仮面ライダーアマゾンズ(シーズン1)の第1話


Episode 1
AMAZONZ




雨の中、1台のワゴン車が町はずれの民宿のもとに到着。消毒服姿の者たちが降りる。
リーダーの志藤 真、大滝竜介、三崎一也、前原 淳、マモル、紅一点の高井 望。

「害虫・害獣駆除作業中」の看板を置き、民宿へと入ってゆく。
通りかかった女性が、興味津々で話しかける。

女性「ねぇねぇ、何これ? ちょっと、ちょっと! 害虫?」
三崎「いやいや、どうってことはないんですよ~。こんにちはぁ。これねぇ、ちょっとした害虫駆除なんですよ~」
女性「あらぁ、うちも今度お願いしようかしら?」

三崎が女性に応対している間、民宿の中では一同が消毒服を脱ぎ捨て、戦闘服姿となる。
民宿の中は、何者かが暴れ回ったように荒れ放題。

望「後の掃除、面倒臭ぇぞ……」
前原「清掃の奴ら、泣いて喜びそうだな」
志藤「竜介。『ムシ』のポイント、いくらっつってたっけ?」
大滝「あ──、ボーナスはあんまり期待できないっスね。ランクはDで、ポイント120っス」
一同「チッ……」「はぁ……」
志藤「さっさと狩るぞ」

一同が銃を手にし、慎重に奥へと進んでゆく。人間と思しき肉片が散乱している。

前原「志藤さん…… 食べ残しです。」
大滝「あ──、オヤツだらけだ。」
志藤「大食いだな」
望「志藤さん。マモルが『2階だ』って」

一同が2階に昇り、奥へ奥へと進む。一室に、人間大のクモのような怪物── クモアマゾンが巣食っている。

志藤「竜介。『ムシ』確認。狩り、開始。福!」

外の車内で待機している福田耕太が、放送を流す。

『こちらは害虫・害獣駆除サービスです。ただ今、作業のために大きな音が発生することがあります。ご迷惑をおかけして申し訳ございません──』

志藤「マモル、いけるな?」
マモル「み、三崎くんは?」
志藤「チッ、あの野郎」
望「いつまでやってんだよ? 野次馬対応。いいから、いけよ」
マモル「全員でやらないと! チームは大事だから!」
志藤「だよな。ったく。来るぞ!」

クモアマゾンが突進。志藤らは銃撃で、望はナイフと電撃仕込みのブーツのキックで応戦する。
ようやく三崎が、一同に合流。

三崎「いやぁ~、中はひでぇや」
マモル「三崎くん、こっちこっち!」
志藤「遅ぇぞ、カズ!」
望「あんたは話が長げぇんだよ!」
三崎「悪ぃ、悪ぃ」
望「マモル、三崎さん来たからいいだろ!? おい!」
マモル「うん」
三崎「わぁ、ちょ、ちょっと待って、待って!」
マモル「うぅおお──っ!!」

マモルが自分の服を引き裂き、激しい熱と蒸気が全身から吹き出す。

三崎「熱、熱熱、熱!」

マモルもまた、怪人態・モグラアマゾンに変身し、クモアマゾンに応戦する。

三崎「だからいつも言ってんのに、もう、やってられないよぉ!」

窓を突き破り民宿の外へ、隣接した倉庫の中へと場所を移しつつ、戦いは続く。
大滝がタブレットで情報を解析する。

大滝「マモル、背中だ!」

モグラアマゾンが渾身の力で、クモアマゾンの背に鉤爪を突き立て、心臓部を抉り出す。
たちまちクモアマゾンの体が崩れ、ドロドロの液体となって溶け、消滅する。
残されたのは、クモアマゾンが嵌めていた腕輪のみ。

