京太郎「ドーモ、よろしくお願いします」

咲「お願いします」

淡「どーも」

セーラ「よろしくなー」


 この戦いは負けられない。

 いや、そもそも負けていい戦いなど一つもない。

 だから……言うならば、これは――――。

 絶対に、勝ちたい戦いであった。


 男子麻雀でのランキングに比べて、自分の活躍は今一つ。

 タイトルの一つでもとってもおかしくないのではないか――最初はそう言われていたのを覚えている。

 次はやれる。次なら大丈夫。

 そんな期待と慰めも言葉も、やがては嘲笑と諦めの言葉になった。


 須賀プロなら、どうせ爆死するさ。

 一体今回は、どんな爆死を見せてくれるのか。

 ネット上では――そんな風に嘯かれている。


京太郎(準備はした……! 対策も考えた……! 牌譜も見た……!)

京太郎(運なんて、不確かなものには頼らない……そいつは蓋を開けるまでは分からない)

京太郎(俺は――持てる力を全て出した。全てを積み上げて、用意をした)

京太郎(だから……今日ばっかりは、絶対に負けない……!)


 これだから男子プロはとか……。

 所詮、ただの凡人ではどうにもならないとか……。

 結局結果なんて決まっているとか……。

 そんな言葉が、溢れている。あまりに多すぎて、それは当然だと信じられているほど。

 それが真実かなんてのは、京太郎には興味もない。

 自分一人に覆せるなんて思い上がってもいなければ、そこまで自惚れでもない。

 でも……だからと言って。


京太郎(俺は……勝ちを諦めたくない……!)

京太郎(どこにでもいる俺みたいな麻雀を打っている人間に……)

京太郎(少しでも、勇気をやりたい……!)

京太郎(俺は……負ける運命なんて、結果が決まっているなんて)

京太郎(絶対に信じない……!)

京太郎(麻雀は楽しいんだって、少しでも……そう思ってもらえるように……)

京太郎(俺は、全力で戦う……!)


 特別な能力を持たずとも、高い打点を誇る江口セーラ。

 間違いなく日本で五指に入るほどの魔物的プレーヤー、大星淡。

 そして――。


京太郎(俺がこっちに引き戻した……引き込んじまった、咲)

京太郎(お前が今麻雀を楽しんでるんなら、それでいい……本当にうれしい)

京太郎(だから――そんなお前だから)

京太郎(俺は全力で戦って、タイトルを取りたいって思うんだ……!)




京太郎(――ッ)

京太郎(配牌5シャンテン……これが、大星の力か)

京太郎(実際相手にしてみると……そのプレッシャーってのがよくわかる)

京太郎(咲の奴、よくこんなのの相手を3年もやり続けたな……)

京太郎(正直、尊敬するぜ……マジな話に……お前は凄い)


 大星淡を相手にしたときの咲の行動はシンプルだ。

 カン材が集まる能力を生かしての速攻。鳴きを利用しての順番飛ばし。

 嶺上牌を有効牌として使える咲は、他の人間よりも余程早くテンパイできる。

 ツモる回数が多く、また、嶺上が有効牌になるのなら――鳴くたびにシャンテン数が下がるのは道理。

 ダブリーモードの大星淡と有効牌を喰い合ってしまうという危険こそあったものの、

 それでも、他者よりは圧倒的に有利であったのだ。


 ……だけどこれは、京太郎にはできない。

 京太郎はただの人であるからだ。


 その身には異能などない。運などない。

 だから、それ以外の部分を貪欲に喰い続けた。巨大な肉食昆虫のように。

 そうして今、この場に居る。

 京太郎はプロとして、この場に立っている。


京太郎(だけど――気付いてるのか、大星淡)

京太郎(自分以外の配牌を5シャンテン以下にするって事は……)

京太郎(つまり、お前は俺にとっても安全圏を作ってるってことになる)

