
  \Rightarrow p \left( \frac{d}{dt} \right)(a u_1(t)+b u_2(t)) = q \left( \frac{d}{dt} \right)(a y_1(t)+b y_2(t))
Ex. 非線形システム(水位計)
入力:流入量 q(t)
出力:水位 h(t)
A \frac{dh(t)}{dt} + k \sqrt{h(t)} = q(t)
  → 1次テイラー近似によって,差分を入出力とした線形システムに落とし込む。
Def. 因果性(causality)
出力が現在と過去の入力のみで決まるシステム。(つまり未来に依らない。)
定理により,系のインパルス応答が因果性信号になることと同値。
Def. 時不変(Time Invariant)
入力u(t)に対する出力y(t)とする。
時間をシフトした入力u(t+T)に対する出力がy(t+T)となるとき,系は時不変であるという。
Def. LTI; Linear Time Invariant
線形時不変ダイナミカルシステムのこと。
単に線形システムといえばこいつのことを指す。
注. 線形システムの厳密な定義は以下の3つの性質による
ゼロ状態線形性,ゼロ入力線形性,可分性

s領域

ブロック線図
(→ [G1] → [G2] →)
  → G1(s) G2(s)
インパルス応答
デルタ関数を入力したときの応答
伝達関数G(s)は、インパルス応答でもある。
g(t) := \mathcal{L}^{-1}[G(s) 1(s)] = \mathcal{L}^{-1}[G(s)]
Th. コンボリューション定理
(LTIにおいて)入力u(t)に対する応答は、インパルス応答との畳み込みで与えられる。
(証明はいろいろ。ここではラプラス変換によるもの。)
y(t) := \mathcal{L}^{-1}[G(s) u(s)] = \int_0^t g(\tau) u(t-\tau) d\tau
ステップ応答
ステップ入力に対する応答
伝達関数G(s)に1/sをかけて逆ラプラス変換すればよい。
y(t) := \mathcal{L}^{-1}[G(s) \frac{1}{s}]

FB系の特性

感度関数

周波数領域

定常応答
本来 t=0 で初期状態全て 0 が前提だった。
t=t0で初期状態を与えると、応答もt0だけずれる。
y(t) = \int_0^{t-t_0} g(\tau)u(t-\tau)d\tau
ただし、g(t)はインパルス応答
t0→-∞とした応答を定常応答という。
y(t) = \int_0^\infty g(\tau)u(t-\tau)d\tau
周波数応答
入力:u(t) := e^{j \omega t} に対する定常応答
出力:
y(t) = \int_0^\infty g(\tau) e^{j\omega(t-\tau)}d\tau
   = e^{j \omega t} \int_0^\infty g(\tau) e^{-j\omega \tau}d\tau
   = u(t) G(j\omega)
従って周波数伝達関数は伝達関数にjωを突っ込んだものになる。
用語
ゲイン:K = |G(j \omega)|
位相差:\phi = \arg G(j \omega) = \tan^{-1} \frac{\Im G(j \omega)}{\Re G(j \omega)}
ベクトル軌跡
G(jω)を複素平面上にプロットしたもの。
1. 始点(ω=0)終点(ω=∞)
2. 経路の向き
3. 軸と交わる周波数
Bode線図
横軸は周波数ωの片対数(rad/s)
1. ゲイン線図 ω-|G(jω)| 単位 dB (20 log10)
2. 位相線図 ω-arg G(jω) 単位 deg
ボード線図は、
結合系が和になる。
逆システムが横軸対称になる。
という点が優れている。

線形系の安定性

安定:ノイズが入っても元に戻る。
不安定:ノイズが入ったときに、それがどんどん増幅される。
Def. 内部安定性
ゼロ入力(u≡0)→ 出力はゼロに収束
Def. BIBO安定
入力が有界かつ因果性 → 出力も有界
Th. 
線形系において、以下の条件は同値
1. BIBO安定
2. ステップ応答が収束する。(絶対可積分)
3. 全ての極が左半平面にある。(極の実部が負) 