志藤「『ムシ』狩り終了…… 清掃班に連絡。撤収!」


帰りの車内。志藤は雇い主である、野座間製薬の本部長・水澤令華に報告の電話を入れている。

志藤「識別コード・S-203の駆除、完了。宿泊客9人の内、1人が『ムシ』──実験体だったようで、他の8人はほぼ奴のオヤツになってました」
令華「気持ちのいい表現じゃありませんね」
志藤「事実ですよ。ま、食べ残しは清掃班が片づけます」
令華「遺体が出ない限りは行方不明事件として扱うよう、公安に話が通っています。確実に処理してください。いいですね?」
志藤「清掃班に言ってくださいよ! 俺たちの担当は、駆除までですから」
令華「で、『M』の様子は?」
志藤「マモルですか? 変わりなしです」

車内では、一同が傷の手当てをしている。変身を解いたマモルは半裸姿。

望「マモル。いちいち制服、破くなよ。これじゃ、何枚あっても足りねぇだろ」
三崎「しょうがないでしょうよ、儀式みたいなもんなんだから。マモちゃんの変身スイッチだもんな」
大滝「ま、その内ほかの方法にシフトしていけばいいでしょ。な?」
前原「そっすね。ま、制服タダなんだから、気にすんな」
志藤「……ねぇ、本部長さん。もう教えてくれてもいいんじゃないですかね? 俺たちが駆除している実験体、マモルもですけど、あんたたちが『アマゾン』って呼んでるあいつらは、何なんですか?」

志藤たちの車にバイクが並び、密かに車体に盗聴器を仕掛ける。
どこかのマンション。スマートフォンから、志藤らの会話の声が漏れる。

志藤「ヤバイもんってことは、見ればわかりますよ。それを、いくらあんたのところが大企業だからって、警察や自衛隊も動かさずに、俺たちみたいな別会社を作って、処理しようとしてるってのがねぇ……」
令華「あなたたちは実験体を駆除する以外に関与しない── その条件で雇ったはずです」
志藤「たまたまネットで見たんですけどねぇ…… 2年前、あんたたちの研究所で事故が──」
令華「条件が飲めないなら──」
志藤「──わかってますよ! 無駄話はここまで。俺たちは、今日のポイント分のボーナスを貰えれば、それで。なぁ、お前ら? じゃ、報告終わりです」

電話を切ると、車内ではマモルが大泣きしている。望が一同の戦闘服とは別の服を手にしている。

志藤「どうした?」
望「もう制服の在庫ねぇから、これ着ろよっていったら、真に受けちゃって」
マモル「うぇ~ん! チ、チームは同じじゃないと……」
大滝「ったくもう。あんまりマモルからかうなよ!」
望「ごめんごめん、マモルちゃ~ん、嘘だよぉ!」


志藤たちの通信を盗聴していたマンション。
1人の男性が屋上に上がり、雨の中、ニワトリ小屋に餌を蒔く。


一方の令華と、秘書の加納省吾。

加納「これで、今年に入って駆除した実験体は、8体になります。去年が2体のみだけだったことを考えると、事故から2年目に始まるというのは、正しかったという他ありませんね」
令華「これからです…… アマゾンたちが目覚めるのは」


令華の自宅、水澤家。娘の美月(みづき)が学校から帰って来る。
主人公、令華の養子である水澤 (はるか)が1人、食事をとっている。
食卓には最低限の固形物とサプリメントのみ、まるで宇宙食のような食事。

美月「悠、今頃ごはん?」
悠「美月、お帰り。ちょうど良かった!」
美月「えっ?」
悠「ちょっと待ってて。すぐ食べちゃうから」


悠の部屋。熱帯魚の水槽がある。

美月「私にできるかな?」
悠「大丈夫。レイアウトに決まりなんかないし」
美月「でも……」
悠「水槽って、一つの世界なんだ。森でも町でも、好きな物をイメージして作るといいよ。それが、美月の世界になるから」
美月「私の?」
悠「こうやって見てると、自分もその世界に入り込んだような気がして…… すごく落ち着く」
美月「あのさ…… もしかして悠、ここ出たい?」
悠「えっ?」
美月「うちのお母さん、悠に厳しいでしょ? いくら体が弱いからって、家から出ちゃいけないとか行き過ぎだし、私にも、あんまりここに来るなって。悠が疲れるから」
悠「そっか……」
美月「うちに来なければ良かったって、思ってない?」
悠「いや、僕なんか引き取ってくれて、母さんにはすごく感謝してる。家に閉じこもってるのも、全然悪くないし」
美月「本当?」
悠「うん。この部屋は、僕の水槽ってことかな」
美月「……」

