"道化師"

対訳【朝比奈隆 訳】

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衣装をつけろ(動画対訳)



編集者より

  • 朝比奈隆は1949年に関西オペラグループ(現関西歌劇団)を結成し、以来、毎年オペラを上演して、1953年の第7回公演が「パリアッチ(道化師)」と「カヴァレリア・ルスチカーナ」です。
  • 朝比奈隆訳でまず参考にしたのは、1953年7月11日から13日に産経会館で上演された時のパンフレットで、このパンフレットには、「朝比奈 隆 訳詞」と明記されて、このオペラの全訳が掲載されています。全訳だけでなく、ギリシア悲劇やシェークスピアとの関連にも触れて、作品解説も書かれていますので、紹介させていただきます。これを書いたのが誰かは明記されていませんが、この内容のディレッタントぶりから、朝比奈隆だと思われます。
  • 次に参考にしたのは、大フィルに保管されている、ボーカルスコアです。昭和36年発行の音楽之友社版に全訳が書き込まれています。このスコアにはもともと堀内敬三の訳詞が掲載されています。が、上演に当たって朝比奈隆は堀内敬三の訳詞を殆ど全部書き変えました。そしてWEBでダウンロードしたイタリア語のテキストとできるだけ楽譜に合わせて並べました。またト書きで、スコアには載っていないけれど、あるほうがいいと思われるものは、追記しました。
  • イタリア語にできるだけ忠実に、しかしできるだけ音楽に合うように訳された堀内敬三の訳詞とは違って、朝比奈隆の訳詞には言葉遊びが見られます。例えば、冒頭の口上の場面で舞台裏のペッペに、「東西東西(とざいとうざーい)」と言わせています。まさに文楽で開演の前に黒子が述べる口上で、これにより観客を一気に舞台に引きつけます。またその後でペッペが Signori miei! という箇所を、堀内敬三はイタリア語通りに「皆様」と訳していますが、朝比奈隆は「さぁお立ち合い」と芝居心たっぷりです。

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@ Aiko Oshio

作品解説

  • 「パリアッチ」はレオンカヴァルロの出世作であり、彼の代表作であると共に、近代の歌劇中、最も普及したものの一つであり、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」と共に、初期の現実派の歌劇中双璧とされる。
  • 台本自作の二幕物で、旅の道化役者の三角関係を描いた悲劇である。作曲されたのは1865年から70年頃迄で、1892年ミラノで初演された。
  • 演劇上から見ると、珍しい特色がある。即ち作曲者はギリシア悲劇やシェークスピア物等に見られる古風な習慣を用いて居る。幕開き前に俳優の一人が出て来て前口上を述べるところがそれで、これは「カヴァレリア」の前奏曲に於て舞台の背後から独奏を聞かせるのと似た点がある。更に、二幕目の「劇中劇」も変った手法である。この代表は「ハムレット」のそれ等であるが、これは数世紀間イタリーの旅役者によって行われたアレキンの喜劇で、或るパリアッチォが女房コロンビーナの不貞を発見し、大いに立腹したが、密夫アレキンのために却って部屋中を追いまわされた揚句、自分の家から突き出されてしまうというものである。
  • 第一幕はイタリー、カラブリアのモンタルト村の入口、村人達が村芝居の噂をしている所へ賑かにカニオ一座が来る。一同が酒を飲みに行った後で、薄馬鹿のトニオがカニオの妻ネッダに言い寄るが、肘鉄砲を食った上、鞭で打たれる。彼は向っ腹を立てて彼女に復讐を誓う。
  • シルヴィオという村の金持で若い農夫はネッダの仇姿に恋心を燃やし、駆落ちを求めた。ネッダは拒んだが、併し彼を憎からず思う旨を洩らす。トニオの密告でかけつけたカニオは一足違いでシルヴィオをとり逃がした。ネッダは逃げた男に名を言わないので、カニオは激昂するが芝居の時間が近づいたので、彼は身の不幸を自嘲し、更に傷ついた心を抱きつつ舞台に登らねばならぬことを思って、悲痛の念を歌に托す。
  • 第二幕は劇中劇であるが、その筋が偶然にもそれを演じる俳優達の実生活に酷似しているのである。カニオは、ついさっき聞いた“今夜から私はお前のものよ”という言葉がまた繰返されるのを聞いて芝居と実生活の区別がつかなくなってしまう。ネッダは何とかして芝居にもどそうとするが、遂に及ばず、カニオに刺される。そこへ思わずシルヴィオが飛び出して来る。狂乱したカニオは忽ち之をも仆してしまう。我にかえったカニオは呆然として「芝居はこれでおしまいだ」とつぶやく。

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管理人より

  • 指揮者の朝比奈隆(1908年7月9日 - 2001年12月29日)が翻訳した「歌える日本語訳」を使用しています。日本語訳は左のイタリア語の意味とは必ずしも一致しません。
  • 朝比奈のテキストは遺族の許可をいただいて掲載しています。複製・転載・転用は固くお断りいたします。

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最終更新:2022年05月27日 18:08