FB系の安定性

FB系のモデル
r → (r-y) → [K] → u → (u+d) → [P] → y
  r:目標信号
  u:コントローラの出力
  d:雑音信号
  y:制御対象の出力
FB系の内部安定性
ru,ry,du,dyの4つの伝達関数がすべて安定
Th. 特性多項式
P(s),K(s)を次のように多項式の既約分数で表す。
P(s) := \frac{N_P(s)}{D_P(s)}, \, K(s) := \frac{N_K(s)}{D_K(s)}
このとき、次で定義されるΦを 特性多項式という。
\phi(s) := N_P(s)N_K(s) + D_P(s)D_K(s)
以下は同値
1. FB系は内部安定
2. 4つの伝達関数が全て安定(極が左半平面にある。)
3. Φの極が左半平面にある。
Cor. FB系の内部安定
P(s)K(s)に不安定な極零相殺がないとき、以下は同値
1. FB系は内部安定
2. Gr→yが安定
3. 1+P(s)K(s)の零点がすべて左半平面にある。
Lem. 不安定な極零相殺
P(s)K(s)のあいだに不安定な極の相殺があるときは、系は内部安定にならない。
Th. Nykistの安定性判別法
開ループ伝達関数 L(s) := P(s)K(s) とおく。
0. L(s)に不安定な極零相殺がないことを確認する。
1. L(jω)のベクトル軌跡を描く。(これを実軸対称にしたものをナイキスト軌跡という。)
2. ナイキスト軌跡が -1+j0 の周りを時計回りに回る回数をNとする。
3. L(s)の不安定な極の数をΠとする。
4. N+Π=0 のときFB系は安定である。
Cor. Nykist簡易版
0'. L(s)の極が全て左半平面にあることを確認する。
1'. L(jω)のベクトル軌跡を描く。
2'. ベクトル軌跡が -1+j0 を常に左手にみるとき、FB系は内部安定
Def. ゲイン余裕
L(jω)のベクトル軌跡において、負の実軸との交点Pとする。
Pにおける周波数を位相交差周波数ωpcといい、以下を満たす。
\arg L(j \omega_{pc}) = -180 \deg
またこのとき、ゲイン余裕GMを以下で定義する。
\mathrm{GM} := \frac{1}{\overline{\mathrm{OP}}}
ただし、通常はこれを dB で表すので、さらに 20log をかけて使う。
位相余裕
L(jω)のベクトル軌跡において、単位円との交点Gとする。
Gにおける周波数をゲイン交差周波数ωgcといい、以下を満たす。
|L(j \oemga_{gc})|=1
またこのとき、位相余裕PMを以下で定義する。
\mathrm{PM} := 180 + \arg j \omega_{gc}

(一般論)非線型系の安定性

Lyapnov安定性
系を適当に平行移動することで、一般性を失うことなく原点を平衡点に制限できる。
以下は、原点における安定性を述べている。
{}^\forall \epsilon>0 \, {}^\exists \delta>0 \, {}^\forall t \geq 0 \mbox{ s.t. } \| x(0) \| < \delta \Rightarrow \| x(t) \| < \epsilon
漸近安定
系は原点で安定であるとする。このとき、さらに強い条件を定めることができる。
{}^\exists \eta \mbox{ s.t. } \| x(0) \| < \eta \Rightarrow \lim_{t \to \infty } x(t) =0
Ex. ただの安定と漸近安定の違い
ある平衡点の周りを振動し続けるものは安定だが、漸近安定でない。
減衰振動のように、最終的に振幅が0に収束するものは漸近安定である。
  ←このことを「摩擦がある」という。
Th. Lyapnovの安定定理
「システム解析」で習うのは、この定理を線形系に適用した系
つぎの標準形で与えられた線形系において,
\begin{cases} \frac{d \mathbf{x}}{dt} = A \mathbf{x} + B u \\ \mathbf{y}=C \mathbf{x}
以下が成り立つ。
Aの固有値が全て負 ⇒ (大域的)漸近安定
Aの固有値が全て非正 ⇒ (大域的)Lyapunov安定

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最終更新:2009年07月21日 16:25
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