【ぽんこつ】月曜いやでしょうもういいでしょう実況スレ【ミンチ】

24 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SEraEgchi
今週の行き先はどこなんかな

25 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:magicSSSS
二人の所縁の地か……というと

26 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Awaawaii
長野なのは確定的に明らかでしょ!

27 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KAJYUYU3
ああ、宮永プロも元は長野出身なのか

28 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TOMOkiii
!?>長野
ちょっとサイン貰ってくる

29 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:PeachMMM
いや、生じゃないっす。これ録画っす
今行ってもクワガタムシぐらいしかいないっす

30 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SBRSBRKH
すばら!?

31 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HOKU10ki
それで、行き先は……

32 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:LegenDA30
なんで奈良!?

33 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:niwakaOOO
奈良だって!?

34 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:42noMount
サイン貰ってくる!

35 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ShingekiBIG
おねがい!

36 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ramenMGDV
だからこれ生じゃナイです

37 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ATGheroA
奈良とかまさか過ぎんねん!




100 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ANGELAKO
スポンサー……

101 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Awaawaii
スポンサーだか何だか知らないけど、なにこの偉そうな金髪

102 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ChachaNO
スポンサーってこうもでばってくるもんなのかのぅ

103 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:96chaDoRA
このおもちはできそこないだね

104 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TOMOkiii
へっ

105 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:RosenMaid
なにやってんだ…

106 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ChaliceH1
やけに機嫌がいいと思ったら……

107 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HAgi4424
ああ、なるほど

108 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:g.kasumi3
麻雀プロが二人揃ったと言ったら…

109 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KO1SAIKYo9
それは当然……

110 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:BurnKoke4
ボウリング(ボーリングに非ず。こちらの書き方では掘削になる)

111 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Awaawaii
食べ歩く!

112 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:magicSSSS
仮面ライダーごっこ!

114 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SAeKOshi
料理を作る!

115 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KAJYUYU3
……ここは素直に麻雀と言え

116 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:shrutupyou
違ったよ!

117 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:LeangleM1
なんで早食いなんですか……?

118 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:magicSSSS
大惨事の予感しかしない

119 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:MIHspring
無茶苦茶過ぎるスポンサーだよ…

120 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:cyborg008ch
滅茶苦茶ですよー

121 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:PeachMMM
ミンチさんお疲れっす

122 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TOMOkiii
ごめん……須賀プロ

123 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:RosenMaid
すまん

124 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ChaliceH1
ごめんよ……

125 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HAgi4424
申し訳ありません

126 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:mairuMMM
(おっ、社員か?)




221 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Ka2dondon
で、旅館か

222 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ANGELAKO
ここってまさか……

223 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:BurnKoke4
あ、これは確…

224 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:42noMount
えええええええええええええええええええ!?

225 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SEraEgchi
なんや、須賀プロの知り合いか

226 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:HOKU10ki
そりゃあ…宮永プロと因縁やな

227 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SBRSBRKH
なるほど…知り合いがいる地ということで、所縁のある土地ということなのですね!すばらっ!

228 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ARKWbjDrK
たしか、松実プロの妹さんやねぇ~

229 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:cyborg008ch
言われてみたら…どことなく、ですよー

230 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Kananyanya
それにしても、なんか二人とも仲良さそうだし!

231 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:96chaDoRA
な、仲が良さそうとか……えへへ

232 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:MOKOTANN
どうせ、宿泊ついでに下の世話でもしてるんでしょ
頭軽そうだし、都合よく使われてるんじゃないの。死ねビッチとヤリチン

233 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:42noMount
お前……! どんな人かも知らない癖に、そういう言い方はやめろ!
自分は顔を出さないでいいからって……
そんな風に、テレビに映った人に酷い言葉を吐くなんて、最低の人間だぞ!

234 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:PeachMMM
どうでもいいから集中っす
この流れなら……

235 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TAKEMEEE
かーらーのー

236 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Daruidaly
麻雀の…

237 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:ShingekiBIG
時間だよー

238 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:SMSMHIMEko
やけん、調教の時間よ

239 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:KO1SAIKYo9
須賀プロの顔……

240 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:Guito893
ああ、獰猛な顔だ

242 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:TAKEMEEE
かーらーのー

243 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:NGLwaKiwi
CounterATTACK デ Finish 死ンダァァアアアアアアアァアアア

244 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:niwakaOOO
ああ……もう……

245 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:cyborg008ch
ミンチよりひでーのですよー

