ナレーション | 昔々、一人の男が死にました。 男が語っていたお話は、美しく勇敢な王子が、悪賢い大鴉を退治するお話。 男が死ぬと、大鴉と王子は、お話から飛び出しました。 王子は大鴉を封じるため、自分の心臓を取り出しましたが、それは、王子だけに与えられた禁断の力。 見事大烏は封じられましたが、王子の心臓は欠片となって飛び散って、 町のあちらこちらに散らばってしまいました。 それからというもの、その町はお話と本当が混じり合い、不思議が不思議でない世界になりました。 |
あひる | んー…夢? ここはどこ? 何でこんなとこに…? えっ!? ぐわっ! |
あひる | ええっ何!? え…嘘嘘! 嘘、嘘嘘! ぐわ… 只のアヒルだあたし…、女の子だと思ってたのに…。みゅうと先輩を助けた、あれは夢? ぐわっ、もしかして、今が夢!? |
ドロッセルマイヤー | はっはっはっはっはっはっ。どっちも夢ではないよ、あひるちゃん。 |
あひる | ぐわぁあああ! ぐわっぐわっぐわっ! ぐわーっ! ぐわっぐわっぐわっぐわーっ! |
ドロッセルマイヤー | はっはっはっ。 |
あひる | 誰…? |
ドロッセルマイヤー | 私の名はドロッセルマイヤー。ははははっ。 心臓を失くした王子様を助けたいかね? |
あひる | 私が助けたいのはみゅうと先輩で…。 |
ドロッセルマイヤー | 王子様は悪魔や大鴉と戦った勇者だ。私の書いたお話の中に居た時ぁね。 |
あひる | お話の中…? |
ドロッセルマイヤー | そう。彼はお話から出て、大鴉を封じる為に心臓を失った。 失った心臓は砕け、欠片となって彷徨っている。元に戻せるのはプリンセスチュチュだけ。 |
あひる | プリンセス…チュチュ? |
ドロッセルマイヤー | 覚悟があるなら…もう一度女の子にしてあげよう。 |
あひる | 女の子に? 本当? またみゅうと先輩に会えるの? |
ドロッセルマイヤー | 覚悟があるのならね。 |
あひる | ありますあります! 女の子の姿になって、みゅうと先輩の傍に居られたら…、 そしたらいつか…、いつか笑顔を取り戻してあげられるかもしれないし…。 そんな事があたしに出来るなら…それ以上望む事はありません。 |
ドロッセルマイヤー | おめでとう。夢見れば願いは叶う それがお話の良い所。 アヒルは女の子に、女の子はプリンセスチュチュにお話ってもんは素晴らしい。 |
ドロッセルマイヤー | 日々覚えておくこと。アヒルめいた事を言ったりしようものなら…。 |
あひる | くわぁっ…ぐわ! |
ドロッセルマイヤー | 覚えておくことだねぇ、はははは、はは。 |
あひる | んー…、あれぇ…? ここは、金冠町、だ…、私は…、ぐわっ! アヒル!? くわーっくわくわくわっ! くわーっくわっくわっ…。 アヒルだよ…、あぁ…。 |
あひる | みゅうと先輩も王子様も全部夢かぁ…、だよねー。 あー…、水の上は落ち着く…、くわっ(変身)ぷはぁ! …ん? くっ! |
ドロッセルマイヤー | 「アヒルめいた事を言ったりしようものなら…」 |
アヒル | んんっ…。あ、これ…、夢、じゃないんだ…、ん? |
エデル | 運命を受け入れる者に幸いあれ。 運命に逆らう者に栄光あれ。 |
あひる | 誰…? |
エデル | 私はエデル。貴女はあひる。 |
あひる | 私の事知ってるの!? |
エデル | 女の子になっても、未だアヒルらしい所は残っているのね。 |
あひる | え…? |
エデル | その格好。 |
あひる | 格好っ? |
エデル | 羽根を全部毟られたと思って御覧なさい。 |
あひる | うわぁああっ! |
エデル | これを。 |
あひる | んー…つまり、あたしが鳥のアヒルだって事は…女の子のあたしはいつからあたしだったのか、っていうか…、 昨日のあたしも一昨日のあたしもその前のあたしもあたしだった訳で…、 もー 訳がわかんないですよ~! |
エデル | お話が生まれるのは突然、始まりは偶然。 |
あひる | ん…? |
エデル | お終いは必然、閉じないお話は残酷なもの。 |
あひる | はぁ…エデルさんが言ってる事も分かりません…。 |
エデル | また会いましょう。 |
