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**黒崎克耶@海法よけ藩国様からのご依頼品 *誕生日までまったりと #center(){ /*/ }  海法よけ藩国の医師、黒崎克耶はその空間の端から端までを眺めわたした。  自室が丸ごと何個はいるだろう、と埒もないことを考えながら視線を戻していく。  その刹那に鼻先を微かにアルコールの香りが掠める。  待ち合わせに指定されたのは天領、宰相府はハイマイルの一画。如何にも高級と自負している雰囲気の高層マンションの一室。  そこがソウイチローの部屋だった。 「な、なんか凄い…」  視界の端に天蓋付きの巨大なベッドを捉えつつ、黒崎は嘆息した。 「どうした?」 「ううん、みたことない部屋だなぁっておもったのー」  そんな黒崎になんでもなく問いかけてソウイチローは酒の用意をしている。  自然な立ち居振る舞いからこの種の生活になれていると感じられた。  酒器の載っている小さな机を始め、落ち着いてはいるが高級感を醸し出している調度の数々。普段黒崎とじゃれているときのソウイチローからは想像できない貴族趣味な部屋。 「初めてソウイチローさんの部屋にきたから」 「ああ。そうだったか」 「うんー」  やっぱりソウイチローさんは凄い。再認識した黒崎は久しぶりに見るソウイチローの所作を眺めてそれだけで嬉しい。  背もたれの浅いソファーに行儀良く腰掛けた黒崎の前に複雑なカットの入ったクリスタルガラスのデキャンタが差し出される。  対流する琥珀色の液体。微かに果物の香り。 「ありがとう」  微笑んで礼を言いつつ少し口を付けてみる。ブランデーだろうか。アルコールの味はするのだが、緊張のためかよく解らない。  続いて本当に果物がいくつか出された。どうやらこれがつまみらしい。 「お正月あえなかったからさみしかったー」 「ははは。なんか素直だな」  自分の分のワイングラスを持って黒崎の隣に掛けたソウイチローは、一度ん?という顔になってから快活に笑った。 「うん」 「よけ藩国の皆は元気か?」 「元気ですよーそれはもうピンピンで。  それはそれでいいんですけどねーやっぱりソウイチローさんいないと寂しい…」 「なんだかそう言われると、ひどく照れるな。  お前の部屋がなつかしくなるよ」  言いながら眼鏡の奥の視線を束の間彷徨わせる。  彼の国は、あちらだろうか。  そこにあるはずの四畳半の部屋を思い起こしてソウイチローは優しく微笑んだ。豪奢なこの部屋に比べれば遙かに手狭な空間が何故か今は酷く暖かい場所だと感じられる。 「照れる事ないのに。  お仕事やってるのは順調なの?」  そういう黒崎も照れと酔いで真っ赤なのだけど。 「寂しいとか言われると男としては、いやまあ、そう言う意味じゃないんだろうが。  俺の仕事はあまりないかな。宰相府にこいとは言われているが」 「ふにふに、政治家でしたっけ」 「まあ、そんなもんだ。  それにしても、海賊風の部屋にとまるのも久しぶりだ。懐かしくはある」 「あははは、そうですねーじゃ夜明けの船もこんな感じなのかな?  ここよりはもっと狭かったような気もするけど」 「そうだな。さすがに船内ではオリンポスのようにはいかん」  夜明けの船は大きいがそれでも潜水艦である以上乗員一人一人に広々とした生活空間を、というわけにはいかない。  じゃあ都市船にあるらしいソウイチロー邸は~、と黒崎は思った。  もっと豪華だったりするんだろうか。想像も出来ない。 「ま、正直に言うと焼き鳥でも食べたいところなんだがな」 「焼き鳥かー鳥ならよけ名産のよけ鳥が国に沢山あるから。  つまみついでにもってくればよかったね」  そう言いながら黒崎はテーブルに出されたドライフルーツに視線を落とした。よけ鳥はよけ藩に産する二足歩行する大きな鳥類である。 走れば速く、その肉は身がしまって固いが、味わい深い。  その点が痩身で思慮深い森国人との比喩で良く語られたりする。 「いや、冗談だ。本気にするなよ」 「ふにゃ。  ふふふ、冗談だったのか~」  二人はひとしきり笑い合ってドライフルーツをつまんだ。  逢えなかった時間を埋めてくれるような他愛のない会話。  幸せな時間。 