京太郎(お前以外が5シャンテンと分かってしまえば――)

京太郎(序盤に切られる不要牌から、その牌の周辺はテンパイに向いてないって分かるんだ)

京太郎(これは他の人間がテンパイしたときには……重要な読みの材料になる)

京太郎(確かに手が進まない。お前が誰よりも早く、テンパイするだろう)

京太郎(でもそれ以外は――ただの麻雀と変わらない)

京太郎(むしろ、手の遅さの代わりにそういう『確実な判断材料』を貰える……俺にとっても安全域だ)


 静かに、牙を研ぐ。

 飛びかからんと、両足に力を込める。


京太郎(それに……悪いけどよ)

京太郎(本当に我ながら情けない話で、どうにもならねーんだけど……)

京太郎(配牌が5シャンテン以下だなんてのは、早々珍しくない話なんだよ)

京太郎(運が細いっつーか、なんつーかさ)

京太郎(確かに全局そうなるってのは、俺でもあり得ないし面倒だけど……)

京太郎(それでも、お前から得られるものに比べたら安いッ!)


 この場での面子のスタイルを見る。

 江口セーラは典型的なメンゼン型。注意すべきは高打点。

 打点が高くなるというのはメンゼン型の特徴であるが、彼女はそれだけではない。

 速度も速く、打点も伴う。

 勿論、副露主体の人間に比べては遅いが……それでもメンゼン型とは思えないほど早い。

 そのツモの力。彼女は、引きが強いのだ。

 運なんてものはあり得ないと笑われるかもしれないが、この説明が京太郎にはしっくりくる。

 ドデカイ一発を直接喰らうのは恐ろしい。

 そう言う意味で、淡がくれた『5シャンテン以下の安全域』というのは、京太郎にとってもありがたい。

 自らの被弾する確率を、下げられるのだから。


京太郎(んで……大星淡)

京太郎(普通に打ってる時は……それこそ、普通の相手と打っている事に変わらない)

京太郎(アイツに対する読みは――普段誰かに対してするのと同じ)

京太郎(じゃあ、ないぜ?)


 淡の絶対安全圏の作用中の序盤、たとえば誰かが③筒を切ったとして。

 要するに単純に言うなら、その③筒に繋がる形は殆ど存在していない。

 それよりも、まだ変化が見込める形が別にあるのだ。だから切られた。

 ツモれば面子になる――①②や②④はなく、ツモれば塔子(①③や②③や③④や③⑤)となる牌もない。

 それは別の人間か、それとも山の中か。そのあたりが確定する。

 普通の麻雀ならば、たとえば最終形を判断・役の決め打ちなど……そんな意味で、この読みが意味をなさない場合もある。

 だけれども、ここは違う。


 大星淡が『誰もの配牌を5シャンテン以下にする』。

 そして、大星淡だけは『通常通りに手を進められる』。


 そんな条件を、いい加減皆が知っているのだ。

 ならば皆、まずは手成りでも真っ直ぐに先を目指す。

 或いは、今の京太郎のように――オリも考えた手作りをするか。

 そう、判断すべき材料が限られるのだ。ほかならぬ彼女のオカルトにより。


京太郎(例えば、団体戦みたいに……自分が打つ前から点差があって、どうしても和了しなければならない場合)

京太郎(そんなときなら、皆が一直線に和了を狙うだろう)

京太郎(だから、お前は攻撃を行えた。すんなりと、自分の優位を証明できた)

京太郎(でも……別に今は、無理して戦わなくてもいいんだぜ?)

