ニコニコで音MADと呼ばれる動画は、海外のユーザーによっても作られている。ただしその作り方や構成は日本製の音MADと比べると異なる。Youtubeにおいては「YTPMV(Youtube Poop Music Video)」として親しまれ、以下の手法によって多く製作されているなど、独自の文化を形成しつつある。

  • 海外の音MAD(YTPMV)の特徴
Ⅰ.音声編集
→音程合わせが中心でピッチ合わせのクオリティは非常に高い。シーケンサーやきれいな電子音に聞こえるような音もあり、聴き心地は良い。中には


のように、セリフを合わせる動画もあるが数は少ない。


Ⅱ.映像の構成
→映像を見ると、一度に視覚に飛び込む情報が多いという印象を持つ。カオスな作りであるといえる。
また点滅が多く、サブリミナル効果を狙っている(?)。最近は映像も凝った目に優しい動画も多い。
なお、ほとんどのユーザーは編集にVegasを使っている。


Ⅲ.再生数の伸び・評価の基準
→再生数は素材・曲の知名度や話題性で決まる。TeamFortress2、Jack Blackは非常に伸びやすい。また、作者補正も大きな要素。この点はニコニコと共通しているといえる。動画の評価基準は音程合わせがうまくできているかが重要。セリフ合わせや刻みはそれほど重要な評価の要素にはなっていない。これは、セリフ合わせの場合、言語の壁が大きな障害となってしまい、動画の理解が難しくなるためと思われる。また、検索機能は決して優れているとはいえないため、最悪の場合タグが反映されないまま埋もれてしまうことも。


Ⅳ.音MADに関するコミュニティ
→ニコニコ以上にユーザーの交流が行いやすいとは思われるが、コミュニティや合作は少ない。
だが、soccer match(別途記述)という名の下、気に入ったユーザーに動画レスポンスを送るといった交流もみられる。



  • YTPMVの歴史とニコニコ動画との関係
2004年:YTPの出現
→SheezyArtという画像や短時間の動画共有サイトに投稿された「I'D SAY HE'S HOT ON OUR TAIL」という作品がYoutubeに転載されたことから Youtube poop (YTP) の初出とされ、映像と音声をミックスしたパロディー動画が次々に作られた。また動画で使われていた素材は、テレビ番組、映画、アニメ、漫画、コマーシャル、ビデオゲームなどで、特に流行したものが「CDIシリーズ」だった。この流れを汲んで2007年に生まれたのがYTPMVであり、初期の作品は人気になったYTPをさらに発展させたものであり、現在とは音の合わせ方など作風が異なることから、この当時はまだニコニコの影響を受けていなかった。

2008年:ニコニコに影響されて
→海外で本格的に音MADが作られるようになったのは、2008年4~5月くらいから。ニコニコ発の音MADが転載されたのがきっかけ。「U.N. オーエンは彼女なのか?」をはじめとした曲に触発されて次々と製作された。その後も、「グルメレース」や「スカイハイ」といったニコニコで流行った曲が海外ユーザーにも受け入れられて作られるようになった。ニコニコで流行った曲はYouTubeでも流行ると言っていいくらい、影響を受けている。ただし当時はニコニコとYoutubeの音MAD交流がなかったため、Youtubeに海外製音MADが存在することはニコニコユーザーにはあまり知られてなかった。2008年はニコニコからYoutubeへの一方向的な影響があった程度と考えていい。


2009年:Youtubeからニコニコへ
→2009年に入ってから、今度はYouTubeの音MADがニコニコに転載されることが多くなった。ニコニコでもなじみの深い素材や曲で作られた音MADが多いということもあって、ニコニコユーザーにも受けがいい作品もある。ピッチ変更重視の音MADがメインだからか、「日本語でおk」というコメントは意外に少ない。また、ニコニコで「RED_ZONE」をはじめとした音ゲー曲が流行したのをきっかけに、Youtubeでも音ゲー曲を使った海外製音MADが多く作られるようになった。そしてこの年から人気素材として君臨するジャンルが現れるようになる。2009年はTeamFortress2が躍進した。


2010年:ニコニコが取り入れる
→2009年以前は音程合わせのクオリティがあまり高くない作品もそれなりにみられたが、この年は音源を楽器レベルにまで昇華するほどの高度なピッチ変更を施す作者が多く現れ、編集技術の目覚ましい向上が見られた。素材や曲ではJack BlackやOld Spiceなどの実写素材が流行の中心になり、Keygen Musicなど海外発祥の曲が使われ始める。また、MatrixMarioX氏やHealzer氏といった特定のユーザーが知名度を上げ、ニコニコ内で注目を浴びるようになる。作者リスト(List of remix maker)の項目にも記述してあるが、ニコニコのアカウントを持った海外作者が増えた。ニコニコユーザーでもyamas氏を始めとする作者が海外の人気素材や曲を使う傾向がみられるようになった。なお、YTPMVという言葉が本格的に使われるようになったのは、2010年からである。


2011年:ニコニコとYoutubeユーザーの交流
→2011年はニコニコの日本人ユーザーとYoutubeの海外ユーザーの交流が活発になった。Soccer Matchや合作など、日本人と外国人のコラボレーションが多く見られた。海外素材ではMy Little Ponyが台頭し、日本人ユーザーにも受け入れられた。編集技術においても、音程合わせだけでなくセリフ合わせや刻みといった手法も取り入れられるようになり、YTPMVの可能性が広がった。


今後の展望
→今後も海外の音MADは作り続けられていくだろう。YTPMVでの検索結果もヒット数が増えている。Soccer matchなど作者間の交流が活発なのもプラス材料。ただ少数のユーザーが指摘していたが、高い人気・実力のある作者達がコンスタントに投稿しないとYTPMVへの関心が薄まるのではと懸念する声もある。また、TeamFortress2など一部の素材はOverused(使用過多)で飽きられるという意見が出てきている。選曲は幅広いだけに、素材のチョイス・編集の仕方などがカギを握りそう。

ニコニコから受けた影響
U.N. オーエンは彼女なのか?、グルメレース・スカイハイなどのカービィ曲、RED_ZONE・Snow Gooseなどの音ゲー曲、ナイト・オブ・ナイツ、J-E-N-O-V-A、決戦(FF6)など
素材 ドナルド、KBC、ハンマー、1本満足バー、松岡修造、らきすた・けいおん!といったアニメなど

ニコニコが受けた影響
Rock My Emotions、Intensive Care Unit、Louder & Prouder (Picco_Elektro_Remix)など
素材 jack black(オクタゴン)、TeamFortress2、My Little Ponyなど

ニコニコに動画が転載されている主な作者
KinkyOats Akhts Healzer
MatrixMarioX DKCplayer RomysHustensaft

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最終更新:2020年12月14日 07:06