そこへ、令華が帰って来る。

令華「美月、何してるの!?」
美月「お母さん……」
悠「お帰りなさい」
令華「早く着替えてらっしゃい!」

美月が言い返せずに、部屋を去る。

令華「悠。明日、研究所の人間が定期健診に来るから、そのつもりで」
悠「いや、でも、先月やったばかりじゃ?」
令華「こまめにチェックして、悪いことはないわ」
悠「でも、いつまで……」
令華「薬は? 毎日ちゃんと打ってるわね?」
悠「はい。ただ、あの薬、あんまり好きじゃないというか……」
令華「好き嫌いの問題じゃありません!」
悠「……はい」
令華「いい? 今はこうしていられるけど、あなたは2年前まで寝たきりだったのよ。それを忘れないで」
悠「……はい」

令華が部屋を去る。

悠「僕の、水槽……」

令華の部屋に、制服姿のままの美月が駆け込んで来る。

美月「お母さん!」
令華「まだ着替えてないの?」
美月「お母さん、悠の病気って何? どうして自由にさせてあげないの?」
令華「それを調べてるの。悠のことはお母さんに任せて、あなたは自分のことをなさい。テストがあるんでしょ?」
美月「……」
令華「美月?」
美月「……」
令華「美月!」
美月「……はい」

悠は自室で、注射器を取り出す。

悠「これだけは嫌だな。打つと、いつもあれが……」

脳裏に浮かぶ映像。薄暗いどこかで、金網の向こうに閉じ込められて暴れ回る、緑色の怪物──
悠は思わず注射器をしまい、薬を投与せずにベッドに倒れ込んでしまう。


未明。林の中をキャンピングカーが走っている。
運転手の男性が息を荒げ、助手席では女性が不安そうにしている。

「ねぇ。やっぱり道、間違えてるよ。戻ろ。なんか怖い」
「あぁ…… はぁ、はぁ、はぁ……」
「どうかしたの? ねぇ!」
「う…… は、腹が…… 減った……」

運転手の男の形相が、みるみる人でないものへと変化してゆく。

「きゃあぁ──っっ!!」

女性が無我夢中でドアを開けると、1人の男が立っている。

「助けて! 助けてください!」

しかし、その男もまた異形へと変化してゆく。女性を車内に押し込め、ドアを閉める。

「きゃあぁ──っっ!!」

何かが激しく飛び散る音──


水澤家。息を荒げつつ寝床についていた悠が、不意に目覚める。


志藤たち「駆除班」のマンション。一同は酒盛り後のコタツで雑魚寝している。パソコンから通信音が響く。

三崎「……はい、駆除班」
通信の声『調査班です。実験体の識別コードを確認しました。識別コードはB-008と、S-208。マップ、転送します』

望「おい、行くぞ。おい、マモル…… 起きろ!」


一同はだるそうにしながらも、ワゴン車で出動する。

志藤「2匹かよ…… 二日酔いにはキツイか」
望「おい、マモル、起きろ」

車内でも寝ているマモル。大滝はびっしょりと汗をかき、息を荒げている。

前原「竜介さん、どうしたんスか?」
大滝「あぁ…… 呑み過ぎたらしい」
前原「同じくです……」
三崎「安い酒ばっかり呑んでっから、こうなんだよなぁ~」


駆除班を盗聴していたマンションの男性。
屋上のニワトリ小屋から卵を採り、自室でジョッキに数個の卵を割り入れ、生のまま飲み干す。
ベッドで寝ている同居の女性にキスを残し、マンションを発つ。


一方で悠が、朦朧とした意識のままベッドから起き上がり、家を出て、どこかへと歩き始める。


志藤たちは、林の中に到着。

大滝「1匹は昨日と同じタイプだが、ランクはBだ。問題はもう1匹のほうだな。識別コード、B-008。ランクは…… Aだ」
前原「よし」
望「Aなんて、初めて…… いくらになるかな?」
三崎「呑める、呑める」
志藤「バカ野郎。稼げる分、これまでみたいにはいかねぇってことだよ。全員、気をつけろ。ボーナスも、生きて帰ってこそ、だ」
マモル「いるよ、近くに」