あひる | …はい! |
あひる | まいっか♪いっかいっかいっか♪まーいっかいっかいか♪いーか♪いーか♪まーいっか♪ふはーははは♪。 |
あひる | みゅうと先輩…。私、プリンセスチュチュになってみゅうと先輩を助けたんだよね…。 みゅうと先輩覚えてるかなぁ? 覚えてても私だって解んないか…、はぁ。 |
あひる | あ!! もし私が鳥のあひるだって知ったらどう思うかなぁ? 『あひる~?最近どうもあひる声だと思ったよ。シッシ』って感じ? それとも『うへ~鳥臭ぇ~』って感じ? それとも『大好物だ!いっただきまーす!!』 ううぅ!!秘密にしとこっ! |
あひる | ん…んん。みゅうと先輩…心臓を失った王子様って…。 |
あひる | あっ!!私まだちゃんとまだ謝ってない足の事! |
あひる | いっ行かなくては…。 |
あひる | はぁ!? |
あひる | はっ!何か偉そう私!! …ぁっ…あの~。ごめんなさい! |
みゅうと | え? |
あひる | 足、もう痛くないですか? |
みゅうと | 別に…。 |
あひる | (良くなったんだぁ。良かった。)うへへへ!なっ何か話さなきゃ!! |
あひる | 本読んでるですか? (見れば解るよ!見れば!何言ってんの私!!)。 |
あひる | 本好きなんですか? (は~!偉そう!何か偉そう私!!)。 |
あひる | 本面白いですかぁ!? (当たり前でしょ面白いから読んでんでしょ~!!)。 |
みゅうと | 別に…。 |
あひる | へ? |
みゅうと | 好きでも嫌いでも無いと思うけど…。 |
あひる | まただ…寂しそうな目…。 |
??? | ごきげんようみゅうと。 |
あひる | あ!るぅちゃん?……!!ぐぅ!? |
あひる | アリクイ!?蟻を食べてるアリクイ!?何でアリクイ!?ってそういう私もアヒルだけど!! |
アリクイ美 | 隣に座ってもよろしくて? |
みゅうと | うん…。 |
アリクイ美 | るぅさんの事はどうお考えかしら? |
みゅうと | …さぁ? |
アリクイ美 | 愛してらっしゃるのでしょう? |
みゅうと | 別に…。 |
アリクイ美 | それでは、アタクシとお付き合いいただけませんかしら?御嫌? |
みゅうと | 別に…。 |
あひる | うそぉ!!?? |
アリクイ美 | …みゅうと…。 |
あひる | 舐めたあぁああぁ!? |
あひる | あ…!!しっ失礼します!! |
あひる | くわぁ!!…!!むぐぐ…。 |
あひる | クワァ!!クックワぁ!!グワワッ…。 |
るぅ | ぅん? |
あひる | クワァクックワ!!(行っちゃダメ!!行っちゃダメ!!)。 |
るぅ | …ぅふふ。 |
あひる | クワァクックワ!! (あひるのままじゃダメだ!どうしたら女の子に戻れるの!? ※えっと~湖はどっちだっけ~?そうだ!水!)。 |
あひる | …ふぅ。やったー!! るぅちゃーん!! あ!! 裸ん坊はダメだよ!!えっと~だから~えーと、え~とーぐわぁ! |
あひる | うわあぁああぁ~!!あ、あ、えーとぉ!!あ!!あぁーーー!! |
アリクイ美 | あーら、るぅさんじゃありませんの。 |
るぅ | ん? |
あひる | あ…。 |
アリクイ美 | お伝えしますわ。みゅうとは私とお付き合いすることになりましたから。 |
るぅ | え…? |
アリクイ美 | どちらが上かハッキリしましたわね。失礼。 |
あひる | う…。違うの違う!! たぶん違うと思う!! あれは本当じゃなくって~! |
るぅ | 気にしてないわ。 |
あひる | へ? |
るぅ | あなた…良い人ね。 |
あひる | はぁ…。 |
ガヤ1 | え~!!!アリクイ美と~!? |
ガヤ2 | みゅー様ってるぅの事が好きなんじゃなかったの!? |
ガヤ3 | それがよりによってアリクイ美~!? |
ガヤ4 | オーマイガー!! |
みゅうと | …え? |
ふぁきあ | るぅを振ったな。ひどい奴だな。お前は。 |
みゅうと | そうかな? |
ふぁきあ | お前は人の気持ちってもんが解らないからな。だから平気でそんな事をするんだ。 |
みゅうと | ごめん。 |
ふぁきあ | ばか。それでいいんだよ。 |
