海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突した事故で、第3管区海上保安本部(3管)は21日、あたごのレーダー記録が保存されていなかったと発表した。
調べによると、イージス艦は演習時などにはレーダー記録を残すが、通常の航行時には記録しないこともある。3管では、あたごが最初から記録していなかったのか、事故後に何らかの原因で消えたりしたのかについて、艦橋や戦闘指揮所(CIC)などにいた当直員から事情を聴いている。
レーダー記録があれば、清徳丸や僚船とあたごの位置関係、双方の回避行動の有無などが明確に裏付けられるはずだった。3管では記録がないことから、あたごから押収した海図や航海日誌、艦橋にある全地球測位システム(GPS)のデータを基にした「航法装置記録」、清徳丸や僚船のGPSデータを合わせて分析し、双方の航行状況の特定を急いでいる。航法装置記録からは、艦船の位置、速力、針路などが詳細に割り出せるという。
また、午前4時の当直交代直後に起きた事故当時、当直は艦橋に10人、戦闘指揮所(CIC)に7人、機関室に8人、船尾部の見張りに1人が配置されていたこともわかった。
また、3管は船体の実況見分などから、あたごは清徳丸の左舷からほぼ直角に 操舵 ( そうだ ) 室に向かって衝突したと断定した。少なくとも衝突直前は、あたごが清徳丸を右に見ており、あたごに回避義務があった可能性が強まった。
3管によると、清徳丸左舷の切断部付近の4か所であたごの灰色塗料が見つかり、あたごの右舷艦首からは清徳丸の塗料を検出。また、あたご右舷の喫水線上部に長さ53センチ、艦首先端に長さ58センチの傷を確認した。
[ 2008年2月21日21時23分 ]
最終更新:2008年02月22日 12:25