ソードアート・オンライン (アニメ版第1期)の第24話

キリトはリーファ、レコン、シルフ領主のサクヤ、ケットシー領主のアリシャ・ルー達
多くのプレイヤーの助けを得て、世界樹のゲートまでたどり着いた。

キリト「ユイこれを使え!」
ユイ「コード転写します!」
ユイはアスナが託したアクセスコードを使って、ゲートを開けた。
ユイ「転送されます、パパ、手を!」

次の瞬間、キリトとユイは真っ白い通路にいた。
ユイ「パパ・・・パパ!」
キリト「ユイ・・ここは・・・」
ユイ「解りません・・・マップ情報が無い様です」
キリト「アスナのいる場所は解るか?」
ユイ「はい!かなり・・・かなり近いです。あっ、こっちです!」
ユイとキリトが走り出した。

途中でユイが壁を開け、次にキリトと共に扉を開けると――――
二人は世界樹の枝の上に出た。
キリト「ここが・・・世界樹の頂上・・・無いじゃないか、空中都市なんて・・・何がグランドクエストだ・・・全部嘘じゃないか・・・許されないぞ・・・!」
ユイがキリトの手を引く。
キリト「ああ、そうだな・・・全てはアスナを救い出してからだ」

走り出したキリトとユイは頂上にある鳥籠、その中に閉じ込められたアスナを見つけた。

鍍金(メッキ)の勇者


夕暮れ。
鳥籠の中で、アスナはベッドに突っ伏していた。
ユイ「ママ!」
鳥籠の前にユイとキリトがたどり着いた。
アスナ「・・・・・!」
アスナが涙を流し出した。
ユイ「ママ――――!」
ユイが扉を消して、アスナの元に駈け寄った。
アスナ「ユイちゃん!」
ユイ「ママ!」
アスナとユイが抱き合う。
ユイ「ママ・・・ママ・・・」
キリトも鳥籠の中に入る。
アスナが涙を拭った。
アスナ「キリトくん・・・」
キリト「アスナ・・・」
キリトとアスナが互いの額を合わせた。
キリト「ごめん、遅くなった・・・」
アスナ「ううん、信じてた。きっと、助けに来てくれるって・・・」
キリト「さあ、一緒に帰ろう」
アスナ「うん・・・」
キリト「ユイ。アスナをログアウトさせられるか?」
ユイ「ママのステータスは複雑なコードによって拘束されています。解除するにはシステムコンソールが必要です」
アスナ「私、ラボラトリーでそれらしいものを見・・・」
その時、キリトが剣を構えた。
アスナ「な、何!?」
キリト達が猛烈な重力に晒され、
鳥籠の中が深い暗闇の様な空間に変わっていった。
キリト「ユイ・・・この・・状況は・・・」
ユイの体に紫色のスパークが走った。
ユイ「ママ・・・気を付けて・・・何か・・・よくないものが・・・」
ユイの姿が消えた。
アスナ「ユイちゃん!」