246 名前:名無しさんリーチ 投稿日:20XX/XX/XX(X) XX:XX:XX.XX ID:sinSinMen
痛くなければ覚えませぬ


  ◇  ◆  ◇


京太郎「……えー、今週もこの時間です」

京太郎「月曜いやでしょうもういいでしょう」

京太郎「月曜日が来てほしくないって、皆思うよな? これはそんな――」

照「――思わない」

京太郎「……」

京太郎「……宮永プロ。その心は」

照「ジャンプが発売するから」

京太郎「あっ、はい」

京太郎「……」

京太郎「うん、本当はな……」

京太郎「月曜日を迎える前にちょっとでも明るい気持ちになって欲しい……そんな番組なんだけどさ」

京太郎「俺と一緒に憂鬱な気持ちを共有しよう……皆おんなじ気持ちです」

京太郎「仲間って素晴らしいねって番組だよ……これもう」

京太郎「最近真面目に収録が恐い、須賀京太郎プロと――」

照「――須賀プロがどうしてそこまでいやがるのか分からない、宮永照プロです」

照「でも、いい番組だと思うけど……」

京太郎「……理由は?」

照「楽屋にいっぱいお菓子がある」

照「それに……」

照「鞄にちょっと入れて持って帰っても、怒られないんだよ?」

京太郎「……」

照「知らなかった?」


 心なしかドヤ顔の宮永照プロ。

 仕方ないなぁ、というような歳上ぶった態度。いや確かに歳上だけど。

 だけどさ……。


京太郎「くっそ、なんで俺が常識知らずみたいに言われなくちゃならないんだよぉぉぉぉお!!」


照「カルシウム……ビスコ食べる?」

京太郎「ポケットで割れてるし、食べかけじゃねーか!」

照「ちゃんと新品の方渡すけど……いらない?」

京太郎「ああもう、いりませんってば」

照「本当に?」

京太郎「いらないですって」

照「むぅ……」

照「今なら、この数の2倍でも3倍でも100倍でもあげる」

京太郎「100倍って……そんなに持ってるんすか……?」

京太郎「前々そうは見えないけど」

照「欲しいって言うなら見せる」

京太郎「いや……」

照「欲しいって言うなら」

京太郎「あの……」

照「どうするの? いる?」

京太郎「……」


京太郎「いや……」

京太郎「本当にいらないんだけど、テレビ的には『いる』と言わざるを得ないこの状況が憎い」

京太郎「下さいませ」

照「うん。待ってて」


 そう頷いて、ポケットにビスコをしまう宮永(姉)プロ。

 何が起きるかと思えば……。

 ドグシャァァァァァアアアアン、と。

 ああ、そうなるって思ってた。

 大体、知ってた。


京太郎「ポケットを叩いとる場合かァアアアアアア――――ッ」

京太郎「何やってるんですか、宮永プロッ!」

京太郎「行動はともかく訳を言えェェェエ――――ッ!」

照「……」

京太郎「ああ、もう……ポケットの中が粉でいっぱいだよ……あー」

京太郎「折角綺麗な服なのに……ああ、もう」

京太郎「ふー、ふー」

京太郎「ふー、ふー……ああ、取れない」

京太郎「何考えてたんですか……?」

照「……」

照「細かく砕いて、100倍の数ですあーげたって言おうと思った」

照「思ったら……」

京太郎「思ったら……?」

照「新品を入れたポケットと、食べかけの方とを間違えた」

京太郎「ぬぁぁぁぁぁあああ……ああ、もう……」

照「ごめんなさい」

京太郎「しかもなんで普段アレなのに謝るのはちゃんと出来るんだよぉぉぉぉお!」


※スタッフが責任をもって処理しました


京太郎「……で、その格好は?」

照「ジャージ。高校のときの」

京太郎「ああ……その……物持ちが……いいん、ですね……うん」

京太郎「ハハ……凄いなぁ……アハハ」

照「自慢のひとつだから」

京太郎「……俺、こんな純粋な目をした人に残酷な事言えない」

照「……?」

京太郎「そのまま純粋でいて下さい」


京太郎「えっと」

京太郎「……で、あ、はい」

京太郎「『そんな須賀プロのリフレッシュの為に』」

京太郎「『須賀プロと宮永照プロの所縁の地への慰安を計画しました』」

京太郎「『なんとスポンサー付きなので、豪華!』」

京太郎「『思う存分、楽しんで来て下さい』……と」

京太郎「ああ、もう嫌な予感しかしない……」

京太郎「この間もそんな事言って……」

京太郎「『どこの地方の雪が一番南まで運べるのか』とか」

京太郎「そんなアホな企画あったじゃないかよ……」

京太郎「しかも、『各出発地から水になるまでにSAにいくつ達せたかがポイント』とか」

京太郎「『なおSAごとの名物・銘菓を食べ終わるまで出発不可能』とか」

京太郎「結局『雪がどこまで南に行けるか』関係なかったじゃないっすか、コレ!」

照「あれと同じ感じのやるの?」

京太郎「やりたくないよ! やりたくないですよ」

照「楽しかったけどなぁ……」

京太郎「そりゃあ……あなたは、満腹になったら助手席で寝てるだけでしたもんね」

照「……免許持ってないから、しょうがない」