猫先生 | バレエは一日休めば、自分で分かり、3日休めば周りに分かり、 一週間休めば観客に分かると言われるように日々の練習こそが大切です。 |
猫先生 | という訳でコレから月に一回クラス分けのテストをします。最悪の場合、見習いクラスに落ちてもらいます。 |
ガヤ | え~。 |
ぴけ | 今更見習いは嫌!! |
猫先生 | それか私と結婚してもらいます!! |
あひる | それもやぁ~!! |
猫先生 | …い…い…嫌~? |
アリクイ美 | 猫先生!! |
猫先生 | にゃ…!にゃんデス!?アリクイ美さん!? |
アリクイ美 | 特別クラスは5人と決まってますの!? |
猫先生 | そうですニャ。 |
アリクイ美 | では、誰かが私の代わりに落ちるんですのね! |
ガヤ | え~…。 |
りりえ | いや~ん! |
ぴけ | これは戦線布告よ! |
あひる | え~。 |
りりえ | 恋人ばかりか地位まで奪おうというのね!! |
あひる | え~? |
ぴけ&りりえ | 燃える展開!! |
アリクイ美 | 私パートナーと一緒にパドゥドゥを踊りますわ!!いらっしゃて!みゅうと!! |
アリクイ美 | うふふ、うふふふ。 |
ぴけ&りりえ | ますます燃える展開!! |
あひる | そんなぁ~。 |
ぴけ | 言うだけのことはあるじゃない! |
りりえ | 女の戦いねぇ~。 |
あひる | 確かに上手だけど、楽しそうじゃない。 |
生徒達 | うわぁ。 | すごーい。 |
アリクイ美 | るぅさんあなたのパドゥドゥ拝見したいわ。でぇもぉパートナーがいらっしゃるかどうか。 |
あひる | ひどい…。 |
ぴけ | るぅちゃんピンチ! |
りりえ | ピンチィ! |
生徒達 | あぁ。 |
るぅ | 一緒に踊ってくれる? |
あひる | う…? う? う? うー? うー!? |
るぅ | そうよ。 |
ぴけ&りりえ | あひるぅ! ピーンチ! |
あひる | る、る、るぅちゃん、あのね、あたしものすごく下手なんだ、だからきっとダメダメダメ。 |
るぅ | 大丈夫。私の言うとおりにして。 |
るぅ | 緊張しないで。 |
あひる | こぉ…はぁ、はいぃぃ。 |
ぴけ | 失敗するよきっと。 |
りりえ | うぅん。 |
ぴけ | 嵐の予感。 |
りりえ | うぅぅん! |
あひる | うっ。 |
るぅ | 飛んでっ。 |
あひる | はぁぁ。 |
あひる | はあぁぁぁ。 |
あひる | ぇっ。 |
生徒達 | はぁぁぁ。 |
るぅ | 素敵だったわ。 |
あひる | ほんとぉ? |
ぴけ | あひるじゃないみたい。 |
りりえ | そうよ、あんなのあひるじゃないわ。 |
あひる | えっ。 |
アリクイ美 | 恋人のあたくしがこんな目にあって何も思いませんの? |
みゅうと | べつに。 |
アリクイ美 | あなた、わざと手を抜いたんじゃありません? |
みゅうと | さあ。 |
アリクイ美 | 馬鹿にしないで! あたくしだってあなたがるぅのボーイフレンドでなければお付合いを申し込んだりしませんでしたわ。さよなら。 |
あひる | あの…。 |
アリクイ美 | あたくしを笑いにいらしたの? |
あひる | ううん、そんな…。 |
あひる | ぁ、待って! |
アリクイ美 | ほっといて。 |
あひる | あっ、なんだろう…? |
あひる | アリクイ美ちゃん! |
アリクイ美 | くやしい、くやしい、くやしい、くやしい、うぅ、くやしい…。 |
心のかけら | わかるよ。泣いていいよ。 |
アリクイ美 | っんん。 |
心のかけら | くやしいよね。 |
あひる | みゅうと先輩…。 |
心のかけら | くやしいよね。 |
アリクイ美 | くやしくて、苦しくて…。いつも側にいてちょうだい。 |
心のかけら | もちろん。 |
あひる | 違う、あれはいったい…。 |
心のかけら | 僕には君が必要なんだ。君の傷ついた心が。 |
あひる | はぁっ! あれは! |
ドロッセルマイヤー | ははははっ。王子の失われた心臓のかけらを見つけたようだね。 さぁ不思議の丘のひとひめ(※聞き取りにくい)プリンセスチュッチュー。 |