アスナとキリトは手を取り合おうとするも、叶わず、重力に押さえつけられた。
キリト「アスナ・・・」
オベイロン「いやあ、驚いたよ。小鳥ちゃんの籠の中にゴキブリが迷い込んでるとはね」
ALOのゲームマスターである、妖精王オベイロンが来た。
その正体は、レクト本社の重役にして、明日奈の婚約者でもある須郷伸行(すごう のぶゆき)だが・・・
キリト「お前は・・・須郷か・・・」
オベイロン「チッチッ、この世界でその名前は辞めてくれるかな。妖精王、オベイロン陛下と・・・さあ呼べっ!」
オベイロンがキリトの背中を蹴った。
アスナ「キリト君!」
オベイロン「どうだい、ろくに動けないだろ。次のアップデートで導入予定の重力魔法なんだけど、ちょっと強すぎるかな?」
アスナ「辞めなさい・・・卑怯者・・・」
オベイロン「それにしても桐ヶ谷君。いや、キリト君と呼んだ方がいいかな?どうやってここまで来たのかな?さっき、妙なプログラムが動いてようだけど」
オベイロンがキリトの剣を拾った。
キリト「飛んで来たさ・・・この羽根で・・・」
オベイロン「はっ、まあいい。君の頭に直接聞けばいいことさ」
キリト「なに・・・」
オベイロン「君はまさか、僕が酔狂でこんな仕掛けを作ったと思ってるんじゃないだろうね?300人に及ぶ元SAOプレイヤー。彼等の献身的な協力によって思考、記憶操作技術の基礎研究は既に8割方終了している。かつて!誰も為し得なかった人の魂の直接制御という神の業を、僕はあと少しで我が物に出来る!全く仮想世界様々だよ!ヒヒヒヒ、ハハハハハハ!」
キリト「須郷・・・!」
アスナ「あなたのした事は許されないわよ・・・絶対に!」
オベイロン「えーーーっ、誰が許さないのかな?残念ながらこの世界に神はいないよ。僕以外にはね!さて!君達の魂を改竄する前に楽しいパーティーといこうか!!」
オベイロンが指を鳴らすと、天から2つの鎖が降りてきた。
オベイロンはその鎖の先の手錠でアスナの両手を縛った。
キリト「貴様・・・・何を・・・!」
鎖が上がり、アスナがつり下げられた。
オベイロン「オワ」
キリト「くっ!」
オベイロン「ハイ!」
重力魔法が強くなり、アスナが苦しむ。
オベイロン「いい!やっぱいい!NPCの女じゃ、その顔は出来ないよね」
オベイロンがアスナの髪を取り、顔を近づけて嗅いだ。
オベイロン「いい香りだ。現実の明日奈君の香りを再現するのに苦労したんだよ。
病室に解析器を持ち込んだ僕の努力を評価して欲しいね・・・」
キリト「やめろ・・・すご・・・う・・・・」
オベイロン「やれやれ・・・観客は大人しく・・這いつくばっていろ!」
オベイロンがキリトの顔面を蹴り飛ばし、更にキリト自身の剣を背中から突き刺した。
キリト「っ!」
アスナ「キリト君!」
オベイロン「システムコマンド!ペインアブソーバ、レベル10からレベル8に変更」
遮断されていた痛覚が戻り、キリトが苦しみだした。
オベイロン「痛いだろ?段階的に強くしてやるから、楽しみにしたまえ。最もレベル3以下にすると現実の肉体にも影響があるようだが・・・さて」
オベイロンがアスナの所に戻った。
キリト「やめろ、須郷・・・・」
アスナ「大丈夫だよキリト君・・・・私はこんな事で傷つけられたりしない」
オベイロン「そうでなくっちゃ!君はどこまで誇りを保てるか。
30分?1時間?なるべく長引かせて・・・くれたまえよ!」
オベイロンがアスナのワンピースを引き裂き、
付いていたリボンがキリトの目の前に落ちて、消滅した。
オベイロン「うふふふ、今僕が考えてることを教えてあげようか。
ここでたっぷり楽しんだら、君の病室に行く。
大型モニターに今日の録画を流しながら、君ともう一度じっくり楽しむ。君の本当の体で」
アスナ「!」
アスナが涙をこぼし出すと、オベイロンはその涙を舐め取った。
オベイロン「甘い・・・甘い!」
キリト「須郷!貴様!貴様!!」
オベイロン「ふひひひひ!ひはははは!」
キリト「貴様・・・殺す!絶対に殺す!!」
しかしキリトは動けないままで、やがて涙を零しだし・・・
キリトの意識は白い空間に飛んだ。
キリト(これは・・・報いなのか・・・ゲームの世界では俺は最強の勇者で・・・アスナを自分の力で助け出せると思いこんで・・俺には何の力も無いのに・・・)
そこにある声が響いてきた。
?(逃げ出すのか?逃げ出すのか)
キリト(そうじゃない。現実を認識するんだ)
?(屈服するのか?かって否定したシステムの力に)
キリト(仕方ないじゃないか。俺はプレイヤーで、あいつはゲームマスターなんだよ)
?「それは、あの戦いを汚す言葉だ。私にシステムを上回る、人間の意志の力を知らしめ、未来の可能性を悟らせた我々の戦いを」
キリトの前に立ったその男は・・・
キリト「お前は・・・・」
茅場「立ちたまえ、キリト君」