照「でもその分、食べる方で貢献できたはず」

京太郎「したいことをするのと、したくないことをするのって別物ですよね……」

照「……須賀プロ」

照「『したくない』って後ろ向きじゃなくて、『したい』って小さな事でも前向きに思う努力した方が……」

照「きっと人生を楽しく過ごせるから。勿体ないよ」

京太郎「……なまじいいこと言ってるから、尚更腹立たしい」

照「……?」

京太郎「しかもこの純粋な目……デコピンするのも躊躇われる」

京太郎「……はぁ」

京太郎「宮永プロ……そのままの純粋な宮永プロで居てください」

照「……?」

照「須賀プロがそう言うなら、わかったけど」


京太郎「で、あーわかった。乗るって! 乗りますって!」

照「……広い」

照「どこ座ろうかな」

京太郎「ほら、時々急に酔うんだからここに座って下さい」

京太郎「横にいるから、気分悪くなりそうなら早めに声をかけて下さいよ?」

照「うん、わかった」


京太郎「えーっと……」

京太郎「『お楽しみ頂くために、バスの窓は全カーテンのフルスモーク』」

京太郎「『更には快適に過ごして貰うよう』」

京太郎「『ウォシュレット付きのトイレ、最高級のベッド、冷蔵庫等を完備』」

京太郎「『ただし、この間の事があって……SAにはいい思いでがないでしょうから』」

京太郎「『SAには一切止まりません。着いてからのお楽しみ』」

照「……残念」

京太郎「明らかに金使う方向間違えてるだろ……」


京太郎「しっかし、俺と宮永プロ所縁の地ってどこなんだろう」

照「……長野?」

照「須賀プロは、長野出身だったよね」

京太郎「はい。あれ……言いましたっけ?」

照「知り合いが持ってた雑誌に書いてあった」

照「私も長野出身だから、覚えてたんだ」

京太郎「へー」

京太郎「あれ? でも、白糸台って……」

照「東京。でも、その前は長野だった」

京太郎「なるほど……」

京太郎「じゃあ、長野か」

照「長野か……」


京太郎「……長くないっすか?」

照「ふもっふ? ふもっ」

京太郎「あ、ほら。食べながら喋ったら零れちゃいますって」

京太郎「あー、吹くから動かないで下さい」

照「ん」

照「ありがとう」


京太郎「おかしい……明らかに長い」

京太郎「そして肩が重い」

照「うーん……雷……木……神憑り的な幸運……」

照「うー」

京太郎「……仕方ないか」

京太郎「起こすのも、気の毒だしな……」

京太郎「あー……俺も眠くなってきた……」


 ――その後、六時間。


京太郎「ん……着いたのか?」

京太郎「宮永プロ、着きましたよ」

照「むぁ……」

京太郎「涎出てますよ、宮永プロ」

照「ん……」

京太郎「ほら、こっち向いて下さい」

照「ん、ありがとう……」


京太郎「あー、腰が疲れた」

京太郎「座りながら寝るのって、やたら疲れるんだよなぁ」

照「判る」

照「首が痛い」

京太郎「そりゃあ、ずっと俺によっかかってましたからね」

照「――」

京太郎「なんていうかびっくりしましたよ。いきなり糸が切れたみたいに寝始めるから……」

京太郎「って、どうしました?」

照「……」

照「なんでもない」

京太郎「はぁ」


京太郎「さて、懐かしき我が長野」

京太郎「帰ってきた――――って、あれ、ここどこだ?」

京太郎「ちょっと見ないうちに変わったなぁ……」

照「……奈良」

京太郎「へ?」

照「奈良。あそこの看板に書いてある」

京太郎「……マジだ」

京太郎「所縁の地じゃねーだろ! そりゃあ、時間だって掛かる訳だよ!」

照「茶粥楽しみ」

照「鹿せんべい食べたい」

京太郎「ありゃ、鹿の食べ物であって人間用じゃないです」

照「むぅ」

照「でも、鹿が食べられるなら人間が食べても大丈夫なはず」

京太郎「食べれるけど美味しくないですよ?」

京太郎「修学旅行で食べた奴いましたけど、『味がしない』つってました」

照「残念……」


透華「お待ちしておりましたわ、須賀プロ! 宮永プロ!」

京太郎「……あー」

照「誰?」

京太郎「ご覧の通りのスポンサーで」

京太郎「俺の……知り合いというか師匠というか憧れの人の雇い主です」

照「……なるほど」

照(憧れの人……いるんだ)

京太郎「ん、今何か……」

照「なんでもない」

京太郎「そっすか?」

照「なんでもない」

透華「むきー! 私のことを無視して話を進めないで下さいまし!」

京太郎「……あ、すみません」


京太郎「えーと……その節は、どうもっす」

透華「別に気にする事ではありませんわ」

京太郎「今日は……どうして、スポンサーを?」

透華「さあ……理由などどうでもいいでしょう?」

透華「なんにしても……宅のハギヨシの友人が、苦節の末に闘っている」

透華「色々と目立っていることは気に入らないとしても……」

透華「知らぬ仲でもありませんし、その手助けをしたいと思うのは当然でしょう?」

照(ハギヨシ……。……ヨシ子? ヨシ江?)

