曲線論

平面曲線

平面曲線の種類
なめらかな曲線,閉曲線,自己交叉のある曲線,区分的になめらかな曲線
1周してもとの点に戻るなめらかな曲線を閉曲線という。
自己交叉のない閉曲線を単純閉曲線という。
  →平面の単純閉曲線は,平面をその内部と外部の2つの領域に分ける。(Jordanの曲線定理)
単純閉曲線上の任意の2点を結ぶ線分が曲線の境界か内部に含まれるとき,卵形線という。
曲線の表示
1. グラフによる表示 y=f(x)
  微分可能な関数のグラフだけではあらわせない曲線がある。
2. 陰関数表示 F(x,y)=0
  Fがなめらかなとき,陰関数定理により,局所的に自己交叉のない関数のグラフとして表すことができる。
3. 媒介変数表示(助変数,パラメータ,径数表示)γ(t)=(x(t),y(t))
  x'(t0)≠0のとき,逆関数定理により,x(t0)の近傍で逆関数g(x)=tがとれて,
  これをy(t)に合成した関数をf(x):=y(g(x))とおけば,グラフ表示になる。
Ex. 楕円
陰関数表示
\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}-1=0
パラメータ表示
\begin{cases} x(t)=a \cos t \\ y(t)=b \sin t \end{cases}
Ex. レムニスケート
原点に特異点(速度が0になる点)をもつ。
陰関数表示
(x^2+y^2)^2-a^2(x^2-y^2)=0
パラメータ表示
\begin{cases} x(t)=\frac{a \cos t}{1+\sin^2 t} \\ \frac{a \sin t \cos t}{1+\sin^2 t} \end{cases}
速度ベクトルと弧長
\dot{\gamma}(t) := (\dot{x}(t),\dot{y}(t))
\mathcal{L}[\gamma] := \int_a^b \sqrt{\dot{x}^2+\dot{y}^2} dt = \int_\alpha^\beta \sqrt{1+(y'(x))^2} dx
速度ベクトルは接ベクトルである。
弧長パラメータ
\gamma(t) \quad t\in[a,b]に対し,
s(t) := \int_a^t |\dot{\gamma} (\tau)| d\tauとおくと,
逆関数定理により逆関数t=t(s)が存在して,弧長パラメータ表示が得られる。
\gamma(s) := \gamma(t(s))
このとき特に,次が成り立つ。
\gamma'(s) := \frac{d \gamma}{d s} = \frac{\gamma}{dt}\frac{dt}{ds}=\frac{\dot{\gamma}(t)}{|\dot{\gamma}(t)|}
\therefore |\gamma'(s)|=1
単位接ベクトル・法ベクトル
弧長パラメータの性質と,速度ベクトルの性質から,単位接ベクトルが以下で与えられることが分かる。
\mathbf{e}(s) := \gamma'(s) = (x'(s),y'(s))
さらに,これに直交するベクトルとして単位法ベクトルが以下で与えられることが分かる。
\mathbf{n}(s) := (-y'(s),x'(s))
この法ベクトルは,進行方向左手に伸びる。
曲率
弧長パラメータの性質
\gamma'(s) \dot \gamma'(s) = |\gamma'(s)|^2 = 1
これをもう一度微分することによって,加速度ベクトルは接ベクトルと直交することが分かる。
\gamma''(s) \gamma'(s) = 0
従って,加速度ベクトルは法ベクトルのκ(s)倍である。このκ(s)を曲率という。
\gamma''(s) = \kappa(s) \mathbf{n}(s)
法ベクトルの向きから,κ>0のとき左曲がりとなる。
曲率円
γ(s)で2次の接触をする円を,曲率円という。
曲率円の半径は曲率の逆数で与えられ,その中心は法ベクトル方向に曲率半径だけ進んだところである。
座標変換(微分同相写像)
φ:D→R2全単射が微分可能で,その逆写像もまた微分可能であるとき,φをdiffeo.という。
diffeoによって,n次の接触(n階微分係数まで一致しているような接触)は保たれる。
Frenetの公式
弧長パラメータ表示において,接ベクトル・法ベクトルの間には以下の関係がある。
\begin{cases} \mathbf{e}'(s)=\kappa(s)\mathbf{n}(s) \\ \mathbf{n}'(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}(s)\end{cases}
この関係式は,次の2つの定理を証明するのに使われる。
曲線論の基本定理
区間[0,l]で定義されたなめらかな関数 κ(s) に対して,sを弧長とし κ(s)を曲率とする平面曲率が存在する。
しかも,このような曲線は回転と平行移動で写りあうものを除いて一意である。
卵形線の4頂点定理(1909,Mukhopadhyaya)
曲率κ(s)が極大値・極小値をとる点を頂点という。
円でない卵形線には少なくとも4つの頂点が存在する。

閉曲線

正則ホモトピー同値
「速度ベクトルが消えない」ように,一方の閉曲線から他方の閉曲線に連続変形できること。
回転数 rotation index
以下の量は整数。右辺の積分は全曲率という。
i[\gamma] := \frac{1}{s \pi}\int_0^l \kappa(s)ds
任意の閉曲線は回転数で分類できる。(Whitney)
回転数が等しい ⇔ 正則ホモトピー同値
単純閉曲線の回転数は±1

空間曲線

動標構の導入
\gamma(t) := (x(t),y(t),z(t))
以下では,\dot{\gamma}(t) \neq 0 を仮定する。
弧長パラメータ s(t) := \int_a^t |\dot{\gamma}(\tau)|d\tau = \int_a^t \sqrt{\dot{x}(\tau)^2+\dot{y}(\tau)^2+\dot{z}(\tau)^2}d\tau
単位接ベクトル \mathbf{e}(s) := \gamma'(s)
主法線ベクトル \mathbf{n}(s) := \frac{\mathbf{e}'(s)}{|\mathbf{e}(s)|}
曲率(eとnの関係) \mathbf{e}'(s)=\kappa(s)\mathbf{n}(s)
従法線ベクトル \mathbf{b}(s) := \mathbf{e}(s) \times \mathbf{n}(s)
捩率(bとnの関係) \tau(s) := -\mathbf{b}'(s) \dot \mathbf{n}(s)
Frenet-Serretの公式
e,n,bはR3の正規直交基底になるから,R3の任意の元はこれらの線形結合で与えられる。
この事実を用いて,n'とb'をe,n,bで表すことができる(FS公式)
フレーム \mathcal{F} = (\mathbf{e}(s),\mathbf{n}(s),\mathbf{b}(s))
\frac{d \mathcal{F}}{ds} = \mathcal{F} \Omega
\Omega = \begin{pmatrix} 0 & -\kappa & 0 \\ \kappa & 0 -\tau \\ 0 & \tau & 0 \end{pmatrix}
曲線論の基本定理
区間(a,b)上の微分可能関数κ(s)>0,τ(s)が与えられたとき,
sを弧長パラメータとし,κを曲率,τを捩率とする曲線γ(s)が存在する。
しかもそのような曲線は向きを保つ合同変換を除いて一意である。
[証明]は,FS公式とODEの初期値問題の解の一意存在定理による。
結び目
空間の単純閉曲線のこと。
結び目は,正則変形によって円周にすることが必ずしも可能ではない。
また,全曲率との関係が重要である。

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最終更新:2009年07月30日 00:09
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