「さすがにサラ」 「サラ?」  途中で言葉を切って視線を上げたソウイチローに黒崎は微かに首を傾げて繰り返した。  サラミ?  遠慮がちなノックの後、次の間に控えていたらしい執事が入室してくる。黒崎には聞こえていなかったがそれが二度目のノックだったらしい。 「ソウイチローさま、お電話でございます」 「今は大切な用だとお伝えしてくれ」 「かしこまりました」  ソウイチローが鷹揚に答えると、執事は一礼して次の間に下がる。 どうやらそこが彼の控え室らしい。 「ほにゃ?こんな時間に?」 「ああ。飲み会だろ」 「うんー」  ソウイチローは事も無げに答えて再び杯に口を付けたが、黒崎は気遣うような複雑な表情で小さくうなった。 「どうした?」 「いいの?こんな時間に普通電話してこないから急用なのかと思ったんだけど。  そ、そりゃーソウイチローさんいなかったらさみしいけど」 「政策スタッフは動いてる、そっちに振ってるさ」 「なるほどー」  ようやく安心したように笑顔が戻る黒崎。  ちょっと悪い気もするが、ソウイチローが仕事より自分のために時間を割いてくれることが嬉しい。  ソウイチローは一度空けたグラスに再びワインを注いで壁に掛かった時計を見た。  長針と短針が重なる。  微笑んで杯をあげた。 「誕生日おめでとう」 「ありがとう~!」  とびきりの笑顔でデキャンタを掲げる黒崎。  チン、と二人の杯が澄んだ音を立てた。  好きな人と一緒に祝える、最高の誕生日。 「あまり飲みすぎるなよ」 「うん~」  ソウイチローはちびちびとデキャンタに口を付ける黒崎に微笑んでワインを飲んだ。 「今日一緒に過ごせて嬉しい…。  えーっとえーっと。  お願いがあるですよ」 「なんなりと」 「今日から克耶って呼んで貰えませんか?」  デキャンタを置いて潤んだ瞳で見上げる黒崎に静かな口調で答えると、ソウイチローは掌に載せた小さな包みを示した。  悪戯を企む表情で黒崎を見詰めている。  答えを貰う前に目の前に現れた不意打ちに黒崎は唖然として口を開く。 「こ、これは。  プレゼント…?」 「まあ、誕生日だしな。クリスマスで貰っただけでは悪いし」  ソウイチローの手から黒崎の掌にプレゼントの小箱が手渡される。  押し頂くように胸に添えて感激をかみしめる黒崎。 「克耶か。分かった。克耶さん」  ソウイチローは頷きながらそう言って優しい眼差しで黒崎を見遣った。  克耶、と呼びかける声が耳にくすぐったい。 「…さんはいらない。呼び捨てでいいよ。  開けてもいい?」  苦笑気味に答える黒崎。大体男友達の時からさん付けするがらじゃなかった。  結局感激で胸が詰まってそう言うのが精一杯だった。 「もちろん」  丁寧にラッピングされた小箱の細いリボンがするりと解ける。  包みの下から現れた小箱の蓋を開けると、オーロラの色に煌めく小さな涙滴が二つ。  オパールのイヤリングだ。 「わー」 「お前の耳に穴をあけるのは、な。嫌だった」  部屋の照明を受けて幻想的な光を浮かべるイヤリングを手に取って黒崎は溜息をもらした。  原石の形を極力損なわないカットと研磨。複雑な游色を湛えそれも双子のように形の揃った石をシンプルな台座に埋め込んである。  きっと高価なものなのだろう。  喜びと緊張に少し手を震えさせて下の耳に着けた。 「ありがとう~貰ったから喜んでつける!」 「よかった。  似合うぞ」 「ふふふ、ありがとう。  …もうひとつお願いしてもいいですか?」 「もちろん。  何でも聞くぞ。なんなら居酒屋でもいくか?今から」  ひとまず今日一番の見せ場をクリアしたソウイチローは首筋に指をいれて衿を緩めながら大らかに請け負った。  いつもよりサービス精神に満ちている気がするのは黒崎の誕生日だからだろうが、なんの事はない、ソウイチローも大いに照れて緊張していただけのこと。  居酒屋、とか焼き鳥、というのは実はかなり本気。  上の耳を再び照れで垂れ下がらせて、それでも黒崎はしっかりソウイチローの瞳を捉えて切り出した。 「えーっとえーっと家とかまだ買えなくて一緒にいられないけど。 …お嫁さんにしてくださいー」  頬を真っ赤にしながらも言い切った。  女・黒崎克耶、一生一度のお願いしはしかし。  