ここはアメリカ村。二人の可憐な乙女が立っていた。
一人は白銀の髪に真紅の瞳…水銀燈。
一人は左目に眼帯をした…薔薇水晶。

「さってとぉ…ばらしぃーは一体何が見たいのぉ?」
「…眼帯…新しいデザインのを買ってみようと思って…」
「眼帯ねぇ~…あっ、いい店が一つあるわぁ…でも、それは最後にしてぇ…まずはお昼食べましょぉ?」

水銀燈がそう言うと、薔薇水晶はコクリと頷いた。それを見て水銀燈は微笑む。

二人が訪れたのはよくあるイタリアンレストラン。

「…私…ニンニクラーメン…チャーシュー抜き…」
「ばらしぃー、無口キャラつながりでネタにするのは止めなさぁ~い」

こつんと、軽く薔薇水晶につっこむ水銀燈…いやいや、イタリアンの店でラーメン頼んでることにつっこんでよ銀様…
店員は非常に困った表情をしていた。

結局、水銀燈はイカスミパスタを、薔薇水晶はタラコスパゲッティを食べることになった。

「ばらしぃー、口にタラコついてるわよぉ」
「…とって…銀ちゃん…」
「もぉ、甘えん坊さんねぇ…」

と、こんな感じの微笑ましいというか萌えるというか…そんな食事風景だった。
二人はさながら姉妹か、それとも恋人か…周りの人々にはそんな風に映った。

「次は洋服でも探しましょうかぁ?ばらしぃーもこんな感じの服、好きでしょぉ?」

といって、水銀燈は自分の服を指差す。さすがにステージ衣装ほど派手ではないが、黒くてフリルがついたゴシックロリータだった。
薔薇水晶はコクリと頷く。

「うん、私も…好き」
「じゃぁ、おすすめのブランドいっぱいあるからぁ…紹介するわねぇ~」

こうして、水銀燈と薔薇水晶は近辺にあるゴシックロリータの専門店巡りを開始した。
水銀燈は有名ブランドからマイナーなブランド、パンク色の強いものやゴシック色の強いもの、ほとんどロリータに近い可愛らしいもの…等々、様々なブランドを紹介していく。

「…で、ここは中でも私好みのお店よぉ~」

そう言って、水銀燈は小さなビルの二階へと上がっていった。そこはゴシックやパンク、レディースやメンズも扱う、有名ブランドだった。

「ここの服はよくライブでも着てるのよねぇ…このワンピースとかぁ…」

それは真っ黒でフリルが付いているワンピースだった。

「…」
「…試着してみるぅ?」

薔薇水晶はコクリと頷く。水銀燈は彼女を試着室へと案内した。
しばらく時間が過ぎて、試着室のドアが開く。

「…どう?」

薔薇水晶は普段あまり黒色を着ないが、非常によく似合っていた。

「ふふ…似合ってるわよぉ~ばらしぃー」
「…えへへ」

水銀燈はその服を買って、薔薇水晶にプレゼントした。

「今日のライブでも、これ着るつもりだからぁ…一緒に着ましょう?」
「…うん…銀ちゃんとお揃い…えへへ」

幸せそうに笑う薔薇水晶、つられて水銀燈も笑った。

「あっ、そうだぁ…忘れてたわぁ~、眼帯買うんだったわよねぇ?」
「…うん」
「最後にとっておきのお店、紹介してあげるわぁ」

そう言って水銀燈が連れて行ったのは…

「…mercury lamp?…これ、水銀灯って意味だよね?」
「そうよぉ…ここわねぇ、私のお店なのよぉ」

そう、ここは水銀燈がデザインした服を売っている水銀燈のブランドである。
バンドが有名になってきた時期を見計らって、趣味でデザインした服を売る店を建てたのだ。
無論、「あの水銀燈がデザインした服」として、ファンやゴスロリが好きな少女達に非常にウケている。今では渋谷や名古屋にもチェーン店があるほどだ。

「銀ちゃん…すごい…」
「うふふ、ありがとぉ…あっ、ちょっとあなたぁ」

水銀燈はスタッフを呼び止める。社長に呼び止められたスタッフは驚いた。

「あ…私…何か粗相を?」
「違うわよぉ~。ほら、新商品入ってるでしょぉ?あれ持ってきてぇ」
「あ!はい!今すぐ!!」

スタッフが急いで持ってきたそれは、美しい薔薇と白い蛇が逆十字に絡みついているデザインの眼帯だった。

「…かっこいい」
「あなたに似合うと思ってねぇ」

水銀燈は薔薇水晶に眼帯を差し出した。

「つけてみてくれるかしらぁ?」
「うん!」

珍しくタメ無しで薔薇水晶は答え、水銀燈がデザインした眼帯をつけた。

「…どう?」
「予想通り!似合ってるわぁ~」
「…えへへ…ありがとう銀ちゃん」
「いいのよぉ~」
「えへへ」
「うふふ」

二人は笑いあった。心から幸せそうに…


その数時間前

ライブハウスMUSE…

その前に真紅は立っていた。見つめているのは、今から始まるインディーズバンドのライブのパンフレット。
載ってるのはパンクロッカースタイルのバンド。

「…随分怖そうな格好をしているのね…」

エレキギターを抱えたボーカルの男を見て、真紅は呟いて。

「でも…目はあの頃のままなのだわ…」

そう言って、真紅はやさしそうに、懐かしそうに笑った。

今、インディーズで密かに人気を博しているパンクロックバンド。
そのネガティブな歌詞にボーカルのカリスマ的な叫びが評判だ。
そのバンドの名は…「JUM PROJECT」

ボーカルの名は…「JUM」…




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最終更新:2008年06月06日 00:26