京太郎(少なくとも俺は、そうさせて貰う)

京太郎(一口に5シャンテン以下って言っても、その手牌の顔は違う)

京太郎(リーのみ、平和、イーペーコー……そんな感じそこから目指しやすいもの/目指しにくいものがある)

京太郎(俺は、勝負を絞る)

京太郎(お前がツモっちまうなら仕方ないとしても、不用意な直撃はされない)

京太郎(俺は、進むべき配牌のときにだけ進むんだ……)


 タンヤオ、役牌、混一色。

 そんなオリにも迎える、回して打てる「役の形」が現れたときにだけ、京太郎は攻撃に向かう。

 勿論、先ほど自分が言った通り――。

 咲もセーラも、京太郎と同様のことを行う事だってあり得る。


 だけれども――スタイルがあった。

 江口セーラはメンゼン型。こいつが一番、分かりやすい。

 彼女は自分のポリシーを歪めない。そのまま進んでいく。

 使えるものは何でも使う、いわば『無形の形』を持つ京太郎とは違うのだ。

 そしてそれはここで、足かせとなる。


 警戒すべきは、やはり宮永咲。

 彼女は変幻自在だ。嶺上開花を多用するが、別にそれしか使えない訳でもない。

 場に合わせて打ち方を変えるぐらい、彼女にとってはあまりにも容易い事。

 でも――彼女にも差異がある。

 彼女は、その有効牌を引き入れるという特性が故、手が進むのが早い。

 仮に大星の独壇場となり得そうなとき……それを止められるのは自分しかいないとなったら。

 彼女は一体、どうするだろうか。


京太郎(勝つつもりなら……止められる人間が止めるしかない)

京太郎(大星の力の所為で、大物手は作りにくい状況)

京太郎(だから……余計な点差を付けられる前に、被害を小さくしないとならない)

京太郎(そこで……できるのがお前しかいないなら――)

京太郎(勝つためには、攻めていくしかない……そう考えるだろう?)


 攻めに向かえば、それだけ放銃確率も増える。

 だからこの場で、自分だけが和了に向かうと言うのは不利過ぎる。

 咲とてそれは分かっているだろう。

 だけども、淡を止めなければ負けてしまうのである。

 そして、止められる可能性が高いのは自分。切符を持っているのは自分。

 その切符を――果たしていつまで我慢できる?


京太郎(これは……我慢比べだ)

京太郎(俺は自分好みの最終形が見込めるか、本当のギリギリまで攻めるつもりは絶対にない)

京太郎(俺がベタオリすれば、和了できるのは3人だけ……)

京太郎(江口プロだって同じ事を考える可能性もある……性格的にやらないだろうけどな)

京太郎(どうする?)

京太郎(俺が止まっている間にも、お前が俺に合わせて止まってる間にも……大星は差を離すんだ)

京太郎(どこまで耐えきれる? 黙って、そいつを眺められる?)


 咲は我慢強い人間だ。

 京太郎はそう思っている。プラマイゼロの一件からして、そうである。

 だけれども彼女は、麻雀の――己が勝つ事の楽しさを知った。

 心底全て、思うがままに力を振るって――楽しんでいた。

 そんな飴を一度与えられた状態の人間に、どこまで耐えられる?


京太郎(天江衣にしても、大星淡にしても……オカルト持ちってのは、どっか傲慢だ)

京太郎(自分の力を使いたくて仕方ないって、結局のところ芯ではそう思ってる)

京太郎(普通はする必要がないところにも突っ込む)

京太郎(慢心か、傲慢かは知らないけど……自分の道を外れようとしない)

京太郎(だから――俺は賭けるぜ)

京太郎(我慢比べには、俺が勝つ方にな……!)


 京太郎は弱い。自覚している。

 だから、京太郎は拘らない。全ての手段を、勝ちに向ける。


 捨て牌から、他家全員の手牌を演算する。

 残りの山に眠る枚数を考える。

 切り出し位置から、相手の手牌を類推する。

 視点移動。ツモ速度。発汗。口調や表情に現れる心情を測定する。

 それまでの傾向・人間性から、相手の進もうとしている意図を推理する。


 それほどまでに京太郎は貪欲であった。

 勝利のために、どれほどまでも凶暴になれた。自分自身の頭が悲鳴を上げる事も厭わなかった。

 そんな膨大な情報を一身に受けて肥大化する京太郎は、まさに一つの巨大な昆虫である。

 勝利のためには、機械じみた昆虫のような冷静さを発揮するのだ。


京太郎(こういう戦略は……汚いか?)

