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逆らえぬ依頼人、面倒な仕事(前編)」(2007/10/09 (火) 12:37:40) の最新版変更点

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<dl> <dd>日はすっかり上り、暖かな陽射しが降り注ぐ平日の昼間。ある者はベンチで昼食、ある者は急ぎ走り、ある者は地べたで寝そべっている。<br> そんな何でもない町の何でもないビルの二階。そこに彼はいた。<br> <br> 「逆らえぬ依頼人、面倒な仕事(前編)」<br> <br> 何の前触れもなく僕は目覚めた。大概こういう時はまだ起きるには早いと言う時間のはず……。<br> 僕は一度大きなあくびをした後また布団を被り、再び眠りにつこうとした。<br> <br> 「ジュン〜〜もう昼すぎてるよ早く起きて〜〜。」<br> <br> っといつもなら自分より寝ているはずの仕事仲間に揺さ振られる。<br> しかし……しかしだ。昼を過ぎていようが僕はまだ眠い。起きるものかと布団に包まり丸くなる。<br> <br> 「むっ。いいよジュンがそういう態度とるなら。お客さんだけど私がでるね。」<br> <br> はて?今お客さんと聞こえた気がする……僕は寝呆けてるようだ。ここにお客なんて滅多にこない。<br> <br> 「私が依頼を受けた場合。ジュンには一円もあげないんだからね。」<br> <br> また寝呆けた時の幻聴だ。依頼なんてお客がいないととれないんだからな。<br> <br> 「いいんだね………むぅ。ここまで言っても起きないなんて……本当に私が依頼受けちゃうんだからね!」<br> <br> もはや依頼が来ていようと来ていまいとどうでもよし。眠気には勝てない。<br> しかし次の瞬間その眠気に勝る一言が……。<br> <br> 「あ〜あ依頼人はたまに来る刑事さんなのに〜。私知らないよ〜。」<br> <br> 僕はそれを聞いたと同時に布団から飛び出した。今までで一番と言っても過言ではない高速な着替えをして寝室から飛び出した。<br> 寝室から事務所までもできうる限る高速に。<br> そして事務所のドアを空けると僕の眠気を吹き飛ばしここまで高速な動きをさせた張本人が紅茶なんて飲んでいた。<br> <br> 「あらやっときたの?薔薇水晶に頼んでから約12分程経ったわよ。」<br> <br> 少し責めるような言動に彼女らしさを感じつつ僕はソファーに座る。<br> 彼女はそれを見て紅茶をおき、依頼内容であろう資料を出し始めている。<br> <br> 「それで何のようだ真紅?」<br> 「愚問ね。私が持ってくる仕事なんて二種類ほどしかないでしょ。」<br> <br> それはわかっている。しかも二種類とはいうもののそれは過去依頼した内容を種類分けした物。それは解決したから実際には一種類しかない。<br> <br> 「なら断る。お前刑事だろ?あの手の仕事に首を突っ込むのはやめとけ。」<br> 「あら世の中の不正を正すのが警察よ。私がやっていることは正しくないのかしら?」<br> <br> たしかに正しいことをしている。大体こいつは赤信号を必ず守るという現代では絶滅危惧種的存在だ。不正なんてするはずがないだろう。<br> <br> 「僕が言ってるのはそういうことじゃない。相手が悪いんだよ。」<br> 「不正を正すのに相手も何もないのだわ。」<br> <br> その信念は素晴らしいのだが相手は汚職政治家やらあっち系とつるんでる悪党社長やら極道さん達やらだ。こんなの潰し続けてたら裏社会の人間からマークされかねない。<br> <br> 「安心しなさい。あなたに頼めば私には一切被害がこないから。」<br> 「いやいやそんなことはないぞ。あっちの人の情報量は半端ないから……ってそれもダメだろ!?」<br> <br> 何でこうもこいつは理不尽なんだろうか。涙が出てくるよ。<br> <br> 「いいのかしら?こんな名も売れてない事務所に来ためずらしい客を逃がしても?」<br> 「うるさいな。余計なお世話だ。」<br> 「危ないだけに依頼料は高いのだけれど……いやなの?」<br> <br> 悪魔めこっちの経済状況をわかっていて言ってるな。それだけに痛いところを突いてくる。だけどこれを請けてしまったらめんどうだし…。<br> <br> 「そう…嫌なのね。別に薔薇水晶に頼んでもいいのよ。前みたいに豪勢な料理目の前で食べられても……」<br> <br> 「わかったわかったよ。それは嫌だ。それにどっちにしろこの事務所に頼むんだから断っても意味がない。」<br> <br> 真紅はしてやったりと微笑みになりながら資料をこちらに渡してきた。なんか悔しいな…。<br> <br> /2<br> <br> 「そろそろ帰るわね。もう一度言うけど取引は今日よ。また明日くるからきちんと依頼を果たしておいてね。」<br> <br> 仕事の内容を確認し、紅茶を飲み終えた真紅はそんなことを言いながら事務所の出口に進んだ。