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『新説JUN王伝説~序章~』第28話」(2007/10/31 (水) 01:35:37) の最新版変更点

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<p> <br> 『新説JUN王伝説~序章~』第28話<br>  <br> 苦心の末、円谷の師である厳に弟子入りを果たしたジュン。<br> 彼から渡された胴着に身を包んだジュンはあれから早速厳との組み手に挑んでいた<br>  <br> ジ「てぇぁああああああああっ!!」<br> ジュンの咆哮が空気を裂く。<br> それと同士に放たれる拳は厳の秘孔を捕らえるべく唸りを上げる。<br> だが…<br>  <br> 厳「ふっ……」<br> ジ「…くっ!」<br> その拳はただの一撃も厳の体にかすることもなくただ虚しく唸るだけであった<br>  <br> 厳「破ッ!」<br> ジ「ぐぁあっ!!」<br> 一瞬の隙をついて放たれた厳の掌打がジュンの体を弾き飛ばす。<br> 地面へと伏したジュンは苦しそうにむせかえりながら己を見下ろしている厳に目を向けた<br>  <br> ジ「ゲホッ!ゲホッ!…くっ、何で…何で攻撃が当たらないんだよ…」<br> 自分の拳速には自信があった。<br> それにもかかわらず、その拳が一発たりとも厳に触れることすら叶わない現実がジュンには信じられないのだ。するとその疑問に答えるために厳が口を開く<br>  <br> 厳「簡単なことだ…お前の心には常に激しい火しか見えぬのだからな。」<br> ジ「激しい…火?」<br>  <br> 厳の言葉が何を意味しているかが見えず、ジュンは眉をしかめる<br>  <br> 厳「そうだ。俺たち武闘家は、敵と闘う際に2つの心を持たねばならない。<br> …それは、“火”と“水”の心だ。」<br> ジ「火と…水?それは、どういう…」<br> 厳「まず火の心は絶対に負けぬという闘志…<br> それを激しく燃やすことで苦境にたたされたときも再び立ち上がることができるのだ。<br> そして水の心……これは今のお前には口で教えるより体で覚えさせたほうがよかろう。<br> …ついて来い。」<br> ジ「…え?あ、はい!」<br> ジュンは慌てて立ち上がると寺の階段を下りてゆく厳の後を追った<br>  <br> 厳「モタモタするな!置いてゆくぞ!?」<br> ジ「は、はい!」<br> その歳からはとても考えられないようなスピードで険しい山の斜面を駆け抜けてゆく厳。<br> その背中を見失わぬようにジュンは必死にその後ろを走り抜ける。<br>  <br> そして一時間ほど走ったとき、2人の前には自然が作る壮大な景色が広がった<br>  <br> 厳「着いたぞ。ここだ。」<br> ジ「はぁ、はぁ…こ、これは…」<br>  <br> そこにあったものは落差30メートルはあろうかという大きな滝であった<br>  <br> 厳「…見ていろ。」<br> ジュンが間近でみる大滝の迫力に見入っていたとき、厳はその広い滝壷へとザブザブと身を浸していった<br>  <br> ジ「し、師範!一体何を!?」<br> 激流と滝壷がぶつかり合う音にかき消されぬよう大声を上げるジュン。<br> しかし厳はその声など聞こえぬかのようにその体を腰まで水に浸し滝を正面に構えた<br>  <br> 厳「フゥ……」<br> 心を静めるかの如く小さく息を吐く厳。<br>  <br> ジ「!」<br> その瞬間、ジュンの体に鋭い寒気が走る。<br> 厳の背中から感じる気迫に全身の毛穴が開き、火照っていた体温が一気に冷めていくのを感じたのだ。<br>  <br> ざわり…<br> 滝の激流の音すら静寂に感じさせるような緊迫の中、わずかに風が木々を揺らす。<br> その刹那ーー<br> 一迅の風が滝へと駆け抜けた。<br> 次の瞬間…<br>  <br> 『ドパァアアアアアアッ!!!』<br>  <br> ジ「…なっ!?」<br>  <br> ジュンの目の前で大滝は轟音とともに滝壷から頂上まで真っ二つに切り裂かれ天高く水飛沫を上げたのである<br>  <br> ジ「あ…あぁ…」<br> その通常では決して有り得ない光景に言葉を失うジュン。<br> やがて形を取り戻した滝は何事もなかったかのように再び激流を吐き出し始め、その滝壷には手刀を作った右手を天高く掲げた厳だけが残っていた<br>  <br> ジ「し…師範、今のは…どうやって…」<br> 滝から上がってきた厳に問いかけるジュン。<br> しかし厳は無表情のままジュンに言い放つ<br>  <br> 厳「その答えは、お前が見つけろ。」<br> ジ「…へ?」<br> 厳「今見せたことを、お前もやってみろと言っているんだ。」<br> ジ「…え?えぇえええええッ!?」