京太郎「……で、本音は?」

透華「うっ……」

京太郎「本音は?」

透華「この番組に出て、誰よりも目立ちたい……ですわっ」

京太郎「ですよねー」

京太郎(ま、この人はどっちも本音なんだろうけど)


透華「それでは早速ならの地に来たということ……」

透華「そして、麻雀プロが二人もいるということで……」

透華「ぴったりなものを用意させていただきましたわ!」

透華「ハギヨシ!」

透華「……には内緒でしたわね」

透華「それでは、準備をしてくださいまし!」


京太郎「あー、今日はハギヨシさんはいなかったのか」

京太郎「どうせなら、久し振りに会いたかったんだけどな……」

照「……」

照「……どんな人?」

京太郎「いや、なんていうか……こう、本当に凄い人で!」

京太郎「まさに非の打ち所がない完璧で瀟洒で有能で、親切で優しくて面倒見がよくて」

京太郎「こう、今の俺があるのもあの人のおかげというか……」

京太郎「あの人が俺を(立派な)大人にしてくれたというか……一人前の男にしてくれたというか」

京太郎「なんていうか……最高の――」

照「……」

京太郎「――パーフェクトな執事なんですよ」

照「……」

照「……」

照「……?」

照「……!?」

照(執事って、男のはず……)

照(それなのに、こんなに目を輝かせて……男にしてくれたとか……)

照(……どういう意味だろう?)

照(うん……調べてみよう)


透華「準備が整いましたわー!」

京太郎「あ、今行きまーす!」


透華「それでは! 気を取り直して!」

透華「折角の奈良、折角の麻雀プロ二人ということなので……」

透華「ふさわしいものを用意させていただきましたわ!」

京太郎「……」

照「……おでん?」

透華「ええ!」

透華「この手のバラエティーには必需品と、伺いましたわ!」

京太郎「おい誰だ教えた奴」

透華「この熱々おでんを使って、これから早食い競争をしていただきますわ!」

京太郎「奈良とか関係ないですし、麻雀プロも関係ないっすよね!?」

京太郎「せめて茶粥にするとか、そういうご当地ネタは……」

透華「ええい、なんやかんやと!」

透華「プロとはプロフェッショナル……」

透華「つまり、これぐらいは容易くやってのけなければならないのではなくて?」

京太郎「麻雀プロなんですけど、それは……」

透華「ちなみに」

透華「試しに行ってみたところ、ハギヨシはきっちりと完遂しましたわ」

京太郎「…やっぱりハギヨシさんは凄い。改めてそう思った」

照「……!」


透華「それでは早速、始めますわ」

京太郎「いや、まだ誰もやるとは……」

透華「あら? 宮永プロは卓に着いてますけど」

京太郎「何しちゃってるんだ、あの人……」

照「……負けない」

京太郎「しかも無駄にやる気に溢れてるし……」

透華「それで、どういたしますの?」

透華「いたいけな宮永プロひとり、熱々おでんの生け贄に差し出して……」

京太郎「用意した張本人に言われたくないんですけど……」

京太郎「……」

京太郎「やります。やりますよ!」


照「いただきます」

京太郎「ちょ、そんな勢いよく行くと――――」

照「―――」

照「!?」

照「……!? ……!? ……!?」

照「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ」

照「……!! ……!! ……!!」

京太郎「ああ、宮永プロが死んだ!」

京太郎「宮永プロ! 宮永照さん! 照さん!」

京太郎「我慢しなくてもいいです! 無理しなくていいんで、吐き出して下さい!」

京太郎「ほら、ぺっして! ぺっ!」

透華「……ふむ」

透華「これは所謂、宮永プロの貴重な産卵シーンという奴ですわね」

京太郎「おいカメラ止めろぉぉぉお!」

京太郎「スタッフー! スタッフー! スタッフさーん!」

京太郎「氷水持ってきて下さい! 急いで! お願いします!」


       ・

       ・

       ・


照「あひゅい」

京太郎「あー、火傷しちゃってますね」

京太郎「とりあえず……アイスティーしかなかったんで、これで」

照「んっ……」

照「……」

京太郎「……あ、カメラ間に合ったんで安心して下さい」

照「ん」

照「……勿体ないことをした。おでん」

京太郎「そうですねぇ……」

照「ふーふーしてくれたら、食べるけど……」

京太郎「無理しなくていいですよ、わざわざ」

照「……」

京太郎「後で俺が責任持って、無駄にせずに食べるんで」

照「……っ!?」

照「……。……。…………」

照「ま、まぁ……それならそれで」

京太郎「はい」


透華「まあ、これはこれでよしとしますわ」

京太郎「そうして下さい」

京太郎「俺はともかく、宮永プロが可哀想です」

照「……むぅ」

透華「まあ、この先は大丈夫ですわ」

透華「ひとまずは――――宿に移動しましょうか」

京太郎「車ですか? テントですか? レンジャー宜しく山林で野宿とか……」

京太郎「あ……いつも通り、せめて宮永プロの分はちゃんとしたものにして下さいよ」

透華「言われなくとも、そのつもりですわっ!」

透華「というか……そここそが、あなた方二人の所縁の地」

透華「まさか、自分たちの所縁の場所があばら家とでも思っていて?」

照「ああ、確かに。それはあり得ない」

京太郎「いや……まあ、そもそも……」

京太郎「俺たち二人に共通で、どんな所縁があるのか不明なんですが……」

透華「それは、着いてからのお楽しみですわ!」

透華「それじゃあ、バスへ乗りなさいな」

透華「『やらせ』は抜き」

透華「キッチリ、その場所まではブラインド状態で連れていきますわ」

京太郎「なんなんだ……」


京太郎「なぜ目隠しをされているのか」

京太郎「マジわっかんねー。(目隠しのせいで何も見えなくて)わっかんねー」

照「……っ」

京太郎「――っと、大丈夫っすか?」

京太郎「倒れたら危ないんで、掴まってて下さい」

照「ん」

透華「……よく、目隠ししたまま他人の手を引いて歩けますわね?」

京太郎「いや……音とか、振動とか、空気の流れとかがありますし」

京太郎「何となく、人やものの動きぐらいはわかりますよ」

透華「……」

透華「ハギヨシにも劣らず、大概貴方も目茶苦茶ですわ……」

照(……ん)

