対訳
登場人物
- ジョヴァンニ・ボッカチオ(バリトン)
- ピエトロ(テノール):パレルモの王子
- スカルツァ(バス):床屋
- ベアトリーチェ(ソプラノ):スカルツァの妻
- ロッテリンギ(テノール):桶屋
- イザベッラ(ソプラノ):ロッテリンギの妻
- ランベルトゥッチョ(テノール):食料雑貨商
- ペロネッラ(アルト):ランベルトゥッチョの妻
- フィアメッタ(ソプラノ):二人の養女
- レオネット(バリトン):学生、ボッカチオの友人
- トファーノ:同上
- チチビオ:同上
- グイード:同上
- チスティ:同上
- 公爵(バス):見かけぬ男
- 屋台の本屋(バリトン)
- ケッコ(バス):乞食
- 3人の乞食
あらすじ
第1幕 聖マリア教会の前の広場、聖ヨハネの祝日
- 聖ヨハネの祝日で、人々が着飾って広場に繰り出している。乞食たちには稼ぎ時だ。
- 学生のレオネットは、亭主が旅行中のベアトリーチェから鍵をもらって、家に忍び込む。
- 屋台の本屋が台車を引いて登場し、ボッカチオの新作を宣伝すると、女たちは好奇心にかられ、一方男たちは、女たちにあんな本を読ませてなるものかと怒りだす。
- スカルツァが予定より1日早く旅行から帰って来て、妻のベアトリーチェにセレナードを歌う(これが浅草オペラの『ベアトリ姉ちゃん』)と、密会中のベアトリーチェとレオネットはびっくり吃驚仰天。いい具合にやって来たボッカチオと一計を案じて、ベアトリーチェは大声で「助けて!」と叫び、駆けつけた夫に、ひとりの若者が家に逃げ込んで来て、殺されそうだと言うので匿ってあげると、そこへもうひとりの若者がやって来て、家の中で決闘が始まってしまったと、説明する。夫のスカルツァが決闘に怖気づいていると、二人の若者(レオネットと友人のボッカチオ)が家から飛び出してきて、その隙にスカルツァとベアトリーチェは家に入って鍵をかける。
- こうしてレオネットとボッカチオは無事、難局を切り抜け、ボッカチオは、小説の新しいネタをまた見つけたと歌う。
- ペロネッラと養女のフィアメッタが教会に向かっている。途中、フィアメッタは、教会に行く時にいつも会う若者のことが気になり、あたりを見廻して歌う(『恋はやさし野辺の花よ』)。そこへ乞食の格好をしたボッカチオが姿を見せ、二人は言葉を交わす。
- ロッテリンギとランベルトゥッチョは、我々を侮辱するボッカチオは許せないと、ボッカチオを探しに行く。スカルツァも加わりたいが、学生たちに床屋の仕事をしろと言われて、加われない。そこへロッテリンギやランベルトゥッチョが、ボッカチオを捕まえたと連れて来た人をよく見ると、それはパレルモの王子ピエトロで、スカルツァは旅の途中で一緒だった。スカルツァが人違いだと説明して、ピエトロは解放される。
- 屋台の本屋がまた現われると、ロッテリンギはボッカチオの本に火をつけろと、乞食たちをけしかけ、一方、ボッカチオと学生たちは、本は燃えてもその精神は不死鳥のように蘇ると歌う。
第2幕 ランベルトゥッチョとロッテリンギの家の間の空き地
- ボッカチオ、ピエトロ、レオネットの三人がやって来る。王子ピエトロはボッカチオの本にあるような経験がしたいとイザベラに目を付け、ボッカチオはフィアメッタと逢引したいが、養母のペロネッラが邪魔なので、レオネットにその相手を頼んだ。三人はそれぞれの窓辺でセレナードを歌う。
- ロッテリンギがやって来て、仕事をしながら元気よく『桶屋の歌』を徒弟たちと歌って、出て行く。
- 三人はそれぞれお目当ての女性に恋文を送り、女性三人はワクワクしながら手紙を読む。
- ピエトロは恋の冒険に期待し、ボッカチオは農夫の格好をしてランベルトゥッチョの手伝いにやって来て、言葉巧みにランベルトゥッチョを木の上に登らせて、その間にフィアメッタに近づく。
- ボッカチオとフィアメッタは愛の言葉を交わし、イザベッラは桶を見て来てとロッテリンギを追い遣ってピエトロと懇ろになり、ランベルトゥッチョが木に登って様子を見ている間にペロネッラはレオネットを捕まえ、こうして三組のカップルができる。
- スカルツァがやって来て、ボッカチオがこの家に隠れていると言うので、ボッカチオら三人は隠れる。そこへ見かけぬ男がボッカチオだと引っ張られて来る。よく見るとそれはランベルトゥッチョの家に養育費を届けてくれる人で、フィアメッタを連れ戻しに来たのだった。
- 突然の別れにフィアメッタは悲しむが、「どこであろうと、君について行く」というボッカチオの声に励まされる。
- そしてボッカチオら三人は、悪魔の仮面をかぶって、お化けが出たぞと脅しながら、逃げ去る。
第3幕 フィレンツェ大公の宮廷
- ランベルトゥッチョは、養女のフィアメッタが実はフィレンツェ大公の私生児だったことを知らされ、神様の意のままと、自分の人生を思う、
- パレルモの王子ピエトロは大公の娘(実はフィアメッタ)と結婚することになっているのだが気が進まないと、ボッカチオに話す。
- フィアメッタは自分の恋の相手があのいかがわしい作家のボッカチオだと知って驚くが、想像力で書くだけだと言うので、ボッカチオの愛を受け入れる。
- ところでボッカチオとは何か、それは才気であり、ユーモアだと、最後は大合唱になる。
訳者より
- ボッカチオというと、『デカメロン』を書いた老練な作家というイメージがありますが、このオペレッタの中のボッカチオは、青年です。
- 登場人物の声のパートは便宜上分けてありますが、オペレッタの常で、歌える人なら誰が歌ってもよく、主役のボッカチオはテノールが歌うこともありますし、フォルクスオーパーの公演では女性が歌っていました。また楽譜によっては、ベアトリーチェとスカルツァの役がカットされて、他の人が歌っているものもあります。
- フィレンツェの雰囲気を出すためか、ところどころイタリア語で歌われますので、区別するためにカタカナで訳しておきました。
- あらすじを見て分かるように、第1幕で密会が見つかったベアトリーチェが青年二人を決闘させてその場を切り抜けたり、第2幕では桶屋のロッテリンギが桶の底に入り、食料雑貨商のランベルトゥッチョは木の上に登り、その間に3組のカップルが逢引きし、見つかると悪魔の仮面をかぶって逃走するなど、ドタバタ喜劇の要素が強いです。バカな男たちと、しっかり者の女たち、そこに若い男女の恋がからむという、典型的な喜劇の構成をしています。かつて浅草オペラでヒットしたというのも納得できます。
- フランツ・フォン・スッペはオーストリアの作曲家で、『軽騎兵』序曲などで知られています。Suppeはドイツ語ではズッペですが、オーストリアではスッペと読みます。スッペは、オッフェンバックのようなオペレッタを書きたいと、ウィーンでオペレッタを書き始め、「ウインナ・オペラッタの父」と呼ばれることもあります。
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最終更新:2020年11月07日 20:47