盛大に吹き出したソウイチローの爆笑で迎えられた。 「笑われた!」 「面白い冗談だな。酔いすぎだぞ」 「冗談やないですよ…本気ですって」 「? ま、いいじゃないか。酒のめ」  本気ねぇ、と苦笑するソウイチローを涙目になって見上げると黒崎は静かに隣に座る彼に寄り添った。  背中に腕を回して抱き締める。 「本気ですって…。  …それともイヤ?」  恥ずかしさのあまりまともに顔が見れない黒崎はソウイチローの胸に顔を埋めて囁く。  思いが肌から伝わればどんなに楽だろうか。 「嫌じゃないが……変な気分だな」  それも長く一緒に馬鹿をやった親友黒崎の記憶がよぎるからだろうか。 「変…?」 「気にするな」  優しく答えて微笑みを浮かべたソウイチローは黒崎の髪にそっと唇を寄せた。  小刻みに震える上の耳に囁く。  黒崎にだけ聞こえるくらいの吐息で。 『ハッピーバースデイ。克耶』 #center(){ /*/ } #right(){拙文:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国} ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:黒崎克耶@海法よけ藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=771&type=770&space=15&no= 製作:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1259;id=UP_ita 引渡し日:2008/07/02 ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|
**黒崎克耶@海法よけ藩国様からのご依頼品 *誕生日までまったりと #center(){ /*/ }  海法よけ藩国の医師、黒崎克耶はその空間の端から端までを眺めわたした。  自室が丸ごと何個はいるだろう、と埒もないことを考えながら視線を戻していく。  その刹那に鼻先を微かにアルコールの香りが掠める。  待ち合わせに指定されたのは天領、宰相府はハイマイルの一画。如何にも高級と自負している雰囲気の高層マンションの一室。  そこがソウイチローの部屋だった。 「な、なんか凄い…」  視界の端に天蓋付きの巨大なベッドを捉えつつ、黒崎は嘆息した。 「どうした?」 「ううん、みたことない部屋だなぁっておもったのー」  そんな黒崎になんでもなく問いかけてソウイチローは酒の用意をしている。  自然な立ち居振る舞いからこの種の生活になれていると感じられた。  酒器の載っている小さな机を始め、落ち着いてはいるが高級感を醸し出している調度の数々。普段黒崎とじゃれているときのソウイチローからは想像できない貴族趣味な部屋。 「初めてソウイチローさんの部屋にきたから」 「ああ。そうだったか」 「うんー」  やっぱりソウイチローさんは凄い。再認識した黒崎は久しぶりに見るソウイチローの所作を眺めてそれだけで嬉しい。  背もたれの浅いソファーに行儀良く腰掛けた黒崎の前に複雑なカットの入ったクリスタルガラスのデキャンタが差し出される。  対流する琥珀色の液体。微かに果物の香り。 「ありがとう」  微笑んで礼を言いつつ少し口を付けてみる。ブランデーだろうか。アルコールの味はするのだが、緊張のためかよく解らない。  続いて本当に果物がいくつか出された。どうやらこれがつまみらしい。 「お正月あえなかったからさみしかったー」 「ははは。なんか素直だな」  自分の分のワイングラスを持って黒崎の隣に掛けたソウイチローは、一度ん?という顔になってから快活に笑った。 「うん」 「よけ藩国の皆は元気か?」 「元気ですよーそれはもうピンピンで。  それはそれでいいんですけどねーやっぱりソウイチローさんいないと寂しい…」 「なんだかそう言われると、ひどく照れるな。  お前の部屋がなつかしくなるよ」  言いながら眼鏡の奥の視線を束の間彷徨わせる。  彼の国は、あちらだろうか。  そこにあるはずの四畳半の部屋を思い起こしてソウイチローは優しく微笑んだ。豪奢なこの部屋に比べれば遙かに手狭な空間が何故か今は酷く暖かい場所だと感じられる。 