照(手を握られると落ち着く)


透華「それでは、到着しましたので目隠しを外して下さいまし」

京太郎「ふぅ……」

照「……むぅ」

京太郎(あれ、まさかここは……?)

透華「それでは……どうして、二人がこの場にいるのか」

透華「その理由となる方ですわ!」

玄「ど、どうも」

玄「松実玄ですっ! 宜しくお願いします――って、あれ?」

玄「須賀プロと、宮永プロ?」


透華「そう、この方こそが我々の因縁の相手なのですわっ!」

京太郎「色々ツッコミたい」

透華「どうぞ、許可しますわ」

京太郎「今の反応から考えるに、俺たちの事を知らせてませんね?」

透華「ええ。突撃企画ですわ!」

京太郎「偉い迷惑だなぁ、おい!」

玄「べ、別にそんなことないよ?」

玄「タイトルおめでとうって、直接言いたかったから……」

京太郎「いい人すぎて、本当に申し訳ない」


京太郎「いや、それにしても本当に申し訳ないっす」

京太郎「うちの番組とスポンサーが……」

玄「いえいえ、そんなことは……」

玄「私が、旅館の宣伝になったらいいなぁって思ってオッケーしちゃったから……」

玄「逆に、それのせいでこんな遠いところまで……申し訳ないかなって」

京太郎「そんなことないですよ」

京太郎「こちらこそ、なんというか……」


透華「まったく……いつまで謝りあってるんですの」

照「……。……むぅ」

透華「?」

透華「胸に、何か付いてらした?」

照「……逆」


京太郎「……で」

京太郎「積もる話はともかくとして」

京太郎「どうして松実さんと俺たちに因縁が……?」

透華「説明しましょう!」

透華「まず、須賀プロとは今のように知り合いですわね?」

京太郎「ええ。一応は……」

玄「応援してる、一ファンです!」

京太郎「マジっすか?」

京太郎「うわー、なんというか……嬉しいような恥ずかしいような……」

京太郎「じゃあ、後でよろしければサインでも……」

玄「本当!?」

透華「私を置いて話をしないで下さいましっ!」

照「……」


京太郎「で、俺が松実さんと知り合いなのはいいとして……」

京太郎「他にはどんな?」

透華「実は、宮永プロと松実玄さんにも因縁がありますの」

透華「宮永プロが高校三年生、最後のインターハイ……」

透華「そこで、宮永プロに痛烈な直撃を決めたのが、こちらの松実さんなのですわっ」

玄「えーっと……あの、その、えっとその節はどうも」

玄「私ひとりの力じゃ、なかったんだけど……」

照「それでも、あれは見事だった」

京太郎「なるほど……」

透華「そして!」

京太郎「まだあるんだ……」

透華「実は私もこの方と対局したことがあるんですの」

京太郎「……マジっすか」

透華「マジっ! それも大マジですわっ!」

透華「あれはインターハイ前の練習試合でしたっけ」

玄「その節は大変失礼をば……」


京太郎「あー」

京太郎「なるほど、確かに因縁というか……縁がありますね」

透華「だから、実に丁度よいという感じですわ」

京太郎「なるほど……それで昔を思い出して、みたいな」

透華「ええ。昔を思い出して……」

玄「!」

照「かーらーのー」

玄「かーらーのー」

京太郎「あっ」

透華「――麻雀ですわっ!」

京太郎「……やっぱりか」


透華「特に、後に聞いたところ……」

透華「当時の異名が『阿知賀のドラゴンロード』」

透華「龍の名を関するものとして、負けられませんとも」

透華「松実玄――龍としての頂上決戦を申し込みますわっ」

玄「えええええええええええええええええええええ!?」

玄「そ、そんな事言われても……」


京太郎「なるほど。つまりは私怨……と」

透華「そんな簡単で、平凡な言葉で片付けないで下さいまし!」

透華「頂上疾走、バトルファイト、名誉をかけた聖戦など――」

京太郎「あ、はい」

京太郎「じゃあ頑張って下さい」

照「須賀プロ。奈良の美味しいものを食べに行こう」

京太郎「そっすね。あのスポンサーは放っといて」

透華「なっ!?」

玄「えぇぇええ……」

透華「それでもプロなんですの!」

京太郎「プロである前に社会人、社会人である前に人間です」

京太郎「ただでさえいつも、カロリーと気力使う麻雀打ってるんだから……」

京太郎「試合に最高のパフォーマンスで臨めるように、休むときはガッツリ休みたいんですよ」

透華「そんなまるでプロみたいな事を……」

京太郎「自分でそう言ったじゃないっすか」

玄「うぅぅぅ……」

京太郎「……はぁ」

京太郎「ま――」

京太郎「社会人である前に人間、なんで……」

京太郎「打たせて貰いますよ。ここで放っといたら人間じゃない」

玄「須賀プロ……」

照「じゃあ――打とうか」


  ◇  ◆  ◇


京太郎(……さて)