オベイロンがアスナの下着を裂こうとしている中、キリトが立ち上がろうとしていた。
キリト「こんな魂の無い攻撃に・・・あの世界の刃はもっと重かった・・・もっと痛かった!」
キリトが立ち上がり、剣が落ちた。
オベイロン「やれやれ・・・妙なバグが残っているねえ!ええ!」
オベイロンがキリトに殴りかかったが、キリトはその腕を受け止めた。
キリト「システムログイン、ID‘ヒースクリフ‘」
オベイロン「な、何!?何だそのIDは!」
キリト「システムコマンド。管理者権限変更。ID‘オベイロン‘をレベル1に」
オベイロン「な、な!僕より高位のIDだと!」
重力魔法が解除された。
オベイロン「有り得ない・・・僕は支配者!創造主だぞ!この世界の神・・・・」
キリト「そうじゃないだろ」
オベイロン「!」
キリト「お前は盗んだんだ!世界を、そこに住んでいた人を。盗み出した玉座の上で一人踊っていた泥棒の王だ!」
オベイロン「こ、このガキィ!僕に、この僕に向って!くぅ!システムコマンド!‘エクスキャリバー‘をジェネレート!」
しかし、何も起こらなかった。
オベイロン「言うことを聞けこのポンコツが!神の!神の命令だぞ!」
喚くオベイロンを傍目に、キリトはアスナに優しく語りかけた。
キリト「もう少し待っていてくれ。すぐ終わらせる」
アスナ「うん」
キリト「システムコマンド!オブジェクトID‘エクスキャリバー‘をジェネレート!」
キリトの前に、ALO唯一の伝説級武器(レジェンダリーウエポン)である黄金の長剣、エクスキャリバーが出現した。
キリト「コマンド1つで伝説の武器を召喚か・・・」
キリトはオベイロンにエクスキャリバーを投げ渡し、自分の剣を蹴り上げ、受け止めた。
キリト「決着をつける時だ。泥棒の王と、鍍金の勇者の!システムコマンド、ペインアブソーバをレベル0に」
オベイロン「な、何!?」
キリト「逃げるなよ。あの男はどんな場面でも臆したことは無かったぞ。あの茅場晶彦は!」
オベイロン「か、かやば・・・・茅場ぁ!そうか、あのIDは・・・何で・・・何で死んでまで僕の邪魔をするんだよ!あんたはいつもそうだ!何もかも悟った様な顔しやがって!僕の欲しいものを端からさらってぇ!!」
キリト「須郷、お前の気持ちは分からなくもない。俺もあの男に負けて家来になったからな。でも、俺はあいつになりたいと思ったことはないぞ。お前と違ってな」
オベイロン「この、ガキがぁぁ!!」
オベイロンがエクスキャリバーでキリトに斬りかかるが、キリトは剣でたやすく防いでいく。
オベイロン「くそぉ――――!」
キリトはオベイロンの攻撃をかわし、オベイロンの左頬を斬った。
オベイロン「いたっ!ああっ・・・」
キリト「痛いだぁ・・・お前がアスナに与えた苦しみはこんなものじゃない!!」
キリトが剣を振り下ろす。
オベイロンのエクスキャリバーを持つ右手が切り落とされた。
オベイロン「手が!僕の手があ!」
キリト「せえい!」
キリトが更に剣を振るい、オベイロンの腰を斬った。
オベイロン「おわぁぁぁぁ!」
オベイロンの下半身が消滅し、残った上半身が床に落ちた。
キリトがオベイロンの髪を掴んで、上半身を持ち上げる。
オベイロンは涙と鼻水を垂らして、顔面をくしゃくしゃに歪ませていた。
キリト「くっ!」
キリトはオベイロンを上に放り上げた。
そして落ちてくるオベイロンの右眼の真下に剣を掲げ―――
オベイロン「ああああ―――っ・・・・・」
オベイロンは右眼からキリトの剣に貫かれた。
両手が崩れ落ちた後、オベイロンは煙となって消滅した。

キリトはそのまま、剣でアスナの鎖を断ち切った。
そして剣を放り投げて、落ちてくるアスナを抱き止めた。
アスナ「信じてた・・・ううん、信じてる。これまでも、これからも君は私のヒーロー。いつでも助けに来てくれる・・・」
キリト「違うんだ・・・俺は・・・俺には何の力も無いんだ・・・でも、そうなれるように頑張るよ」
アスナ「うん・・・」
キリト「さあ、帰ろう。現実世界は多分もう夜だ。でも、すぐに君の病室に行くよ」
アスナ「うん、待ってる。最初に会うのはキリト君がいいもの。ああ・・・・とうとう終わるんだね、帰れるんだね、現実の世界に」
キリト「そうだよ、色々変わってて、びっくりするぞ」
アスナ「いっぱい色んなとこに行って、色んなことしようね」
キリト「ああ、きっと」
キリトがアスナの頬を伝う涙を拭った後、アスナの姿が消えた―――現実へとログアウトしたのだ。

キリト「これで全て終わった・・のか?そこにいるんだろ、ヒースクリフ」
キリトの前に茅場が降りてきた。
茅場「久しいなキリト君」
キリト「生きていたのか」
茅場「そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。私は茅場晶彦という意識のエコー、残像だ」
キリト「相変わらず、分かりにくいことを言う人だな。まあ、取りあえず、礼を言っとくよ」
茅場「礼は不要だ」
キリト「なぜ?」
茅場「君と私は無償の善意などが通用する仲ではなかろう。勿論、代償は必要だよ、常に」
キリト「何をしろと言うんだ?」
キリトの手元に、黄金に輝く卵型のプログラムが降りてきた。
キリト「これは・・・」
茅場「これは世界の種子、ザ・シードだ。芽吹けばどういうものか分かる。
その後の判断は君に託そう。消去し、忘れるのもよし。
しかし、もし君があの世界に憎しみ以外の感情を残しているのなら・・・では、私は行くよ、いつかまた会おう、キリト君」

茅場が後ろに下がると共に、閃光が放たれキリトが眩しがる。
次の瞬間、キリトはあの鳥籠の中に戻っていた。
キリト「ユイ!大丈夫か、ユイ!」
ユイが出てきて、キリトに抱きついた。
ユイ「パパ!」
キリト「無事だったか、良かった・・・」
ユイ「はい!パパのナーブギアのローカルメモリに退避したんです!ママは・・・」
キリト「ああ、戻ったよ。現実世界に・・・」
ユイ「そうですか!良かった、良かった・・・本当に・・・」
キリト「またすぐに会いにゆくよ。でも、どうなるんだろうな、この世界は・・・」
ユイ「私のコアプログラムはパパのナーブギアにあります。いつでも一緒です」
キリト「じゃあ俺は行くよ。ママを出迎えに」
ユイ「はい、パパ!大好きです!」

キリトは少し、夕暮れの空の方を見てから、
ユイの頬にキスをして、ログアウトした。


現実世界。
自室で目覚めた和人の目の前に、直葉がいた。
直葉「ごめんね!中々
和人「遅くなってごめんな」
直葉「・・・全部終わったの?」
和人「ああ、終わった。何もかも」
直葉「良かった!」
そう言う直葉に和人はリーファの姿を重ねた。
和人「あ・・・・本当に、ほんとうにありがとう、スグ。お前がいなかったら俺、何も出来なかったよ」
直葉「ううん・・・」
直葉が和人の胸に体を預けた。
直葉「あたし、嬉しかった。お兄ちゃんの世界で、お兄ちゃんの役に立てて」
和人が直葉を軽く抱きしめた。
直葉「取り戻したんだね、アスナさんを」
和人「ああ・・・ようやく、ようやく帰ってきた。スグ、俺・・・」
直葉「行ってあげて。きっとお兄ちゃんを待ってるよ」

和人がマウンテンバイクで外に出た。
和人「さ、寒っ・・・・」
直葉「あっ、雪」

直葉「気をつけてね。アスナさんによろしくね」
和人「ああ、今度、ちゃんと紹介するよ」

和人が明日奈のいる病院に向って行った。




最終回に続く

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最終更新:2018年08月12日 00:10