「殺し合いなんて……嫌だよ……」

 森の中、一人の少女が膝を抱えて隠れるように座り込む。
 少女の名は『コトリ』。

 メイドの少女コトリは森の中で怯えていた。
 戦うことや争いごとはあまり好きではないコトリ。
 可愛いポケモンと毎日戯れる事が趣味だった。
 そんな彼女はただただ怯える事しかできなかった。

「怖いよ……誰か助けてよ……そうだ、ポケモンさん……」

 手持ちのポケモンを確認する。
 コトリに支給されたポケモンはエルフーンとラプラスだった。 
 可愛いエルフーンと賢いラプラス。
 一瞬、可愛いエルフーンに目がいったが、ラプラスの方に着目した。
 コトリは精神が不安定ながらも必死で閃いた。
 そして、震える指先でポケモンコンバータで操作する。

「……これでいいよね……」

 そして、周囲を見渡して誰もいないことを確認してラプラスに指示をする。

「ラプラスさん……『ほろびのうた』」
『~♪』

 ラプラスの綺麗な歌声が周囲に響く。
 コトリもその歌声に耳を傾けて聴き浸った。
 そう、怖いから支給されたポケモンたちと無理心中を計ったのだ。
 誰にも迷惑を掛けないように……静かに一人で……

 その時である。

「おい、テメェ!」
「!?」

 ヘルガーに跨り、如何にもガラの悪そうで怖そうな男が現れた。
 白いツンツンの髪に赤いジャケット、そして手には鈍器……もとい、『ふといホネ』。
 男はそのふといホネでコトリの頭をコンと軽く叩いた。

「テメェ、周りもちゃんと見ずに……馬鹿が!!」
「っ!? ……ご、ごめんなさい」
「チッ……うぜぇんだよ、そういうのは! 
 それよりも早く、そのラプラスとエルフーンをモンスターボールに仕舞いやがれ!」
「……あっ、はい」

 男は機嫌が悪そうにコトリに指示する。
 コトリは男に怯えながらも従った。

 その男は結構近くにいたのだ。
 そこでラプラスの『ほろびのうた』を聞いてしまったのだ。

「チッ……いきなり『ほろびのうた』使う馬鹿がいると思ったら、まだガキじゃねーか……
 ……ったく、テメェは何考えてるんだよ?」
「それは……」
「死ぬためか……」
「だって、私は……何の力もないし、誰かを傷つけるのも嫌だし……だったらいっそのこと……」
「……自殺しようとしたってか?」
「…………はい」

 コン……と再び頭を軽く叩かれた。

「テメェ、馬鹿がァッ!!」
「ひっ……」

 そして、罵声を浴びせられた。

「命を粗末にすんじゃねぇ!!」
「ご、ごめんなさい……」

 コトリは涙目にながらも謝る。
 男は渋い顔をしながら、説教する。

「人の命ってそう簡単に奪ったり奪われたりしちゃいけねぇんだよ!!」
「あのう……お兄さんは殺し合いに乗ってないの……?」
「ああァッ!? 乗ってねぇよ! つーか、俺はアイツらが気に食わねぇ! 
 だから、アイツらには従わねぇ! ただ、それだけだ! 文句あるか!」
「ないです」
「……まっ、生きてりゃそのうちいいこともあるんじゃねぇか?」

 男は自身の後頭部を二、三度掻き、溜息を吐く。
 そして、男はどこか寂しげな目をして、コトリが思いもしなかったことを告げる。

「…………守ってやるよ」
「え?」
「だから『守ってやる』って言ったんだ、聞こえなかったのか?
 まぁ……俺が信用出来ねぇってなら後ろからでも攻撃でもなんでもすればいいさ」

 男の声色が少しやさしく感じた。
 そして、ほんの僅かだが、男の顔が穏やかな表情に見えた。

「……そんなことはしません!」

 それに対してコトリは強く返す。
 もう自殺することなどは考えない。
 この男のように殺し合い反対の人たちを集めればどうにかなるのでないかと思い始めた。

 一先ず、コトリはラプラスのほろびのうたを忘れさせて、ぜったいれいどを覚えさせる。
 あと適当だった技構成・能力値を自分が思う適切な型にする。

「……えっと……お兄さんの名前は?」
「ラグナだ」
「ラグナさんって優しいんですね」
「なっ……! ……んなことはねぇよ!」

 ラグナは世間一般的にバッドガイと呼ばれる男だ。
 だが、彼がバッドガイになったのにも理由があった。
 理不尽な暴力により家族を奪われた過去があった。
 だからこそ、誰よりも強くなろうと我武者羅に生きてきた。
 その結果、世間一般からははみ出した生き方しかできなくなった。
 しかし、それは家族を奪った奴らへの復讐のためである、仕方ないことなのだ。

(最後の一人になるまで殺し合いだぁ!? ふざけんなよ!
 もう俺からは何も奪わせやしねぇ! パロロワ団にサカモト……テメェら、ぜってぇ殺す!!)

 だからこその反逆。
 この反骨精神こそがラグナを支える柱である。

 なお、このことについてはパロロワ団は一切関係ない。

「じゃあ行くぞ、コトリ」
「はい、ラグナさん!」

 二人はラグナのヘルガーに跨りは駆けていく。
 一先ずは人が多く集まりそうな市街地に向かっていく。

「で、どこに行くんですか?」
「適当に街でいいんじゃねぇか?」
「何か考えでもあるんですか?」
「んなもんねぇよ! まっ、なんやかんやでどうにかなるんじゃねぇか?」
「…………(……悪い人はないんだけど大丈夫かなぁ?)」 

 啖呵を切ったはいいが、サカモトを倒す方法とか首輪を外す方法などなど。
 ラグナは具体的な方法を何一つ考えてなかった。
 そのことに対してコトリは若干の不安を覚えたのは言うまでもない。 


【C-6/森/一日目/日中】

【バッドガイのラグナ 生存確認】
[ステータス]:良好
[バッグ]:基本支給品一式、ふといホネ
[行動方針]主催者打倒
1:コトリを守る
2:ゲームに乗った奴は倒す
3:人が集まりそうな場所に向かう

▽手持ちポケモン
◆【ヘルガー/Lv50】
とくせい:もらいび
もちもの:いのちのたま
能力値:特攻、素早さ振り
《もっているわざ》
あくのはどう
オーバーヒート
ヘドロばくだん
めざめるパワー(こおり)

◆【????/Lv?】
とくせい:???
もちもの:???
能力値:???
《もっているわざ》
????

【メイドのコトリ 生存確認】
[ステータス]:不安
[バッグ]:基本支給品一式、不明支給品×1
[行動方針]殺し合いには反対
1:ラグナに着いていく

◆【ラプラス/Lv50】
とくせい:ちょすい
もちもの:たつじんのおび
能力値:HP、防御、特攻、特防調整振り
《もっているわざ》
フリーズドライ
こおりのつぶて
なみのり
ぜったいれいど

◆【エルフーン/Lv50】
とくせい:いたずらごころ
もちもの:たべのこし
能力値:HP、防御振り
《もっているわざ》
ムーンフォース
やどりぎのタネ
みがわり
アンコール


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最終更新:2014年11月16日 10:51