<br>  <br> その無茶苦茶な要求に声を上げるジュンであったが、それだけを言い残すと厳はジュンを置いて再び風のように山の中へと消えていったのであった…<br>  <br> ジ「……どうしろってんだよ?」<br> 1人滝に残されたジュンはしばらく考えたのち、諦めたように滝壷へと身を浸していった<br>  <br>  <br> ジ「とにかく、やるっきゃないよな…」<br> 冷たい水に体を浸したジュンは滝を正面に構え意識を集中する<br> ジ「はぁああああああ…」<br> 声と共に高まる闘気。<br> その全てを高く上げた右腕に集中し、それを一気に振り下ろす<br>  <br> ジ「岩山両斬波ッ!」<br> 瞬間轟音と共に高らかと水飛沫が上がる。<br> だがその威力は滝壷を切り裂いただけで先程厳が見せたように大滝そのものを切り裂くものではなかった…<br>  <br> ジ「…くそっ!もう一度だ!」<br> 再び右腕に気を集中するジュン。<br>  <br> そしてそれは日が暮れるまで続いたが、結局ジュンの拳が滝を両断することはなかった…<br>  <br> ジ「はぁっ…はぁっ……くっ、何だ!何が足りないっていうんだ!?」<br>  <br> 全身が麻痺するような冷水も気にならぬほど闘気を集中し、休むことなく拳を振るい続けたにも関わらず断ち切ることのできない滝。<br> …とすると、そこには何か決定的なものが足りないのである。<br> だがジュンにはそれが何であるのかを導き出すことがどうしてもできないでいた<br>  <br> ジ「師範の拳にあって…僕にないもの…何だ…考えろ、考えるんだ…!」<br> ジュンはこれまでに転龍呼吸法を使い拳速・威力を高めたり、打ち方やタイミングを計ったりもした。<br> しかしそれらを試してもせいぜい滝の一部を切り裂いたぐらいで再びその威力は激流にかき消されるのみであったのだ<br>  <br> ジ「くっ!駄目だ…わからない…何だよ、何が足りないんだよ…!」<br> いくら考えても出ぬ答えにとうとうジュンは滝壺に膝を付いた。<br> その2つの瞳に悔しさが涙となりこみ上げてくる。<br> --そのときである<br>  <br> 厳「その顔はなんだ…?」<br> ジ「!?」<br> いつの間にいたのか、河原の大岩に立つ厳は冷ややかな瞳でジュンを見下ろしていた<br> ジ「師範…?」<br> 厳「その目は!その涙はなんだ!?」<br> 厳は声を荒げジュンに吠える<br>  <br> ジ「くっ…でも……!」<br> 厳「お前のその涙で、誰かを救えるとでもいうのか…?」<br> ジ「!!」<br>  <br> 厳の言葉が鎖のように重くジュンにのしかかる。<br> そう、いくらジュンが悔しがっても、いくら涙を流そうと…<br> それだけでは結局誰も救えはしない、何も守れはしないのだ<br>  <br> 厳「お前が諦めるのは勝手だ。だがそれで何になる…<br> 今のお前では、あの組織と…SODOMとまともに闘うことはできん。」<br> ジ「それは……」<br> 厳「わからぬとは言わせんぞ。<br> 俺が何のために水の心を学べと言ったかわかるか?<br> …今のお前の拳は、敵に避けてくれと言っているようなものなのだぞ。」<br> ジ「…え?」<br>  <br> そう言い放った厳は目を丸くするジュンに向けて尚も続ける<br> 厳「闘いの上で闘争心を燃やすことは間違いではない。<br> だが、それだけでは駄目なのだ。熱くなりすぎることで冷静さを欠いては攻撃が単調になるだけでなく脈拍、呼吸数を早める。<br> それは単に疲れを早めるだけでなく、相手に攻撃を繰り出すタイミングやどこを攻撃したいかをありありと知らしめてしまうのだ。<br> …そう、これまでのお前のようにな。」<br> ジ「!」<br> 厳の鋭い指摘がジュンの胸を貫く<br>  <br> 厳「だが、それを抑えるもの…即ち水の心を持てばお前は今まで以上に強くなれる。<br> それにはまず、この滝をその手で斬ってみせよ。」<br> <br> 厳はジュンの背後で尚も轟々と流れる大滝を指差す<br>  <br> ジ「でも、一体どうしたら…」<br> ジュンは1日を費やして尚断つことのできなかった激流を恨めしげに睨む。<br> すると厳は静かに口を開いた<br>  <br> 厳「感じるんだ…」<br> ジ「え?」<br> 厳「意識を集中し水の流れを、風の声を、木々のざわめきを感じろ…方法はそこにある。」<br> ジ「水の流れ…風の声……」<br>  <br> 言われるがまま目を閉じ意識を集中するジュン<br>  <br> ジ(くっ…集中しろ、集中するんだ!)<br> だが、意識を集中しようとするあまりその眉間にはしわが寄り、拳は固く握られる…<br> 厳「力ではない、体全体で万物の息吹を感じるのだ…。」