<br> 今日あることを今日依頼してくるなんてひどいやつだよまったく。<br> <br> 「そういえば薔薇水晶はどこに行ったの?」<br> 「答えはあなたの目の前。」<br> <br> 真紅が扉を開けるとちょうど薔薇水晶が入ってきた。何をしていたのやら。<br> <br> 「もうジュンったら私の目の前で着替えるんだもん。ちょっと放心になっちゃった///」<br> 「なっ…」<br> <br> ………たしかに急いでてそうしたが……。痛い…真紅の目が死ぬほど痛い……。僕と真紅の間の空気が凍ったように冷えきってる。<br> <br> 「そうなの。いいご身分ねジュン。明日…もし…依頼を果たしてなかったら……」<br> 「いやお前がそんな怒ることじゃないだろ!?」<br> 「…私初めて…罪を犯すかもしれないわ……。」<br> <br> 真紅は僕の弁明など聞かずそう言い放ち出ていった。マジだよあの目は……。コンクリート詰めにされて海に投げ込まれかねない…。<br> <br> 「真紅どうしたのかな?虎が髭抜かれたみたいに殺気だしまくっちゃってね。でもあんな風に無理矢理怒りを我慢するのはよくないよ。」<br> 「その表現がよくわからないが…原因はお前だよ薔薇水晶…。ついでに我慢してくれなきゃ僕は死んでた。」<br> <br> 薔薇水晶は僕がここまで説明したのに「へっ?」なんて白々しく言いながらクエスチョンマークを浮かべた。<br> そしてやっぱりわからない。といった様子で首を横に振った。これに僕は殺される一歩手前まで追いやられたのか…。<br> <br> 「もういい。とりあえず今は依頼を果たすぞ。じゃないと殺されそうだ。」<br> 「ん〜〜今回はどんな依頼?」<br> <br> コレがまた面倒。と取り敢えず薔薇水晶に資料を読ませ。その間に僕は準備のために自分の部屋に戻ることにした。<br> <br> /3<br> <br> 夜…。全うな人間は眠りに就いた頃。立ち並ぶ倉庫の屋根を伝いながら目的の場所を探す。<br> 依頼人である真紅も正確な場所までは特定できておらず、正確な場所を探すのはこちらの仕事である。<br> 故に薔薇水晶とは二手に分かれた。<br> <br> 静寂。自分が動く音以外なにもなく見つけるべき場所はなかなか見つからない。<br> ふと空を見上げれば綺麗な丸の月が僕を照らしていた。<br> <br> 「今日は満月か。」<br> <br> この呟きに深い意味はない。ただ久しぶりに見た月が満月だったというのに少し得した気分になっただけ。<br> 足を止め耳をすませば風の音と波の音。その静寂な空間に少しばかり呆けていると車のエンジン音が聞こえてきた。<br> <br> 「まったくすべてのタイミングは最悪だ。まあいいかこれで死ぬのは免れた。」<br> <br> エンジンから車の数は4台ほど。人数4〜20程度だろう。<br> 恐らく見当違いのところにいっているはずの薔薇水晶に連絡を入れブレーキ音のした方へと急いだ。<br> <br> 「さて大当たり…か。」<br> <br> 見たかぎり数は15人程度。予想の範囲内だな。全員一般人ではなさそうだ。<br> トランクケースが何個か。つまり真紅の予想は的中か。<br> <br> 「そこにいるのは誰だ!?」<br> <br> っと見つかったようだ。警戒心ありすぎだな。ビクビクビクビクヤクザのくせに小心者ばっかりだ。<br> さてヤクザさんならあれを持ってるわけだ。黙って待っていれば撃たれるし。<br> 応戦すれば逃げられる。ここは素直に出るべきかな。<br> <br> 「なんだお前は?一般人か?」<br> <br> こちらに話し掛ける者も後ろ手見ている者も僕のことを適当に解釈してるようだ。<br> さて15人中今すぐ動けるのは11人程か。こちらの容姿に油断しているから突然の出来事に完璧に動けるのは1人ないし2人かな。さてどうするか…。<br> <br> 「ちっ誰であれ見られたからには死んでもらう。」 <br> 「そんなことしたら警察に捕まることななるけど…いいのか?」<br> 「横は海だ。死体なんて見つかりゃしないさ。」<br> <br> 相手は小心者ではあるがそこらへんは冷酷らしい。まったく一応僕からの最後の警告だったんだけど…。<br> <br> 「ならいいか。殺す覚悟があるなら殺される覚悟もあるだろ?」<br> 「あっ?この状況で何言ってんだ小僧?あ……?」<br> <br> 耳障りな声の間に突然一発の銃声。僕が上着から取り出した一丁の銃からの音だ。一番ギャアギャアうるさくわめく男に肩に一発打ち込んだ。<br> その音と撃たれた男の叫び声で14人の人間は呆ける者、応戦しようと銃を出す者、車に逃げ込む者に分かれた。<br> <br> 「痛がるな。実弾じゃない。」<br> <br> 僕は銃声とともに頭のスイッチを切り替える。<br> <br> <br> <br> その手に握られた銃にはアルファベット3文字でJUMと彫られていた。<br> <br> 続く</dd> </dl>

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