「照れる事ないのに。  お仕事やってるのは順調なの?」  そういう黒崎も照れと酔いで真っ赤なのだけど。 「寂しいとか言われると男としては、いやまあ、そう言う意味じゃないんだろうが。  俺の仕事はあまりないかな。宰相府にこいとは言われているが」 「ふにふに、政治家でしたっけ」 「まあ、そんなもんだ。  それにしても、海賊風の部屋にとまるのも久しぶりだ。懐かしくはある」 「あははは、そうですねーじゃ夜明けの船もこんな感じなのかな?  ここよりはもっと狭かったような気もするけど」 「そうだな。さすがに船内ではオリンポスのようにはいかん」  夜明けの船は大きいがそれでも潜水艦である以上乗員一人一人に広々とした生活空間を、というわけにはいかない。  じゃあ都市船にあるらしいソウイチロー邸は~、と黒崎は思った。  もっと豪華だったりするんだろうか。想像も出来ない。 「ま、正直に言うと焼き鳥でも食べたいところなんだがな」 「焼き鳥かー鳥ならよけ名産のよけ鳥が国に沢山あるから。  つまみついでにもってくればよかったね」  そう言いながら黒崎はテーブルに出されたドライフルーツに視線を落とした。よけ鳥はよけ藩に産する二足歩行する大きな鳥類である。 走れば速く、その肉は身がしまって固いが、味わい深い。  その点が痩身で思慮深い森国人との比喩で良く語られたりする。 「いや、冗談だ。本気にするなよ」 「ふにゃ。  ふふふ、冗談だったのか~」  二人はひとしきり笑い合ってドライフルーツをつまんだ。  逢えなかった時間を埋めてくれるような他愛のない会話。  幸せな時間。 「さすがにサラ」 「サラ?」  途中で言葉を切って視線を上げたソウイチローに黒崎は微かに首を傾げて繰り返した。  サラミ?  遠慮がちなノックの後、次の間に控えていたらしい執事が入室してくる。黒崎には聞こえていなかったがそれが二度目のノックだったらしい。 「ソウイチローさま、お電話でございます」 「今は大切な用だとお伝えしてくれ」 「かしこまりました」  ソウイチローが鷹揚に答えると、執事は一礼して次の間に下がる。 どうやらそこが彼の控え室らしい。 「ほにゃ?こんな時間に?」 「ああ。飲み会だろ」 「うんー」  ソウイチローは事も無げに答えて再び杯に口を付けたが、黒崎は気遣うような複雑な表情で小さくうなった。 「どうした?」 「いいの?こんな時間に普通電話してこないから急用なのかと思ったんだけど。  そ、そりゃーソウイチローさんいなかったらさみしいけど」 「政策スタッフは動いてる、そっちに振ってるさ」 「なるほどー」  ようやく安心したように笑顔が戻る黒崎。  ちょっと悪い気もするが、ソウイチローが仕事より自分のために時間を割いてくれることが嬉しい。  ソウイチローは一度空けたグラスに再びワインを注いで壁に掛かった時計を見た。  長針と短針が重なる。  微笑んで杯をあげた。 「誕生日おめでとう」 「ありがとう~!」  とびきりの笑顔でデキャンタを掲げる黒崎。  チン、と二人の杯が澄んだ音を立てた。  好きな人と一緒に祝える、最高の誕生日。 「あまり飲みすぎるなよ」 「うん~」  ソウイチローはちびちびとデキャンタに口を付ける黒崎に微笑んでワインを飲んだ。 「今日一緒に過ごせて嬉しい…。  えーっとえーっと。  お願いがあるですよ」 「なんなりと」 「今日から克耶って呼んで貰えませんか?」  デキャンタを置いて潤んだ瞳で見上げる黒崎に静かな口調で答えると、ソウイチローは掌に載せた小さな包みを示した。  悪戯を企む表情で黒崎を見詰めている。  答えを貰う前に目の前に現れた不意打ちに黒崎は唖然として口を開く。 「こ、これは。  プレゼント…?」 「まあ、誕生日だしな。クリスマスで貰っただけでは悪いし」  ソウイチローの手から黒崎の掌にプレゼントの小箱が手渡される。  押し頂くように胸に添えて感激をかみしめる黒崎。 「克耶か。分かった。克耶さん」  ソウイチローは頷きながらそう言って優しい眼差しで黒崎を見遣った。  克耶、と呼びかける声が耳にくすぐったい。 「…さんはいらない。呼び捨てでいいよ。  開けてもいい?」  苦笑気味に答える黒崎。