 考える。それしか自分の武器はないのだ。

 須賀京太郎は凡人である。

 ただ、誰にでもできる事をひたすら磨いたに過ぎない。

 運に頼らない基礎的な技術。能力によらない基本的な技能。

 あとは分析と思考だ。

 誰と戦っても我を通せる魔物ではない。常に相手に合わせて変化する対応者。

 相手のスタイルを知る。思考を読む。好嫌を覗く。手牌を推し量る。

 山を読み、河を読み、手を読み、場を読む。

 運は考えない。否、自分自身の運を信じない。頼らない。

 誰かが運を基盤にした能力を持つというなら、それはロジックである。

 そこに来て漸く、京太郎は運を視野に入れる。


京太郎(初めて打つ……透華さんがいるから、宮永プロは「見」に回る)

京太郎(だから、ここでリードしたい)

京太郎(んだけど……手牌がな)

京太郎(ドラがない……打点が乗らない)

京太郎(宮永プロ対策、それとあのときの優希の対局を見て知ってはいたが……)

京太郎(いざやられると厳しいな……ドラゴンロードってのは)


 だが、幸いである。

 手役作りは不得意ではない。

 大きく運と引きが絡む大物手を練るのは厳しいが、普通に打てるものを作るのはそう難しくない。


京太郎(ある意味じゃあ――俺向きだ。この場は)

京太郎(確か、透華さんはデジタル打ち)

京太郎(役を練った方がいいとき以外、デジタル打ちってのは真っ直ぐ)

京太郎(ドラがなけりゃあ、打点はそうそう高くない)

京太郎(……ときどき、訳分からん打ち方してたけど。この人)


京太郎(……さて)

京太郎(ドラが使えなくても――俺には打点をあげる方法がある)

京太郎(方法だなんて、生易しいものじゃない)

京太郎(状況が揃って使える、ただの嫌がらせ紛いのものだ)

京太郎(だけれども――やるからには、できる状況になったからには、やらせて貰う)


京太郎(松実さんも、宮永プロと打ってるからできるだけ一局目で稼ごうとする)

京太郎(透華さんは……松実さんのことも知ってるし、宮永プロのことも知ってる)

京太郎(当然、打点を稼ごうと手を練ってくる)

京太郎(和あたりなら気にせず真っ直ぐなんだろうが、そこらへんまで割りきってないな)

京太郎(「一局目で点数稼ぐ」「稼いだ点数を元に耐えて止めに行く」)

京太郎(あとは「テンパイ速度で真っ向から張り合う」)

京太郎(“そういう能力”でもない限り、基本的に打てる対策はこれしかない)

京太郎(つっても後者の方法とれるのは、優希ぐらい運が太くないと無理)

京太郎(下手すりゃ、というか大方――手を短くしたところで、ズドンと打たれる)

京太郎(速度と待ちを兼ね備えた、エグい闘牌するからな……宮永プロ)

京太郎(後半になれば、そこに打点も絡む。真面目に投げ出したくなる強さだ)


京太郎(……で)

京太郎(役牌もドラも絡まない、メンホンか)

京太郎(赤あると中抜きされちまうから、タンヤオが遣りづらいんだよな。ピンズで)

京太郎(しかも今、⑥筒がドラ……ピンズで横は壊滅的)

京太郎(縦に重ねても、打点は乗らない。トイトイにでも構えないと)

京太郎(そんな時にピンズ引くなんてな)

京太郎(しかも、ヤオチュウのトイツ2つ。客風のトイツも)

京太郎(かといって、トイトイは無理。残りの⑤筒が殺されてる)

京太郎(チートイも無理。出来てるシュンツを崩したくない)

京太郎(手を練るのは決まってるが、崩してリカバリーするってのは)

京太郎(大きなロスになる……だからこれは、メンホン止まりだ)

京太郎(打点が必用なこんなときに……)

京太郎(普通に考えれば、ツイてないんだろうが……ありがたいぜ)


京太郎(透華さんは普通に手が良さそうだ)

京太郎(タンピン系……で、場に偏りがあるから……)

京太郎(俺の手牌を考えるに、ワンズの一気通貫かイーペーコー。あとは両方)

京太郎(松実さんもテンパイ近く。そういう顔をしてる)

京太郎(不安と期待と安心……あとは闘志か)

京太郎(ここで和了すりゃあ、後が楽になる。戦える材料が揃う。やられっぱなしにならない……)

京太郎(そういうのが、視えるし聴こえる。解るんだ)

京太郎(二人は高打点テンパイ間近)

京太郎(それが……ああ、ありがたい)

透華「リーチですわっ!」


京太郎(松実さんはピンズ打ち)

京太郎(安牌って言い切れはしない牌だから、彼女も押してくんだろうな)

京太郎(さて、俺はメンホンイーペーコー)

京太郎(よく、あれから練ったってとこだよな)

京太郎(そんで今のはアガリ牌)

京太郎(普通に満貫だ……常識なら、ここは見逃さない場面)

京太郎(だが――まだだ。まだだぜ)

京太郎(今は松実さんの親だが、次は宮永プロが親)

京太郎(その前に、稼げるだけ稼がないとな)

京太郎(だから――)


京太郎「リーチ!」

透華「ツモ切りリーチ?」

透華「ダマっていたけど、捲り合いをせざるを得なくなったという事?」

京太郎「ま、そんなところです」

玄「うぅ……」

玄(二人リーチなんて……怖いよ)

玄(でも、ここで和了らないと……)

玄(ツモ切りだから……安牌だよね?)