京太郎(でも俺は、麻雀が弱い。ツキも半端なら、愛されてもいない)

京太郎(だから、使えるものはなんでも使わせて貰う……!)

京太郎(俺は……お前と、全力で戦いたいんだ……!)

京太郎(これは、このスタイルは……俺の人生の結晶だ……!)


 果たして、程なくして咲は動いた。淡との削り合い。

 セーラは動かない。動いているのだが、足が遅く被弾をする。

 京太郎は、淡にツモで削られこそすれ、然したる被弾はなかった。

 時々、安い手で早めに和了した。まだ、トップを狙える圏内だった。


京太郎(――ッ)

京太郎(来たか、ダブリー)

京太郎(でも……知ってる。お前は、丸裸だ。大星淡)


 山の角までカンができない。

 そして嶺上牌はツモ切りされる。

 カンをするまで和了する事はないと言ってよく、その際の和了牌は誰かの余剰牌。

 カンした牌が裏ドラとなって必ず4枚乗る。

 ロンで和了する。ツモ和了はしない。


 分かりやすく特徴を纏めたら、こんなところか。

 これから、京太郎は判断を行う。


 まず一つ。ツモ切りされる嶺上牌は咲の有効牌である。

 つまり逆説的に言うなら、宮永咲の手牌の予測ができれば、大星淡が切り出す牌も分かる。


 裏ドラが乗るということは、その表示牌が1枚山に埋まっているという事。

 どれが裏ドラとなるのかは不明だが――4枚も、大星淡が持つと決まっているのだ。

 その牌の周辺では手が作れない。(淡が④筒を4枚持っているなら、②③④や③④⑤、④⑤⑥、④④の形はない)

 なら、邪魔だとして切り落とされる可能性が高い。

 ただし、既にターツとなっているところであるなら、そこは切り出されない。

 だけれども、単純に考えて、周囲のくっ付くべき牌が4枚ないのである。

 それが塔子になる可能性と言うのは、他のものに比べて低い。

 場に切り出される牌から、淡の手の内――裏ドラを推測するのも、不可能ではない。

 ……とは言ってもこれは、普段なら考慮するにも能わない、あまりにも馬鹿らしいほどのレアケースである。


 だけれども――京太郎は考える。

 あらゆる条件を計算する。あらゆるパターンを考える。あらゆる思考法を止めない。

 そんな事をいくら考えたとて、本来なら、淡は止められないであろう。

 それこそ、かつてのインターハイの如く、淡の支配を無力化できない限りどうにもならない。

 だけどここには、咲がいる。

 彼女は鳴ける。鳴いて、淡のツモ順をずらす事が出来る。

 彼女とて、王牌の支配者だ。淡の下に於かれるものではない。

 だから、咲がいるなら――淡は絶対無敵ではなくなる。


 その支配者たちの争い。どちらが優勢であるかの戦い。

 どちらも人を超えて、牌に愛されたものだ。

 須賀京太郎の、ちっぽけな個人の力などたかが知れている。

 間違いなく、一対一では勝利できない。

 一対一なら……。


京太郎(お前らの力の張り合い……正面からのぶつかり合い)

京太郎(そこを――俺は、横合いから殴りつける)

京太郎(俺みたいな人間が勝つのは、それしかない)

京太郎(つっても……)

京太郎(それでも笑うほど馬鹿らしい状況じゃないと、大星淡に俺は勝てない)

京太郎(計算がしっかり噛み合って、読みが全部当たって、おまけに俺にとって都合がいい状況)

京太郎(そんなもの、来るはずがないって誰もが言うだろう)

京太郎(でも俺は――賭ける。俺のこれまでと、これからを賭ける)

京太郎(賭けなければ、そもそも何も変わらない……どうにもならない)

京太郎(だから、賭けるしかないんだ……俺は全力で、その馬鹿を極める)

京太郎(神様の力なんていらない……俺にはオカルトも運もない)

京太郎(でも……俺が前向きに進んだのなら、俺が全力を尽くしたのなら……!)