大体男友達の時からさん付けするがらじゃなかった。  結局感激で胸が詰まってそう言うのが精一杯だった。 「もちろん」  丁寧にラッピングされた小箱の細いリボンがするりと解ける。  包みの下から現れた小箱の蓋を開けると、オーロラの色に煌めく小さな涙滴が二つ。  オパールのイヤリングだ。 「わー」 「お前の耳に穴をあけるのは、な。嫌だった」  部屋の照明を受けて幻想的な光を浮かべるイヤリングを手に取って黒崎は溜息をもらした。  原石の形を極力損なわないカットと研磨。複雑な游色を湛えそれも双子のように形の揃った石をシンプルな台座に埋め込んである。  きっと高価なものなのだろう。  喜びと緊張に少し手を震えさせて下の耳に着けた。 「ありがとう~貰ったから喜んでつける!」 「よかった。  似合うぞ」 「ふふふ、ありがとう。  …もうひとつお願いしてもいいですか?」 「もちろん。  何でも聞くぞ。なんなら居酒屋でもいくか?今から」  ひとまず今日一番の見せ場をクリアしたソウイチローは首筋に指をいれて衿を緩めながら大らかに請け負った。  いつもよりサービス精神に満ちている気がするのは黒崎の誕生日だからだろうが、なんの事はない、ソウイチローも大いに照れて緊張していただけのこと。  居酒屋、とか焼き鳥、というのは実はかなり本気。  上の耳を再び照れで垂れ下がらせて、それでも黒崎はしっかりソウイチローの瞳を捉えて切り出した。 「えーっとえーっと家とかまだ買えなくて一緒にいられないけど。 …お嫁さんにしてくださいー」  頬を真っ赤にしながらも言い切った。  女・黒崎克耶、一生一度のお願いしはしかし。  盛大に吹き出したソウイチローの爆笑で迎えられた。 「笑われた!」 「面白い冗談だな。酔いすぎだぞ」 「冗談やないですよ…本気ですって」 「? ま、いいじゃないか。酒のめ」  本気ねぇ、と苦笑するソウイチローを涙目になって見上げると黒崎は静かに隣に座る彼に寄り添った。  背中に腕を回して抱き締める。 「本気ですって…。  …それともイヤ?」  恥ずかしさのあまりまともに顔が見れない黒崎はソウイチローの胸に顔を埋めて囁く。  思いが肌から伝わればどんなに楽だろうか。 「嫌じゃないが……変な気分だな」  それも長く一緒に馬鹿をやった親友黒崎の記憶がよぎるからだろうか。 「変…?」 「気にするな」  優しく答えて微笑みを浮かべたソウイチローは黒崎の髪にそっと唇を寄せた。  小刻みに震える上の耳に囁く。  黒崎にだけ聞こえるくらいの吐息で。 『ハッピーバースデイ。克耶』 #center(){ /*/ } #right(){拙文:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国} ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) - この度は大変ご迷惑をおかけしました~=□●_(平伏のポォズ) うわぁい黒崎さんの依頼だ~とか飛びついたのが8ビットの浅はかさ、いつの間にか国元はエラい事に、挙げ句天然ボケで〆切りを大幅に間違える始末(;´ρ`)いたく反省しております_(_^_;;)_お陰様でなんとか仕上がりました。ご笑納下さいませ(´Д`;)ヾ -- 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 (2008-07-02 17:23:15) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:黒崎克耶@海法よけ藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=771&type=770&space=15&no= 製作:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1259;id=UP_ita 引渡し日:2008/07/02 ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

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