京太郎「――ロン」

玄「ええっ!?」

京太郎「12000です」

玄「はい……」


京太郎(松実さんは、ドラを抱えると言っても基本的に手を整えていく)

京太郎(普通の人間が目指す完成形ってのを、目指す)

京太郎(それで和了出来ない……回し打つとしても)

京太郎(今のは、切りだし位置を考えるにトイツ落とし)

京太郎(リーチ者にそれが通って、しかも不要なら次も切る)

京太郎(だから、リーチ一発を付ける為に敢えてスルーさせて貰った。敢えてな)

京太郎(12000と8000……たった4000の為に見逃す)

京太郎(そんなのは、馬鹿だと思われるだろう。みすみす和了を逃すな……と)

京太郎(下手すりゃあ、松実さんが俺の和了牌を切るよりも先に……)

京太郎(下家の透華さんが和了することだって、あり得たんだから)


京太郎(だけど……宮永プロとの闘いにおいて、この4000点――リー棒込みで5000点の差はデカい)

京太郎(勝つためには……飢えなきゃならない)

玄「うぅぅ……」

京太郎(ごめんなさい、松実さん)

京太郎(所詮は番組内でのお遊びの麻雀だから、或いはあなたが素人だから)

京太郎(俺は、こんな汚い和了をすべきじゃあなかったのかもしれない)

京太郎(少なくとも、ただの人にやるような事ではない……えげつない行為だ)

京太郎(……でも)

京太郎(持てる技術を使わないってのは……全力で戦わないってのは侮辱だと思う)

京太郎(そりゃあ、指導とか接待とかファンサービスの麻雀とか……)

京太郎(初めから、お遊びで打つならこいつはマナー違反だ。俺はやらない)

京太郎(でも、インターハイの決勝に駒を進めた4校の内の先鋒)

京太郎(油断できるはずがない。彼女は強い)

京太郎(人生の一時でも、麻雀へと真摯な熱意を注いでたんだ。強いに決まってる)

京太郎(そんな彼女が真面目に考えて打ってくれている以上、俺も本気で戦う)

京太郎(俺も真摯に、自分の麻雀をしようと思うんだ)


 それでも同時に、考える。

 やはり彼女はプロではないのだ。

 本気で戦うのはいいが、完全なる全力を出すのはどうか……と。

 京太郎たちは、覚悟している。麻雀で悩み、苦しみ、生きていく覚悟を。

 かつての――インターハイの頃の松実玄も、そうであったろう。

 でも、今は違う。

 だから、流石に全力を出すのは、問題だろう。

 どこぞのトラウマ量産機どもとは違う。

 京太郎は、自分で麻雀を打っている。自分が麻雀を打っている。

 故に――。

 彼女が傷付きすぎたり、麻雀への悪印象を持ったり、不快感を抱いたりするほどの打ち方は制限すべき。

 舐めプはしないけど、あんまりガチ過ぎもしない。そんな麻雀が望ましい。


 そう、理解してるが――。


京太郎(宮永プロ……宮永照)

京太郎(折角、こうしてあなたと……魔物と戦えるんだ)

京太郎(俺は……自分を抑えられない)


 顔には、獰猛な笑みが浮かんだ。


 迎えた次局。

 京太郎は、宮永照が素早い和了をすると考えた。

 ならば本来なら、よほど手が速くないかぎりは安全策を決め込むべきだろう。

 だけれども、その戦法は取らない。

 なるべく直撃を受けないようにしつつ、それでも点数を一番持つ自分が切り込んでいく。

 無理そうなら、安牌でも抱え込んで終わる……なんて堅実(つまらない)スタンスではなく、

 せめて、盛り上げる為に前に出る。取った点数分は前に出る。

 そうあるべきだと、考えた。

 それが自分の願望と、一般的に考えられているプロらしさとの及第点だろう。


 だが……。


京太郎(連続和了じゃなくて――いきなり、『神砂嵐』の方かよ……ッ)

京太郎(らしくない――らしくないぜ、宮永プロ)

京太郎(それとも、よっぽど速く決めたいのか?)