京太郎(『ネットにぶつかって弾かれたボールの行方』はもう、運でしかないんだ……!)


 そして、果たして……。


京太郎「――ロン!」



  ◇  ◆  ◇



引用:【大逆転】須賀プロ、大星プロを降しタイトル【三倍満直撃】


409 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:magicSSSS
見事に狙い撃ってたな……感心した

410 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Kananyanya
魔物相手に勝つとか、感動したし!勇気づけられたし!

411 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KUGYUUUU
報われてよかった……

412 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HAgi4424
自分の事以上に、嬉しいです

413 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TOMOkiii
「ドーモ、アワイ=サン。オカルトスレイヤーです」
「ドーモ、スガ=サン。オオホシ=アワイです」
「オカルト殺すべし。慈悲はない」
「アイエエエエエエエエ!?サンバイマン!?サンバイマンナンデ!?」
「ジュスイ=ジツ!サヨナラ!」

414 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:MIHspring
ホモは執念深い(おめでとう須賀プロ!)

415 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:96chaDoRA
テレビの前でね、おねーちゃんと応援した甲斐がありました!

416 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:NGLwaKiwi
Occult Slayer! Congratulation! :)

417 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HOKU10ki
おかげで持病が治りました

418 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:BurnKoke4
おめでと……



 タイトルを取ったあと、すぐに祝賀会となった。

 今まで知り合った人のほとんどが、顔を出してくれたのだ。

 おめでとうと、誰もが祝福していた。



415 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ShingekiBIG
ちょーかっこよかったよー

416 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KO1SAIKYo9
自分の分もやって貰った気がして嬉しいわ



 京太郎の和了宣言の後、大星淡は呆然とした表情を向けた後、言った。


淡『次は――次は、絶対に負けない! 絶対絶対倒す! 百倍で返す!』


 涙ながらの、言葉だった。

 心底悔しそうにしていた。彼女も全力で当たってくれたのだろう。

 その全力の淡に勝利できたことが、嬉しい。



417 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SMSMHIMEko
嬉しかよ。そんで、悔しか。自分もああしたかった

418 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:PeachMMM
いつものネタとは別に、真面目に面白かったっす



セーラ『ドデカイ手を直撃って……なんかお株を奪われた気分や』

セーラ『ま、次に会う時はこうもいかへんで? そんときはまた、楽しく打とうな』


 江口セーラはそう言っていた。

 爽やかな笑い。ただし、ちょっと遠巻き。

 さっぱりしている風であって、純情であるらしい。


419 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Guito893
まあ、おめでとうとだけ言っておく


420 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:NOyoNOyo3
感動したのよー



 それから、咲と会話をした。

 二人っきり、終わった卓で。


咲『タイトル……おめでとう、京ちゃん』

咲『どうだった? 麻雀、楽しかった?』

咲『えっ……どうしてって、最近の京ちゃん辛そうだったから……』

咲『そっか、楽しかったか……。うん、よかった』

咲『アハハ、そうだね。京ちゃんってば現金だなぁ』

咲『きっとさ、京ちゃんの頑張りを神様が認めてくれたんだよ』

咲『うん……じゃあ、また今度』



421 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:MegeBara3
……全然喜べんわ、こんなの

422 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ChachaNO
妬ましいんですねわかります。同士!

423 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:LegenDA30
あ、気付いちゃった側?

424 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:niwakaOOO
どしたー?