アリクイ美 | 誰っ!? |
アリクイ美 | あなたもあたくしを笑いに来たの? |
チュチュ | アリクイ美ちゃん、それは、あなたのパートナーじゃないの。 |
アリクイ美 | 馬鹿言わないで。 |
チュチュ | 私と踊りましょ。アリクイ美ちゃん。 |
アリクイ美 | 嫌よ。あなたなんかに、何がわかるって言うのっ! |
アリクイ美 | 帰って! |
チュチュ | アリクイ美ちゃん、ああっ、それがあなたのバレエなの? |
アリクイ美 | そう、見るものを屈服させる、それが芸術よ。 |
チュチュ | それは本心じゃないんでしょ。 |
アリクイ美 | いいえ。心からそう思っているわ。 |
チュチュ | あっ、うっ…。 |
アリクイ美 | これがあたくしのバレエよっ! |
チュチュ | だったら、どうしてそんなに辛そうなの? |
チュチュ | アリクイ美ちゃんのバレエちっとも楽しそうじゃない。 |
チュチュ | なにがそんなに悔しいの? |
アリクイ美 | それは…。 |
アリクイ美 | ステキ…。 |
アリクイ美 | 教えてください、どうしたらそんなステキなの踊れるんですか? |
るぅ | さあ。練習かしら。 |
アリクイ美 | 頑張ります。頑張ってわたしもるぅさんみたいに踊れるようになります。 |
るぅ | 無理よ。あなたは。 |
アリクイ美 | るぅさんに勝ちたい…。どんな手を使っても勝ちたかった。 |
チュチュ | それは、それはアリクイ美ちゃんの本当の気持ちじゃない。 |
チュチュ | 悔しいとか嫌いだとか忘れて、アリクイ美ちゃんのバレエを見せて。きっとずっと綺麗だよ。踊って。一緒に踊ろう。 |
チュチュ | 思いのままに。 |
チュチュ | 素直に。 |
チュチュ | 自由に。 |
チュチュ | そう、それがアリクイ美ちゃんの、バレエなんだから。 |
アリクイ美 | たのしいぃ。 |
チュチュ | あなたは? |
心のかけら | ぼくは砕かれた、忘れられた悔しいという思い。 |
チュチュ | あなたのいる場所ここじゃないの。 |
心のかけら | またさまようの? |
チュチュ | 戻らなきゃ。 |
心のかけら | 戻れるの? |
チュチュ | うん。 |
心のかけら | よかったぁ。 |
チュチュ | えっ…。 |
みゅうと | あ、ああぁぁぁ、あぁ。 |
チュチュ | あたし、ほんとのほんとにプリンセスチュチュになれたんだ。 |
ふぁきあ | みゅうとぉ! |
ちゅちゅ | えっ…! |
ふぁきあ | みゅうと。どうしたんだみゅうと。 |
みゅうと | どうしたんだろこの気持ち。 |
ふぁきあ | 気持ち? |
みゅうと | うん。 |
猫先生 | 以上、特別クラスは前回と同じ5人です。 |
猫先生 | それから、アリクイ美さん。 |
アリクイ美 | はい。 |
猫先生 | あなたも大変結構でしたが、今回は見送りにしました。 |
アリクイ美 | ええ、わかってます。わたくし、るぅさんのまねはやめて、自分のバレエを | 見つけることにしたんです。 |
猫先生 | 期待していますよ。 |
猫先生 | それからあひるさん。 |
あひる | はい。 |
猫先生 | あなたのバレエも大変結構でした。 |
あひる | はいっ! |
猫先生 | がっ! それはすべてるぅさんのおかげです。ですからあひるさんは見習いクラスです。 |
あひる | くわっっっぁぁぁ! |
ぴけ&りりえ | やっぱりー。 |
ドロッセルマイヤー | 忘れてはいけないよ、アヒルがアヒルである事を。 |
あひる | みゅうと先輩はお話の中の王子様なのかぁ。だからあんなにきれいなんだ。 |
みゅうと | るぅの事も好き…。 |
あひる | るぅちゃんはその事知っているのかなぁ。 |
みゅうと | プリンセスチュチュ…。 |
ふぁきあ | プリンセスチュチュ? |
るぅ | 馬鹿馬鹿しい。あんなのお話じゃない。美貌と賢さと強さは授けられたけど、王子様とは結ばれない運命を背負ったお姫様。告白したとたん光の粒になって消えちゃうわよ。 |
あひる | くわっ! |
ドロッセルマイヤー | お話の好きな子どもはよっといでー。ふふふふ…へへ…。 |