どこからかクモの糸が伸び、大滝を締め上げる。

マモル「大滝くん!?」

クモアマゾンが大滝を捕えたまま走り去り、志藤たちが追う。

志藤「福!」
マモル「うぅおぉぉ──っ!!」

福田は車を走らせ、マモルはモグラアマゾンに変身してクモアマゾンを追う。
だがもう1体のアマゾン、コウモリアマゾンが宙を舞ってモグラアマゾンに一撃を見舞う。

志藤「ったく! 全員、マモルのフォローに回れ! 福、隆介を頼む!」

福田の銃撃で大滝がクモアマゾンから解放されるが、今度は福田がクモアマゾンの攻撃をまともに食らう。

福田「うわあぁ──っ!」


その頃、悠は朦朧とした意識のまま、ふらふらとした足取りで、その林までやって来ている。

悠「はぁ、はぁ…… 僕は、何でこんなところに……!?」


志藤「一也、淳! ここを頼む!」

三崎たちにコウモリアマゾンを任せ、志藤と望は福田たちのもとに回る。

志藤「福、大丈夫か!? 立てるか!?」

クモ糸の拘束を解いた大滝が、ふらふらと立ち上がる。

志藤「竜介、下がってろ!」
大滝「悪かった…… 黙ってて悪かった……」
志藤「竜介!」
大滝「俺も…… はぁ、はぁ…… 俺も!」
志藤「竜介!?」

なんと竜介もまた怪人態、トンボアマゾンへと変身する。

志藤「竜介ぇ!!」

モグラアマゾンは、自在に宙を舞うコウモリアマゾンに苦戦を強いられている。

志藤「グダグダになってきたか…… やべぇぞ」

突如、激しいクラクションの音が響く。志藤たちの車の中に、先ほどのマンションの男──鷹山 仁。
頬杖を突く肘で、クラクションを鳴らしている。もう片方の手には、奇妙なベルト。

志藤「おい、何してる!? ここは危険だ!」

仁は不敵な表情のまま、ベルトで卵を割り、生のまま口に放り込む。

望「何だ、お前ぇ!?」

仁は臆することなく一同の前に進み出て、ベルトを腰に巻く。

『Alpha』

仁「アマゾン……」

爆炎のような高熱と衝撃を放ち、仁もまた変身する。

志藤「何だ、ありゃ!?」

それは野獣のような真っ赤な姿、アマゾンアルファであった。


水澤家では令華が、悠の失踪と、放置された注射器に気づいている。

令華「昨日の分を打っていないのね!?」


襲いかかるクモアマゾンを、アマゾンアルファはたやすく蹴散らす。
アマゾンアルファの突き、蹴りが次々に決まる。

アマゾンアルファ「じゃあな」

渾身の爪の一撃が決まり、クモアマゾンから心臓部を抉り出す。

アマゾンアルファ「気持ち悪ぃな」

クモアマゾンの体が溶け、液化して消滅してゆく。
その戦いの一部始終を見ていた悠の息遣いが、次第に獣のように荒々しくなってゆく。

悠「はぁ…… はぁ…… な、何だ、これ!? はぁ、はぁ、い、嫌だぁ…… はぁ、はぁ」

脳裏に浮かぶイメージ── 緑色の怪物が金網を突き破り、奇声を上げる。

悠「わああぁぁ──っっ!!」

野獣のように大きく跳躍。そして、志藤たちの戦いの場に降り立つ。

前原「またアマゾン!?」
望「嘘…… どんだけいんだよ?」

その悠の姿は、脳裏に浮かんだ姿と同様、緑色の怪物へと変貌を遂げていた──!

(続く)

※ この続きは仮面ライダーアマゾンズ(シーズン1)の第2話をご覧ください。

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最終更新:2022年08月29日 04:48