425 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KAJYUYU3
まさか……

426 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:MegeBara3
>>422 ちゃうわ、アホ
>>424 宮永プロの点数

427 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Terr3Terr3
それだけじゃない

三つ目のドラが須賀プロに乗ったカン
嶺上牌ですぐに追加のカンせず、手を回した
前々の局のカンは4槓子で局を流すためだけじゃなく、洗牌してもある程度牌が纏まるようにするため(ホンイツ用)

428 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ChaliceH1
そんなバカな……

429 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TAKEMEEE
いくらなんでも、魔王を過大評価し過ぎ

430 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:mairuMMM
参るわ……

431 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:LeangleM1
せっかくオカルトスレイヤーのレアカードが出ると思ったのに……



京太郎(……)


 ネットの掲示板を見ていたのは、生の声が聞きたかったから。

 自分の思いは少しでも届いたのだろうか。

 誰かに勇気を与えられたのだろうか。

 少しでも、麻雀に希望を持ってもらえたのだろうか。

 そんなのを、フィルターなしで感じたかったから。


京太郎(凡人の……)

京太郎(……人間の強さ、か)

京太郎(ああ……分かった)

京太郎(人間はな――弱いんだよ)


 スマートフォンを、置いた。

 掌を見た。あの時の感覚がまだ、残っている。

 熱が冷めきれないといった、己の指先。

 それを封じ込めるように、握りつぶす。


京太郎(どうしてだよ……)

京太郎(どうしてそんな事、したんだよ……)

京太郎(咲……)


 それから、思いっきり拳を壁に叩きつける。

 隣の住人には悪いが、我慢して貰おう。

 壁にいたゴキブリが、丁度良くコナゴナになる。


京太郎(どうしてだなんて……分かりきってるだろ?)

京太郎(俺が――まだ、アイツの領域に至ってないからだ……!)

京太郎(俺はあいつを利用したつもりで、実際はあいつの掌の上だった……)

京太郎(『釈迦の手のひらを飛びまわる孫悟空』でしかなかったんだ)


 ギリ、と奥歯を噛み締める。

 勝ち取ったと思った勝利はその実、自分のものではなかった。

 なんて――言うなら、そもそもすべてが自分の実力ではなかったのだが……。

 それでもまだ、それを計算したのは自分だと思った。

 だから、それは自分の行ったうちだと――思っていた。

 それが、甘かったのだ。


京太郎(許さねえ……絶対に許さねえ)

京太郎(次こそは、アイツにそんな手心なんて加えさせない……!)

京太郎(そんな余裕がないくらいまで、追い詰めてやる)

京太郎(情けない、今日みたいな中途半端な読みじゃない……)

京太郎(もっと完全に、ちゃんと読み切る! アイツを上回る計算をする!)

京太郎(次は――そうだ。次こそは、絶対に負けない)

京太郎(覚悟しとけよ?)

京太郎(次は、自分の実力で勝つ。自分の読みで勝つ)

京太郎(そんで今日のカップを突き返して、『全部御見通しだったんだコラ』って耳元で怒鳴ってやる)

京太郎(ついでにデコピンの一発や二発も覚悟してもらうぜ……咲!)

京太郎(テレビの前で恥ずかしい台詞とかも言わしてやる! 覚悟しとけよ、オイ!)


 悔しいけど、これは実力だった。

 本気で悔しい。本気で悲しい。本気で無念だ。

 だけれども――腐りはしまい。

 だったらその分、高みを目指せばいいだけだ。真実に向かおうとすればいいだけだ。

 そうして向かい続けてきたからこそ、今の自分はここに居る。

 嘆いて、それを止めはしない。このまま進んで、意地でも今度はちゃんと打たせるようにしてやる。

 下手に悔やむよりも、すべき事はそれだ。



 で……すべき事と言えば。

 勢い余って素手で殺したゴキブリどうしよう。汚い。


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【大星淡の好感度が上昇しました】

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最終更新:2013年09月23日 00:28