「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

救いの手

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
神は死んだ。
いや、不在が証明されたと言うべきか。
かつてのコーディネート・フィーバーとエピデンス01に、神は何も出来なかった。

『もし居たとしたら、私にここまでの試練は与えないだろう』

オーブ国際空港の入国管理官、ジョニー・マスタングは心の中で神と名乗るペテン師に毒づいた。
正直、清く正しい人生を送って来た、とは口が裂けても言えないが、コレは無いんじゃなかろうか、と。

ジョニーの『試練』は、今受け持っている一団である。
ジェス・リブル。
まあ、これは良い。いくら『野次馬』の異名を取るとはいえ、ただの入国管理官の私生活を記事にはすまい。
ソラ・ヒダカ。
しばらく前にマスコミを騒がせた少女で、ラクス宅に顔パスらしいが、自分には正直関係無いから無害だろう。
ジェームス・マクレガー
着ている物は素人でも金が掛かっていると知れる代物で、尚且つ品の良い物だ。
そして、着て居る中味は美青年と呼べるだろう。
が、服と中身が全くそぐわない。まるで野生の狼をなんとか手懐けてブランド物のペットの服を着せたような。鋭い目付きを和らげようとした伊達眼鏡がソレに拍車をかけている。
あからさまに偽名っぽい名前と合わせて、胡散臭すぎるのだが、最後の一人のおかげで気にならないレベルになっていた。

問題は最後の一人。
イワン・ストランビンスキー。
ロシア方面の旧家の出らしいが、とても信じられなかった。
真っ赤な、あまつさえラメまで入った三つ揃えのスーツ。
ピンクとペパーミントブルーに染められたアフロヘア。
ご丁寧な事にハートマークのサングラス。
生来視力が弱いらしく、その為の視力補正装置だと説明されたが、そのデザインは医療装置に対する冒涜としか思えなかった。
まあ、服のセンスは人それぞれだから何とか我慢しよう。問題は…
「YOU、どうしたんだい?Oh、何か悩みが有るんDANE!そうだ当ててみようか、君は…っとソコのLady、僕と一緒にお茶でも…」
この男、延々喋り続けているのである。まったく休む事無く。
結果、普通に処理すれば30分と掛からない入国審査が2時間近くかかって未だに終わらないのだ。
同僚に助けを求めたいところだが、みな視線すら合わせようとしない。
厄介事の巻き添えは誰だって嫌だからだ。
「なあ、まだ駄目なのか?」
ジェームスに問われてジョニーは項垂れる
「すいません。もうしばらく…」
「いい加減ウンザリしているんだが」
そう言われて流石にジョニーも不快感を隠せない。
「好きで時間をかけているんじゃ有りませんよ?」
「俺は、昨日からあのテンションに引き摺りまわされているんだ…」
ムッとして反論するジョニーにそう答えるジェームス。
「お疲れ様です」
ジョニーは心からこの人物に同情した。本当に、心から。

結局、更に1時間をかけて「ストラビンスキー御一行様」は空港を後にした。
ジョニーがその日、入国管理官になって始めて退職も考えたのは別の話である。

迎えのリムジンの中で、ジェームス、いや、カナードは煩わしそうにネクタイを引き抜いた。殆ど引き千切らんばかりの勢いである。
と、リムジンに乗ってからずっと難しい顔して腕を組んで俯いていたジェスの、両肩が震え始め、遂には、
「ぶははははははは!」
大爆笑。釣られてソラもクスクスと笑い出す。コチラは必死に笑いを押さえようとしているが。
「何が可笑しい?」
眼力だけで人が死ぬんじゃないか、と思える凶悪な視線をカナードに向けられ、ゲラゲラ笑いながらジェスはストラビンスキーを指差す。
「ま、まさかホントにアフロにするなんて思わなかったよ、ロマ!」
そう言われるとロマはポムポムと二色に染め上げられた頭上の毛玉を叩く。
「結構似合ってると思わないかい?」
「いや、普通はカツラにするだろ!」
ロマのアフロヘア。ソレは恐るべき事に地毛をアフロにしていたのである。
「いや、リアリティに拘りたくてさー」
そう言って無駄に爽やか且つ朗らかに笑うが、次の瞬間、顔を引き締める。
「いいかい?ここからが大変だよ。『あの人』がオーブに潜り込む手はずを整えてはくれたけど、シンを助け出すのは僕達がやらなくちゃいけないんだからね」
リヴァイブ反攻の開始であった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー