「で、君は誰なんだい?」

先程の件でショートカットの少女は大変ご立腹な様子だ。まぁ無理も無い。

「あれだけのことをしたんだからそれなりに説明してくれないと困るなぁ。」

部屋の隅を見る。二人の少女が涙目で震えている。察するにどうやらこのショートカットの少女はキレるとやばいらしい。
銀髪の少女は携帯をいじって無関心な様子だ。
私はというと正座を強いられている。足が痛い。

「聞いてる?」

答えなければどっかのバンドのベーシストみたいにベースで人を殴りかねないので答えておくことにした。
私は説明した。自分の名前、記憶が無いこと、そしてあの時のことを。

「記憶がない?」

四人の少女はステージ上で見せたような驚きに満ちた表情をしていた。

「正気かしらー?」

正直自分でもそこはよく分からない。とにかくまともでは無いのは確かだろう。

「どうするですぅ?こいつ?」

とにかく今すぐ立ち上がって家に帰してほしいのだが・・・・。言えない。

「ねぇ蒼星石ぃ。ちょっと来て~?」

銀髪の少女がショートカットの少女を部屋の外に呼び寄せた。

数分後

そろそろ足が限界を感じ始めたころ、満面の笑みをした少女と渋い顔をした少女が部屋に入ってきた

「ほらぁ~リーダーさん♪」

銀髪の少女が言うとショートカットの少女はゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・真紅。君をこのバンドにいれたいと思う。」

私を含め部屋に居残ってた組は驚きを隠せない様子だ。構わず少女は続けた。

「勘違いしないでほしい。僕は君のことを認めた訳では無い。君は確かにボーカルとして素晴らしい能力を持っている。しかし先程の一件は(ry」

長ったらしい話はほとんど脳を通らず耳と耳を素通りしていった。足の痺れも全く気にならなかった。

「ほらぁ誰もそんな話聞いてないわぁ。とにかくよろしく頼むわぁ。新しいボーカルさん♪」

銀髪の少女がウィンクをした。気の利いた淑女なら適当に応えるのだろうけど今の私にはそんな余裕は無かった。
頭が痛い。

バンド
ボーカル

何かが引っかかった。
思い出せそうな気がした瞬間、私の意識は飛んでしまった。

夏祭りから数日後、私は私立薔薇女学園軽音楽部部室にいた。
四人はここに在学している。
私はというと自分の身分すら分からないような人間なので、入学したりはせずにとりあえず部室で紅茶を飲みながら、四人がやって来る放課後まで待っている。
いつもなら水銀燈あたりが授業サボって顔を出すのだが、最近単位が危ういらしく、今日はマジメに授業を受けているらしい。
あまりに暇すぎるので部室を物色してみることにした。やたら物があるので面白そうと感じたからだ。

ダンボールを開けてみると可愛らしい手紙が山のようにあった。宛名を見ると全て蒼星石へのものだとわかる。
申し訳なさなど全く感じないままに中身を見ると、ほぼ全てが愛の告白だった。
彼女はこういう趣味なのだろうか。少し不安になった。

他にも折れて使えなくなったスティック、ポテトチップスの亡骸、ファッション誌など色々収穫があった。

ここでふとある物を目にした。バンドスコアだ。
表紙のロゴを見ると嫌な胸騒ぎがした。





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最終更新:2007年10月20日 03:53