<br> ジ(体全体…感じる…万物の…息吹…)<br> 厳の言葉を自らの内に反芻した次の瞬間…<br>  <br> --ざわり…<br>  <br> ジ(…!)<br>  <br>  <br> そのとき、ジュンの耳が何かを捉えた<br> ジ(今のは…)<br>  <br> --コポッ…ゴポッ…サァアアアァァアァアァァアア…<br>  <br> ジ(…!!)<br> いや、耳だけではない。肌に、鼻に、閉ざした目の裏側にまで周囲の“流れ”が全て溢れかえってきたのだ<br>  <br> ジ(これが…万物の流れ…)<br> 水・風・木々・時間…そして<br>  <br> トクン…トクン…ザアアアアァァア…<br>  <br> ジ(これは…鼓動!)<br> 自らの内に流れる心臓の鼓動、そしてそれにより流動する血液の流れ。<br> そしてそれを追いかけてゆくと…<br>  <br> ザァアアアア…クン…ザァアアアアァァア…ドクン…<br>  <br> ジ(…これは!)<br> ジュンは背後から自分とは別の鼓動を感じた。<br> そう、それは自らの背後にいる厳の放つ鼓動の音だったのである<br>  <br> ジ(わかる…わかるぞ!目を閉じていても…いや、実際に目で見るよりも周りの状態がしっかり把握できる!!<br> これなら…!)<br>  <br> ジュンはそのまま滝へとゆっくりと構えると更に意識を集中してゆく<br>  <br> --ザアアアアアアアアアアア…!!<br>  <br> ジ(感じろ、この滝の流れを…必ずどこかにスキがあるはずだ…)<br>  <br> --ザアアアアアアアアァァアアア…!!<br>  <br> ジ(!!)<br> ジュンは感じた。轟々と流れる滝の流れに一瞬僅かなスキが生じた瞬間を<br>  <br> ジ(今のは…何故……ん?)<br> 滝壺の流れに意識を向けたジュンは、そこに一カ所だけ流れが乱れている部分を見つけた。<br> そこにあったものは…<br>  <br> ジ(これは………そうか、わかったぞ!)<br> ジュンは何かを確信したように右手に手刀を作る<br>  <br> ジ(さぁ…来い!)<br>  <br> ジュンは流れにスキができるその一瞬のタイミングに全てを賭けた。<br> そして…<br>  <br> --ザアアアアアアアアアアアァ…<br>  <br> ジ(今だ!!)<br> ジ「っぁあああああああああああッ!!」<br> 己の見いだした答えを信じ、渾身の手刀を振るうジュン。<br> その刹那…<br>  <br> 『ドバァアアアアアアアアアッ!!』<br>  <br> 轟音と水柱を上げて滝はその激流を二つに割った…<br>  <br> ジ「で…できた…。やった!やったぁああああああ!!」<br> 遂に成し遂げた試練に歓喜の叫びを上げるジュン。<br> それを見守る厳もまた小さな笑みを見せていた<br>  <br> 厳「どうやら、掴んだようだな。」<br> ジ「はい、師範のおかげです。あの滝を割るためには僅かな流れのスキを見つけなければいけなかった…<br> そう、これによって。」<br>  <br> ジュンが手にしていたもの、それは真っ二つに裂かれた一枚の落ち葉であった<br>  <br> ジ「落ち葉が滝の表面に流されるとき、そこに僅かな流れの緩みが生じる。<br> そして、この小さな落ち葉一点に意識を集中することで拳の威力は滝を割るまで高まる…。<br> つまり、万物の流れを感じることは敵の攻撃を読み、その中にある弱点を見い出すことができる。<br> それが…“水の心”!」<br> ジュンが出した“水の心”に対する答え、それは闘いの中にありながらも決して冷静さを失わずその体全てで戦況を把握するというものであった<br>  <br> 厳「そうだ。己の内に闘志という火の心を燃やすと同時に冷静な水の心を持つこと…それが真に強き者の条件だ。<br> 明鏡止水の極意を忘れずにいれば、変化する戦況にも臨機応変に対応できる。」<br>  <br> それを聞いた厳もまた、自ら答えを導き出したジュンを称えるような穏やかな口調で応える<br>  <br> ジ「はい。水の心、決して忘れ……は…ふぁ…ふぁーっくしょん!!…ぐしゅ。」<br>  <br> ふいに豪快なくしゃみを放つジュン。<br> 一日中真冬の冷水に浸かっていれば体も冷えて当然というものだ<br> 厳「ふっ…よほど冷えたようだな。さぁ、風邪を引いている暇などない。<br> 飯はできているから早く帰るぞ。」<br> ジ「は、はい。待っ……ふぇーくしょん!!」<br>  <br> こうして厳からの最初の修行を終え、水の心を体得したジュン。<br> だが、ジュンの修行はまだ始まったばかりである…。<br>  <br>  <br> 続く…<br>  <br>  </p>

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