 そんな京太郎の目論見は崩れた。

 麻雀を速やかに終わらせようというのか、或いはプロらしく華のある和了をしようかと思ったのか。

 もしくは、彼女が“鏡”で分析した結果、使わない方がいいと判断したのか。

 そのどれかは知らないが、彼女は連続和了を捨てた。


 いつものような手順を踏んだ制限付きの、速度と待ちと打点の両立スタイルではない。

 速度を犠牲に打点を上げて、待ちを狭めて役を決める――そんな普通の麻雀。

 ただ、普通とは違うのは……。

 宮永照の豪運は桁外れであり、彼女が速度を犠牲にしたのなら、容赦なく打点が跳ね上がるという事だ。

 そして、気付くのが遅すぎた。もっと早く訝しむべきだったのである。

 連荘を積み上げるように、河を積み上げるだけ打点は増加する。

 それはさながら河を溢れさせる雨雲だ。逆説的な雨雲。

 河が溢れるのなら――それほどの雨量を生むのなら、雲はさぞかし大きいのだろうと。

 逆算して導き出される怪物である。


京太郎(まずった……色々まずった)

京太郎(こんなときに攻めの姿勢だから逃げにくい――んじゃない)

京太郎(今からでも、オリられる)

京太郎(だけどあの人は……松実さんを狙うだろう)

京太郎(トバして、そのまま1位でやめるつもりだ)

京太郎(松実さんは手牌と捨て牌が、分かりやすいからな……)

京太郎(……どうする?)

京太郎(一人だけ焼き鳥ハコワレとか……気の毒すぎる)


 須賀京太郎の知る、宮永照の技は4つ。

 次局に、前局以上の点数を和了するという条件の元、速度を保証する『連続和了』。

 前局以下の順目で和了するという条件の元、打点を保証する『連続和了』。

 前局と同じ待ちを作成するという条件の元、和了を保証する『連続和了』。

 そして――溜めれば溜めるだけ打点が上昇する『神砂嵐』だ。


京太郎(そんで……解るんだよなぁ、アタリ牌)

京太郎(松実さんの手の中の牌。いずれ切られる牌)

京太郎(んで、俺も持ってる……)

京太郎(俺にとっても不要牌だ)


 ここで、問題である。自分がすべき事はいくつかある。

 とにかく副露して照の手を進ませずに流す。

 不要牌を抱えて、手作り。宮永照より先に和了。

 龍門渕透華に差し込み。

 あえて“チョンボ(イッテツ・バスター)”で大物手を流す。


 どれも、誉められた方法ではない。

 プロとしてのイメージを損ねかねない、えげつない行為であるのだ。

 飢えてはいるが、気高くはない――そんな手段を選ばない選択肢ばかり。


京太郎(自分から、負けたくない……振り込みに行きたくない)

京太郎(それは侮辱になるんだよな……)

京太郎(対戦相手に対する、勝利へ対する、麻雀へ対する……)

京太郎(だから俺は、やらない)

京太郎(そんなことはやらない)


京太郎(でもさぁ……)

京太郎(ファンの女の子相手に、あんな和了をブチ当てて……)

京太郎(おまけに、焼き鳥になるのを黙って眺めてるなんて……そんな格好悪い事なんて、出来ないだろ)

京太郎(俺は振り込みにいくんじゃあ、ない)

京太郎(こいつが不要牌で……こいつさえ通れば、俺は和了できる)

京太郎(危険牌っぽいと思ったけど、ひょっとしたら危険牌じゃないかもしれない……)

京太郎(そんな牌を、切るんだ)

京太郎(別にわざと負けに行ったとか、そーゆーつもりじゃないんだ)


照「――ロン」

照「48000点」


 ①①①②②③③⑦⑦⑧⑧⑨⑨


京太郎「……はい」

京太郎(メンチン純チャンリャンぺーコー平和……か)

京太郎(安いほうでも、松実さんは耐えられなかったな……)

京太郎(俺も安い方なら、よかったんだけどな)


玄(うぅ……焼き鳥3位だった……)

玄(……さっきのも、須賀プロが切ってなかったら絶対私が振り込んでトバされてた)

玄(考えただけで怖いよ……おねーちゃん)


 ぶると、湧いてくる恐怖に震えだしそうな体を、改めて抱きすくめる。

 それにしても……。


玄(やっぱり、須賀プロは上手いんだね)

玄(あんな風な方法で、リーチ一発を作られると思わなかった)

玄(でも、そんな須賀プロでも……宮永プロには勝てないんだ……)

玄(うーん……)

玄(でも……私は……須賀プロに勝って、欲しいかな)


 静かに点数を払う須賀京太郎の横顔を眺めながら、思う。

 前に会ったときのように疲れきった表情ではないが、血色が悪い。

 カメラ相手には、メイクで誤魔化しているのだろうけど……。

 こうしてレンズを通さずに見ると、やっぱり違和感があるのだ。


玄(ご飯、ちゃんと食べてるのかな?)

玄(うーん)

玄(やっぱり、こうしてひさしぶりに会えたんだから……)

玄(この間のタイトルのお祝いに、どこかご飯に連れてってあげようかな)

玄(……あ)

玄(うん、そうだよ! 今日の料理は豪華なものにすればいいんだ)

玄(うん! 頑張るよ!)


  __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ 



【宮永照の好感度が上昇しました】
【龍門渕透華の好感度が上昇しました】
【松実玄の好感度が上昇しました】

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最終更新:2013年09月22日 17:05